小さな村出身の僕が勇者になったけど急にみんなが冷たくなりました(仮称)

結紬

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親心

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深夜になったらお酒に酔った人は家族に家まで運んでもらっていたり、道端で寝てしまっている人もいた。

中にはもう酔ってふらふらなのに飲むのをやめない人もいた。

その人たちは昔から僕を可愛がってくれていた人が多くて、少しだけくすぐったいような感じがした。

まだお酒を飲んでいた人たちに挨拶をして家に帰った僕はお母さんたちと話していた。

「ブラン。本当に勇者になるの?今まで拒否した人はいないというだけで、拒否することはできるのよ?」

お母さんはそう神妙な面持ちで言ってきた。

「何、言ってるの、お母さん。勇者になるのは僕の小さいころからの夢だって知ってるでしょう?」

小さいころから、お母さんに勇者について書かれた本を読んでもらうたびに、勇者になりたいと話していたから、知らないはずがない。

「俺たちはブランには悪いと思っているが、勇者にはなってほしくないとおもっているんだ」

頭を何か固いもので叩かれたような感覚だった。

引っ込み思案だった僕の勇者になりたいという言葉を友人たちは少し馬鹿にしたように「なれるわけがない」と言ってきた。

そんな僕に両親は僕の話を聞いて「ブランは優しい子だからきっとなれる」と言ってくれていた。
なのに、なんで。

「なんで、そんなこと言うの?今まで僕が勇者になりたいって言った時にはきっとなれるって言ってくれてたのに」

「ブラン、私たちはあなたに危険な目にあってほしくないだけなの。あなたの夢を否定するつもりは今までもこれからも無いのよ?でも、」

そこまで言ってお母さんは俯いてしまった。

夢を否定しない?なってほしくないってことは『勇者になりたい』っていう僕の夢を否定しているじゃないか。

お母さんたちは絶対喜んでくれると思ってたのに。

誰よりも喜んで、誰よりも祝福してくれると思ってたのに。

「お母さんやお父さんがなってほしくないって言っても、僕は勇者になるよ。もう決めたんだ」

二人の息をのんだ音と息を詰まらせた音が嫌に鮮明に聞こえてきた。

外でまだ騒いでいる人たちの声のほうが大きいのに。

まるでこの世界には僕たちの三人しかいないかのように、この部屋だけが切り取られた空間かの様に嫌に静かだった。

「どれだけ言われても僕は意志を変える気はないよ。おやすみなさい」

「お休み、ブラン」

いつもよりも暗い声に胸が痛んだ気がした。

でも僕は昔からの夢を叶えたいんだ。

お母さんたちを悲しませてしまうのは僕も悲しいけどせっかく巡ってきたチャンスを手放したくない。

きっと魔王を倒して無事に帰ってくることができればお母さんたちも喜んでくれる。

ぐっと握りしめてしまって詰めの跡が残った少し痛む手のひらをさすりながら部屋に戻った。

それに、もう村のみんなには『勇者になる』って言っちゃったんだ。

今から『やっぱりならない』なんて言えるわけがない。

布団を頭までかぶってぎゅっと目を瞑った。

二人の悲しげな顔が浮かんできてなかなか眠れなかった。
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