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直輝と決意とクリスマスイブ
4話
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「直輝くん!こっちこっち!」
「おいおい、無駄に手際がいいな。」
「へへん、元一軍女子ですから。」
「今は違うんかい。」
愛さんは映画館に行き慣れてるのかチケットの手配とか、上映場所の把握が早かった。
俺は映画館は人生で数回しか行った記憶がない。
興味がないと言われればそうなのだが、今は少し待てばサブスクで何度も見返せる時代なのだ。
それを1日で同じ金額を消費するのかと思うと無駄としか感じなかったので俺は実はそこまで乗り気じゃなかった。
「ポップコーンはキャラメル味で特盛お願いします!あ、あとちょっとコーラもLサイズで……!」
「おいおい、映画見に行くのにそんなに金かけて大丈夫かよ。」
すると愛さんはコーラを私ながらニコニコとしたから覗き込むように見つめた。
「直輝くん……映画っていうのはね?これがいいんだよ。いつもサブスクで映画とか見てるタイプ?」
「まあ……うん。」
「それじゃ勿体ない。」
「なんでよ。」
コーラをストロー越しに飲むと、ボリュームのある炭酸が喉を打ち飲みなれた甘い味が舌を癒していた。
「まあ……今日は映画の流儀に従ってみてよ。スマホの電源切ってね!ストップ!映画泥棒!」
「あ~たまに映画で出てくるあのカメラのマスクのやつか。」
あれ動きが面白いからよく小学校で真似してた気がする。
俺は映画の座席に座り、流行りの映画を観る。
次の映画の広告をポップコーンを食べながら流し見をする。
「へー!この映画面白そう!」
「そうか……?」
「むー!直輝くんは私とは合わないかも!」
「いや、いつも苦手なんだけど。」
「あ、私かに!」
予告編の時はそんな雑談をしてるのだが、周りも若い世代が多くそんな感じだった。
しばらくすると、劇場のスクリーンが大きくなり、暗くなると妙にポップコーンの食べる音が大きく感じた。
「いよいよだね~。」
「んだな。」
やっと例のアニメがはじまる。
2年前にみたやつの続編なので大まかは設定は知っていた。そして、TikTokやYouTubeて聞きなれたオープニングが流れる。
でも、それだけでも違った。
これから何が起こるのだろうとするワクワク感が違くて、スマホも何も出来ないというこの制限が映画を集中させた。
たまにしょーもない下ネタが出てくる。
急に金玉をヒロインが主人公に読み上げさせるとか。
「これ……笑ったら負けかな。」
「あはは!しょーもない!」
愛さんは爆笑だった。
彼女、普段は上品なイメージが着いていたけど案外こういうことでも声を上げて笑うんだと意外性を感じた。
その後は主人公とヒロインの恋愛シーンが溢れる。
甘酸っぱい青春が流れ、危険な男女が夜の学校に忍び込むなどのシーンが目に入った。
キスをしたりとか…妙に緊張感が上がるのを感じると、愛さんが突然俺の手の甲に自分の手を重ねた。
「え!?ちょっ……。」
「しー……。」
愛さんは何も言わず、ただ彼女の体温が温まり、汗ばんで来るのを感じる。
でも、少しづつ慣れてくると、映画をしっかり見るようにした。
こんな言葉が刺さる。
逃げよう、君には本来別の幸せがある。
頑張らなくたって幸せに生きていけるとヒロインが主人公に語りかけるシーンが、どうも他人とは思えなかった。
映画の状況はさらに展開を広げる。
ヒロインは敵で、戦うことになる。
でもどこか敵になりきれず、さっきの言葉が脳裏をよぎる。
最後のシーンには……妙に胸を締め付けられて、なんとも言えない終わり方だった。
ヒロインの彼女は最後、何を思ったのか……なぜ敵としての役割を果たしきらなかったのは、今の俺には理解ができなかった。
愛さんは……何を思うのだろう。
彼女は、泣いていた。
なぜ泣いていたのかは分からなかった。
映画のスタッフロールが流れたあとは、主人公に当たり前の日常が流れる。
本当は通じあっていたのに、2人は……もう会うことはなかった。
☆☆
「あー!面白かった!」
「だね、あんがと……誘ってくれて。」
気がついたらポップコーンは無くなっていた。
コーラも飲み干したけど、あれはあって正解だった。
あれは、映画に集中するための投資だったのだ。
妙に心がスッキリする感じがする。
「こういう休みもいいでしょ!」
「うん、なんか……何もかもが新鮮だった。映画っていいもんだな。」
サブスクだと、感動は半減しちゃうし、スマホも見ちゃうから何してたのか覚えていない。
映画がなぜ今もあるのか、なんて理由は明白だ。
映画は感動させるためにある。
そのために部屋を暗くして、1つのことに集中させるのだ。だからこそ、泣けるシーンは泣けるし、笑えるシーンは笑えるのだ。
「ねえ、直輝くん……まだあいてる?」
「え。」
時刻は既に18時頃……空いてない訳では無いのだが、流石に家族も心配するし、俺はまた勉強しようと思っていた。
「いや~これから勉強したいしな……。」
「もう!だから君は詰め込みすぎなんだって!」
少し愛さんが怒る。
でも、いつもみたいに心臓を握るような感じではなく、等身大の女の子が怒ってるようにも見えた。
「じゃああれか?二人で夜の学校にでも忍び寄ってみるか?あ、でも全裸でプールは泳がんからな!」
「あははは!なんだ……ちゃんと見てるじゃん!」
「あのシーンの時に手を被せて来ないでよ!ビックリしたよあれ!」
「え~、なんで?嫌だった?」
「あ……いや、その……な?」
「このエロガッパ。」
「エロガッパってニュアンスあんまりきかないな。」
混沌溢れる歌舞伎町では、そんな会話をしても特に恥ずかしさとかはない。
でも、同じものを分かち合うっていう楽しみもあるのかもしれないな。
「それで……もし行くとしたらどこ行くんだよ。」
「えへへ……千葉とかどう?」
「ち……千葉?ディ〇ニーとかでも行くのか?」
「え!連れてってくれるの?」
「んな金ねえよ、今行っても閉園しちまうだろ。」
「むう……ケチ。」
あまり誘いに乗りすぎてもあれだろう。
主人公は好きな人がいるのに揺らいでいたけど、俺にはきちんと舞衣がいるから、ここはきっちりとお断りしよう。
「それにさ……俺、彼女いるから。君とは友達でいたい。」
「……。」
すると、彼女の目つきが鋭くなる。
単刀直入に言いすぎたか?と冷や汗をかくと彼女はゆっくりと語りかける。
「その子、直輝くんの事見てくれてる?」
「え。」
「私は……直輝くんの全てを受け入れられるよ。」
確かに、舞衣は俺の全てを知らないし、もし今の状況を見たら全てを聞かずビンタするだろう。
間違いなく今の俺を理解してると定義すると、愛さんに軍配が上がる。
「図星だね、本当の君は……強くは無いし、今の環境だと君は無理したまま。もっと気楽でも生きていけるし、君はもっと等身大の一度きりの学生生活を楽しんだ方がいいよ、誰のための人生なの?」
「それは……。」
そう、人生は人のためなんかじゃない。
自分のためであるなら、その方が良い。
今の俺は直人のため、そして母ちゃんのためにと寄りすぎていた。
そして、今の愛さんは映画に影響されたのか全ての行動にあのヒロインがフラッシュバックする。
まるでちょっとしたあの映画の縮図のようだった。
「私は……直輝くんが好き。」
妖艶な半目が、少しだけ大きく見える。
それだけでいつもの彼女と違って見えた。
「良かったら、一緒に逃げない?」
この言葉で、彼女の誘いはかなり決意の強いものだと感じる。
弱ってる俺の心は……少し、いやかなり揺らいでいた。
まるで歌舞伎町に押し寄せる人の波は俺の心の縮図のようだった。
夜の寒さと歌舞伎町のドブとグルメと酒が入り交じったような臭いが脳をつんざく。
俺は、どうしたら良いのだろう?
揺らぐ心がポップコーンだけの胃を揺らして少し気持ち悪くさせていた。
「おいおい、無駄に手際がいいな。」
「へへん、元一軍女子ですから。」
「今は違うんかい。」
愛さんは映画館に行き慣れてるのかチケットの手配とか、上映場所の把握が早かった。
俺は映画館は人生で数回しか行った記憶がない。
興味がないと言われればそうなのだが、今は少し待てばサブスクで何度も見返せる時代なのだ。
それを1日で同じ金額を消費するのかと思うと無駄としか感じなかったので俺は実はそこまで乗り気じゃなかった。
「ポップコーンはキャラメル味で特盛お願いします!あ、あとちょっとコーラもLサイズで……!」
「おいおい、映画見に行くのにそんなに金かけて大丈夫かよ。」
すると愛さんはコーラを私ながらニコニコとしたから覗き込むように見つめた。
「直輝くん……映画っていうのはね?これがいいんだよ。いつもサブスクで映画とか見てるタイプ?」
「まあ……うん。」
「それじゃ勿体ない。」
「なんでよ。」
コーラをストロー越しに飲むと、ボリュームのある炭酸が喉を打ち飲みなれた甘い味が舌を癒していた。
「まあ……今日は映画の流儀に従ってみてよ。スマホの電源切ってね!ストップ!映画泥棒!」
「あ~たまに映画で出てくるあのカメラのマスクのやつか。」
あれ動きが面白いからよく小学校で真似してた気がする。
俺は映画の座席に座り、流行りの映画を観る。
次の映画の広告をポップコーンを食べながら流し見をする。
「へー!この映画面白そう!」
「そうか……?」
「むー!直輝くんは私とは合わないかも!」
「いや、いつも苦手なんだけど。」
「あ、私かに!」
予告編の時はそんな雑談をしてるのだが、周りも若い世代が多くそんな感じだった。
しばらくすると、劇場のスクリーンが大きくなり、暗くなると妙にポップコーンの食べる音が大きく感じた。
「いよいよだね~。」
「んだな。」
やっと例のアニメがはじまる。
2年前にみたやつの続編なので大まかは設定は知っていた。そして、TikTokやYouTubeて聞きなれたオープニングが流れる。
でも、それだけでも違った。
これから何が起こるのだろうとするワクワク感が違くて、スマホも何も出来ないというこの制限が映画を集中させた。
たまにしょーもない下ネタが出てくる。
急に金玉をヒロインが主人公に読み上げさせるとか。
「これ……笑ったら負けかな。」
「あはは!しょーもない!」
愛さんは爆笑だった。
彼女、普段は上品なイメージが着いていたけど案外こういうことでも声を上げて笑うんだと意外性を感じた。
その後は主人公とヒロインの恋愛シーンが溢れる。
甘酸っぱい青春が流れ、危険な男女が夜の学校に忍び込むなどのシーンが目に入った。
キスをしたりとか…妙に緊張感が上がるのを感じると、愛さんが突然俺の手の甲に自分の手を重ねた。
「え!?ちょっ……。」
「しー……。」
愛さんは何も言わず、ただ彼女の体温が温まり、汗ばんで来るのを感じる。
でも、少しづつ慣れてくると、映画をしっかり見るようにした。
こんな言葉が刺さる。
逃げよう、君には本来別の幸せがある。
頑張らなくたって幸せに生きていけるとヒロインが主人公に語りかけるシーンが、どうも他人とは思えなかった。
映画の状況はさらに展開を広げる。
ヒロインは敵で、戦うことになる。
でもどこか敵になりきれず、さっきの言葉が脳裏をよぎる。
最後のシーンには……妙に胸を締め付けられて、なんとも言えない終わり方だった。
ヒロインの彼女は最後、何を思ったのか……なぜ敵としての役割を果たしきらなかったのは、今の俺には理解ができなかった。
愛さんは……何を思うのだろう。
彼女は、泣いていた。
なぜ泣いていたのかは分からなかった。
映画のスタッフロールが流れたあとは、主人公に当たり前の日常が流れる。
本当は通じあっていたのに、2人は……もう会うことはなかった。
☆☆
「あー!面白かった!」
「だね、あんがと……誘ってくれて。」
気がついたらポップコーンは無くなっていた。
コーラも飲み干したけど、あれはあって正解だった。
あれは、映画に集中するための投資だったのだ。
妙に心がスッキリする感じがする。
「こういう休みもいいでしょ!」
「うん、なんか……何もかもが新鮮だった。映画っていいもんだな。」
サブスクだと、感動は半減しちゃうし、スマホも見ちゃうから何してたのか覚えていない。
映画がなぜ今もあるのか、なんて理由は明白だ。
映画は感動させるためにある。
そのために部屋を暗くして、1つのことに集中させるのだ。だからこそ、泣けるシーンは泣けるし、笑えるシーンは笑えるのだ。
「ねえ、直輝くん……まだあいてる?」
「え。」
時刻は既に18時頃……空いてない訳では無いのだが、流石に家族も心配するし、俺はまた勉強しようと思っていた。
「いや~これから勉強したいしな……。」
「もう!だから君は詰め込みすぎなんだって!」
少し愛さんが怒る。
でも、いつもみたいに心臓を握るような感じではなく、等身大の女の子が怒ってるようにも見えた。
「じゃああれか?二人で夜の学校にでも忍び寄ってみるか?あ、でも全裸でプールは泳がんからな!」
「あははは!なんだ……ちゃんと見てるじゃん!」
「あのシーンの時に手を被せて来ないでよ!ビックリしたよあれ!」
「え~、なんで?嫌だった?」
「あ……いや、その……な?」
「このエロガッパ。」
「エロガッパってニュアンスあんまりきかないな。」
混沌溢れる歌舞伎町では、そんな会話をしても特に恥ずかしさとかはない。
でも、同じものを分かち合うっていう楽しみもあるのかもしれないな。
「それで……もし行くとしたらどこ行くんだよ。」
「えへへ……千葉とかどう?」
「ち……千葉?ディ〇ニーとかでも行くのか?」
「え!連れてってくれるの?」
「んな金ねえよ、今行っても閉園しちまうだろ。」
「むう……ケチ。」
あまり誘いに乗りすぎてもあれだろう。
主人公は好きな人がいるのに揺らいでいたけど、俺にはきちんと舞衣がいるから、ここはきっちりとお断りしよう。
「それにさ……俺、彼女いるから。君とは友達でいたい。」
「……。」
すると、彼女の目つきが鋭くなる。
単刀直入に言いすぎたか?と冷や汗をかくと彼女はゆっくりと語りかける。
「その子、直輝くんの事見てくれてる?」
「え。」
「私は……直輝くんの全てを受け入れられるよ。」
確かに、舞衣は俺の全てを知らないし、もし今の状況を見たら全てを聞かずビンタするだろう。
間違いなく今の俺を理解してると定義すると、愛さんに軍配が上がる。
「図星だね、本当の君は……強くは無いし、今の環境だと君は無理したまま。もっと気楽でも生きていけるし、君はもっと等身大の一度きりの学生生活を楽しんだ方がいいよ、誰のための人生なの?」
「それは……。」
そう、人生は人のためなんかじゃない。
自分のためであるなら、その方が良い。
今の俺は直人のため、そして母ちゃんのためにと寄りすぎていた。
そして、今の愛さんは映画に影響されたのか全ての行動にあのヒロインがフラッシュバックする。
まるでちょっとしたあの映画の縮図のようだった。
「私は……直輝くんが好き。」
妖艶な半目が、少しだけ大きく見える。
それだけでいつもの彼女と違って見えた。
「良かったら、一緒に逃げない?」
この言葉で、彼女の誘いはかなり決意の強いものだと感じる。
弱ってる俺の心は……少し、いやかなり揺らいでいた。
まるで歌舞伎町に押し寄せる人の波は俺の心の縮図のようだった。
夜の寒さと歌舞伎町のドブとグルメと酒が入り交じったような臭いが脳をつんざく。
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