326 / 369
酒とタバコとバレンタインデー
5話
しおりを挟む
「お帰りなさいませ~!ご主人様!!」
「おおー、ことねちゃん!可愛い子だね、新人かい?」
甘い匂いが漂うメイド喫茶。
そこで私こと笛吹さやかはそこにいた。
「そうなんですよ!じゃあ……自己紹介!」
「し……新人メイドのふぇで~す!よろしくお願いします!」
し……死にたい。
私はなぜこんな所でメイド服を来ているのかと言うと……それは昨日の出来事だった。
☆☆
「…そろそろバレンタイン4日前だし……そろそろチョコでも買おうかしら。」
「えへへ~、とびっきりのやつ作るぞ!」
「……そうね、買い出しも行かないとね。」
私たちはバレンタインのチョコを作ることになって、いよいよその計画を進めようとしていた。
「……えっと、何作ろうかしら?」
「んー、いざ作ると何も思い浮かばないね。お互い女子力皆無だからな。」
「……一緒にしないでくれる?」
さりげなく酷いな。
きっと女子力皆無な事実を回避したいのかもしれない。
「んだよぉ!つーか……ことねぇは誰に作るんだよ!!」
「……そんなの、し……しごと仲間に決まってるじゃない。」
ことねぇは少しだけ目を逸らす。
あれ?いつもの毅然とした態度はどこいった?
「ほんとに?」
「……ほんとよ。」
「もしかして、男の人にもあげるの?」
「……(ギクッ)あげない。」
今ギクッて挙動していた。
表情は明らかに平然を繕っていた。
「……逆にあんたは誰にあげるのよ。」
「えー、編集長とれんれんに決まってるじゃん。あ、男の人だよ。」
「……あんた、いい性格してるわね。」
「まあいいじゃん、お互いアラサーなんだしそういうのもひとつやふたつあるに決まってるし、さーて!私の財布いくら入ってるかなー!」
財布を開けると数枚小銭が入っていた。
10円が4枚と、5円が1枚、そして1円玉が4枚の49円しか無かった。
「あ……あれ?おかしいなー、この間まで4万円くらいあったはずなんだけど。」
「……いや、あんたこの前酔っ払ってパチンコにお金費やしてたじゃない。」
「そだっけ?」
「……飯田くんがあなたの口座を管理する理由、ちょっとわかったかも。」
「どうしよう……ことねぇ、お金が無いよ!お金貸して!」
「……嫌よ、あなたもう何回か私の貸した金踏み倒してるもん。」
どうやら、酔っ払ってる間にことねぇに幾つか借りてた事実も発覚した。
どうしよう、でもお金を取りにれんれんに連絡するのもなんか違う気がする。
「どうしよう!ことねぇ!」
「……タ〇ミー使ったら?あとUb〇r。」
「そんなの私がやったらミスを連発したりして死ぬわよ!社会不適合者舐めんな!」
以前私が売れる前も幾つかバイトはしてたけど遅刻したり、仕事を覚えなかったりで1週間以内にクビになっていた。
恐らく人の言うことを聞くことが出来ないのかもしれない。
「……仕方ないわね。じゃあ別の方法考えてあげる。」
「まじ?ことねぇ、ほんと頼りになる!」
「……ふふ。まあ楽しみにしてて。」
☆☆
こうして、翌日私はことねぇにメイド服を着せられ、メイクとヘアメをして今に至るのだ。
こ……この服スカートの裾も短い。
男たちがニヤニヤしてる姿を見てゾッとしてしまう。
こんな公開処刑みたいなことを毎日してるのかと思ったらことねぇのことを少し尊敬しそうでもあった。
「ふぇちゃんは、趣味とかあるの?」
お客様……もといご主人様からそんなことを聞かれる。
どうしよう、なんて答えれば正解かな?
「んー、酒とパチンコ?」
「おお!!」
40代くらいの男3人が歓声を上げていた。
「へー!お酒強いんだ!何飲むの?」
「えっと……普段金ないから鬼ころし飲んでます!」
「マジか!ふぇちゃんめっちゃおもろいやん!この子推すわ!」
「そうだな!ふぇちゃん界隈つくろう!」
……どうしよう、思いのほか男たちは大ウケだった。
普段公園で1人のみしてる時は見向きもされないのに、メイド服を着てるだけでキャラとして確立してしまうらしい。
「ふぇちゃんいいわ~!この子とチェキ頼も。」
「俺も俺も!」
そうオーダーされたので、私は追加料金のオプションでチェキを撮ることになった。
チェキ1枚で700円。
いかん、下手すれば小説並じゃん。
人ってこういうものにも金使うんだな。
何枚か写真を撮り終える。
「ことねぇ、チェキってどうすればいいの?」
「……この写真にありがとう!みたいな感じで文字書いて。」
「んー、なるほど……よく分からないけどわかったー。」
そういって、私はチェキにサイン会のサインを書いて渡す。
スマンがこれしか書けないんだよな。
それをさっきのおじさんたちに渡すと大喜びだった。
「すご!なにこれサインじゃん!」
「え、なんかやってたりする?」
どうしよう、文字書くだけで褒められる。
単発バイトだと、使えねぇだのいらねぇとかで最後罵倒されてたのに……なんて良い職場なのだろう。
「そうですね~ちょっと小説を。」
「「「小説??」」」
おじさん達は目を丸くしていた。
どうやら、私は普通の人には情報量が多いみたいだ。
「へぇ~!すごいじゃん!」
「だな!俺たちなんて会社の課長してるしみったれたおっさんだから尊敬するよ!」
「え、出版とかしてるの?」
「まあ一応……。」
多分ここで正体はタブーかもしれない。
編集長によると私は知名度が高いから少しでもしくじれば株価が傾くとか色々いってたから余計なことは言わなくていいだろう。
「いやー!俺達も若い頃は会社立ち上げようとかやってたのにな~。」
「だな……家族とかできると中々できないもんだ。」
「ふぇちゃんの作品は……結構売れてるのか?」
「まあ……ぼちぼちですね。良い作品を作ると、つねにそれよりもいいもの作らなきゃとか、色んなプレッシャーに押しつぶされそうです。」
つい、少しだけ本音で話してしまう。
ただの客だと思ってたけど、人として見るととても話しやすくていい人たちだった。
「そうなんだな。」
「でも……ふぇちゃんはいいよ!そのキャラがいいよな!たった数十分でも俺たちはこうしていい酒を飲めてるから、きっといい作品書いてるんだろ!」
「じゃあ……もう一杯頼むか!ふぇちゃんが成功できることを前祝いで……!」
そういって、男たちは酒を注文して乾杯していた。
他にもたくさんの人とも話すけど、とても良い刺激だった。
たしかに私は社会人としてはダメなのかもしれない。
オーダーもろくに覚えられないし、接客もめちゃくちゃだ。
でも、ひとつの事を貫くとそれだけで他の人に無いものを持っていると思い知らされた。
気がついたら、忙しくなってきて仕事はとうとう終わりを迎えてしまった。
「あー!めっちゃ楽しかった!」
「……色々ツッコミどころ満載だったけど、お陰でドリンクとか売れてすごく助かったわ。」
「うん!あ、店長……それで給料は。」
「そうだったわ、はい……これ。」
こうして、ことねぇから封筒を渡されてにこにこしてみる。
意外と汗水流して稼いだ金というのも悪くないものだ。
さーて、いくら入ってるのか……。
しかし、渡されたお金は2000円しか入ってなかった。
「あ……あれ?ことねぇ~!少ない、ちょっと少なすぎない?」
「……いや、正当よ?」
「いやいや!あんたの店時給そこそこ高いの見たよ!多分1万円は余裕で超えてたと思うんだけど!」
「ほら、あなた私に借りがあったじゃない?そこを天引きさせて、チョコだけを買えるお金は払っておきました。」
「鬼だ!ここに鬼がいる!!」
「……あんたね、良くもそんな口きけるわね。」
こうして、閉店されたお店の中で私たちの声がどこまでも響き渡る。暗闇の中ほんのりとオレンジ色の蛍光灯が照らしていた。
しかし、私の心は不思議なくらい満たされていた。
たくさんの人に出会い、話をして知らない自分の視点を見ることができた。それくらい楽しく過ごせた1日だったのだから。
ともあれ、きっとこの2000円を酒やパチンコに費やすことはないだろう。
このお金で、れんれんに喜んでもらいたいから。
「おおー、ことねちゃん!可愛い子だね、新人かい?」
甘い匂いが漂うメイド喫茶。
そこで私こと笛吹さやかはそこにいた。
「そうなんですよ!じゃあ……自己紹介!」
「し……新人メイドのふぇで~す!よろしくお願いします!」
し……死にたい。
私はなぜこんな所でメイド服を来ているのかと言うと……それは昨日の出来事だった。
☆☆
「…そろそろバレンタイン4日前だし……そろそろチョコでも買おうかしら。」
「えへへ~、とびっきりのやつ作るぞ!」
「……そうね、買い出しも行かないとね。」
私たちはバレンタインのチョコを作ることになって、いよいよその計画を進めようとしていた。
「……えっと、何作ろうかしら?」
「んー、いざ作ると何も思い浮かばないね。お互い女子力皆無だからな。」
「……一緒にしないでくれる?」
さりげなく酷いな。
きっと女子力皆無な事実を回避したいのかもしれない。
「んだよぉ!つーか……ことねぇは誰に作るんだよ!!」
「……そんなの、し……しごと仲間に決まってるじゃない。」
ことねぇは少しだけ目を逸らす。
あれ?いつもの毅然とした態度はどこいった?
「ほんとに?」
「……ほんとよ。」
「もしかして、男の人にもあげるの?」
「……(ギクッ)あげない。」
今ギクッて挙動していた。
表情は明らかに平然を繕っていた。
「……逆にあんたは誰にあげるのよ。」
「えー、編集長とれんれんに決まってるじゃん。あ、男の人だよ。」
「……あんた、いい性格してるわね。」
「まあいいじゃん、お互いアラサーなんだしそういうのもひとつやふたつあるに決まってるし、さーて!私の財布いくら入ってるかなー!」
財布を開けると数枚小銭が入っていた。
10円が4枚と、5円が1枚、そして1円玉が4枚の49円しか無かった。
「あ……あれ?おかしいなー、この間まで4万円くらいあったはずなんだけど。」
「……いや、あんたこの前酔っ払ってパチンコにお金費やしてたじゃない。」
「そだっけ?」
「……飯田くんがあなたの口座を管理する理由、ちょっとわかったかも。」
「どうしよう……ことねぇ、お金が無いよ!お金貸して!」
「……嫌よ、あなたもう何回か私の貸した金踏み倒してるもん。」
どうやら、酔っ払ってる間にことねぇに幾つか借りてた事実も発覚した。
どうしよう、でもお金を取りにれんれんに連絡するのもなんか違う気がする。
「どうしよう!ことねぇ!」
「……タ〇ミー使ったら?あとUb〇r。」
「そんなの私がやったらミスを連発したりして死ぬわよ!社会不適合者舐めんな!」
以前私が売れる前も幾つかバイトはしてたけど遅刻したり、仕事を覚えなかったりで1週間以内にクビになっていた。
恐らく人の言うことを聞くことが出来ないのかもしれない。
「……仕方ないわね。じゃあ別の方法考えてあげる。」
「まじ?ことねぇ、ほんと頼りになる!」
「……ふふ。まあ楽しみにしてて。」
☆☆
こうして、翌日私はことねぇにメイド服を着せられ、メイクとヘアメをして今に至るのだ。
こ……この服スカートの裾も短い。
男たちがニヤニヤしてる姿を見てゾッとしてしまう。
こんな公開処刑みたいなことを毎日してるのかと思ったらことねぇのことを少し尊敬しそうでもあった。
「ふぇちゃんは、趣味とかあるの?」
お客様……もといご主人様からそんなことを聞かれる。
どうしよう、なんて答えれば正解かな?
「んー、酒とパチンコ?」
「おお!!」
40代くらいの男3人が歓声を上げていた。
「へー!お酒強いんだ!何飲むの?」
「えっと……普段金ないから鬼ころし飲んでます!」
「マジか!ふぇちゃんめっちゃおもろいやん!この子推すわ!」
「そうだな!ふぇちゃん界隈つくろう!」
……どうしよう、思いのほか男たちは大ウケだった。
普段公園で1人のみしてる時は見向きもされないのに、メイド服を着てるだけでキャラとして確立してしまうらしい。
「ふぇちゃんいいわ~!この子とチェキ頼も。」
「俺も俺も!」
そうオーダーされたので、私は追加料金のオプションでチェキを撮ることになった。
チェキ1枚で700円。
いかん、下手すれば小説並じゃん。
人ってこういうものにも金使うんだな。
何枚か写真を撮り終える。
「ことねぇ、チェキってどうすればいいの?」
「……この写真にありがとう!みたいな感じで文字書いて。」
「んー、なるほど……よく分からないけどわかったー。」
そういって、私はチェキにサイン会のサインを書いて渡す。
スマンがこれしか書けないんだよな。
それをさっきのおじさんたちに渡すと大喜びだった。
「すご!なにこれサインじゃん!」
「え、なんかやってたりする?」
どうしよう、文字書くだけで褒められる。
単発バイトだと、使えねぇだのいらねぇとかで最後罵倒されてたのに……なんて良い職場なのだろう。
「そうですね~ちょっと小説を。」
「「「小説??」」」
おじさん達は目を丸くしていた。
どうやら、私は普通の人には情報量が多いみたいだ。
「へぇ~!すごいじゃん!」
「だな!俺たちなんて会社の課長してるしみったれたおっさんだから尊敬するよ!」
「え、出版とかしてるの?」
「まあ一応……。」
多分ここで正体はタブーかもしれない。
編集長によると私は知名度が高いから少しでもしくじれば株価が傾くとか色々いってたから余計なことは言わなくていいだろう。
「いやー!俺達も若い頃は会社立ち上げようとかやってたのにな~。」
「だな……家族とかできると中々できないもんだ。」
「ふぇちゃんの作品は……結構売れてるのか?」
「まあ……ぼちぼちですね。良い作品を作ると、つねにそれよりもいいもの作らなきゃとか、色んなプレッシャーに押しつぶされそうです。」
つい、少しだけ本音で話してしまう。
ただの客だと思ってたけど、人として見るととても話しやすくていい人たちだった。
「そうなんだな。」
「でも……ふぇちゃんはいいよ!そのキャラがいいよな!たった数十分でも俺たちはこうしていい酒を飲めてるから、きっといい作品書いてるんだろ!」
「じゃあ……もう一杯頼むか!ふぇちゃんが成功できることを前祝いで……!」
そういって、男たちは酒を注文して乾杯していた。
他にもたくさんの人とも話すけど、とても良い刺激だった。
たしかに私は社会人としてはダメなのかもしれない。
オーダーもろくに覚えられないし、接客もめちゃくちゃだ。
でも、ひとつの事を貫くとそれだけで他の人に無いものを持っていると思い知らされた。
気がついたら、忙しくなってきて仕事はとうとう終わりを迎えてしまった。
「あー!めっちゃ楽しかった!」
「……色々ツッコミどころ満載だったけど、お陰でドリンクとか売れてすごく助かったわ。」
「うん!あ、店長……それで給料は。」
「そうだったわ、はい……これ。」
こうして、ことねぇから封筒を渡されてにこにこしてみる。
意外と汗水流して稼いだ金というのも悪くないものだ。
さーて、いくら入ってるのか……。
しかし、渡されたお金は2000円しか入ってなかった。
「あ……あれ?ことねぇ~!少ない、ちょっと少なすぎない?」
「……いや、正当よ?」
「いやいや!あんたの店時給そこそこ高いの見たよ!多分1万円は余裕で超えてたと思うんだけど!」
「ほら、あなた私に借りがあったじゃない?そこを天引きさせて、チョコだけを買えるお金は払っておきました。」
「鬼だ!ここに鬼がいる!!」
「……あんたね、良くもそんな口きけるわね。」
こうして、閉店されたお店の中で私たちの声がどこまでも響き渡る。暗闇の中ほんのりとオレンジ色の蛍光灯が照らしていた。
しかし、私の心は不思議なくらい満たされていた。
たくさんの人に出会い、話をして知らない自分の視点を見ることができた。それくらい楽しく過ごせた1日だったのだから。
ともあれ、きっとこの2000円を酒やパチンコに費やすことはないだろう。
このお金で、れんれんに喜んでもらいたいから。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる