僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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月下に灯るメイド長

4話

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無機質なこの部屋で私達は待機をしている。
ここは、約3ヶ月後にはお店になる予定の場所だった。
今日はここでYouTubeの撮影を兼ね面接をする。

部屋には私たちのテーブルと面接を受ける子たちのテーブル、そしてカメラの機材が置かれていてむしろ面接官の私でさえ緊張している。

「いやー!面接なんて楽しみですね!」
「………緊張してきた。」
「ことねさんは現役の頃は大人数でライブしてたりいつもテレビの撮影とか慣れてるから大丈夫ですよ!それに採用か決めるのはことねさんだからしっかりしてください!」

そう言って舞衣ちゃんは頬を膨らませる。
確かに彼女の言う通りだ。
採用は私がする、つまりは全責任が私にかかるとの事で……。

「……ねえ、台本は。」
「んなもんないですよ。面接ですよ、少しパワハラ気味の方が盛り上がると思うのでお願いします!ことねさん黙ってればMっ気のある子なんてイチコロなんですから!」

そういって彼女はくるっと周りグッドサインでウインクをしていた。……それにしても、Mっ気?
彼女は時折何を言ってるのか分からない時がある。

「大丈夫ですよ!頑張ってこっちもバックアップします!」
「……あきらさんも、本業で忙しいのにありがとうございます。」

前回同様あきらさんにはカメラマンをお願いすることにした。料理人の彼にこんなこと頼むのは本当に迷惑だと思うけど、彼は快く承諾してくれた。
その表情には一切の曇りは無いのが逆に申し訳ない…。

「すみませーん!面接に来たんですけど!」

すると、入口から聞きなれない声が聞こえる。
若い女性2人が入ってきたようで、面接に来たのが一発でわかった。
心の準備はまだまだ出来てないけど、私はもう時間が残っていないらしくとにかく無意識に動くことにした。

「……あ、ごめんなさい。こちらの方におかけになってね。」

「きゃー!ことねさんだ!」
「わたし、前のお店から推してたんですよ!握手お願いします!」

「え……?は、はい。」

若い女性2人に握手を求められたから仕方なく握手をする。
2人は嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていて、私も少しだけ嬉しくなっていた。

しかし、そんな時だった。
ガンッと椅子を蹴飛ばす激しい音が聞こえて身体がビクッとする。

「2人とも!何しに来たの!」
「……え。」
「これじゃあ、ただの握手会じゃない!ことねさんは今日は一緒にメイドを出来る仲間を探しに来たの!遊びに来たなら帰ってちょうだい!」

舞衣ちゃんは鋭く睨みつけると若い女の子がビクついて座って言った。

「す……すみません!」
「私、ことねさんと働きたくてきました!」

「……うんよろしい。2人とも履歴書を出して待機してて。」
「「はい!!」」

私はポカーンとしてしまった。
え、舞衣ちゃん……私は別にファンでも良いと思ったんだけど。
まあでも2人ともなんか気合い入ったし良いのかな?
もちろん、この一部始終はカメラに収まっていた。

「……ちょっと、舞衣ちゃん。」
「はい。」
「……ちょっと圧が強いんじゃない?今の子って繊細って聞くし。」
「はあ……ことねさん、今日の面接は企画でもあるんですよ。動画で熱感が伝わらなかったらあっという間に淘汰されてしまいますよ!」
「……確かにそうかも。」

17歳にあっさり論破されてしまった。
私もそろそろ年齢が年齢だし決断力が必要かもしれない。

さて、面接の履歴書と採点のシートをみる。
今回はいくつかの項目で10点満点で採点して合計点数で採用の可否を決める仕組みにする。

・ルックス
・トーク
・特技キャラ
・適正
・伸び代

ちなみに採点のシートも全て舞衣ちゃんが仕入れてきた。若い子って本当に行動力あるな。
どこから仕入れてきたのだろうと思いつつも確かにメイドとしてのセンスとしては的を射ていた。

「じゃあ、面接始めますか!」
「……そうね。」

最初の女の子の履歴書を見る。
実はここが平成一桁の私にとっては重要なところだ。
例えば文字の書き方で仕事に真摯に取り組めるかなど、こういったひとつのところで仕事のセンスが問われたりするからだ。

例えば文字が大きい子は自信があるし、丁寧な子は一つ一つの仕事を丁寧にこなせる。丸くて可愛い文字の子は自分の見せ方や演技が上手かったりする。

ふむ、名前はメアちゃんか。
とても可愛い名前である。

「……それではお入りください!」
「はい!」

メアちゃんは少し緊張しながらぎこちない動きで椅子の前に立つ。
そして、私が座るように指示をしたら静かに座った。

「……まずはお名前を教えてください。」
「長谷川芽亜です!よろしくお願いします!」
「……舞衣ちゃん、今の本名まずいけどカットとかピー音ってつけれるの?」
「ことねさーん?今度一緒にYouTubeとは何かから教えますね。とにかく、気にしなくて大丈夫です!」

いきなりしょうもない所を聞いたら舞衣ちゃんが笑顔なのに頬に怒りマークが見えてしまった。
わたしも、YouTubeつかうなら研究しないといけないのかもしれない。

「……あ、ごめんなさい。えっと、どうしてうちで働きたいのかな?」

そう、ことね……考えなさい。
今あなたは面接してるのよ。
そう言い聞かせながらポンコツな本性がバレないように仕切り直す。
まずは動機を聞くとしよう。

「ずっと憧れてたんです!私、高校で虐められて中退して……でもことねさんをみてから頑張って通信でも通いながら頑張ってます!ダメダメな私を本気で変えたいんですよ!」

若いのに……なんて健気な。
歳をとると目頭が熱くなるのが早くなる。
きっとこの子もかなり苦労してきたのだろう。

「メイド喫茶は……残酷だけどいじめが多い業界よ。私も物を隠されたりネットで悪口書かれまくった一人だけど大丈夫?それに貴方はことねさんに憧れてるけど、憧れは理解から最も遠い感情よ。今の時点だと貴方は採用基準には満たないわ。」

おいいいいい!!もう採用でいいじゃない!絶対いい子じゃないの!
なんでそんないきなりストレス耐性の低い子にそんな事言うの!一緒に成長するの手伝いたいのに……!

「大丈夫です!その覚悟でいます!」
「ほう?口だけではなんとでも言えるわ。」
「私は自分を変えたくて整形しました!それに、私は声が可愛いって言われるので配信とかしてます!毎日何時間も配信して喋るスキルは上げたのでこれを活かしたいんです!」

「……どうしようことねさん。私より向いてるかもしれないです。」
「……舞衣ちゃん、キャラがブレブレすぎるわよ。」

まあでも、自分変えたくて顔変えて……自分なりに長所を見つけて行動してるのだ。
16歳にしてはよくやってる方だと思う。

私は、最後にひとつ質問を投げる事にした。

「……ねえ、メアちゃん。最後に聞いていい?」
「は……はい!」
「……メイド喫茶は……好き?」
「大好きです!!あの雰囲気とか、もてなす感じとか……私もやってみたいです!」





彼女は食い気味に間髪入れずに返答をした。
結局のところ、この質問に尽きる。
可愛いとか喋れるとかよりも、この仕事を好きでやれるかどうかの方が100倍大事だ。

「……うん、分かりました。今日はここまでです。合否の判定は3日以内にメールでお伝えします。お疲れ様でした。」
「本日はありがとうございます!全力で頑張りますのでよろしくお願いします!」

若いながらいいなって感じた。
何ができるか根拠は無いけど、自信で突っ走る感じ。
私も最初はそうだった。

彼女の採点をする。
私たちのシートでは彼女の合否の欄に採用と書いていた。

「さて、まだまだ1人目ですし2人目行きますか!」
「……疲れてきちゃった。」

私は静かにペットボトルの水を飲む。
あと何回か話すと思うと少しだけ気が滅入るけど、でも私も緊張が少しだけほぐれていた。

そう、この子達をプロデュースするのは私だ。
きちんと一つ一つ、この時間に責任を持つとしよう。

「次の方、お入りください。」

私は、静かに次の女の子を呼んだ。
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