僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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雪と温泉とウィンタースポーツ

11話

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勉強を終えると母ちゃん達が浴衣に着替えて戻ってきた。

「おおー!なんていい光景なんだ……!」
「飯田、おまえは節操がないな。」

全く、こういう時にも困ったやつだ。
俺は静かにため息をしてお茶を飲む。

「直輝くん!私の浴衣どう?」

特に舞衣が髪をかきあげたポーズで俺にアピールをしていたけど、物理演算の数式で脳みそを圧迫してる俺に反応する元気はなかった。

「……どうって。」
「な!?こーんなに可愛い彼女が浴衣着てるんだよ!?ノーリアクションはさすがに傷つくよ。」
「そだぞ、なおっち……こういう時は似合ってるとか言ってあげるんだぞ?そういう社交辞令なんだ。」
「そっか、ありがとう龍!舞衣、似合ってる……ぶほっ!?」
「バカーー!言われてから褒める奴がいるかー!」

そう言って舞衣にビンタされて少しだけ体が後ろに飛ばされる。
ひどい!親父にもぶたれたことないのに!

「今のはなおっちが悪いな。」
「龍ー!分かって振ったろ!」
「メンゴメンゴ、いま物理演算で脳が埋まってるんだ。」
「それはこっちも同じじゃあ!」

龍と取っ組み合いになるけどあっさり負けてしまう。
俺の方が若干背も体重も上なのにこのフィジカルはどこから来てるんだろう。

落ち着くと、少し俯いた舞衣がやはり浴衣の感想を欲しいのかモジモジしていた。

「……すまん、ちゃんと見れなくて。黒髪と相まって綺麗だよ。」
「分かればよろしい。」

そう言って満更でもない笑顔でふんすと鼻息を鳴らしていた。
まあ、こういう愛嬌も俺としては好きなんだけどね。

「じゃあ、そろそろご飯にする?」
「だな、母ちゃん!俺らは飯食ったら風呂入るわ。」
「了解!そしたら行こっか!」

俺たちは宿の食事をとる。
典型的な和食で米や魚の煮付け、野菜の漬物など質素ながら美味な味わいだった。
米は硬めに炊きあげていて、味が甘い。
味噌汁だって出汁が効いていて、味噌の香りが市販のものとは比べ物にならないほど強かった。

それだけでこの宿の料理に対する質が明らかに違った。

「お!サーモンだ!って……なんか塩っ気が足りない。」

瑞希はサーモンの刺身が好物なのか真っ先に手を出していたけど少しだけ不思議な顔をしていた。

「チビナス知らんのか?これ信州サーモンって言うらしいぞ。」

そんな瑞希に龍が話しかける。

「チビじゃねえし!山なのにサーモンとか訳分からんよ!」
「まあ聞け、このサーモン……実はニジマスとブラウントラウトの掛け合わせらしいんだ。要は……マスだ。」

俺は知らないから龍の豆知識をきいてやっぱりこいつ頭いいんだなと感心する。
龍は頭の回転も早いけど知識量がおおいからそういう所は勉強になるんだよな。

「え、マス?えーっと……マスとサーモンって何が違うんだっけ?」





対する瑞希は若干要領が悪いから混乱してしまった。
人それぞれ旅行の楽しみの違いがあっていいなと思った。

「いえーい!直輝飲んでる?」
「母ちゃん……酔ってるな。」

母ちゃんは日本酒が美味いのか既に出来上がっていた。
日焼けの褐色と浴衣が妙にマッチして色っぽいのだが、母親と認識すると本能的に拒絶感を感じなくもなかった。

「直輝良い匂いだ。」
「やめろ!まだ風呂入ってないんだから……は・な・れ・ろ~!」
「やだー!たまには親子の触れ合いも楽しんでよ。」
「だれか!変わってくれ、手に負えん!」

すると飯田が挙手を真顔でする。
その場の空気が凍りつく。

「直輝よ、羨ましいから変わってくれ。」
「……その、なんだ。おまえはちょっと自重した方がいいぞ。」
「なんでこういう時だけ冷静になるんだよ!遥香さんもなんとか言ってくださいよ!!」
「えーっと……その、飯田くんはいい子だけど、ごめん!」

酔ってる母ちゃんが急にシラフにもどる。
でもお陰で離れてくれたのでなんとか平和を取り戻した。

「もう~遥香さん飲み過ぎですよ。」
「……ごめん。」

そう言って彩奈が間に入ってくれた。
ナイスだ!こういう時の彩奈の空気の読める力って本当に頼もしい。

「ちょっと遥香さん部屋に運ぶね。」
「すまん、彩奈たのめる?ちょっと悪い酔い方してるから。」
「大丈夫だよ~。」

そう言って彩奈が食堂を出る。
俺たちはその後はゆっくりと和食を味わいながら談笑をしていた。

舞衣が暴走し、俺がツッコんで、飯田がふざけて、龍が笑っていて、瑞希は怒っていた。
こんなに非日常を楽しんだのに俺たちは結局のところいつも通りだった。

外は雪で吹雪いてるけど、暖炉と和室とこの空気が気づかせないほどに楽しんでいた。
俺はずっと孤独だったけど、こういう楽しみ方も素敵だと感じた。

また、みんなでこんな旅をできたらどんなに幸せだろう。

「なあ、みんな……次はどこに行こっか。」

俺がふとみんなにそんな問いかけをする。
この晚では答えは出なかったけど、それを考えるのはとてもたのしかった。

そして、その話が終わる頃には吹雪は止んでいて月明かりが美しく雪山を静かに照らしていった。
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