僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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酒とタバコとバレンタインデー

6話

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俺は飯田蓮。
現在、同居してる笛吹さんと喧嘩して現在別居をしている。

いつもは帰る度に笛吹さんがタバコとか酒とかポテチとかで散らかるんだけど1人だけだと全くそんなことは無かった。


「いやー、それにしても……この家こんなに広かったんだな。」

暫くは友達とカラオケオールとかしてたりとか、部活に励んだりしたがどうにもドーナツのように心の中がぽっかりと穴が空いてるようだった。
張り合う相手もやることもないので、俺は確定申告をしていた。

「……んーと、この医療費の領収書も使ってと、あー!おわった!」

別に話すこともないのに独り言を話してノビをする。
俺は父ちゃんは急死したし、お袋ともほぼ絶縁状態だ。

でも、そんなの慣れきっていた。
1人でも幸せだったし、学校に行けば直輝たちがいる。
突然、彼女が大家から追い出されて始まった同居生活。
それが今や自分にとっては必要不可欠な存在だったと思うと酷く胸が苦しんだ。

「とりあえず、走るか。」

俺は、そう思い。
とにかく走った。無我夢中で……目的地のないところへ。

☆☆

「はぁ……はぁ……。」

俺は4kmくらい走ったかもしれない。
走ると余計なモヤモヤが驚くほど晴れていた。
なに、彼女は帰ってくる。

今はお互いのために必要な期間だと、走るとそこまで脳が整理されていた。
とりあえず、今日はシャワーでも浴びてゆっくりしよう。

そう思った時だった。

「よっしゃー!ことねぇ、買い出しに行くぞ!」
「……あなた、今日何しに来たかわかってるの?」

聞き慣れた声に俺は驚いて咄嗟に柱に隠れる。
覗いてみるとやはり笛吹さんとことねさんがデパートに向けて足を運んでいた。

何してるんだろう、ことねさんの家にいることは知ってたけど。
俺はこっそり跡をつけてしまう。

すると、ことねさんは真っ先に酒のコーナーへと足を運んでいた。

「みて!この酒美味そうじゃない?」

俺は肩透かしを食らう。
いや、ただ酒を買いに来ただけかい!
よく見ると赤ら顔で明らかにシラフではなかったのでいつも通り元気なようだった。
なんだ、俺がいなくても余裕そうだなと少し寂しくさえ感じる。

「……さやか、今日の目的忘れたの?」
「あ!そうだった。あれだよね!あれ!」

そういって、笛吹さんはお菓子のコーナーへとまるでアラレちゃんのように両手を広げて天真爛漫に駆け寄る。
すげぇだろ、この人25なんだぜ。
公衆の面前ではやめてくれと思って会ってもないのに恥ずかしくなってる俺がいた。

「えーっと、ポテチとチョコと……あとねるねるねるね!痛い!」
「……なんであんたはそう意識が別のことに向くかな。小説家ってみんなそんな感じなの?」
「ちょ!それは全国の小説家さんに失礼だよ!私なんかと一緒にしたら可哀想!」

あ、笛吹さんそういう自覚はあったのね。
なんというか、自分に見せない面ばかりかと思ったら満たれた光景に溢れていた。
それを見て、少しだけ安心している。

それにしても、結局彼女らは何しに来たんだろう。

「ほら、チョコの原料がこれね。」
「おおー、可愛い!この銀色の玉、パチンコ玉みたい。」

チョコの飾りを見てはしゃぐ光景は微笑ましいのにいちいち発言が可愛くないのは彼女らしいといえば彼女らしかった。

でも、それらの流れを見てふと気がつく。
あ、もしかして……バレンタインチョコ?
そういえば明後日バレンタインデーだったな。

「あとは……型を買って終わりかな。」
「……飯田くん喜ぶといいわね。」

どうやら、間違いなさそうだった。
もしかしたら俺が居なくてもことねさんと一緒に暮らした方がいいかもと思ってたのは俺だけだったとホッとしてしまう。

ん?なんで俺ホッとしてるんだっけ?

まあいいや、近いうちに彼女に会えるのだ。
これ以上追っても野暮かもしれない。
そう思ってその場を去ろうとした時だった。

「……どう?久しぶりにさやかは。」
「え。」

後ろにことねさんがいた。
そして、まるで全てを見据えていたかのように彼女は冷たくも向き合うような視線でこちらを見ていた。

「いつから気づいてたんですか?」
「……柱に隠れたあたりからずっと見てたからそうかなと思ってね。」

いや、最初から気づいてたのか。
恥ずかしくなるからやめて欲しいのだが。

「笛吹さん、ちゃんと飯食えてるようで何よりです。」
「……ええ、図太いほど食うわね。」
「なんか、すみません。」
「……いいのよ、まあ彼女もあんな感じだから気長に待っててね。近いうちに返すから。」

返すってそんな動物みたいに。

「すみません、ほんと色々お世話になって。」
「……いいのよ、飯田くんも困ったら私にも相談してね。」
「ありがとうございます!じゃあ……あとは頼みます。」
「……うん、また。」

俺も彼女を信頼して、その場を去って行った。
そして、帰り道に俺はスマホを取りだしてある人物に電話をかけた。

「もしもし?」
「おー!直輝、お疲れ様!今暇?」
「……6時間ほど龍に勉強でボコボコにされてるとこだよ。」
「なんだそれ!俺も行くわ!」
「いや来んなし。」
「いいじゃん!俺も今は頑張りたい気分なんだよ!」
「母ちゃんみたいだけだろ?」
「まあそれもある!彼女は憧れであり癒しだからな!」
「そう言われる子供の身にもなってくれ。」


安心した俺は、自分なりの一日を過ごすことにする。
今は学生らしく過ごして、彼女が帰るのをゆっくりと待つとしよう。
冬の道は、少しだけ残雪が道路脇に泥が入り交じり縁石のようになっている。

1歩、また1歩と歩くと太ももとつま先が一際寒かった。
でも、寒波は明後日で終わりまた暖かい日が近くなる予報とのことだった。

それを静かに、楽しみに待つように俺は道をゆく。
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