僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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第9章 俺と母ちゃんの富士五湖修行

11話

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河口湖の湖畔をすすむと人々との生活の調和が伺える。
例えば、今は湖の真ん中で橋がかかっている。
湖の真ん中からの景色もなんとも絶景の一言に尽きる。

「そういえば、母ちゃんブログって書いてるの?思ったより書いてるとこ見ないんだけど。」

俺は一つ気になった。
取材のための富士五湖修行、母ちゃんには書いているところをこんなに近くにいるのに見ていない。
これじゃあただの旅行じゃないか?なんて無粋だけど気になってしまう。

しかし母ちゃんはニヤリと不敵な笑みをうかべた。

「ちっちっち……わかってないな~ワンコくん!」
「エヴァのマリ好きなの?この前もコスプレしてたし。」

ワンコくんなんて呼び方……絶対使わないよ。
元ネタが分かりやすすぎる。

「ま……まあマリは好きよ。そんなことより……実は朝に投稿してましたー!直輝が寝てる間に!」
「まじか!すげえ。」

母ちゃんは相変わらず行動力の鬼だった。
この黒く走るCX5の静かになるディーゼルエンジンのように、静かに……それでも前に進んでいたのだ。

「反響はどうよ。」
「まあ、まだ200人からしかフォローきてないわ。まだまだ知名度は低いわよ。」

結果が出ていないというのに、母ちゃんはどこか嬉しそうだった。
まあ、それでもブログ始めてその結果は上澄みも上澄みなんだけどね。

車の曲が切り替わると、「めざせポケモンマスター」が流れる。
最近出た、ファーストテイクバージョンである。

「うわ、懐かしい!母ちゃん世代なんだっけ?」
「いや、ババア扱いするな~!一応これでもギリルビー・サファイア世代に入ります~!」
「母ちゃん……多分、俺はXY世代なんだけど。」
「え……。」

母ちゃんの表情が凍りつく。
そんなに歳を感じることが恐ろしいのだろうか。

しかし、この歌もただの古いアニソンかと思ったけど、こうして聞くと良い曲だった。

特に、最後のサビに入る前に少し音が静かになって
「夢はいつかホントになるって誰かが歌っていたけど、蕾はいつか花開くように夢は叶うもの。」
なんて、ありきたりで臭いセリフだと思うんだけど、どこか夢を探し求めてる俺の背中を押してくれるようだった。

「凄いよな、サトシって20年も上手くいかないことばっかだったのに、それでも諦めないからチャンピオンになったんだもんね。」
「え!見てたんだ、私アレ見てめちゃくちゃ泣いちゃった。」

俺も母ちゃんもそこそこポケモンが好きだったからわかる。
きっと話を長くやるために負けたのかもしれないけど、リザードンが昼寝したり、クソみたいに理不尽な伝説使いがいたり、シンプルに実力差で負けたりといつも肝心のところでサトシは負けていた。

それでも、歩みを止めることなく冒険を楽しんだんだ。様々な仲間と出会い、戦って……これを楽しいと言わずしてなんと言おうか。

「俺も……いつか20年も打ち込めるものに出会えるといいな。」

すると、
母ちゃんは俺を見てニヤリと笑った。

「それは、母ちゃんも今は模索中だよ!なんでもいい……やりたいことを見つけて、楽しめばいいのよ。」

母ちゃんは、そんな俺でも背中を押してくれた。
今の俺の夢は、とにかく大学に入ること。
その先は何も考えていない。
もしかしたら、サラリーマンかもしれないし、フリーターなのかもしれないし、弁護士や医者だったりするのかもしれない。
でも、それでいいのかもしれない。

未来がどうなるかなんて全く想像がつかない。
なりたい自分に進化するのかもしれないし、想像とは違う進化をするのかもしれない。
だけど、それでもレベルを上げ続けて技を覚えるのだ。
もし、苦手な事や困難なことがあってもいい。
そんな時は仲間に頼って協力すればいいのだから。

「ねえ、直輝~。そろそろ山中湖着くのかな?」

俺はGoogleマップを眺める。
山中湖は、もうすぐそこだった。

「うん!あと少しだ、楽しみだね。」

少し林の中の広い道を抜けていくと、そこには山中湖があった。
どの湖よりも富士山が巨大に見えて、そして自然の中にいるような……鳥のさえずりがよく聞こえてくる。

標高が高いのか窓から来る風も冷ややかだった。

そして、何より気がついたのが……山中湖は、河口湖や今までの湖とは比べ物にならないほど巨大な湖だった。

「でけぇー!!湖とか、富士山とか……林とか何もかもでけえよ!」
「素敵なところね。人気な訳だわ。」

俺は地図から山中湖をみる。
大きさも他の湖よりも大きいと思ったのは間違いないようだった。
そして、湖の形がクジラかフライドチキンに見えなくもない。

さて、何処に行こうか。
時刻は既に14時を回っている。
ここに2時間くらい滞在したら、そろそろ帰り道になるだろう。

山中湖は美術館やコテージ、他にも商業施設などがあったのだが、俺はひとつの場所に目を輝かせてしまった。

「母ちゃん!ハンモック、ハンモックカフェがあるみたいだ。」


どうやら、ハンモックカフェがあるようだ。
ハンモックなんて人生で使ったことがない。

しかも、こんな標高が高くて冷ややかな空間でハンモックに釣られるなんて、これ以上の快楽があるのだろうか。

それに、母ちゃんもブログのネタになるかもしれない。

「行ってみる?私もここで羽を伸ばしたいわ。」
「決まりだな!」

CX5は林の中、波揺らぐ湖と巨大な逆さ富士を背景に進んでいく。
空は青く、富士山と青色がシンクロしていてそれはそれは絶景の一言に尽きる景色だった。

旅ももう少しで終わる。
その寂しさをほんのりと感じながら自然は俺たちを優しく受け入れていた。
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