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第五章
心臓の無くなったペン
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ピンポーン……
「はい……」
「楓です。」
「どうぞ」
私は家にあがり、単刀直入に聞いた。
「あの、私に渡したいものというのは?」
母は意を決した顔でタンスから1冊の本。いや、日記?を取り出した。
「これは、和奈がいつも大切にしていた日記です。この日記の内容は、虐待の小説です…」
虐……た…い?……
私にはやはり、和奈を理解することは出来なかった。なぜ、自分がされている事を蒸し返し日記に記すのか。
私は、忘れたくて必死だったと言うのに…
私は、母から和奈の日記を手渡される。
1ページ、
私は日記を開く。
ーーーーーーー
ーーーーーーー
分厚い日記を読み終える。
最後のページには、まだ仲の良かった家族3人の写真が挟まっていた。そして、そこに付け足されたかのように書かれていた。
「黒いカマキリ」
これはきっと、本のタイトルだろう。
この小説は、何度も何度も同じ言い回しがありお世辞でも「素晴らしい」とは言えないほどの完成度だった。それでも、そこから溢れてくるものは、私の中にするすると溶け込んで行った。
「これ…登場人物が……」
母は私の話を最後まで聞かずに、口を開く。
「ええ…おかしいのよ……」
和奈の家族は父、母、そして和奈の3人家族だ。
だが、この小説には父、母、兄、姉、主人公の五人家族だ。
これは元々、和奈の頭の中で出来たストーリーなのか、はたまた空想の中の兄や姉に癒されたかったのか。和奈の居なくなった今では、何も分からないが。
「私はね。この話の中に出てくる『姉』は楓ちゃんだったんじゃないかなって思うの。」
「私?……」
「ええ、何でかは分からない。でも、直感て言うのかな?……
初めてこれを見つけて読んでみた時、ふと楓ちゃんなんじゃないかなって思ったの。」
私は、黙り込んだ。
和奈の事だ。また、私には理解できない考えでこの小説を書いたのかもしれない。
ただ、意図的なら……
「ごめんなさいね……こんな小説の登場人物なんて言っちゃって。嫌よね。ごめんなさい。」
和奈の母は、私に謝りながらも涙目になっていた。きっと、冗談でもお世辞だもなんでもないんだろうなと私は、ここで気づく。
和奈の母は立ち上がらり、部屋から出ていった。
もし、、、和奈が私の虐待に気づいていたとしたら……?
いや、、、そんなことは無い。
「お待たせ。」
和奈の母がお茶を私の前に置く。
「あの…この写真と日記を頂けませんか?」
母は驚くことは無く、コクリと首を縦に頷く。
「言ったでしょう?あなたに渡したいものがあるって……あの時は、、本当…情けなかったわ……ごめんなさいね。でも、楓ちゃんが来てくれて気分が軽くなったわ。」
いえいえと首を横に振る。
なぜ、この家族が……こんな目にあうのか。
こんなにも素敵な家族を壊した奴の顔を見てみたいものだが、私にはどうしようもない。
私は、死ぬもの。
「今日は、本当に来てくれてありがとう。
そう言えば……私が電話した時電車に乗ってたのかしら?」
「……」
「あ、いや、言いたくないならいいんだけど……ほら、学生の時はあんまり遠出とかしてなかったから……」
「いえ、ただ私は……死のうと思って乗っただけなので。」
和奈の母の顔なんて見てなかった。
私は、和奈の家をあとにし自分の家の扉を開けた。
何度読んでも、和奈の考えは分からなかった。
私は、机の引き出しから1本の燃える夕日のようなペンを取りだす。
この日を境に私は、外出は少なくなり父や母からの暴力を受けたあとも寝ずに書き続けた。
これが終われば、きっと私はまたあの電車に乗るんだろう。
目的は変わらず。
ある日。
あれから何日過ぎたかも、今が朝なのか夜なのかも分からない。
本当にある日。
私は、2冊の小説を書き上げた。
1冊は私の描いたストーリー。
もう、1冊のタイトルは変えずにそのまま。
「黒いカマキリ」
少し、修正をかけながらふと思った。
もしかしたら、「兄」はお父さんだったのではないか、と。
そして、「父」は嫌がらせをしていた奴。
例え……例えそうならここに登場してくる5人家族という設定には頷ける。
和奈は最後まで、「父」も私たちと共に苦しみもがいた仲間だと思っていたのかもしれない。
意図的かは分からないが、そうであってほしいと思う。
その頃にはもう、和奈から貰ったペンからインクが出ることは無かった。まるで、私の命が尽きたかのように。だが、私の心臓は波打っている。
私はほっと胸を撫で下ろした。
死ぬのが怖い訳では無い。
ただ、私はまだやらなくてはならないことがあるのだから。
私の死には、「虐め」も「虐待」もましてや…「先輩」なんかも、、ない。
「はい……」
「楓です。」
「どうぞ」
私は家にあがり、単刀直入に聞いた。
「あの、私に渡したいものというのは?」
母は意を決した顔でタンスから1冊の本。いや、日記?を取り出した。
「これは、和奈がいつも大切にしていた日記です。この日記の内容は、虐待の小説です…」
虐……た…い?……
私にはやはり、和奈を理解することは出来なかった。なぜ、自分がされている事を蒸し返し日記に記すのか。
私は、忘れたくて必死だったと言うのに…
私は、母から和奈の日記を手渡される。
1ページ、
私は日記を開く。
ーーーーーーー
ーーーーーーー
分厚い日記を読み終える。
最後のページには、まだ仲の良かった家族3人の写真が挟まっていた。そして、そこに付け足されたかのように書かれていた。
「黒いカマキリ」
これはきっと、本のタイトルだろう。
この小説は、何度も何度も同じ言い回しがありお世辞でも「素晴らしい」とは言えないほどの完成度だった。それでも、そこから溢れてくるものは、私の中にするすると溶け込んで行った。
「これ…登場人物が……」
母は私の話を最後まで聞かずに、口を開く。
「ええ…おかしいのよ……」
和奈の家族は父、母、そして和奈の3人家族だ。
だが、この小説には父、母、兄、姉、主人公の五人家族だ。
これは元々、和奈の頭の中で出来たストーリーなのか、はたまた空想の中の兄や姉に癒されたかったのか。和奈の居なくなった今では、何も分からないが。
「私はね。この話の中に出てくる『姉』は楓ちゃんだったんじゃないかなって思うの。」
「私?……」
「ええ、何でかは分からない。でも、直感て言うのかな?……
初めてこれを見つけて読んでみた時、ふと楓ちゃんなんじゃないかなって思ったの。」
私は、黙り込んだ。
和奈の事だ。また、私には理解できない考えでこの小説を書いたのかもしれない。
ただ、意図的なら……
「ごめんなさいね……こんな小説の登場人物なんて言っちゃって。嫌よね。ごめんなさい。」
和奈の母は、私に謝りながらも涙目になっていた。きっと、冗談でもお世辞だもなんでもないんだろうなと私は、ここで気づく。
和奈の母は立ち上がらり、部屋から出ていった。
もし、、、和奈が私の虐待に気づいていたとしたら……?
いや、、、そんなことは無い。
「お待たせ。」
和奈の母がお茶を私の前に置く。
「あの…この写真と日記を頂けませんか?」
母は驚くことは無く、コクリと首を縦に頷く。
「言ったでしょう?あなたに渡したいものがあるって……あの時は、、本当…情けなかったわ……ごめんなさいね。でも、楓ちゃんが来てくれて気分が軽くなったわ。」
いえいえと首を横に振る。
なぜ、この家族が……こんな目にあうのか。
こんなにも素敵な家族を壊した奴の顔を見てみたいものだが、私にはどうしようもない。
私は、死ぬもの。
「今日は、本当に来てくれてありがとう。
そう言えば……私が電話した時電車に乗ってたのかしら?」
「……」
「あ、いや、言いたくないならいいんだけど……ほら、学生の時はあんまり遠出とかしてなかったから……」
「いえ、ただ私は……死のうと思って乗っただけなので。」
和奈の母の顔なんて見てなかった。
私は、和奈の家をあとにし自分の家の扉を開けた。
何度読んでも、和奈の考えは分からなかった。
私は、机の引き出しから1本の燃える夕日のようなペンを取りだす。
この日を境に私は、外出は少なくなり父や母からの暴力を受けたあとも寝ずに書き続けた。
これが終われば、きっと私はまたあの電車に乗るんだろう。
目的は変わらず。
ある日。
あれから何日過ぎたかも、今が朝なのか夜なのかも分からない。
本当にある日。
私は、2冊の小説を書き上げた。
1冊は私の描いたストーリー。
もう、1冊のタイトルは変えずにそのまま。
「黒いカマキリ」
少し、修正をかけながらふと思った。
もしかしたら、「兄」はお父さんだったのではないか、と。
そして、「父」は嫌がらせをしていた奴。
例え……例えそうならここに登場してくる5人家族という設定には頷ける。
和奈は最後まで、「父」も私たちと共に苦しみもがいた仲間だと思っていたのかもしれない。
意図的かは分からないが、そうであってほしいと思う。
その頃にはもう、和奈から貰ったペンからインクが出ることは無かった。まるで、私の命が尽きたかのように。だが、私の心臓は波打っている。
私はほっと胸を撫で下ろした。
死ぬのが怖い訳では無い。
ただ、私はまだやらなくてはならないことがあるのだから。
私の死には、「虐め」も「虐待」もましてや…「先輩」なんかも、、ない。
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