僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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第10章 俺の後輩は死にたがり

8話

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俺たちはタクシーでやっとのことヘブンス園原に着いた。

最初はロープウェイで行くようだった。

「おーー……!」

御坂はロープウェイなんて乗ったことがないのか、ウキウキする子どものように心を踊らさせていた。

「先輩、これで登るんですね!」
「そうだな、ちょっと待っといてくれ。」
「はい!」
「あ、飲み物何がいい?ついでに買ってくるよ。」
「ありがとうございます!そしたら……コーラで!」
「……結構ジャンクなやつ好きだよな。」
「何を言ってるんですか!先輩、コーラは人類の叡智の結晶ですよ!私なんて毎日飲んでるんですから。」
「いや、気をつけろよ!?あれ結構糖分あるんだから。」

まだ若いとはいえ毎日飲むのは感心しない。
とはいえ、リクエストなので買っていくとする。

そして、俺たちはロープウェイでまずは目的地にいくとする。
ここから一気に1400m程の高さまで登っていく予定だ。

最初はただし他の景色が小さくなるだけだったけど、少しずつ景色が小さくなる。

「わあ!先輩、ガタンってなってます。」
「楽しそうだな、高いとことか怖くないのか?」
「全然!歩道橋から飛び降りようとするくらいには怖くないですよ!」
「お前が言うと言葉の重みが違うんだよな。」
「冗談ですよ…8割。」
「いや、だから残りの2割なんなんだよ!」

そんな漫才をしていたら、突然あるものが目に入った。

「おい…御坂…上見てみろよ。」
「上?」

俺たちはロープウェイの終点際でまるで別世界に来たかのような景色を目の当たりにした。

雲ひとつない満天の星。
あかりがほとんど無いので一つ一つの星がくっきりと見えていて、普段何気なく見ている星が見えてくるようだった。

よく見ると、白く輝く星や、赤い星、オレンジ色の星などがみえている。

「空って…こんなに綺麗なんですね。」

パシャリ

星空に見惚れてる御坂を俺は写真に収めた。

「もう先輩…ばか。」

写真をとられた御坂は少し嬉しそうだった。
顔では恥ずかしいけどもっと撮ってくださいと言わんばかりに堂々としていた。

間もなく、俺たちはロープウェイを降りることになる。
そこには整備された高原があって、グランピング施設やテーブルなどがありかなり快適に過ごせる空間があった。

そして、そこをかける純白の御坂は星空をかける天女のように幻想的な写真が撮れた。

「先輩、宇宙ってすごいですね。こうして見ると本当に私達はちっぽけなんですね。」
「そうだな、宇宙どころか地球からみても俺たちなんかは熱循環システムの一部でしかないからな。」
「じゃあ、本来私たちって生きる意味は無いんですか?」
「無い。無いからこそ限られた今この瞬間を楽しむために生きてるんだよ。」

少し冷たかったかな?
でも、御坂は頭がいいのでこのような言いようをしないと納得すらしないのだ。
それを見て御坂は頷いた。

「じゃあ、理由なく意図的に死ぬことはもっと意味が無いんですね。」
「まあ、そこは人それぞれかもしれないけどな。」
「あはは、私ちょっとどうかしてました!小さい世界だけで全てを判断してました。私…もっと世界を見てみたいです。」

どうやら、もういつぞやの夜のような死にたがりの御坂はそこにはいなかった。
目の前にいるのは死に対し救いを求める狂人ではなく、生きる事に希望を抱くごく普通の少女のようだった。

その後も俺たちは宇宙の庭園を歩いていく。
すると、更に高いところに行くゴンドラがあった。
どうやら最大1700m近くまで上がることが出来るみたいだった。
もはや富士山の半分くらいまで行くことができる。
文明の利器とは凄まじいものだ。

「行ってみるか?結構歩くと思うけど。」
「何言ってるんですか!いきましょ!」

俺は御坂に手を引かれ歩いていく。
御坂は全力ダッシュで俺は追いかけるのがやっとだった。

想像以上の力強い走り…生きることを決めた彼女の生命力はアルビノとは思えないほどの力強さが見えた。

「汗かくぞー。」
「はあ…はあ…いいんです!今日は先輩の用意した最高の温泉だってあるんです!あと二回は入りますよ!」

あっという間にゴンドラに着くと、さらに俺たちは上昇していく。
俺も初めての経験だった。
普段やらかす夜遊びに比べてあまりにも幻想的な世界で本当に宇宙を走っているような感覚がある。

気温だって夏だと言うのに20℃と少し鳥肌が立つくらいだ。何より、いつもは不気味ににへらと笑う御坂がこんなに楽しそうに笑う所は初めて見た。

こいつ、この景色をみて心から笑ってるんだ。
笑うとこいつ…こんなに可愛いんだと思い知らされた。

ゴンドラを登ると、2つの明るい星があった。
あれは…たしか…。

「ベガとアルタイル…だったかな?」
「先輩詳しいですね。」
「ああ、そりゃあかの織姫と彦星の象徴する星だからな。」
「どっちがどっちなんですか?」
「ベガが織姫だ。」
「へー!」
「そして、ここにデネブという星を繋ぐと…。」
「三角形に見えますね!」
「そう、これが夏の大三角形だ。」
「先輩、天体観測とか昔してたんですか?」
「……まあな。」

天体観測、という言葉で頭には過去の記憶が再生される。
そう、今は亡き俺の母ちゃんも天体観測が好きだった。夏の大三角形も……母ちゃんの受け売りの言葉だ。

「先輩、願い事しましょ!七夕です!」
「いや、もう8月だぞ。」
「何言ってるんですか!どうせ七夕なんでいつも梅雨だから雲で隠れてるんですが、私が決めた救済措置です!」
「んだよそれ…。」
「ほら、お願い事しましょ。」

やれやれ、と言葉を残して俺は願い事を言ってみる。
言うことは一つだ。
人を救えるような医者になれますように。
そして、天国の母ちゃんにも俺の名前が届くような名医になれますように。

それを天に告げた時には、ゴンドラは終点にたどり着いていた。

俺たちは、頂上を目指し軽い登山を試みることにする。
最近運動してなかったから妙に体がだるく感じてしまう。

「御坂は…そういえばどんな願い事をお願いしたんだ?」
「…えへへ、秘密です!」

満天の夜空と透き通った景色、そして暗闇の中世界を見下ろせるパノラマの中でいたずらっぽく笑う御坂は、まるで織姫が現世に舞い降りたようだった。

「なんだよ、それ。」
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