僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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第9章 俺と母ちゃんの富士五湖修行

10話

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西湖のほとりで車を走らせる俺たち。

その道は、どこか落ち着いていて山並みの緑の乱反射が湖を照らしている。
窓を開けているので風の音と木が揺らぐ音もしていて、葉っぱの青みがかった香りがより自然の中にいることを伝えている。

この素敵な湖とももうお別れだ。
気がつけば、この富士五湖の度も3つ目が終わろうとしていた。

「直輝、次はどこになるのかな?」

母ちゃんは基本的にナビの設定が苦手なので俺が設定をする。次の目的地は……えーっと……。

「河口湖だね。」
「高速でも表示あったね、河口湖……じゃあ最後は山中湖?」
「正解、そのルートで行こうかなって思ってる。」
「了解!じゃあ……ひとまず河口湖だね!」

林道を抜け、峠道のようなところを抜けると、そこには広大な湖があった。

余りの広さに俺も絶句してしまう。
ちなみに河口湖は富士五湖の中でも開発が進んだところなので、人々と自然が調和した……そんな湖になっていた。

「あ、母ちゃん……あそこに公園あるよ。そこ行こうぜ。」
「了解!」

車を停める。
そこには建物があって併設のカフェがあったり近くにはホテルやコテージもあるようで、比較的人気の場所のようだった。
花畑が手前にありその先に河口湖がある。
そして、視線の先には雄大な富士山があった。

河口湖周辺は開けた土地なので富士山の全貌が良く見えていた。

「すごい……やっぱり富士山って大きいわね。」
「小学生みたいな感想だな。」
「いーじゃん!大きいものは大きいんだし。」

この公園は、とにかく花畑に力を入れていた。

1面が富士山の麓のように真っ青の花畑もあれば、
黄色、オレンジ、白、紫などの色が1列に並んでいる花畑もあり、奥には不規則に咲き誇る花畑もあり……どれも趣深く感じる。

目を閉じると湖の波の音も心地よかった。

「いい公園だね。」
「ええ、私花結構すきかも。」
「まあ、母ちゃん一応女性だしそう感じるかもな。」
「一応、は余計ね。形とか……色だって生きてる感じが好きかも。香りだって……優しく癒されるようなこの甘い香りが好き。」

母ちゃんはしゃがんで花を愛でる。
ゆっくりと自然に触れ合える時間もなかったし、新鮮な気持ちなのだろう。

「母ちゃんは花の中で何が一番好き?」
「んー、難しいわね。色とか形だと彼岸花とかかな。」

俺は彼岸花がピンとこなかったので検索をする。
すると、紅い花が不気味に四方八方に細い花びらを上に向かって咲いていた。

その姿はどこか力強さをもっていて……でもどこか儚げな様子が優しい母ちゃんとは真逆の花のようだった。

「どうして彼岸花なの?悲しい思い出とか……あまりいい言葉が出てこないけど。」
「んー、彼岸花は毒だってあるし、可愛らしい花とは性格だって違うけどいい所もあるのよ。」


「いい所?」
「花言葉があるのよ。悲しい思い出とか……諦めとか。でもね、それとは別に情熱や再会なんて言葉があるの。悲しさの先に強さと幸せが待っている。私だって沢山失ったけど、毒を飼い慣らして今の幸せを見つけることが出来たの。幸せは再会する……それってまるで私の人生を体現したような花言葉だなって思ったりするの。」

母ちゃんは……俺から数歩先を歩いてくるりと回り、こちらを見て微笑んだ。

「だから……私は彼岸花が好き。」

俺はその母ちゃんの笑顔の先に強く咲き誇る彼岸花を見た。そうか、毒だけが全てじゃない。だから花言葉も幾つかのメッセージが込められてるのか。

納得すると……ふうとため息をついてしまう。
相変わらず俺は母ちゃんには叶わない。
そうやって自分はこういう人間だと言い切れる母ちゃんはかっこよかった。

「なあ、母ちゃん……俺はどんな花なんだろうな。」

つい、そんな事を聞いてしまう。
花言葉ってこうして聞くと本当に面白い。
儚くも美しい様子を人の人生を一言で濃縮できるからとてもシンプルだ。

しかし、母ちゃんは敢えて教えなかった。

「それは……これから直輝自身が見つけるものよ!それは桜かもしれないし、スターチスかもしれない。私が決めたら直輝はその花に留まってしまうから……今は名も無きツボミにしましょ!」

1本取られた。
それもそうだ。母ちゃんは頑張った先の結論が彼岸花なのだ。
俺も…この日常の先に自分の結論を見つけることとしよう。

「さて、帰るか。」

公園の端の花畑で俺たちは車を目指す。
すると、その先に外国人が富士山を背景にキスをしていた。

「「え。」」

辺りを見渡すと、他の方向を見ると……アジア系やヨーロッパ系、もちろん日本人のカップルが結婚式のムービー作りの撮影に来てるのか、富士山を背景に幸せそうにしていた。

「驚いた、ここはそういう愛を表現するスポットなんだね。」
「……これから幸せになるんだろうね。」

母ちゃんは、すこし寂しそうな顔をしていた。
きっと母ちゃんも災害がなく顔も知らない父ちゃんと生きることができたら……こうして撮影しに来てたのかなと思うと急に胸が締め付けられた。

彼岸花は……孤独な花。
母ちゃんの強さには孤独があった。
孤独になることしか出来なかったから。

俺は、急に体が動いたかのように母ちゃんに近づいた。

「母ちゃん!写真撮ろ!花畑と河口湖と……富士山を背景に!」
「え、どうしたの直輝……写真なんて取ったことなかったのに。」
「いーから!あー、Excuse me?」

俺は……急いで外国人に英語で話しかけて俺たちの写真を撮ってもらう。
ヨーロッパ系の金髪の女性は優しくOK!と返事をしてくれて写真を撮ってくれた。

自然に笑う母ちゃんと……すこし緊張した様子の俺。
そんな俺たちを……花畑が、河口湖が、富士山が見守ってくれてるような……そんな写真だった。

お礼に、俺も外国人の写真を撮った。
良かった。こういう時のために英語を勉強しといて。

「直輝ー!英語喋れるのかっこいいじゃん!惚れそうだったよ。」
「まあな。……いい写真が撮れたね。」
「うん、ありがと。そういえば私たちの写真は一切とってなかったね。」
「そうだね……さて、いこうか。」

俺たちは……花道を歩きながらゆっくりと車を目指した。そして、エンジンを鳴らして最後の湖……山中湖をめざしていく。

車はゆっくりと進み……湖のほとりを進んで行った。

車の中を、流れる曲はOfficial髭男dismのミックスナッツ。大人気のアニメ……スパイファミリーのオープニング曲だ。

家族として、そして個性のぶつかりをミックスナッツと表現するのは……どこか俺と母ちゃんの特徴を表現してる様でもあった。

ボーカルの優しくも力強い歌声が仲睦まじさと、伝えきれない本音がある中でも日常を過ごす幸せを示唆するこの曲は……比較的好きな曲だった。

この漫画の娘……アーニャはピーナッツが大好きな少女だ。ピーナッツは……一つの殻の中に沢山の豆がある。

なぜピーナッツなんだ?と疑問を浮かべた俺はGoogleでピーナッツ花言葉と検索をした。

ピーナッツの花言葉は……「仲良し」だった。
俺たち親子は「仲良し」そのものだった。
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