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第四話「小さな魔女達」前編
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「・・・・・・!」
ガタッ・・・!
「そう・・・来たのね・・・!嬉しいわ・・・・・・。」
女性は何かを感知し、椅子から立ち上がる。満面の笑みを浮かべながら・・・。
「また、会いましょう・・・。絶対に・・・・・・。」
エミーは初めて街を出た。魔女の世界に来て半月。何度か外には出たが、街の外に行くのは初めてだ。・・・少し緊張する。エミーはゾーエの手をしっかりと握り締めて歩く。
「エミー?不安?」
「ん・・・すこし・・・。でも・・・ゾーエが・・・いるから・・・だいじょぶ・・・。」
ゾーエは微笑む。そして少し俯きがちなエミーに、優しい声で言う。
「エミー。顔をあげてご覧。良い景色よ。」
エミーは恐る恐る顔を上げる。するとそこには・・・・・・。
「・・・・・・!」
どこまでも広がる草原が、そよ風になびいていた。晴れた青空も相まって、とても心地良い景色。エミーは思わず立ち止まる。
「いい・・・けしき・・・。」
「でしょ!」
二人は再び歩き始める。エミーにはもう不安そうな影は無い。むしろ好奇心を抱きながら歩いている。
エミーは草原をくまなく眺める。遠目では分からないが、近くで見れば多種多様な植物が群生している事が分かる。そのどれもが、とても小さな花を咲かせている。白、黄色、ピンク、青、紫、水色、黄緑、橙色・・・・・・・・・見たことの無い色まである。この色はなんて言うんだろう。
遠目では気付かない事だが、よく観察してみれば新たな発見が次々とある。まだ街を出て少ししか経っていないのに、こんなに不思議な発見が沢山あるとは・・・・・・。この世界は広いな・・・。エミーは少し感動を覚える。
「パッと見変わらない景色でも、よく見たら不思議でしょ?魔女の世界は沢山の不思議が詰まってるのよ。」
「すご・・・い・・・。」
「これからもっと不思議な景色が待ってるわよ!」
「たの・・・しみ・・・。」
本当に魔女の世界は不思議だ。ここに来てまだ半月しか経っていないが、エミーは大きな成長を遂げている。言葉も段々上手く話せる様になっているし、何より感情の幅が広がった。以前までは怒りと憎しみ以外には反応しなかったその心が、今では沢山のものに反応する様になっている。でもそれは、魔女の世界に来たからだけでは無い。ゾーエと一緒に居るから、様々な感覚を感じられる様になったのだ。・・・・・・・・・でも、それはまだ本来の感覚では無い。本来ならそれらの感覚を、もっと強く、もっと深く感じる事が、エミーには出来るのだ。だが今は、封印によって抑えこまれている。
いつか、封印が全て解けた時に・・・・・・もう一度、ここに来たいな・・・・・・。エミーはそんな事を考えながら、ゾーエと共に歩みを進める。
「少し休憩しましょっか。」
「うん・・・。」
結構歩いたと思う。エミーの体力を考えて、ゾーエは少し早めに休憩を取る事にした。
「エミー、お腹空いてない?丁度お昼時だし、何か食べる?」
「うん・・・!」
するとゾーエは鞄から大きな風呂敷を取り出し、広げた。
「かばん・・・ちいさい・・・。」
「ああ!これね、お家の中と繋がってるの。お家の中にあるものなら、何でも取り出せるのよ!」
「まほう・・・すごい・・・!」
「ふふっ。エミーもいつか使える様になるわよ。」
ゾーエは更に鞄から網代編みの弁当箱と、水筒を取り出す。
「実は朝作っておいたの!サンドイッチよ!」
「さんど・・・いっち・・・!」
エミーは何度かゾーエの家で、サンドイッチを食べていた。エミーのお気に入りの食べ物の一つだ。
水筒には冷たいお茶が入っている。それをコップに注ぎ、二人は昼食を摂る事にした。
「外で食べるのも気持ち良いでしょ?」
「うん。」
いつものソファで食べるご飯も好きだが、外で食べるのもまた違った心地良さがある。そよ風とそれになびく広い草原の中でご飯を食べるのは、気持ちが良かった。
サンドイッチを食べ終わった後、二人はゆっくりと景色を眺めていた。
二人が出発したあの街はもう見えない。本当に旅に出たんだな・・・。改めてエミーはそう実感する。これからどんな景色が待っているんだろう。少し不安を感じる。でも・・・。
「エミー、そろそろ出発する?」
「・・・うん・・・・・・!」
でも・・・・・・大丈夫。ゾーエがいるから。ゾーエが一緒に居てくれるだけで、不安な気持ちをかき消してくれる。心が暖かくなる。・・・それに、不安だけじゃない。この旅は好奇心も湧かしてくれる。見た事の無い景色、食べた事の無い食べ物、感じた事の無い感覚、そして感情・・・。エミーの心は抑えつけられながらも、それらへの期待とワクワクを感じさせている。きっと良い旅になる。この旅は、エミーをそう思わせてくれる様な、そんな旅になっていた。
本当にだだっ広い草原だ。朝から歩いているが未だ草原の中にいる。しかし、特に変わる事の無いこの景色だが、不思議と嫌にならない。ただ、ゾーエと一緒に歩いている、それだけで心地良さを感じている。しかし、景色の変化は唐突に起きた。
遠くの草原の中で、何かが動いている・・・。よく分からないが、そんなに大きくはない様に思う。エミーの歩みが少し遅くなる。突然現れたその影に、近付く事を躊躇うかの様に。しかし・・・・・・。
その影が、こちらに近付いて来た。エミーはビクッ!と身体を震わせ立ち止まる。
「エミー?」
「なにか・・・くる・・・!」
エミーはゾーエにしがみつく。その影に恐怖を感じるエミーだが、それとは対照的に、ゾーエはその様なものは一切感じさせない振る舞いだ。
「ああ!大丈夫よエミー。怖いものじゃ無いわ。よく見てご覧。大丈夫だから。」
エミーが恐る恐るその影を見る。・・・・・・人影?あれは人だ。それに自分と同じ位の大きさの人・・・。・・・・・・どんどんと近付いて来る!思わずエミーはゾーエの服に顔を埋めてしまう。
少し経った後、突然聞き覚えの無い声が聞こえた。
「こんにちは!」
小さな女の子の声。しかしエミーは、顔を向けるのが怖くて確認出来ない。
「あら、こんにちは!」
「とおくからみえたの!なにしにいくの?」
「私達は旅をしているのよ。」
「たび!?すごい!どこからきたの?」
「今日始めたばかりだから、そこの隣街よ。」
「あ、たまにいくとこ!おかーさんのほうきにのっていくの!そこからあるいてきたの?」
「ええ。歩いた方が色んな発見があるかと思って。」
「すごい!わたしとおないどしくらいなのに、たくさんあるいたんだね!」
エミーはまだ顔を埋めている。すると、ゾーエが優しく頭に手を置く。
「エミー。怖くないわ。ゆっくり見てご覧。貴女と同じ、子供の魔女よ。」
ゾーエは優しい声でエミーに言う。エミーは少しだけ顔を向けて、チラッと声の方向を見る。
とても可憐で可愛らしい少女だ。美しい金色のショートヘアに、宝石の様に輝く緑色の瞳。子供ながらに凛々しい顔をしている、同じ位の身長の少女。
「えみー!あなたはえみーっていうのね!わたしはまな!よろしくね!」
とても元気だ。・・・・・・この子も私と同じ魔女なのか。・・・・・・・・・初めて同年代の魔女を見た。この子も、他の魔女と同じ様に、綺麗だな・・・。
エミーは小さい声で返事をする。
「・・・・・・よ、よろ・・・・・・しく・・・・・・。」
「うん!よろしく!」
すると、マナは突然ピクッ!と反応し、道の向こうを振り向く。
「おかーさんがよんでる!ねえ、ついてきて!わたしたちのおうちがあるの!」
そう言うとマナは道なりに走って行く。
「元気で可愛らしい子ね!」
エミーはまだゾーエにしがみついている。すると、ゾーエが頭を撫でながら優しく言ってくれる。
「頑張ったわねエミー。よく挨拶出来たわ。」
「ん・・・・・・。」
「この世界で同年代の子に会うのは初めてね。少し不安かもしれないけど、大丈夫よ。だって、貴女と同じ魔女だもの。」
「うん・・・・・・。」
「きっと、この経験も、貴女の感情を解放するきっかけになるわよ。・・・・・・さぁ、行きましょ。」
「うん・・・。」
二人はマナの走って行った方向に、ゆっくりと歩き出した。
「あ!きたきた!おーい!」
夕暮れ時に二人が緩やかな坂を登り、頂点の部分に来た時、丁度坂道が下り終わっている部分でマナが大きく手を振っていた。
ゾーエが手を振り返す。
「ほら、エミーも降ってご覧。」
エミーはゆっくりと小さく手を振る。
二人はゆっくりと坂道を下って行く。少し先には、灯りのついたレンガ造りの家があった。
下り終わるとマナが笑顔で駆け寄って来る。
「あそこがわたしのおうち!」
マナは走って家の前に行き、大きな声で呼ぶ。
「おかーさーん!きたー!」
すると、扉が開いて一人の女性が外に出て来る。そして二人の方を振り向き、おっとりとした笑顔で話す。
「あ、こんにちは!マナの母のアリシアです。」
「こんにちは!隣街から来ました。ゾーエです。この子はエミーです。」
「・・・こん・・・にちは・・・。」
エミーはおずおずと挨拶をする。
「ゾーエさんにエミーちゃんね!マナから聞きました。・・・ご迷惑をかけていませんかね?」
「いえいえ!とても元気なお子さんですね!」
「元気過ぎるくらいですよ、あの人に似て!・・・ここを歩いて通って行く人は少ないんです。この子、どうやらそれが珍しかったみたいで・・・。大喜びで話してくれたんですよ!」
「そうだったんですね!確かに、この辺りは広いので箒で行き来する人が多いですよね。」
ゾーエとアリシアが話している中、エミーはずっとゾーエにしがみついていた。
エミーがアリシアの事をじっと見つめる。ブロンドの長い髪がそよ風になびき、黄色の瞳は美しく輝いている。そして、胸には水色の美しい宝石で出来たブローチを付けている。
「・・・・・・!」
エミーがブローチを眺める。すると、アリシアがそれに気付き、エミーに優しく声を掛ける。
「このブローチ、気になる?」
「・・・・・・!」
声を掛けられたエミーは驚き、ゾーエの後ろに隠れる。
「大丈夫よエミー。優しい方だから。・・・すいません。この子、あまり人に慣れていないんです。」
「いえいえ!お淑やかで可愛らしい子ですね!」
アリシアはしゃがんで、エミーに微笑みかける。
「エミーちゃん。ブローチ、近くで見てみる?」
「・・・・・・・・・。」
エミーはそーっとゾーエの後ろから出て来る。ゾーエにしがみつきながら、ゆっくりとアリシアに近付く。
「・・・!」
近くで見れば見る程、そのブローチは美しく輝いていた。
「このブローチはね、ネオンブルーアパタイトっていう宝石で出来ているのよ。」
「・・・きれい・・・。」
「ふふっ。ありがと!あの人も喜ぶわ。」
「あの・・・ひと・・・?」
「ええ。このブローチをくれた人よ。マナのもう一人のお母さん。」
「・・・?」
エミーはゾーエの方を向く。
「そうね。エミーにはまだ教えてなかったわね。」
ゾーエもゆっくりとしゃがみ、エミーと同じ目線になる。すると、マナも走って来て同じ様にしゃがみこむ。
「なになに?なんのはなし?」
「婚礼石の話よ。」
ゾーエは笑顔でマナに言う。
「こんれいせき!けっこんしたあかしだよ!」
「けっ・・・・・・こん・・・?」
「えみーけっこんしらないの?わたしがおしえたげる!」
「んあ・・・!」
マナはエミーの手を取り、家の傍にあるベンチに連れて行く。
「あ!こら!マナ!引っ張っちゃ駄目でしょ!・・・・・・すいません。あの子ほんとに元気過ぎて・・・。」
「いえいえ!エミーにとっても、こういう経験は大切です。同年代同士だからこそ、持てる感覚もありますから。・・・・・・・・・それに、今のあの子は、前とは違います。・・・・・・著しい感情の偏りも、無くなっていますし。」
「著しい、感情の偏りですか?」
「・・・・・・・・・はい。・・・・・・あの子は複雑な環境で育ったんです。だから、あの子に色んな事を経験して欲しくて、二人で旅をしてるんですよ・・・・・・。」
「そうだったんですね・・・。じゃあ、あの子が婚礼石の事とかを知らないのも・・・・・・?」
「はい・・・・・・・・・。幼い時にそういう事を教わっていないんです。・・・今は私が少しずつ教えていってる感じですが。・・・だからこそ、ああやって同年代の子と一緒に居るのは、エミーにとっても良い経験になると思って。」
「それは良かった。あの子がエミーちゃんに少しでも良い刺激を与えているのなら、嬉しいです!」
「・・・重ね重ねすいません・・・。」
「いえいえ!あの子も喜んでるみたいですし!私達で少しでも力になれる事があるなら、遠慮無く頼って下さい!」
「・・・ありがとうございます・・・!・・・アリシアさんも、マナちゃんも、本当に優しいですね。」
「ふふっ。ありがとうございます。でもそれはゾーエさんもですよ!ゾーエさんも、とっても優しい方です。・・・だって私達は皆、魔女なんですから。・・・慈愛と思いやりを持って生きる・・・。かつてから受け継がれている、私達の大切な文化です。」
「・・・そうですね。・・・・・・・・・この文化のお陰で、あの子も成長していると感じます。・・・あの子には、沢山の優しさに触れて欲しいんです。だからこうやって旅が出来るのも、魔女の世界に受け継がれている優しさがあるからなんですよ。」
「・・・・・・もしかしてエミーちゃんは、元の世界で育ったんですか?」
「! ・・・・・・・・・はい・・・。・・・あの子が魔女の世界に来たのはつい最近で・・・。だから、不安とかも感じやすいんです。あの子にとっては、全てが未知ですから・・・。」
「そうなんですね・・・。でも、エミーちゃんならきっと大丈夫だと思います。だってエミーちゃん、好奇心が強い子ですもの。」
「!この短い間に、よく気が付きましたね。」
「ええ、だってエミーちゃん、私の婚礼石を見ている時の眼、とっても輝いていましたから!エミーちゃんはエミーちゃんなりに、色々知ろうとしてるんだなって、そう思いました。」
「そうなんです。・・・あの子は不安を抱えながらも、それ以上に沢山の事を知ろうとしてくれます。あの子なら大丈夫って、私もそう感じます。」
「ゾーエさんが一緒に居てくれる事も相まって、更にエミーちゃんは大きく成長していますね。」
「私がですか?」
「はい。エミーちゃんにとって、ゾーエさんはかけがえのない存在だと思いますよ。」
「エミーがそう思ってくれてるなら、とても嬉しいです・・・!」
二人は、ベンチに座って話しているエミーとマナの方を見る。
「・・・もうすぐ日が暮れますね。」
「はい・・・。・・・・・・あ!」
「? どうかしました?」
「あの、聞いておかなきゃと思って。家、近くに置いても大丈夫ですか?」
「ああ!全然大丈夫ですよ!」
「そうですか!ありがとうございます!」
「そうですね、そろそろあの人も帰って来ますし、夕飯の支度しないと。・・・・・・あの、もし良ければ明日もお話しませんか?」
「ええ、是非!」
「良かった~!マナもまだまだエミーちゃんと一緒に居たいみたいですし、今日は出掛けちゃってるけど、あの人にもお二人をご紹介したいので、嬉しいです!」
「アリシアさんの奥さんですね!私も明日、お会い出来るのを楽しみにしてます!」
二人は立ち上がり、ベンチに近付いていく。
「マナ、そろそろご飯よ。」
「エミー、そろそろお家出しましょっか。」
「えー!もうー!?」
そう言ってマナは渋々立ち上がる。
「じゃあえみー!またあしたね!」
マナは笑顔でそう言う。
「うん・・・。またあした・・・。」
エミーも少し微笑みながらそう言う。どうやらエミーも、マナと一緒に居るのが楽しかった様だ。
アリシアとマナの家の隣に、ゾーエは家を置いた。
スーーーーーーーーーー・・・・・・
まるで空気に段々色が付いていくかの様に、家が現れる。
「・・・・・・!」
「じゃあエミー。中に入りましょ!」
「うん・・・!」
いつもの光景。・・・何だか落ち着く・・・。帰るべき場所に帰ってきた様な暖かさ。
「エミー、お腹空いたでしょ。」
「うん・・・。」
「今日は沢山歩いたもんね!ご飯にしましょっか!」
「うん・・・!」
一方その頃、アリシア宅でもご飯の時間になっていた。
「・・・・・・?」
ガチャ・・・
「ただいまー。」
「あ、おかーさん!おかえりなさい!」
「おーマナかえってきたよー!」
女性はマナを抱き抱える。
「あら、おかえりなさいヘイリー!ご飯丁度出来たわよ!」
「ただいまアリシア!んー良い匂い!お腹空いたよ~!」
「それじゃあ、早速ご飯にしましょうか!」
「ごはんーー!」
マナは椅子に座る。
「ところでアリシア。」
「ん?なぁに?」
「隣、誰か引っ越してきたの?」
「ああ!実はね・・・・・・!」
「へぇ~そんな事があったんだ!」
「わたし、えみーとともだちになったんだよ!」
「良かったなぁマナ!」
「明日、ヘイリーも挨拶しなくちゃね!」
「あぁ!」
晩ご飯が出来上がった。いつものソファで二人はご飯を食べる。・・・今日はパスタだ。エミーは最初こそ、その紐の様な形状に不思議を感じたが、今はもう慣れた。・・・それに、ゾーエが作る料理は何でも美味しい。・・・ただ、フォークの使い方はまだ少しぎこちなかった。
「エミー、今日はどうだった?」
「たのし・・・かった・・・。」
「良かった!マナちゃんとはどんなお話をしたの?」
「・・・けっ・・・こん・・・?・・・よく・・・わからな・・・かった・・・。でも・・・たのし・・・かった・・・!」
「良かったぁ!マナちゃんとお友達になれたみたいね!」
「おとも・・・だち・・・?」
「ええ!一緒に居て楽しかったり、遊んだりする仲の事を、友達って言うのよ。」
「ともだち・・・なれた・・・かな・・・?」
「ええ、エミーはマナちゃんと友達になれてるわよ!」
「よかった・・・。・・・・・・ゾーエ・・・。」
「なぁに?」
「マナは・・・けっ・・・こん?・・・は・・・すきなひとと・・・・・・するって・・・いってた・・・。」
「ええ、そうね。」
「どんな・・・もの・・・?」
「そうねぇ、具体的に言うと・・・・・・・・・誓い合った証、かな。」
「ちかい・・・あう・・・?」
「ええ。あなたの事、ずっと好きです!って、お互いに約束するの。その証の様なものよ。」
「それが・・・けっ・・・こん?」
「ええ。・・・アリシアさんのブローチ、あったでしょ?」
「うん・・・。」
「あれはね、婚礼石って言って、結婚した人が身に付けるものなのよ。婚礼石、綺麗な宝石で出来ていたでしょ?あの宝石は、結婚した人同士が、お互いに贈り合うものなの。」
「おくり・・・あう・・・ほうせきを・・・?」
「ええ。アリシアさんのブローチ、ネオンブルーアパタイトで出来ているって言ってたでしょ?」
「うん・・・。」
「あれはね、いわば『相手の瞳』なの。自分が持っている瞳の色彩に等しい宝石を、結婚した相手に贈るのよ。つまり、アリシアさんの奥さんの瞳は、ネオンブルーアパタイトの力を持っている、って言う事ね。」
「なる・・・ほど・・・。・・・・・・マナの・・・おかあさん・・・二人・・・いるの?」
「ええ。いずれこの事も話そうかと思ってたんだけど・・・・・・良い機会だし、その事もお勉強しよっか!」
「うん・・・!」
二人は食べ終わった後の片付けを終わらせ、お風呂に入った。そして、二人とも寝る準備が出来た後、ソファでゆっくりとお勉強が始まった。
「魔女の世界には魔女しか入れないって、話した事あるでしょ?」
「うん・・・。」
「けど魔女の世界は最初からあった訳じゃ無いの。」
「そうなの・・・?」
「ええ。ある事が理由で、創られたの。魔女が暮らす世界としてね。元の世界とは全く違う世界。・・・けど、魔女の世界が創られた詳しい話は、別の場所でしようと思ってるの。」
「べつの・・・ばしょ・・・?」
「ええ。この先の草原をずっと歩いた先に、とっても大きな街があるの。そこに、この話に関して、勉強するにはもってこいの場所があるから、そこでね。」
「ん・・・。わかった・・・。」
「まあ取り敢えずそうやって、元の世界とは別に、魔女の世界が創られた訳だけど・・・大半の魔女は、元の世界では暮らさなかったの。」
「どうして・・・・・・?」
「まあ、これも色々あるんだけど・・・・・・強いて言うなら、暮らし辛いから、かな。」
確かにその通りだった。エミーにとっては、元の世界よりも、魔女の世界の方が遥かに暮らしやすい。・・・だが恐らく、もっと大きな理由があるんだろう。大半の魔女が、なのだから。エミーはそう思う。
「それで、魔女の世界に暮らす魔女達の為に、ある魔法が生まれたの。例外無く全ての魔女が使える魔法・・・。それが、マナちゃんにお母さんが二人いる理由。・・・二人の魔女が『愛』の感情を結晶に送り続ける事で、新しい魔女が産まれるの。」
「あい・・・?」
「そうね。エミーはまだ愛の感情がどんなのか、分からないわよね。でも、成長していく中で分かる様になるわ。」
「なる・・・?」
「ええ。絶対に。・・・・・・それに、私達魔女同士が惹かれ合う事は、不思議な事じゃないのよ。・・・・・・・・・まあ詳しい話は、次の街でね。」
「ん・・・。なんとなく・・・わかった・・・。」
「良かった。・・・ごめんね、結構話を飛ばしちゃってるけど・・・・・・これらの事に関しては、とても複雑で難しい話なの。ここで説明しても分かりにくいと思うから・・・。」
「つぎのまち・・・・・・なにがあるの・・・?」
「魔女と魔法に関しての全てがあるのよ。この世界で最も知識が納められている場所。どの魔女も皆一度は、必ず行く場所よ。」
「いつ・・・いくの・・・?」
「・・・・・・・・・そうねぇ、予定では明後日の朝ここを出発するつもりだから・・・明明後日の昼頃かしら。」
「ん・・・・・・わかった。」
「明日、マナちゃんと一日遊べるわよ。」
「ん・・・・・・。」
「じゃあ、そろそろ寝よっか!」
「うん。」
家の灯りを消す。・・・・・・早朝、皆が寝静まっている間に、陽の光は顔を出し始めていた。
ガタッ・・・!
「そう・・・来たのね・・・!嬉しいわ・・・・・・。」
女性は何かを感知し、椅子から立ち上がる。満面の笑みを浮かべながら・・・。
「また、会いましょう・・・。絶対に・・・・・・。」
エミーは初めて街を出た。魔女の世界に来て半月。何度か外には出たが、街の外に行くのは初めてだ。・・・少し緊張する。エミーはゾーエの手をしっかりと握り締めて歩く。
「エミー?不安?」
「ん・・・すこし・・・。でも・・・ゾーエが・・・いるから・・・だいじょぶ・・・。」
ゾーエは微笑む。そして少し俯きがちなエミーに、優しい声で言う。
「エミー。顔をあげてご覧。良い景色よ。」
エミーは恐る恐る顔を上げる。するとそこには・・・・・・。
「・・・・・・!」
どこまでも広がる草原が、そよ風になびいていた。晴れた青空も相まって、とても心地良い景色。エミーは思わず立ち止まる。
「いい・・・けしき・・・。」
「でしょ!」
二人は再び歩き始める。エミーにはもう不安そうな影は無い。むしろ好奇心を抱きながら歩いている。
エミーは草原をくまなく眺める。遠目では分からないが、近くで見れば多種多様な植物が群生している事が分かる。そのどれもが、とても小さな花を咲かせている。白、黄色、ピンク、青、紫、水色、黄緑、橙色・・・・・・・・・見たことの無い色まである。この色はなんて言うんだろう。
遠目では気付かない事だが、よく観察してみれば新たな発見が次々とある。まだ街を出て少ししか経っていないのに、こんなに不思議な発見が沢山あるとは・・・・・・。この世界は広いな・・・。エミーは少し感動を覚える。
「パッと見変わらない景色でも、よく見たら不思議でしょ?魔女の世界は沢山の不思議が詰まってるのよ。」
「すご・・・い・・・。」
「これからもっと不思議な景色が待ってるわよ!」
「たの・・・しみ・・・。」
本当に魔女の世界は不思議だ。ここに来てまだ半月しか経っていないが、エミーは大きな成長を遂げている。言葉も段々上手く話せる様になっているし、何より感情の幅が広がった。以前までは怒りと憎しみ以外には反応しなかったその心が、今では沢山のものに反応する様になっている。でもそれは、魔女の世界に来たからだけでは無い。ゾーエと一緒に居るから、様々な感覚を感じられる様になったのだ。・・・・・・・・・でも、それはまだ本来の感覚では無い。本来ならそれらの感覚を、もっと強く、もっと深く感じる事が、エミーには出来るのだ。だが今は、封印によって抑えこまれている。
いつか、封印が全て解けた時に・・・・・・もう一度、ここに来たいな・・・・・・。エミーはそんな事を考えながら、ゾーエと共に歩みを進める。
「少し休憩しましょっか。」
「うん・・・。」
結構歩いたと思う。エミーの体力を考えて、ゾーエは少し早めに休憩を取る事にした。
「エミー、お腹空いてない?丁度お昼時だし、何か食べる?」
「うん・・・!」
するとゾーエは鞄から大きな風呂敷を取り出し、広げた。
「かばん・・・ちいさい・・・。」
「ああ!これね、お家の中と繋がってるの。お家の中にあるものなら、何でも取り出せるのよ!」
「まほう・・・すごい・・・!」
「ふふっ。エミーもいつか使える様になるわよ。」
ゾーエは更に鞄から網代編みの弁当箱と、水筒を取り出す。
「実は朝作っておいたの!サンドイッチよ!」
「さんど・・・いっち・・・!」
エミーは何度かゾーエの家で、サンドイッチを食べていた。エミーのお気に入りの食べ物の一つだ。
水筒には冷たいお茶が入っている。それをコップに注ぎ、二人は昼食を摂る事にした。
「外で食べるのも気持ち良いでしょ?」
「うん。」
いつものソファで食べるご飯も好きだが、外で食べるのもまた違った心地良さがある。そよ風とそれになびく広い草原の中でご飯を食べるのは、気持ちが良かった。
サンドイッチを食べ終わった後、二人はゆっくりと景色を眺めていた。
二人が出発したあの街はもう見えない。本当に旅に出たんだな・・・。改めてエミーはそう実感する。これからどんな景色が待っているんだろう。少し不安を感じる。でも・・・。
「エミー、そろそろ出発する?」
「・・・うん・・・・・・!」
でも・・・・・・大丈夫。ゾーエがいるから。ゾーエが一緒に居てくれるだけで、不安な気持ちをかき消してくれる。心が暖かくなる。・・・それに、不安だけじゃない。この旅は好奇心も湧かしてくれる。見た事の無い景色、食べた事の無い食べ物、感じた事の無い感覚、そして感情・・・。エミーの心は抑えつけられながらも、それらへの期待とワクワクを感じさせている。きっと良い旅になる。この旅は、エミーをそう思わせてくれる様な、そんな旅になっていた。
本当にだだっ広い草原だ。朝から歩いているが未だ草原の中にいる。しかし、特に変わる事の無いこの景色だが、不思議と嫌にならない。ただ、ゾーエと一緒に歩いている、それだけで心地良さを感じている。しかし、景色の変化は唐突に起きた。
遠くの草原の中で、何かが動いている・・・。よく分からないが、そんなに大きくはない様に思う。エミーの歩みが少し遅くなる。突然現れたその影に、近付く事を躊躇うかの様に。しかし・・・・・・。
その影が、こちらに近付いて来た。エミーはビクッ!と身体を震わせ立ち止まる。
「エミー?」
「なにか・・・くる・・・!」
エミーはゾーエにしがみつく。その影に恐怖を感じるエミーだが、それとは対照的に、ゾーエはその様なものは一切感じさせない振る舞いだ。
「ああ!大丈夫よエミー。怖いものじゃ無いわ。よく見てご覧。大丈夫だから。」
エミーが恐る恐るその影を見る。・・・・・・人影?あれは人だ。それに自分と同じ位の大きさの人・・・。・・・・・・どんどんと近付いて来る!思わずエミーはゾーエの服に顔を埋めてしまう。
少し経った後、突然聞き覚えの無い声が聞こえた。
「こんにちは!」
小さな女の子の声。しかしエミーは、顔を向けるのが怖くて確認出来ない。
「あら、こんにちは!」
「とおくからみえたの!なにしにいくの?」
「私達は旅をしているのよ。」
「たび!?すごい!どこからきたの?」
「今日始めたばかりだから、そこの隣街よ。」
「あ、たまにいくとこ!おかーさんのほうきにのっていくの!そこからあるいてきたの?」
「ええ。歩いた方が色んな発見があるかと思って。」
「すごい!わたしとおないどしくらいなのに、たくさんあるいたんだね!」
エミーはまだ顔を埋めている。すると、ゾーエが優しく頭に手を置く。
「エミー。怖くないわ。ゆっくり見てご覧。貴女と同じ、子供の魔女よ。」
ゾーエは優しい声でエミーに言う。エミーは少しだけ顔を向けて、チラッと声の方向を見る。
とても可憐で可愛らしい少女だ。美しい金色のショートヘアに、宝石の様に輝く緑色の瞳。子供ながらに凛々しい顔をしている、同じ位の身長の少女。
「えみー!あなたはえみーっていうのね!わたしはまな!よろしくね!」
とても元気だ。・・・・・・この子も私と同じ魔女なのか。・・・・・・・・・初めて同年代の魔女を見た。この子も、他の魔女と同じ様に、綺麗だな・・・。
エミーは小さい声で返事をする。
「・・・・・・よ、よろ・・・・・・しく・・・・・・。」
「うん!よろしく!」
すると、マナは突然ピクッ!と反応し、道の向こうを振り向く。
「おかーさんがよんでる!ねえ、ついてきて!わたしたちのおうちがあるの!」
そう言うとマナは道なりに走って行く。
「元気で可愛らしい子ね!」
エミーはまだゾーエにしがみついている。すると、ゾーエが頭を撫でながら優しく言ってくれる。
「頑張ったわねエミー。よく挨拶出来たわ。」
「ん・・・・・・。」
「この世界で同年代の子に会うのは初めてね。少し不安かもしれないけど、大丈夫よ。だって、貴女と同じ魔女だもの。」
「うん・・・・・・。」
「きっと、この経験も、貴女の感情を解放するきっかけになるわよ。・・・・・・さぁ、行きましょ。」
「うん・・・。」
二人はマナの走って行った方向に、ゆっくりと歩き出した。
「あ!きたきた!おーい!」
夕暮れ時に二人が緩やかな坂を登り、頂点の部分に来た時、丁度坂道が下り終わっている部分でマナが大きく手を振っていた。
ゾーエが手を振り返す。
「ほら、エミーも降ってご覧。」
エミーはゆっくりと小さく手を振る。
二人はゆっくりと坂道を下って行く。少し先には、灯りのついたレンガ造りの家があった。
下り終わるとマナが笑顔で駆け寄って来る。
「あそこがわたしのおうち!」
マナは走って家の前に行き、大きな声で呼ぶ。
「おかーさーん!きたー!」
すると、扉が開いて一人の女性が外に出て来る。そして二人の方を振り向き、おっとりとした笑顔で話す。
「あ、こんにちは!マナの母のアリシアです。」
「こんにちは!隣街から来ました。ゾーエです。この子はエミーです。」
「・・・こん・・・にちは・・・。」
エミーはおずおずと挨拶をする。
「ゾーエさんにエミーちゃんね!マナから聞きました。・・・ご迷惑をかけていませんかね?」
「いえいえ!とても元気なお子さんですね!」
「元気過ぎるくらいですよ、あの人に似て!・・・ここを歩いて通って行く人は少ないんです。この子、どうやらそれが珍しかったみたいで・・・。大喜びで話してくれたんですよ!」
「そうだったんですね!確かに、この辺りは広いので箒で行き来する人が多いですよね。」
ゾーエとアリシアが話している中、エミーはずっとゾーエにしがみついていた。
エミーがアリシアの事をじっと見つめる。ブロンドの長い髪がそよ風になびき、黄色の瞳は美しく輝いている。そして、胸には水色の美しい宝石で出来たブローチを付けている。
「・・・・・・!」
エミーがブローチを眺める。すると、アリシアがそれに気付き、エミーに優しく声を掛ける。
「このブローチ、気になる?」
「・・・・・・!」
声を掛けられたエミーは驚き、ゾーエの後ろに隠れる。
「大丈夫よエミー。優しい方だから。・・・すいません。この子、あまり人に慣れていないんです。」
「いえいえ!お淑やかで可愛らしい子ですね!」
アリシアはしゃがんで、エミーに微笑みかける。
「エミーちゃん。ブローチ、近くで見てみる?」
「・・・・・・・・・。」
エミーはそーっとゾーエの後ろから出て来る。ゾーエにしがみつきながら、ゆっくりとアリシアに近付く。
「・・・!」
近くで見れば見る程、そのブローチは美しく輝いていた。
「このブローチはね、ネオンブルーアパタイトっていう宝石で出来ているのよ。」
「・・・きれい・・・。」
「ふふっ。ありがと!あの人も喜ぶわ。」
「あの・・・ひと・・・?」
「ええ。このブローチをくれた人よ。マナのもう一人のお母さん。」
「・・・?」
エミーはゾーエの方を向く。
「そうね。エミーにはまだ教えてなかったわね。」
ゾーエもゆっくりとしゃがみ、エミーと同じ目線になる。すると、マナも走って来て同じ様にしゃがみこむ。
「なになに?なんのはなし?」
「婚礼石の話よ。」
ゾーエは笑顔でマナに言う。
「こんれいせき!けっこんしたあかしだよ!」
「けっ・・・・・・こん・・・?」
「えみーけっこんしらないの?わたしがおしえたげる!」
「んあ・・・!」
マナはエミーの手を取り、家の傍にあるベンチに連れて行く。
「あ!こら!マナ!引っ張っちゃ駄目でしょ!・・・・・・すいません。あの子ほんとに元気過ぎて・・・。」
「いえいえ!エミーにとっても、こういう経験は大切です。同年代同士だからこそ、持てる感覚もありますから。・・・・・・・・・それに、今のあの子は、前とは違います。・・・・・・著しい感情の偏りも、無くなっていますし。」
「著しい、感情の偏りですか?」
「・・・・・・・・・はい。・・・・・・あの子は複雑な環境で育ったんです。だから、あの子に色んな事を経験して欲しくて、二人で旅をしてるんですよ・・・・・・。」
「そうだったんですね・・・。じゃあ、あの子が婚礼石の事とかを知らないのも・・・・・・?」
「はい・・・・・・・・・。幼い時にそういう事を教わっていないんです。・・・今は私が少しずつ教えていってる感じですが。・・・だからこそ、ああやって同年代の子と一緒に居るのは、エミーにとっても良い経験になると思って。」
「それは良かった。あの子がエミーちゃんに少しでも良い刺激を与えているのなら、嬉しいです!」
「・・・重ね重ねすいません・・・。」
「いえいえ!あの子も喜んでるみたいですし!私達で少しでも力になれる事があるなら、遠慮無く頼って下さい!」
「・・・ありがとうございます・・・!・・・アリシアさんも、マナちゃんも、本当に優しいですね。」
「ふふっ。ありがとうございます。でもそれはゾーエさんもですよ!ゾーエさんも、とっても優しい方です。・・・だって私達は皆、魔女なんですから。・・・慈愛と思いやりを持って生きる・・・。かつてから受け継がれている、私達の大切な文化です。」
「・・・そうですね。・・・・・・・・・この文化のお陰で、あの子も成長していると感じます。・・・あの子には、沢山の優しさに触れて欲しいんです。だからこうやって旅が出来るのも、魔女の世界に受け継がれている優しさがあるからなんですよ。」
「・・・・・・もしかしてエミーちゃんは、元の世界で育ったんですか?」
「! ・・・・・・・・・はい・・・。・・・あの子が魔女の世界に来たのはつい最近で・・・。だから、不安とかも感じやすいんです。あの子にとっては、全てが未知ですから・・・。」
「そうなんですね・・・。でも、エミーちゃんならきっと大丈夫だと思います。だってエミーちゃん、好奇心が強い子ですもの。」
「!この短い間に、よく気が付きましたね。」
「ええ、だってエミーちゃん、私の婚礼石を見ている時の眼、とっても輝いていましたから!エミーちゃんはエミーちゃんなりに、色々知ろうとしてるんだなって、そう思いました。」
「そうなんです。・・・あの子は不安を抱えながらも、それ以上に沢山の事を知ろうとしてくれます。あの子なら大丈夫って、私もそう感じます。」
「ゾーエさんが一緒に居てくれる事も相まって、更にエミーちゃんは大きく成長していますね。」
「私がですか?」
「はい。エミーちゃんにとって、ゾーエさんはかけがえのない存在だと思いますよ。」
「エミーがそう思ってくれてるなら、とても嬉しいです・・・!」
二人は、ベンチに座って話しているエミーとマナの方を見る。
「・・・もうすぐ日が暮れますね。」
「はい・・・。・・・・・・あ!」
「? どうかしました?」
「あの、聞いておかなきゃと思って。家、近くに置いても大丈夫ですか?」
「ああ!全然大丈夫ですよ!」
「そうですか!ありがとうございます!」
「そうですね、そろそろあの人も帰って来ますし、夕飯の支度しないと。・・・・・・あの、もし良ければ明日もお話しませんか?」
「ええ、是非!」
「良かった~!マナもまだまだエミーちゃんと一緒に居たいみたいですし、今日は出掛けちゃってるけど、あの人にもお二人をご紹介したいので、嬉しいです!」
「アリシアさんの奥さんですね!私も明日、お会い出来るのを楽しみにしてます!」
二人は立ち上がり、ベンチに近付いていく。
「マナ、そろそろご飯よ。」
「エミー、そろそろお家出しましょっか。」
「えー!もうー!?」
そう言ってマナは渋々立ち上がる。
「じゃあえみー!またあしたね!」
マナは笑顔でそう言う。
「うん・・・。またあした・・・。」
エミーも少し微笑みながらそう言う。どうやらエミーも、マナと一緒に居るのが楽しかった様だ。
アリシアとマナの家の隣に、ゾーエは家を置いた。
スーーーーーーーーーー・・・・・・
まるで空気に段々色が付いていくかの様に、家が現れる。
「・・・・・・!」
「じゃあエミー。中に入りましょ!」
「うん・・・!」
いつもの光景。・・・何だか落ち着く・・・。帰るべき場所に帰ってきた様な暖かさ。
「エミー、お腹空いたでしょ。」
「うん・・・。」
「今日は沢山歩いたもんね!ご飯にしましょっか!」
「うん・・・!」
一方その頃、アリシア宅でもご飯の時間になっていた。
「・・・・・・?」
ガチャ・・・
「ただいまー。」
「あ、おかーさん!おかえりなさい!」
「おーマナかえってきたよー!」
女性はマナを抱き抱える。
「あら、おかえりなさいヘイリー!ご飯丁度出来たわよ!」
「ただいまアリシア!んー良い匂い!お腹空いたよ~!」
「それじゃあ、早速ご飯にしましょうか!」
「ごはんーー!」
マナは椅子に座る。
「ところでアリシア。」
「ん?なぁに?」
「隣、誰か引っ越してきたの?」
「ああ!実はね・・・・・・!」
「へぇ~そんな事があったんだ!」
「わたし、えみーとともだちになったんだよ!」
「良かったなぁマナ!」
「明日、ヘイリーも挨拶しなくちゃね!」
「あぁ!」
晩ご飯が出来上がった。いつものソファで二人はご飯を食べる。・・・今日はパスタだ。エミーは最初こそ、その紐の様な形状に不思議を感じたが、今はもう慣れた。・・・それに、ゾーエが作る料理は何でも美味しい。・・・ただ、フォークの使い方はまだ少しぎこちなかった。
「エミー、今日はどうだった?」
「たのし・・・かった・・・。」
「良かった!マナちゃんとはどんなお話をしたの?」
「・・・けっ・・・こん・・・?・・・よく・・・わからな・・・かった・・・。でも・・・たのし・・・かった・・・!」
「良かったぁ!マナちゃんとお友達になれたみたいね!」
「おとも・・・だち・・・?」
「ええ!一緒に居て楽しかったり、遊んだりする仲の事を、友達って言うのよ。」
「ともだち・・・なれた・・・かな・・・?」
「ええ、エミーはマナちゃんと友達になれてるわよ!」
「よかった・・・。・・・・・・ゾーエ・・・。」
「なぁに?」
「マナは・・・けっ・・・こん?・・・は・・・すきなひとと・・・・・・するって・・・いってた・・・。」
「ええ、そうね。」
「どんな・・・もの・・・?」
「そうねぇ、具体的に言うと・・・・・・・・・誓い合った証、かな。」
「ちかい・・・あう・・・?」
「ええ。あなたの事、ずっと好きです!って、お互いに約束するの。その証の様なものよ。」
「それが・・・けっ・・・こん?」
「ええ。・・・アリシアさんのブローチ、あったでしょ?」
「うん・・・。」
「あれはね、婚礼石って言って、結婚した人が身に付けるものなのよ。婚礼石、綺麗な宝石で出来ていたでしょ?あの宝石は、結婚した人同士が、お互いに贈り合うものなの。」
「おくり・・・あう・・・ほうせきを・・・?」
「ええ。アリシアさんのブローチ、ネオンブルーアパタイトで出来ているって言ってたでしょ?」
「うん・・・。」
「あれはね、いわば『相手の瞳』なの。自分が持っている瞳の色彩に等しい宝石を、結婚した相手に贈るのよ。つまり、アリシアさんの奥さんの瞳は、ネオンブルーアパタイトの力を持っている、って言う事ね。」
「なる・・・ほど・・・。・・・・・・マナの・・・おかあさん・・・二人・・・いるの?」
「ええ。いずれこの事も話そうかと思ってたんだけど・・・・・・良い機会だし、その事もお勉強しよっか!」
「うん・・・!」
二人は食べ終わった後の片付けを終わらせ、お風呂に入った。そして、二人とも寝る準備が出来た後、ソファでゆっくりとお勉強が始まった。
「魔女の世界には魔女しか入れないって、話した事あるでしょ?」
「うん・・・。」
「けど魔女の世界は最初からあった訳じゃ無いの。」
「そうなの・・・?」
「ええ。ある事が理由で、創られたの。魔女が暮らす世界としてね。元の世界とは全く違う世界。・・・けど、魔女の世界が創られた詳しい話は、別の場所でしようと思ってるの。」
「べつの・・・ばしょ・・・?」
「ええ。この先の草原をずっと歩いた先に、とっても大きな街があるの。そこに、この話に関して、勉強するにはもってこいの場所があるから、そこでね。」
「ん・・・。わかった・・・。」
「まあ取り敢えずそうやって、元の世界とは別に、魔女の世界が創られた訳だけど・・・大半の魔女は、元の世界では暮らさなかったの。」
「どうして・・・・・・?」
「まあ、これも色々あるんだけど・・・・・・強いて言うなら、暮らし辛いから、かな。」
確かにその通りだった。エミーにとっては、元の世界よりも、魔女の世界の方が遥かに暮らしやすい。・・・だが恐らく、もっと大きな理由があるんだろう。大半の魔女が、なのだから。エミーはそう思う。
「それで、魔女の世界に暮らす魔女達の為に、ある魔法が生まれたの。例外無く全ての魔女が使える魔法・・・。それが、マナちゃんにお母さんが二人いる理由。・・・二人の魔女が『愛』の感情を結晶に送り続ける事で、新しい魔女が産まれるの。」
「あい・・・?」
「そうね。エミーはまだ愛の感情がどんなのか、分からないわよね。でも、成長していく中で分かる様になるわ。」
「なる・・・?」
「ええ。絶対に。・・・・・・それに、私達魔女同士が惹かれ合う事は、不思議な事じゃないのよ。・・・・・・・・・まあ詳しい話は、次の街でね。」
「ん・・・。なんとなく・・・わかった・・・。」
「良かった。・・・ごめんね、結構話を飛ばしちゃってるけど・・・・・・これらの事に関しては、とても複雑で難しい話なの。ここで説明しても分かりにくいと思うから・・・。」
「つぎのまち・・・・・・なにがあるの・・・?」
「魔女と魔法に関しての全てがあるのよ。この世界で最も知識が納められている場所。どの魔女も皆一度は、必ず行く場所よ。」
「いつ・・・いくの・・・?」
「・・・・・・・・・そうねぇ、予定では明後日の朝ここを出発するつもりだから・・・明明後日の昼頃かしら。」
「ん・・・・・・わかった。」
「明日、マナちゃんと一日遊べるわよ。」
「ん・・・・・・。」
「じゃあ、そろそろ寝よっか!」
「うん。」
家の灯りを消す。・・・・・・早朝、皆が寝静まっている間に、陽の光は顔を出し始めていた。
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