僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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春と挫折と宮古島

3話

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始業式が終わり、俺は体育館を出た後に自販機のコーヒーを飲んで大きく伸びをした。
相変わらず校長先生の話って長くて不思議と頭に入ってこない。

恐らくほかの教師や生徒向けに平均化された結果あまり中身のない話が長々と続くような感じがして、どうにもこの時間は好きになれなかった。

俺は一人でぼーっとしながらスマホを眺めていた。

「入塾模試……か。」

そう、俺は医学部に入りたいのだけど客観的な実力がよく分からなかった。
どうやら全国模試だと5月にやるらしく、それよりも事前に受けることができるので受けようかと悩んでいた。

そんな時だった。

「やば!虎ノ門だ!」
「絶対目合わせちゃダメよ……!」

周りの生徒たちがざわつく。
空気がピリつき、彼の周りだけ道が出来るようでそれだけでも彼の覇気が伝わってくるようだった。

どうやら危険人物と認識されてる彼が来ているようだった。

「おっす!なおっち!」
「龍……今登校してきたのか?」
「だってさ……始業式って時間の無駄じゃん?単位にならないし。」

彼は虎ノ門龍。
学校一の不良で僕の悪友のひとりだ。
顔が切れ長の目をしていて、顔が整っている。
まるで舞台俳優が目の前にいるかのようでもあった。

体型は思ったより小柄だけど、腕などは鍛えてるのもあってしなやかに仕上がっていた。特に腕や足は筋肉質で喧嘩が強いのも伺える。


「俺もコーヒー飲むよ。隣いいか?」
「もちろん。」






彼は喧嘩っ早さと腹黒さから彼の歩いた後にはトラブルが相次ぐという噂からまるで災害かゴジラのような扱いを受けていた。

そういえば去年、俺は彼と喧嘩をしてボコボコにされていた。
今ではこうして分かり合えて、キャンプやスキーをして勉強をする仲である。
(周りからはパシリ扱いされてるのは不本意だけど)

それに、彼とは1つ強い共通点があった。

「どうだ?苦手な英語と生物は覚えたか?特に臓器の勉強は医学部でも頻繁に出るぞ。」
「ちょっとずつ解けてきてはいるけど……まだむずかしいかもね。」

そう、彼は僕と同じ医学部を目指す同志だ。
彼は母親の死をきっかけに医者を目指し、不良をやりつつ必死に勉強を頑張って現時点でも志望の医学部から模試でA判定を貰っている秀才だった。
僕は、そんな彼に敬意を示しよく勉強を見てもらっている。

「お前さん……模試は?」
「全国共通模試なら何度か。」
「医学部の模試はまだなんだな。」
「そうなんだよ、だから入塾模試やろうと思っててさ」
「お?いいじゃん、基礎力の確認になるぞ。つうか、ほかの医学部生は去年の夏からもう進めてるからむしろ頑張った方がいいかもな。」

同い年でありながら医学部の勉強に関しては彼は大先輩だ。
彼の言葉は刺がある様だけど、きちんと事実に基づいて話をしているので彼は医者の適性は既に持ち合わせている気がした。

俺はスマホで来週模試を受けれることを知って申し込み画面まで進めることにした。
そして、申し込みを終えてコーヒーを飲み干す。

「んじゃあ、俺も受けてみっかな。」
「いいのか?」
「ああ、メンタルトレーニングにもなるしな。」
「なんかそれだけでも心強いよ。」

彼も同じ手続をして一通り終えると予鈴がなった。
次の授業が始まるという合図でもあったのでそれを聞いて少し焦る。

「やべ、そろそろ戻らねえと。じゃあな……龍!」
「おう!」

そういって、缶をゴミ箱に捨てて戻ろうとしたその時だった。

「ああ……なおっち。ひとつ忠告しておくよ。」
「え?」
「何があっても気を強くもっとけ。」

……どういうことだろう?
僕は確かにまだまだ勉強時間が足りてないとはいえ……A判定をとっている彼に見てもらっているから少しは戦えるはずなんだけど。

「まあいいや、わかったよ。」
「お前はな…まあ、またあとでな。」

そう言って俺たちは解散する。
実はこの時の彼のメッセージはその先の自分に向けてのアドバイスだとは、知る由もなかった。

☆☆

キーンコーンカーンコーン……

「それでは、授業を終わります!」
「ありがとうございました!」

3年生の授業はそんなに難しくなかった。
というのも、偏差値がそんなに高くないのと既にこの範囲はひと通り勉強していたので俺は授業の開始に配られた問題はひと通り解き終わってしまっていた。

まあ、去年は夏期講習とかも行ってたりしたから少しずつだけど成長が現れて俺は少し得意になっていた。

春の日差しが心地よく、俺の気持ちを余計に緩ませる。

「直輝くん!ご飯食べよ。」
「ああ……そうだな。」

俺たちはいつも同じメンバーで飯を食べる。
俺、舞衣、飯田、そして……。

「私も混ざっていい?瑞希と一緒にさ。」
「ああ……彩奈もか!久しぶりにみんなと集まれるね。」
「だね!みんなで野沢温泉スキー場行って以来だからね!」

クラスメイトの川崎彩奈と上原瑞希も一緒に机を寄せて食べていた。
彼女らも去年仲良くなってこうしていつも一緒のメンバーになっている。
去年は飯田と舞衣の3人だけだったのが随分賑やかになったものだ。

「いっただっきまーす!」
「え……舞衣、お重3つもひとりで食べるのか?」
「え、そうよ瑞希。」
「食べ過ぎだろ!!明らかに女子高生が食っていい量じゃないよ!」
「そんな、食べないと大きくなれないわよ?」
「おい!私がチビで貧乳って言いたいのか!?怒るぞ。」
「い……いや、そこまでは言ってないわよ。」

このように瑞希はまるでチワワの如くキャンキャンと吠える。でも、その光景も日常茶飯事というか……改めて学校が始まった気がした。

「私も負けないからな!ママ見たくスタイル抜群になるんだから!」
「別に今のままでも充分可愛いのに。」
「うるせえ!持たざる者は悩みが尽きないんだよ!」

こうして、俺たちの昼は賑やかに過ぎ去っていく。
この平和で幸せな時間が……いつまでも続くとは限らないことを知らずに俺はひと時の幸せに浸っていた。
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