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酒とタバコとバレンタインデー
3話
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翌日が経った。
いつものようにれんれんが7時に起こしてくれるかと思ったらそんなことはなかった。
時刻は既に16時を過ぎていて、日が逆に沈みかけて私はハッとする。
「やべぇ!?洗濯お願いされたのにやってない!!」
もう干すのは不可能である。
逆にキンキンに冷えて、ことねぇに殺されるに間違いない。
少し焦って洗濯機を回す。
幸いこの洗濯機は乾燥機付きドラム洗濯機だったので何とか洗濯は何とかなりそうだった。
その後もことねぇの家事マニュアルを見ながら家事をしたけど、ゴミを出せなかったし、料理も間に合わなくて出前を頼んで初日は酷いなんてものじゃなかった。
やがて、ことねぇが帰宅の時間になる。
「……ねぇ、さやか?聞いていい?」
「ひゃ……ひゃい。」
「……私貴方に家事をお願いしたはずなんだけど、どうしてほとんど出来てなくて逆に散らかるの?夕飯はチーズ牛丼だし。」
怖い。
なんというか……波平みたいにばっかもーん!って怒られるよりも吹雪を浴びせられているかのような冷たい怖さがあった。
「……今日はお酒抜きね。」
「いやだああああ!!私締め切り前でシラフには居られないんだよおおおお!」
「……あんたね、どこまでも畜生だわ。じゃあ今日だけよ。」
「こ……ことねぇ。」
カンッ
ことねぇはため息を着いて缶をテーブルに置かれた。
確かに酒と書いてはあった。
でもそれにはひとつ問題があった。
「ことねぇ……これ甘酒じゃん。」
「……いいじゃない。頑張ったあなたに対価よ。」
「酷いよ!これじゃあアルコール摂取できないじゃん!」
こうして見ると、家事をしてくれて酒とかツマミとか定期配送とかしてくれるれんれんの有り難さがわかる。
私は彼の献身さに助けられたのだ。
チーズ牛丼を食べながら甘酒を喉に流し込む。
そして、食べ終わると片付けをして、ことねぇは少し化粧を治していた。
「ん?ことねぇ出かけるの?」
「……今日は配信なのよね。」
「うっわー、コンカフェってまーじで忙しいよな。」
「……ええ、投げ銭と広報をしないと飽きられるからね。」
そう言って、ことねぇはスマホとスタンドを着けるとまるで人が変わったかのように話し出した。
「みーんなー!もえもえきゅーん!」
「ぶっ!」
普段の低音ボイスがまるで甘える時の猫のような声に変わり、不意打ちだったので私は腹を抱えそうになった。
「オーナーメイドの、ことねでーす!あ、みやもりさんスパチャありがとうー!」
仕事モードのことねぇは本当に別人の様だった。
コメントを一つ一つ丁寧に読み上げていて、意外と配信は人気があるようだった。
「え!晩御飯?今日は、チーズ牛丼食べました♡ちょっとー!みんな、私の事チー牛っていじらないでよ!」
おい、あんたはいつもいじる側だろうが!
でもメイドモードのことねぇは本当にキャラが徹底していた。
例えば新メニューとかの話をしたり、物販とかライブの営業もちゃんとやっていて、だからこそ少しずつ独立が上手くいってるのかもしれない。
最初は何やってるんだこいつと思いながらも、徐々にことねぇの仕事に対するカリスマ性は本物だと思った。
「じゃあ!また配信来てね!行ってらっしゃいませ!ご主人様~♡」
そう言って、ことねぇは配信を閉じる。
そして、無言でセブンスターを取りだし火をつけて灰皿をテーブルに置き出した。
「……ふぅ。アラサーには堪えるわ。」
「ことねぇ……すごいな。」
「……まあね。ファンとの繋がりはこうして作っておかないと飽きられちゃうもん。」
「スパチャはいくら貰ったの!?」
「……んー、これだと……30万ちょい?」
「時給30万!?」
どうしよ、この人数ヶ月前までは時給1000円ちょいの生活をしていたのに……そりゃあ生活レベルが上がるわけだ。
しばらく見ないうちにかなりの差をつけられた気がしてとても惨めな気持ちになった。
でも、それと同時にこの配信をかなりの頻度でやってるからことねぇがどれだけ信用を積んだのかも見えてくる。
「わ……私も配信やろーかな。」
「……だめよ、あんた口下手じゃない。」
「相変わらずひでぇな!おい!」
「……冗談よ、あんたの信用の積む手段は、ひとつじゃないの?」
そう言われて、ハッとする。
そうだ、ことねぇはメイドを演じることで価値を出す。
私にできるのは……
「書くこと、それだけだ。」
「……そういうことよ。」
「ことねぇ、私頑張るよ!!」
「……ええ、頑張りなさい。そして、ちゃんと全て終わったら飯田くんに謝るのよ。」
そう言われて、私はスイッチを入れて原稿を走らせる。
この日の小説は、とにかく筆が進んだ気がする。
ただ自分の世界を語るのではなく、読者と対話するかのような……そして、ことねぇのプロ精神に感化されたかのような小説になった。
ことねぇに禁酒されたのもあったけど、久しぶりに酒の力を頼らないで小説を書いた気がする。
一通り書き終えたので私は編集者に送り終えると、時刻は12時を過ぎていた。
もう少しやりたいとは思ったけど、続きはゆっくり書こうと思う。
2万文字しかかけてなかったけど、それでもなんだか書き終えて胸を張れるような小説がかけたのだ。
「さーて、そろそろ寝るか。」
どうにもPCを使うと肩が張ってくる。
その疲れを癒すかのようにゆっくりと布団に入る。
少しだけ、私の心は寂しかった。
やっぱりれんれんがいないのが、寂しいなと思う。
会いたい。でも今の私があっていいのか分からない。
だから、ジャブの如くラインを送る。
「起きてる?」
「起きてますよ。」
いや、返信早いな。
私の震えながら送ったラインは秒で返信が来る。
「ちょっと電話しない?」
「いいっすよ!」
すると、れんれんから着信が入るので私は電話に出る。
久しぶりにシラフなので声は少し震えていた。
「……もしもし?」
「笛吹さん!元気にやってます?」
いつもの通り……優しい声に私は安心感を覚える。
やっぱりれんれんの声って落ち着くなと帰属意識に近いものを感じた。
「元気だよ、れんれんは?」
「なんか……俺の家ってこんなに広かったっけ?とか思ったらボーッとしてしまいましたよ。」
れんれんの声は妙に気力がないように見えた。
どうやら彼は彼なりに私との生活が気に入ってたのかもしれない。
「私も……なんか、小説書き終えて今日の未練は無くなったはずなのに、妙にれんれんの声が聞きたくなっちゃった。」
「あはは、俺もそんな感じですよ。落ち着かなくて筋トレしてました。」
3日会ってないだけなのにすごく懐かしくて、帰りたくなる。
会いたい、またいつものように家散らかさないでくださいとか怒られたい。
「なんかさ、今ことねぇに家事をお願いされてて……今日チャレンジしたけどダメだった。私はやっぱダメなのかなぁ……。」
「あはは、まあ最初はそんなもんっすよ。」
「れんれん、いつもあんなに大変なことやってくれてたんだね。ありがとう。」
そう言うと、れんれんはしばらく黙ってしまう。
家事ってめっちゃ大変だ。
それを彼は仕事とバイトをしながらやってくれているのだ。
どれだけ大変か、この一日で痛いほどわかった。
もしかしたら、いつか愛想をつかされるのではとか少し不安な気持ちさえある。
「いいんすよ。笛吹さんの書く小説……好きですから。家事ができないなんて、そんなので気に病む必要ないっすよ。」
「れんれん……。」
ヤバい、泣きそうだ。
なんでこいつはこんなに優しいんだろう。
シラフになると余計彼の優しさが身に染みる様だった。
「ほら、明日も早いんでしょ。俺は俺で待ってますから。ちゃんと満足したらちゃんと帰ってきてくださいね。」
「うん……ありがとう。おやすみ!」
「おやすみなさい。」
そう言って、電話を切ると妙にさっきの肩の疲れが吹き飛ぶようだった。
この日見た夢は、どんな夢かは忘れたけど心の中には確かに満たされたものがあり、明日も楽しく生きていけそうな、そんな夢だった。
部屋の中は、少し暖房の温もりが残っている。
私はその中でゆっくり……安心して深い眠りについた。
いつものようにれんれんが7時に起こしてくれるかと思ったらそんなことはなかった。
時刻は既に16時を過ぎていて、日が逆に沈みかけて私はハッとする。
「やべぇ!?洗濯お願いされたのにやってない!!」
もう干すのは不可能である。
逆にキンキンに冷えて、ことねぇに殺されるに間違いない。
少し焦って洗濯機を回す。
幸いこの洗濯機は乾燥機付きドラム洗濯機だったので何とか洗濯は何とかなりそうだった。
その後もことねぇの家事マニュアルを見ながら家事をしたけど、ゴミを出せなかったし、料理も間に合わなくて出前を頼んで初日は酷いなんてものじゃなかった。
やがて、ことねぇが帰宅の時間になる。
「……ねぇ、さやか?聞いていい?」
「ひゃ……ひゃい。」
「……私貴方に家事をお願いしたはずなんだけど、どうしてほとんど出来てなくて逆に散らかるの?夕飯はチーズ牛丼だし。」
怖い。
なんというか……波平みたいにばっかもーん!って怒られるよりも吹雪を浴びせられているかのような冷たい怖さがあった。
「……今日はお酒抜きね。」
「いやだああああ!!私締め切り前でシラフには居られないんだよおおおお!」
「……あんたね、どこまでも畜生だわ。じゃあ今日だけよ。」
「こ……ことねぇ。」
カンッ
ことねぇはため息を着いて缶をテーブルに置かれた。
確かに酒と書いてはあった。
でもそれにはひとつ問題があった。
「ことねぇ……これ甘酒じゃん。」
「……いいじゃない。頑張ったあなたに対価よ。」
「酷いよ!これじゃあアルコール摂取できないじゃん!」
こうして見ると、家事をしてくれて酒とかツマミとか定期配送とかしてくれるれんれんの有り難さがわかる。
私は彼の献身さに助けられたのだ。
チーズ牛丼を食べながら甘酒を喉に流し込む。
そして、食べ終わると片付けをして、ことねぇは少し化粧を治していた。
「ん?ことねぇ出かけるの?」
「……今日は配信なのよね。」
「うっわー、コンカフェってまーじで忙しいよな。」
「……ええ、投げ銭と広報をしないと飽きられるからね。」
そう言って、ことねぇはスマホとスタンドを着けるとまるで人が変わったかのように話し出した。
「みーんなー!もえもえきゅーん!」
「ぶっ!」
普段の低音ボイスがまるで甘える時の猫のような声に変わり、不意打ちだったので私は腹を抱えそうになった。
「オーナーメイドの、ことねでーす!あ、みやもりさんスパチャありがとうー!」
仕事モードのことねぇは本当に別人の様だった。
コメントを一つ一つ丁寧に読み上げていて、意外と配信は人気があるようだった。
「え!晩御飯?今日は、チーズ牛丼食べました♡ちょっとー!みんな、私の事チー牛っていじらないでよ!」
おい、あんたはいつもいじる側だろうが!
でもメイドモードのことねぇは本当にキャラが徹底していた。
例えば新メニューとかの話をしたり、物販とかライブの営業もちゃんとやっていて、だからこそ少しずつ独立が上手くいってるのかもしれない。
最初は何やってるんだこいつと思いながらも、徐々にことねぇの仕事に対するカリスマ性は本物だと思った。
「じゃあ!また配信来てね!行ってらっしゃいませ!ご主人様~♡」
そう言って、ことねぇは配信を閉じる。
そして、無言でセブンスターを取りだし火をつけて灰皿をテーブルに置き出した。
「……ふぅ。アラサーには堪えるわ。」
「ことねぇ……すごいな。」
「……まあね。ファンとの繋がりはこうして作っておかないと飽きられちゃうもん。」
「スパチャはいくら貰ったの!?」
「……んー、これだと……30万ちょい?」
「時給30万!?」
どうしよ、この人数ヶ月前までは時給1000円ちょいの生活をしていたのに……そりゃあ生活レベルが上がるわけだ。
しばらく見ないうちにかなりの差をつけられた気がしてとても惨めな気持ちになった。
でも、それと同時にこの配信をかなりの頻度でやってるからことねぇがどれだけ信用を積んだのかも見えてくる。
「わ……私も配信やろーかな。」
「……だめよ、あんた口下手じゃない。」
「相変わらずひでぇな!おい!」
「……冗談よ、あんたの信用の積む手段は、ひとつじゃないの?」
そう言われて、ハッとする。
そうだ、ことねぇはメイドを演じることで価値を出す。
私にできるのは……
「書くこと、それだけだ。」
「……そういうことよ。」
「ことねぇ、私頑張るよ!!」
「……ええ、頑張りなさい。そして、ちゃんと全て終わったら飯田くんに謝るのよ。」
そう言われて、私はスイッチを入れて原稿を走らせる。
この日の小説は、とにかく筆が進んだ気がする。
ただ自分の世界を語るのではなく、読者と対話するかのような……そして、ことねぇのプロ精神に感化されたかのような小説になった。
ことねぇに禁酒されたのもあったけど、久しぶりに酒の力を頼らないで小説を書いた気がする。
一通り書き終えたので私は編集者に送り終えると、時刻は12時を過ぎていた。
もう少しやりたいとは思ったけど、続きはゆっくり書こうと思う。
2万文字しかかけてなかったけど、それでもなんだか書き終えて胸を張れるような小説がかけたのだ。
「さーて、そろそろ寝るか。」
どうにもPCを使うと肩が張ってくる。
その疲れを癒すかのようにゆっくりと布団に入る。
少しだけ、私の心は寂しかった。
やっぱりれんれんがいないのが、寂しいなと思う。
会いたい。でも今の私があっていいのか分からない。
だから、ジャブの如くラインを送る。
「起きてる?」
「起きてますよ。」
いや、返信早いな。
私の震えながら送ったラインは秒で返信が来る。
「ちょっと電話しない?」
「いいっすよ!」
すると、れんれんから着信が入るので私は電話に出る。
久しぶりにシラフなので声は少し震えていた。
「……もしもし?」
「笛吹さん!元気にやってます?」
いつもの通り……優しい声に私は安心感を覚える。
やっぱりれんれんの声って落ち着くなと帰属意識に近いものを感じた。
「元気だよ、れんれんは?」
「なんか……俺の家ってこんなに広かったっけ?とか思ったらボーッとしてしまいましたよ。」
れんれんの声は妙に気力がないように見えた。
どうやら彼は彼なりに私との生活が気に入ってたのかもしれない。
「私も……なんか、小説書き終えて今日の未練は無くなったはずなのに、妙にれんれんの声が聞きたくなっちゃった。」
「あはは、俺もそんな感じですよ。落ち着かなくて筋トレしてました。」
3日会ってないだけなのにすごく懐かしくて、帰りたくなる。
会いたい、またいつものように家散らかさないでくださいとか怒られたい。
「なんかさ、今ことねぇに家事をお願いされてて……今日チャレンジしたけどダメだった。私はやっぱダメなのかなぁ……。」
「あはは、まあ最初はそんなもんっすよ。」
「れんれん、いつもあんなに大変なことやってくれてたんだね。ありがとう。」
そう言うと、れんれんはしばらく黙ってしまう。
家事ってめっちゃ大変だ。
それを彼は仕事とバイトをしながらやってくれているのだ。
どれだけ大変か、この一日で痛いほどわかった。
もしかしたら、いつか愛想をつかされるのではとか少し不安な気持ちさえある。
「いいんすよ。笛吹さんの書く小説……好きですから。家事ができないなんて、そんなので気に病む必要ないっすよ。」
「れんれん……。」
ヤバい、泣きそうだ。
なんでこいつはこんなに優しいんだろう。
シラフになると余計彼の優しさが身に染みる様だった。
「ほら、明日も早いんでしょ。俺は俺で待ってますから。ちゃんと満足したらちゃんと帰ってきてくださいね。」
「うん……ありがとう。おやすみ!」
「おやすみなさい。」
そう言って、電話を切ると妙にさっきの肩の疲れが吹き飛ぶようだった。
この日見た夢は、どんな夢かは忘れたけど心の中には確かに満たされたものがあり、明日も楽しく生きていけそうな、そんな夢だった。
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