僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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直輝と決意とクリスマスイブ

5話

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結局、俺は着いてきてしまった。
断り文句を沢山答えたのだけど、彼女の頭脳は俺を上回っていて、まるで手のひらに転がされてるようだった。

俺は彼女に連れられて、今は千葉の先端の館山市に向かっている。
既に景色は夜になっていて、聞き慣れない地名をひたすらアナウンスされる。
今俺はどこにいて、周りに何があるのかすらわからなかった。

「ありがと、着いてきてくれて。」
「うん、どういたしまして。」

俺の心は静かに迷っていた。
本当に断らなくていいのだろうか?
でも、否定する度に彼女は俺の目を見つめて「信じて。」というシンプルな言葉で俺を動かしていた。

「それにしても……千葉って広いね。桃鉄なら6マスくらいで半周できるからそんなに広くないって思ってた。」
「いや、桃鉄基準で考えてたの!?」
「だって~一軍女子は都会しか遊べないんだもん。」
「はあはあ……贅沢な悩みなこと。」

もう電車には俺たちしかいなかったので会話をできるようになる。
意外とこの人も抜けてるところがあるのかもしれない。

「もう21時だね……。」
「いや、急だな。」
「もう君は帰り道はないんだよ。今日はとことん私に付き合ってもらうよ!」
「てかマジでどこ向かってるの?」
「んー、いいとこ!って言っても人生で1回しか行ってないから記憶曖昧なんだけど。」

そう言うと、列車が終点を告げて俺たちは駅を降りる。
ここは……千葉の端である館山。
元は捕鯨を行っていた土地なのか、妙にクジラの肉わ名産にしていて、駅周辺は少し落ち着いた居酒屋が点在する土地だった。

「直輝くん!こっちこっち!」
「ほぼ初めてだよね?あってる?」

彼女は少し早歩きで歩く。
踏切を超えて、狭い道を超えるとそこは見た事ない世界があった。

「……すげぇ。」

砂浜がどこまでも広がっていた。
暗闇に紛れて、波が不気味に揺らいでいる。
でも、それ以上に……空がどこまでも綺麗だった。

愛さんと夜空を見ながら砂浜を歩くと、妙に心が穏やかだった。当たり前の夜空なのに、照明がほとんどないとこうにも美しく見える。
オリオン座のシリウスが一際白く輝いていて、まるで夜のパーティーのようだった。

彼女は大胆にも、その砂浜に腰掛けて……俺も座る。
寒さに震えてる感じがしたから、俺は静かにコートをかけた。

「あら、優しいね。」
「そんな露骨に寒そうにしてるからだよ。」
「直輝くんは……寒くないの?」

寒くない!なんて言ったら嘘である。
波風は強く俺の体を容赦なく冷やしてるので咄嗟に体を手で覆って寒さを耐えてしまった。

「強がりだな~!」
「……うっさい。」
「じゃあ……こうしよ!」

そう言うと彼女はコートで俺と彼女を被って体を密着させていた。
お互い体育座りのような座り方で、肩からは彼女の体温をほんのりと感じる。

「暖かいね……なんでだろ、直輝くんだからかな?」

俺は何も答えなかった。
妙に寒さになれてくると、夜空までが俺の心を澄み渡らせる。
何もない空間を見つめてボーッとすると、妙に頭が寒さも相まってスッキリするようだった。

その頃には、俺は勉強しなきゃという焦りは一切消えていた。
それよりも、今自分は何がしたくて……どう生きていたいのかをぼんやりと考えていた。

「直輝くんは、都会のネズミと田舎のネズミどっちが好き?」
「ん?映画の感想?」
「まあ、そんなところ!ほら……あのヒロインは静かな幸せを願っていたから田舎のネズミだったじゃん?」

そういえば、そんなフレーズがあった。
都会のネズミは食料は沢山あるけど、死ぬリスクが高くて。田舎のネズミは食糧は少ないかもだけど死ぬリスクが低い。
俺だったら……どう考えるだろう。

「俺は、都会のネズミかな。」
「へー、意外だね!なんで?」
「なんでって……昔はさ、嫌なことがあったら逃げて自分を守るだけだった。でも……そんな自分が好きだったかと言われるとなんか違う。」
「今は、違うの?」
「違うよ、今まで行かなかった修学旅行も行ったし、勉強も頑張った。友達だってできたし、生徒会だってやったんだ。初めてのことだらけだったけど……その先にやっと夢を見つけたんだ。」

俺は夜空に自分の夢を描いていた。
確かに今は辛い。
でも、その先にまた知らない幸せがあるのだと思うと、まるで胸が踊るようだった。

愛さんの顔を見ると、少しだけ悲しそうな顔をしていた。

「そっか……。」

すると、彼女は立ち上がった。

「さーて、もう帰り道は無いんだし……予約したホテルで温泉でも入るかー!」
「え、愛さんはどっちなのか聞いてない。」
「秘密だよー!ほら、置いてくよ?」

俺は立ち上がり寒さに凍えながら夜の砂浜で彼女を追いかけた。
尻は砂まみれだけどゆっくりと砂へと帰っていく。

寒さのせいなのか、俺の頭は妙にスッキリとしていて少しだけ前を向いて歩けるようだった。

夜の砂浜は俺たちしかいなくて、星座だけが俺たちを見つめる観光客のようだった。
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