僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

文字の大きさ
104 / 369
第8章 うちのメイド長はヘビースモーカー

13話

しおりを挟む
ある日のメイド喫茶の一日。

私はお遊戯会(ダンス発表)が私中心に流れた。
何度うたった曲、何百回踊ったか分からないダンス。

完全に体の中の一部として動き出していて、無意識にテーブルを確認する。

ことねのイメージカラーは、落ち着きのあるブルー。
私のファンは私が踊る時に必ず青いペンライトを持っていく。

この時は、ここにいる全員が青を掲げていた。
踊りに激しさが増し、血脈が更に強さを増す。

フィニッシュの時に、私を中心にポーズが象られ歓喜の声が響き渡った。

「ことねちゃーん!君だけが推しだー!」
「お前が1番!お前が1番!」

ああ……こうして見ると私の普段の頑張りは無駄では無いと安堵してしまう。
しかし、私には大切な発表がもうひとつあった。

「みんなー!今日はお遊戯会に参加してくれてありがとうー!」

すると、ぱちぱちと拍手が拡がる。
今日も私は完璧だった。
完璧にメイド喫茶のメイドを演じていた。
私は……言わねばならない。
ポーカーフェイスの中に大きく心臓が握られるような感覚があり、胃酸が逆流しそうだった。

「突然ですが、大切なお知らせがあります。」

ザワザワ……
私は、盛り上がりがすごいのでちゃんと通るように少し無言になる……周りの焦燥から傾聴に変わるタイミングがある。

1...2...3...4...5...ここだ!
すこし、ざわつきが収まるタイミングで声を振り絞った。

「私、メイド長ことねは……今月いっぱいで、メイドを卒業します!!」

「「「えええええええーーーーー!?」」」

辺りが驚愕の一色だった。
さっきまで私のダンスに喜んでいた人達が絶望に近い表情だった。

「なんでだよーーー!」
「やめないでー!!ことねー!」

私の辞めるのをショックで騒ぐ人、ポカンとする人、恐らくXを打ってる人がいる。

私は、本当は辞めるべきではないのかもしれない。
ここは本当に居心地がいい。
しかし、その居心地に依存して私は変わるのを怠っていた。
決断とは、決めるのも大事だけど断るという気持ちも大事だ。

「10年……お勤めさせて頂きました。このような場に来てくれるご主人様、お嬢様が大好きでした。
可愛い料理も好きだったし、何よりこの空間がすきでした。私の力だけではありません、皆さんが居たからこその結果です。」

まだ、その発言の時もざわつきがある。
一度、スピーチを止める。
こういった発表やスピーチは間が大事である。

「私は、新たな挑戦をします。とても重い決断でしたけど、わたしは新たな一歩をふむために卒業させていただきます。最後の1ヶ月……最後まで来ていただく方を全員笑顔にしていきますので、よろしくお願いします!」

きっと、無責任な発言に怒号が走るのかもしれない。
私はここに来る理由だという人もいたり、希望という人もいた。
裏切ったとさえ思われるのかもしれない。

しかし、結果は思ったものと相反する反応だった。

ぱちぱちぱちぱち……

「ことね!10年間ありがとう~!」
「次の目標まで頑張ってね!応援してる!」
「ことねちゃんの頑張ってるところ、みんな見てるからね!」
「みんな~部屋を青く染めろ~!」

改めて、私のファンがペンライトを青く掲げ、辺りが真っ青になる。
それは……祝福の青だった。

わたしは、何故か気が動転して青がボヤけて見えてしまった。

「う……うわああ……!」

声を荒らげるように……泣いていたのだ。
私は、泣けるんだとその場で驚くのだが、言葉が詰まってしまう。でも、これだけは伝えなくては行けない。

「本当に……本当に幸せでした!!辛いこともありました、大変なことだってありました!こんな私がメイド続けてもいいのかさえ思いました!でも、みんながそうやって支えてくれたから、今日まで頑張って来れました。幸せです。…………うああああん!」

スピーチが……自分語りの号泣会見になってしまった。
そんな私を祝福するように盛大な拍手を頂いた。

本当に……私にとって天職だったんだな。

私は、「メイド人間」。
歪な思考と生い立ちを持ち、メイド喫茶のメイドでいることしか自我を保てないそんな……哀しき動物。

しかし、その実態はただの人間だった。
人並みに頑張って、好きなことをたくさんの人に支えてもらえる、そんな普通の人間だった。

これにて、お遊戯会と私の卒業発表は終焉を迎えた。

さっきまでの熱意が嘘だったかのようにいつもの見なれた景色に戻る。

少し、取り乱したので私は控え室で休んでいると、舞衣ちゃんが私の元に来た。

「舞衣ちゃん……みっともない姿見せちゃったわね。」
「いえ、とっても立派で見とれてしまいました。」
「ありがとう。」

私と舞衣ちゃんは抱擁を交わす。
暖かく、落ち着く感覚だ。
それが私の心拍数を少しずつトクントクン……と下げていくのを感じた。

私はここ数日で人に心を許す体験をしたり、喜怒哀楽を感じたりと灰色に見えた人生が少しずつ彩られていくようだった。

彩られた先に道がある。
残された日数は出勤日でいうと15日だけだった。
その先にも道はあるのだけれど、私は最後までこのメイド人間として喜んでもらうとしよう。

私は、間違いなくプロなのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...