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(株)藤井倉庫ドッヂボール部編
プロフェッショナル募集中
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それは、本当に偶然の出会いだった。
「プロフェッショナル募集中」
その日、仕事を辞めて故郷の砂町をぶらぶらと歩いていた長谷部光一の目に、妙な張り紙が入ってきた。
長谷部は、つい先月に所属チームをJリーグから退会させてしまった選手だった。チームは経営が成り立たなくなり、クラブハウスを手放す事になった。その時の会長の言葉が、ふと頭によぎった。
『君たちは、誰が何を言おうとプロフェッショナルだった。私が保証する。三年間、どうもありがとう』
(プロフェッショナルだと?俺への当てつけかーーー)
光一は頭を深々と下げた会長の姿を思い出して、苦々しい気分になった。その場を立ち去りたくなった。しかしなぜか張り紙から目が離せず、光一は張り紙に釘付けになっていた。
プロフェッショナル募集中
我々(株)藤井倉庫に所属する東京パイレーツは、ドッヂボールのプロリーグ「Dリーグ」で一緒に活躍してくれる仲間を募集しております。
その為、生半可な覚悟の者、体力が規定に満たない者、プロ意識の欠けている者は不要です。ご容赦ください。
連絡は(株)藤井倉庫まで
Tel 03-〇〇〇〇-××××
ドッヂボール?所詮は小学生のする物だろう。それを大人が?しかもプロ化して?
光一は何を言っているのか分からなかった。その時、
「よう、兄ちゃん。チラシ、気になったのかい?」
光一が驚いて振り返ると、後ろにスーツ姿の男が立っていた。
「ええ、まあ。仕事の無いもので……」
「へえーっ!兄ちゃんみたいなガタイのいい男でも仕事が無ぇのかい。あんたなら引く手数多だろうけどなァ……ゴールキーパーとか」
そう言うと、男はにやりと笑った。
「……ご存知なのですか」
「ああ、現役の時から目を付けていたからな。特に、ハイボールの処理が素晴らしかった。あれはキャッチング技術と飛び出しの判断の両方が優れていなければ出来ない芸当なんだ。つくづくいいキーパーだった」
「ありがとうございます。でも、俺はもう、Jリーグに戻るつもりは……」
「?いや、俺はサッカーやってくれなんて言って無ぇよ。ドッヂボーラーにならねえか、って言ってるんだ」
ドッヂボーラー。この男は本気で言っている。そうとしか思えなかった。本気で俺に、価値があると思っているのだ。
この数分で、ドッヂボールを馬鹿にしていた自分は、どこかに消え失せていた。
「僕でも出来ますか」
男はにっこりと、満面の笑みで笑った。
「もちろん。でも兄ちゃんもテストしなきゃあ使えるかどうか分からんからなァ。よし、明後日の九時半に、新砂の区民体育館に来てくれ。あんたの実力を、俺たちに見せてくれないか」
ここが、人生の岐路なのだ。光一の身体が、ぶるぶると震えていた。
「はい」
人生のレールが、切り替わる音がした。
「プロフェッショナル募集中」
その日、仕事を辞めて故郷の砂町をぶらぶらと歩いていた長谷部光一の目に、妙な張り紙が入ってきた。
長谷部は、つい先月に所属チームをJリーグから退会させてしまった選手だった。チームは経営が成り立たなくなり、クラブハウスを手放す事になった。その時の会長の言葉が、ふと頭によぎった。
『君たちは、誰が何を言おうとプロフェッショナルだった。私が保証する。三年間、どうもありがとう』
(プロフェッショナルだと?俺への当てつけかーーー)
光一は頭を深々と下げた会長の姿を思い出して、苦々しい気分になった。その場を立ち去りたくなった。しかしなぜか張り紙から目が離せず、光一は張り紙に釘付けになっていた。
プロフェッショナル募集中
我々(株)藤井倉庫に所属する東京パイレーツは、ドッヂボールのプロリーグ「Dリーグ」で一緒に活躍してくれる仲間を募集しております。
その為、生半可な覚悟の者、体力が規定に満たない者、プロ意識の欠けている者は不要です。ご容赦ください。
連絡は(株)藤井倉庫まで
Tel 03-〇〇〇〇-××××
ドッヂボール?所詮は小学生のする物だろう。それを大人が?しかもプロ化して?
光一は何を言っているのか分からなかった。その時、
「よう、兄ちゃん。チラシ、気になったのかい?」
光一が驚いて振り返ると、後ろにスーツ姿の男が立っていた。
「ええ、まあ。仕事の無いもので……」
「へえーっ!兄ちゃんみたいなガタイのいい男でも仕事が無ぇのかい。あんたなら引く手数多だろうけどなァ……ゴールキーパーとか」
そう言うと、男はにやりと笑った。
「……ご存知なのですか」
「ああ、現役の時から目を付けていたからな。特に、ハイボールの処理が素晴らしかった。あれはキャッチング技術と飛び出しの判断の両方が優れていなければ出来ない芸当なんだ。つくづくいいキーパーだった」
「ありがとうございます。でも、俺はもう、Jリーグに戻るつもりは……」
「?いや、俺はサッカーやってくれなんて言って無ぇよ。ドッヂボーラーにならねえか、って言ってるんだ」
ドッヂボーラー。この男は本気で言っている。そうとしか思えなかった。本気で俺に、価値があると思っているのだ。
この数分で、ドッヂボールを馬鹿にしていた自分は、どこかに消え失せていた。
「僕でも出来ますか」
男はにっこりと、満面の笑みで笑った。
「もちろん。でも兄ちゃんもテストしなきゃあ使えるかどうか分からんからなァ。よし、明後日の九時半に、新砂の区民体育館に来てくれ。あんたの実力を、俺たちに見せてくれないか」
ここが、人生の岐路なのだ。光一の身体が、ぶるぶると震えていた。
「はい」
人生のレールが、切り替わる音がした。
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