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第8章 うちのメイド長はヘビースモーカー
12話
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チリリーン!
「ご主人様のおかえりです!」
「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」
今日もたくさんのご主人様(お客様)が来店される。
精一杯の仕事をしよう。
そして、ご主人様たちに喜んでもらおう。
そんな、わたしの「メイド人間」としての一日が始まる。
既に長蛇の列が並んでいた。
「ことねさん!今日もお願いします!」
「舞衣ちゃん、今日も期待してるわよ。頑張って。」
仕事中は友人の私たちも上司と部下だ。
会話は驚くほどドライになる。
しかし、それもまた仕事に集中していることを指していて心地が良かった。
とにかく、毎日小さく努力してみよう。
それだけだった。
そんな時、私はある声に耳を傾けてしまった。
「ええー!ゆきちゃん、埼玉の子なんだ!」
「そーなんですー!」
「え、今度飲みとかどう?俺奢るよー。てか、その後カラオケでも行こーぜ!」
「えー、最高!」
「じゃあ、これLINEのIDね!」
「ありがとうございます!今度の水曜とか空いてるんでぜひ。」
……明らかにメイド喫茶というより、合コンのような会話である。
そして、ホスト風の客からメモを貰った新人メイドのゆきちゃんはポケットに差し込んでいた。
これは、明らかな規則違反である。
そこそこ名前のあるメイド喫茶なのでイメージダウンにも繋がる行為だ。
そういった指導は……ウケているのだろうか?
「ゆきちゃん、ちょっといい?」
「はい?」
私は人目のつかない所で静かに指導をする様にしている。
それは、基本的に仕事スタイルには寛容だが、メイドさんのプライドを傷つけないなどの工夫があった。
「あの…さっきの会話を聞いてしまったんだけど、お客さんと個人的に会ってたりしてないよね?他のお客さんも少しひいてたわ。」
「えー、ダメなんですか?カッコよかったじゃないですか。」
「ダメよ、規則でも決まってる。最初のオリエンテーションで話す内容だったんだけど…分かりずらかったかな?」
時折、理解が浅い子がいたりする。
きっと指導不足なのだから我々の責任だ、分かっていないのなら教えるべきなのかもしれない。
「あ、ダルいです。聞いてたけど半分寝てました。」
「え?」
「てか、ゆきさん今日は全然チェキ(写真撮影オプション)獲得できてないですよね。もしかして、若くてあなたより人気のある私に嫉妬してるんですか?」
「いえ、そういうことじゃないの。そういうやり取りはプライベートでやって、仕事中は程よい距離感でして欲しいと言っているだけなの。」
どうして分かってくれないのだろう。
私の教え方が悪いのかな。
一先ず、話はこれで終わりにしよう。
お互い仕事がまだ沢山ある。
「わかったわ。とりあえず仕事に戻りましょ。まだ、結構チェキの指名来てるし対応しなきゃだもんね。」
しかし、彼女は食い気味に突っかかってきた。
「てか、ことねさんってメイド長って言われてるけど……時給のバイトっすよね。しかも、ちょっと歳を食っているだけの。そんな人が指導するとかダルいんですけど。」
少し、イラッとしてしまった。
たしかに事実なのだが、彼女の規則違反を先輩として教えてあげてるだけである。
「そこは今は関係ないわ。仕事戻らないと……。」
「ことねさん、絶対処女ですよね!なんか見てて分かります。」
「はしたないから舐めなさい。」
恥ずかしいけど、事実である。
事実に対しては感情的になるべきでは無いけど、流石に頭に血が上りそうだった。
部屋を出ようとしても彼女は何度も止めてくる。
「いやぁ!もうアラサーになって恥ずかしくないんですか?私の男紹介しますよ?ことねさんこそ、アラサーになってメイドなんかしてるより……風俗とかで働いたらどうですか?メイド喫茶なんてバイトでしょ?プロ意識とかキモいんで。」
彼女は声を荒らげて煽り出す。
なんかもう、顔も見たくなかった。
「仕事に戻りなさい、おしゃべりのために席を外してるわけじゃないわ。」
「あー!逃げたー!」
バタンと部屋を閉じ、私はもう一度笑顔に戻り接客や伝票管理をする。
まずは、座れるように下げ物をしてテーブルを拭く。
そして、待ってる人を案内した後に、出来た料理を運んで…運び終わったらオーダーを取る。
今日も私の仕事は絶好調
ーーーーーのはずだったが、少しずつ私の誇りであるメイド喫茶が歪んでいくのを感じた。
「ねえ、ことねちゃん?」
一人のご主人様(お客さん)が私を止める。
「いっちゃん……どうしたんですか?」
いつもの常連さんが目を細めてコソコソ話で話し出した。
「ことねちゃん……処女なの?寂しがってるってゆきちゃんがいっててさ。」
「ああ、デマですよ。」
かなりドライに返したけど、頭の血管がはち切れそうだった。あろう事か、私が最も大切にしているご主人様たちにもつまらないことを吹き込んであるのだ。
酷く、傷つけられてるのを感じた。
しかし、肝心のゆきちゃんがいない。
何をしてるのだろうとバックヤードに戻ると、彼女は料理の盛りつけをしていた。
しかし、出されるのは基準に満たない乱雑な盛りつけで、とても出せるものではなかった。
「ゆきちゃん、なにしてるの?料理の盛り付けなんて仕事は言われてないはずよ。」
「え??ことねさん、仕事の視野が狭いですね。」
「狭いとかじゃなくて、衛生的にも良くないのよ!盛り付けだって…あなた出していいと店長に言われた?」
「でも、注文がいっぱいあるじゃないですか。」
「いいの、貴方は接客や下げ物をやってください、こっちの仕事はあとはやるから。」
「えー、でも…ことねさんっていつも仕事やりっぱなしですよね、私いつも片付けてるんですよ。普段は言わないけど……今言ってあげます。」
「それ、やりっ放しじゃなくて仕事抱えながらフォローに入って、片付けはその担当の人に任せて仕事をしてるの。あなたには言ってないの!」
ああ言えばこう言う。
まさにその表現が似合う。
私は……久しぶりに声を荒らげてしまった。
だけど、今日は日曜日なので尋常じゃない量のご主人様が来る。
休み明けなのに…とても疲れた数時間だった。
そして、仕事が終わりの時間が近づく。
「ことねちゃん、ちょっと…。」
突如、店長が私を呼び出す。
なんだろうか。
先程ゆきちゃんを指導したロッカー室にたち、きっと指導が入るのかと私は姿勢を正した。
「ご要件とは…。」
「ゆきちゃんの事なんだけどさ、あの子色々と不満溜め込んでるからさ、もっと仕事手伝ってあげたりした方がいいかも。」
あまりにも的外れな発言に…私は怒りが沸騰しそうだった。
「すみません、店長。ゆきちゃんなのですが……彼女の言動は身に余ります。勝手にご主人様と連絡先を交換したり、勝手に私の情報のデマを流したり、料理の盛り付け出来ないのに乱雑に盛り付けたり…私はその都度指導をしているのですが、聞く耳を持ちません。」
処女がデマは少し盛ったが嘘は言ってない嘘は。
「いや~若い子がいると集客にいいんだよね。ことねちゃんは先輩なんだからさ、そこはちゃんと指導してよ、メイド長でしょ。あと、ゆきちゃんの言ってたとおりに今後ルールを変えていくからね。じゃあ…僕は帰るから。」
私は唖然としてしまい…少し時間を置いて心を落ち着かせてから、着替えることにした。
なぜ、店長は入ったばかりで仕事が出来なく問題が多い彼女に然るべき指導を怠っているのだろう。
私の大好きだったメイド喫茶は……私が感情を閉ざしていたから心地よく感じる仕組みができていたが、今少し広まった視野からすると、とても残酷なものだった。
私の…10年間はなんだったんだろう。
メイド喫茶のビルを出ると…舞衣ちゃんが待ち伏せしていた。
「舞衣ちゃん、珍しいわね?なんかあった?」
「ことねさん…実は財布がなくなったり、ものを壊される事が増えてて…。」
舞衣ちゃんは、いつもの元気な姿とは打って変わって…過呼吸気味だった。
そういえば、彼女は以前家庭環境などの要因で適応障害になったと聞いていたけど…またそれが再発したようだった。
「誰がやったのかしらね。」
「ゆきちゃんです。……でも、店長に話しても聞く耳を持ってくれませんでした。」
「ほんっと、無能な店長ね!私も今日は彼女の問題点をあげても聞いてくれなかったわ!能力の無い新人が主導権を握ってそれを看過してること自体がおかしいわ!」
「ことねさん…、ことねさんもそんな風に怒るんですね。」
おかしな人が得をして、まじめな人が損をする構図が放置されている、そんなの絶対おかしい。
私の可愛い後輩まで酷い目に合わせてる。
指導すべきポジションの上司が役割を果たしていない。
こんな仕組みの中で生きていたのかと思うと…おぞましくてならなかった。
もう、限界である。
「ねえ、舞衣ちゃん。」
「はい。」
「もし……舞衣ちゃんが良ければだけど…一緒にメイド喫茶を作ってみない?こんな仕組みの中で苦しんでいる人がいるの私は耐えられないわ。」
もちろん、彼女は高校生だ。
本来学業優先だし、将来の夢だってあるだろう。
そんな彼女とお店を作るだなんて提案は傲慢にも程がある。
しかし、彼女は目を丸くして、嬉しそうに話してくれた。
「私、やりたいです!ことねさんとなら……なんだって楽しいから。私、店長たちはもう信用出来ないですけど…ことねさんは信じてます。」
予想外の反応だった。
きっと、少し思い選択にドン引きされるのかとヒヤヒヤしていたら、彼女は受け入れてくれた。
私の夢は…少し大きくなった。
自分が満足するためだけではない。
こうして頑張りが報われない子が少しでも報われるようにしていくのだ。
私の久しぶりに流した悔し涙は地面にしたたり、落ちたところは少しだけ固くなっていた。
それが…雨降って地固まるとは行かないものの…小さく地に足が着く未来を導くように。
「ご主人様のおかえりです!」
「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」
今日もたくさんのご主人様(お客様)が来店される。
精一杯の仕事をしよう。
そして、ご主人様たちに喜んでもらおう。
そんな、わたしの「メイド人間」としての一日が始まる。
既に長蛇の列が並んでいた。
「ことねさん!今日もお願いします!」
「舞衣ちゃん、今日も期待してるわよ。頑張って。」
仕事中は友人の私たちも上司と部下だ。
会話は驚くほどドライになる。
しかし、それもまた仕事に集中していることを指していて心地が良かった。
とにかく、毎日小さく努力してみよう。
それだけだった。
そんな時、私はある声に耳を傾けてしまった。
「ええー!ゆきちゃん、埼玉の子なんだ!」
「そーなんですー!」
「え、今度飲みとかどう?俺奢るよー。てか、その後カラオケでも行こーぜ!」
「えー、最高!」
「じゃあ、これLINEのIDね!」
「ありがとうございます!今度の水曜とか空いてるんでぜひ。」
……明らかにメイド喫茶というより、合コンのような会話である。
そして、ホスト風の客からメモを貰った新人メイドのゆきちゃんはポケットに差し込んでいた。
これは、明らかな規則違反である。
そこそこ名前のあるメイド喫茶なのでイメージダウンにも繋がる行為だ。
そういった指導は……ウケているのだろうか?
「ゆきちゃん、ちょっといい?」
「はい?」
私は人目のつかない所で静かに指導をする様にしている。
それは、基本的に仕事スタイルには寛容だが、メイドさんのプライドを傷つけないなどの工夫があった。
「あの…さっきの会話を聞いてしまったんだけど、お客さんと個人的に会ってたりしてないよね?他のお客さんも少しひいてたわ。」
「えー、ダメなんですか?カッコよかったじゃないですか。」
「ダメよ、規則でも決まってる。最初のオリエンテーションで話す内容だったんだけど…分かりずらかったかな?」
時折、理解が浅い子がいたりする。
きっと指導不足なのだから我々の責任だ、分かっていないのなら教えるべきなのかもしれない。
「あ、ダルいです。聞いてたけど半分寝てました。」
「え?」
「てか、ゆきさん今日は全然チェキ(写真撮影オプション)獲得できてないですよね。もしかして、若くてあなたより人気のある私に嫉妬してるんですか?」
「いえ、そういうことじゃないの。そういうやり取りはプライベートでやって、仕事中は程よい距離感でして欲しいと言っているだけなの。」
どうして分かってくれないのだろう。
私の教え方が悪いのかな。
一先ず、話はこれで終わりにしよう。
お互い仕事がまだ沢山ある。
「わかったわ。とりあえず仕事に戻りましょ。まだ、結構チェキの指名来てるし対応しなきゃだもんね。」
しかし、彼女は食い気味に突っかかってきた。
「てか、ことねさんってメイド長って言われてるけど……時給のバイトっすよね。しかも、ちょっと歳を食っているだけの。そんな人が指導するとかダルいんですけど。」
少し、イラッとしてしまった。
たしかに事実なのだが、彼女の規則違反を先輩として教えてあげてるだけである。
「そこは今は関係ないわ。仕事戻らないと……。」
「ことねさん、絶対処女ですよね!なんか見てて分かります。」
「はしたないから舐めなさい。」
恥ずかしいけど、事実である。
事実に対しては感情的になるべきでは無いけど、流石に頭に血が上りそうだった。
部屋を出ようとしても彼女は何度も止めてくる。
「いやぁ!もうアラサーになって恥ずかしくないんですか?私の男紹介しますよ?ことねさんこそ、アラサーになってメイドなんかしてるより……風俗とかで働いたらどうですか?メイド喫茶なんてバイトでしょ?プロ意識とかキモいんで。」
彼女は声を荒らげて煽り出す。
なんかもう、顔も見たくなかった。
「仕事に戻りなさい、おしゃべりのために席を外してるわけじゃないわ。」
「あー!逃げたー!」
バタンと部屋を閉じ、私はもう一度笑顔に戻り接客や伝票管理をする。
まずは、座れるように下げ物をしてテーブルを拭く。
そして、待ってる人を案内した後に、出来た料理を運んで…運び終わったらオーダーを取る。
今日も私の仕事は絶好調
ーーーーーのはずだったが、少しずつ私の誇りであるメイド喫茶が歪んでいくのを感じた。
「ねえ、ことねちゃん?」
一人のご主人様(お客さん)が私を止める。
「いっちゃん……どうしたんですか?」
いつもの常連さんが目を細めてコソコソ話で話し出した。
「ことねちゃん……処女なの?寂しがってるってゆきちゃんがいっててさ。」
「ああ、デマですよ。」
かなりドライに返したけど、頭の血管がはち切れそうだった。あろう事か、私が最も大切にしているご主人様たちにもつまらないことを吹き込んであるのだ。
酷く、傷つけられてるのを感じた。
しかし、肝心のゆきちゃんがいない。
何をしてるのだろうとバックヤードに戻ると、彼女は料理の盛りつけをしていた。
しかし、出されるのは基準に満たない乱雑な盛りつけで、とても出せるものではなかった。
「ゆきちゃん、なにしてるの?料理の盛り付けなんて仕事は言われてないはずよ。」
「え??ことねさん、仕事の視野が狭いですね。」
「狭いとかじゃなくて、衛生的にも良くないのよ!盛り付けだって…あなた出していいと店長に言われた?」
「でも、注文がいっぱいあるじゃないですか。」
「いいの、貴方は接客や下げ物をやってください、こっちの仕事はあとはやるから。」
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突如、店長が私を呼び出す。
なんだろうか。
先程ゆきちゃんを指導したロッカー室にたち、きっと指導が入るのかと私は姿勢を正した。
「ご要件とは…。」
「ゆきちゃんの事なんだけどさ、あの子色々と不満溜め込んでるからさ、もっと仕事手伝ってあげたりした方がいいかも。」
あまりにも的外れな発言に…私は怒りが沸騰しそうだった。
「すみません、店長。ゆきちゃんなのですが……彼女の言動は身に余ります。勝手にご主人様と連絡先を交換したり、勝手に私の情報のデマを流したり、料理の盛り付け出来ないのに乱雑に盛り付けたり…私はその都度指導をしているのですが、聞く耳を持ちません。」
処女がデマは少し盛ったが嘘は言ってない嘘は。
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私は唖然としてしまい…少し時間を置いて心を落ち着かせてから、着替えることにした。
なぜ、店長は入ったばかりで仕事が出来なく問題が多い彼女に然るべき指導を怠っているのだろう。
私の大好きだったメイド喫茶は……私が感情を閉ざしていたから心地よく感じる仕組みができていたが、今少し広まった視野からすると、とても残酷なものだった。
私の…10年間はなんだったんだろう。
メイド喫茶のビルを出ると…舞衣ちゃんが待ち伏せしていた。
「舞衣ちゃん、珍しいわね?なんかあった?」
「ことねさん…実は財布がなくなったり、ものを壊される事が増えてて…。」
舞衣ちゃんは、いつもの元気な姿とは打って変わって…過呼吸気味だった。
そういえば、彼女は以前家庭環境などの要因で適応障害になったと聞いていたけど…またそれが再発したようだった。
「誰がやったのかしらね。」
「ゆきちゃんです。……でも、店長に話しても聞く耳を持ってくれませんでした。」
「ほんっと、無能な店長ね!私も今日は彼女の問題点をあげても聞いてくれなかったわ!能力の無い新人が主導権を握ってそれを看過してること自体がおかしいわ!」
「ことねさん…、ことねさんもそんな風に怒るんですね。」
おかしな人が得をして、まじめな人が損をする構図が放置されている、そんなの絶対おかしい。
私の可愛い後輩まで酷い目に合わせてる。
指導すべきポジションの上司が役割を果たしていない。
こんな仕組みの中で生きていたのかと思うと…おぞましくてならなかった。
もう、限界である。
「ねえ、舞衣ちゃん。」
「はい。」
「もし……舞衣ちゃんが良ければだけど…一緒にメイド喫茶を作ってみない?こんな仕組みの中で苦しんでいる人がいるの私は耐えられないわ。」
もちろん、彼女は高校生だ。
本来学業優先だし、将来の夢だってあるだろう。
そんな彼女とお店を作るだなんて提案は傲慢にも程がある。
しかし、彼女は目を丸くして、嬉しそうに話してくれた。
「私、やりたいです!ことねさんとなら……なんだって楽しいから。私、店長たちはもう信用出来ないですけど…ことねさんは信じてます。」
予想外の反応だった。
きっと、少し思い選択にドン引きされるのかとヒヤヒヤしていたら、彼女は受け入れてくれた。
私の夢は…少し大きくなった。
自分が満足するためだけではない。
こうして頑張りが報われない子が少しでも報われるようにしていくのだ。
私の久しぶりに流した悔し涙は地面にしたたり、落ちたところは少しだけ固くなっていた。
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