Emmy Liebe―エミー・リーベ―

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番外編「無辺図書館冒険譚」

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    無辺図書館の管理人であり、最高位魔女の一人でもある、『マヤ』。偉大なる魔女達の内の二人、『フレイア』と『ルーナ』、そして彼女達の子孫である『エラ』も、厄災を鎮めた偉大なる魔女達の一人だ。マヤは、そんな家系に生まれた魔女である。そして、彼女の最愛のパートナーであり、第二位の魔力を持つ、低位の魔女、『マリッサ』。クールな見た目とは裏腹に、恥ずかしがり屋で怯えやすい魔女だ。
    そんな彼女達の出会いは、幼少期にまで遡る・・・・・・・・・・・・。


「んんーーー・・・・・・。難しいわね・・・・・・・・・。」
    一人の女性が、ダークブラウンでかためられたシックな部屋で、唸っている。
「お疲れ様、エルシー。・・・・・・どうしたの?」
    女性が飲み物を二つ持って、傍にやってくる。
「ルシア、ありがとう。・・・いえね、今複製本作ってたとこなんだけど・・・・・・。この本だけは複製が難しいわ・・・・・・。」
「そうでしょうね。そう簡単に複製出来る内容じゃないもの。」
「早くゾーエさんに渡してあげたいんだけどね・・・・・・。」
「・・・・・・そうね。それだけずっと預かってるもんね・・・・・・。」

バタン・・・・・・!

    突然扉が開く。
「遊んでくるから!」
「あ!マヤ!気を付けるのよ!」
「分かってるー!」
「あんまり魔法使っちゃ駄目よ!」
「はーい!」

タッタッタッタッタッタッ・・・・・・・・・!

    ワインレッドの髪をした少女は、元気に走る。

ガチャ・・・キィィ・・・・・・・・・

「わぁーー・・・・・・!やっぱいつ見ても広いわね!」
    少女の視界に、広大な光景が映り込む。彼女の名は『マヤ』。無辺図書館の管理を代々受け継いでいる家系の、娘である。


「今日は何処に行こっかなー。三階は昨日行ったでしょ?四階は・・・・・・一昨日行ったか。五階は・・・・・・行ってないわね!五階行こっと!」
    そう言うとマヤは、全速力で走り出した。

バッ・・・・・・・・・!

    中央の吹き抜けに向かって、思いっ切りジャンプする。
「わぁーーー!!!」
    暫く落下した後、マヤは壁を蹴る様に、足を横に叩きつける。

スッ・・・・・・・・・

    すると、まるで見えない壁を蹴って方向転換したかの様に、下に落下していたマヤの体は、横に飛んで行く。

スタッ・・・・・・!

「五階到着!」
    かなり天真爛漫な少女だ。マヤは五階に到着すると、そのまま駆け出して行く。
「お母さんが迎えに来るまでに、何処までいけるかな!?」
    五階フロアは、殆どが書物で埋め尽くされている。大人でも全く手が届かない程の高さの本棚がびっしりと並べられてあり、パッと見景色は変わらない。しかし、その広さは途方もなく、まるで限界が見えてこない。そしてそれは無辺図書館のごく一部でしかなく、まだまだ何十階も広大な敷地がある。その為、大人ですら迷子になりやすい。しかし迷子になると、直ぐに無辺図書館全体にかけられている魔法が、その人を感知する。そして、無辺図書館に従事している者が、迎えに来てくれるのだ。・・・・・・もっとも、その広大さが故に、迎えにも時間が掛かってしまうのだが・・・・・・。直ぐに迎えに来てくれる場合は、無辺図書館に従事する者の中に、『転移魔法』が使える者がいる場合のみである。しかし、転移魔法は高位以上の魔女にしか習得出来ず、自ずと使える者も少ない。いくら瞬時に迎えに行けると言っても、道に迷っている人が多ければ多い程、迎えにも時間が掛かってしまう。・・・・・・無辺図書館に従事する者が迎えに来てくれるまで、最長で三時間程かかるとされる。しかし逆に言えば、どんな場所で迷おうと、どれだけ焦って走り回ろうと、三時間あれば必ず見つけ出してくれる、という事だ。
    そんな無辺図書館に務める者は、何人もいる。そして、最低でも十人は転移魔法を使える者がいる。あまりにも広大な無辺図書館で、三時間を超えて迷子になった者が今まで一度もいないのは、その為だ。
    無辺図書館は十八時に閉まる。閉館一時間前になると、二階から最上階までにいる者を、全員一階に連れ戻す。その後、迷子の有無を確認。迷子がいれば一階中央部まで連れて行く。そして二階から最上階に誰も居なくなると、二階から最上階までを封鎖する。一時間後、閉館時間になると、無辺図書館に居る事の出来る者はいなくなる。無辺図書館全体にかけられている、魔法自体がそうさせるのだ。・・・・・・しかし、唯一ずっと無辺図書館に居る事の出来る者がいる。それは、管理人とその家族、そして管理人が認めた者だけだ。
    無辺図書館はあまりにも広大であり、その歴史も全ての建物の中で最古である。何せ、無辺図書館を創り出したのは、『神位の魔女達』の内の二人、フレイアとルーナの娘であるからだ。・・・・・・その歴史は三千年。三千年間、代々その家系が管理をし、護ってきた。三千年もの間、無辺図書館の管理を支え続けている魔法。無辺図書館全体にかけられている魔法。それは、創設者の魔女が遺した、最高位でもトップクラスの魔力により発動されている、『転移魔法』と『感知』の応用によるものだ。
    最高位魔法と、そのシステムにより、無辺図書館は絶対的な管理の元存在している。しかし、小さな子供がそれを理解するのは、少しばかり難しい。彼女達も、幼少期の頃はそうだった・・・・・・・・・。


    マヤは五階の本棚の間を走り回る。まるであみだの様に、右に行ったり左に行ったりしていた。
「んーー・・・・・・・・・景色変わんないなーー・・・・・・。五階は本だけなのかな・・・・・・。」
    マヤがそう言いながら走っていると、どこかから子供の泣く声が聞こえてきた。
「ん?誰か泣いてる・・・・・・?」
    マヤは立ち止まり、耳を澄ませる。
「・・・・・・・・・こっちだわ!」
    マヤは子供の泣く声がする方に走って行く。そして、本棚の角を曲がった所に・・・・・・・・・
「うぅぅ・・・・・・ぐすっ・・・・・・おかーさん・・・・・・ぐすっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・・・・」
    そこには、しゃがみこんで泣いている、迷子の少女が居た。
「居た!!」
「・・・・・・・・・!!!!」

ビクッ!!

    その少女はマヤの声にビックリする。
「・・・・・・・・・ぇ・・・・・・?」
    少女が顔を上げ、マヤの方を見る。すると、マヤは少女に駆け寄り、話し掛ける。
「可愛い子ね!」
「・・・・・・!!」
「俯いてちゃ勿体無いわ!はい!」
「・・・・・・へ・・・・・・?」
    マヤはハンカチを渡す。
「涙拭いて!」
「あ・・・・・・・・・え・・・・・・。」
「はい!」
「え・・・と・・・・・・あ、ありが・・・とう・・・ございます・・・・・・。」
    少女は目に溜まった涙を拭く。すると・・・・・・

ペタッ・・・・・・!

    マヤが少女の頬っぺたを両手で押さえ、ジーッと眼を見つめる。
「・・・・・・・・・・・・」
「え・・・・・・え・・・・・・・・・!?」
「うん!綺麗な瞳ね!ズバリ、ベニトアイトとみたわ!」
「え・・・・・・そ、そう・・・・・・なんです・・・・・・か・・・・・・?」
「ええ!多分ね!!」
「・・・・・・き、きれい・・・・・・!」
「どしたの?」
「あ・・・・・・いえ・・・・・・・・・なんでも・・・・・・ない、です・・・・・・。」
「貴女名前は?」
「え・・・・・・マ、マリッサ・・・・・・・・・」
「マリッサね!よろしく!私はマヤよ!」
「は・・・・・・はい・・・・・・よろしく・・・・・・おねがい、します・・・・・・・・・・・・。」
「マリッサ、貴女迷子になっちゃったの?」
「・・・・・・は・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・。」
「そっか・・・・・・・・・よし!立って!私が連れてくから!」
    マヤはグイッとマリッサの両手を引っ張り上げ、立ち上がらせる。
「あわ・・・・・・・・・ど、どこに・・・・・・行くん、ですか・・・・・・?」
「貴女のお母さんのとこよ!」
「ほ・・・・・・・・・ほん、とに・・・・・・!?」
「ええ!任せなさい!えーっとねぇ・・・・・・・・・」
    マヤは辺りを見渡す。本棚だらけだ。どちらがどちらかすら、全く分からない光景が広がる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
「・・・・・・み・・・道・・・・・・わ、分かり・・・・・・・・・ますか・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かんないわね・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・え・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??・・・・・・・・・どどどどどどうしよう・・・・・・・・・も、もう・・・・・・・・・ずっと・・・・・・・・・・・・ま、迷子・・・・・・!!??」
    マリッサは慌てる。
「マリッサ!!大丈夫よ!!こういう時はね、取り敢えず冒険するの!!」
「え・・・・・・・・・そ、そうなん、ですか・・・・・・?」
「ええ!冒険よ!何も分からないから不安になるのよ!でも冒険すれば、好奇心で不安なんて無くなるわ!!」
「そ・・・そうで、しょうか・・・・・・?」
「心配しなくても大丈夫よ!私がエスコートしてあげる!」
「え、えと・・・・・・・・・は、はい・・・・・・・・・!」
    マヤとマリッサは歩き出した。


「エルシー、迷子の感知があったようね。場所は?」
「五階よ。新生魔法書のとこ。二人いるわ。・・・・・・・・・一人はマヤだけど・・・・・・・・・。」
「あの子また迷子になったのね・・・・・・。手の空いてる高位魔女は?」
「皆、迷子の迎えに出てるわ。今日はやけに人が多いの。」
「じゃあ私が迎えに行くわ。」
「気を付けてね。あの子多分、相当歩き回ってるから・・・・・・。」
「大丈夫よ。行ってくるわね。」


「んーーー・・・・・・・・・景色変わんないなぁ。」
「・・・・・・変わり、ませんね・・・・・・・・・。」
    二人は歩き始めたは良いものの、全く何処へ向かえば良いかも分からず右往左往していた。
「・・・・・・・・・・・・よし!」
「え・・・・・・・・・?」
「行くわよマリッサ!」
「ど・・・何処へですか・・・・・・?」
「景色が変わるとこまで走るの!」
「ええ・・・・・・!?は、走るんですか・・・・・・?」
「走るの苦手?」
「と・・・・・・得意では・・・・・・ないです・・・・・・。」
「そっか・・・・・・・・・。じゃあ!」

    ガバッ・・・・・・!

    マヤはマリッサを抱き抱えた。
「え・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?な、なん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
「良いから任せなさい!私こう見えても魔法得意なのよ!」
    そう言うとマヤは一気に走り出す。

ダッ・・・・・・・・・!!

「どう?速いでしょ!?」
「はわわゎゎゎゎゎゎゎ・・・・・・・・・・・・・・・は、速過ぎます・・・・・・・・・・・・・・・!!お、おち、落ちる・・・・・・・・・・・・!!」
「しっかり掴まってなさい!」
「ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁあ・・・・・・・・・!!」
    マヤは物凄いスピードで駆け抜ける。速過ぎて近くの本棚がよく見えない。
「あ!マリッサ!ハシゴがあるわよ!!」

キキィィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・!!

    マヤはブレーキをかける。
「あぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・!!」
「っしょっと・・・・・・。ほら、マリッサ!ハシゴ!」

ガクガクガクガク・・・・・・・・・

    初めての猛スピードを体感したマリッサは、少し震えている。
「マリッサ!?震えてる!!風邪引いちゃった!?」
「い・・・・・・いえ・・・・・・風邪・・・・・・というか・・・・・・風が・・・・・・凄くて・・・・・・」
「やっぱり風邪あるの!?待ちなさいよ!治癒魔法使うから・・・・・・!」
「い、いや・・・・・・風邪は、無いです・・・・・・。」
「ほんと?」
「はい・・・・・・その、あまりにも・・・・・・速かったから・・・・・・足が・・・・・・震えて・・・・・・」
「怖かった?」
「だ、大丈夫です・・・・・・!!怖くは・・・無いです・・・・・・!!」
「ほんと?」
「は・・・はい・・・・・・!!もももちろん・・・・・・!!」
「そう、怖かったのね・・・・・・。ごめんね、ちょっとスピード出し過ぎちゃった・・・・・・。」
「え・・・!?・・・こ、怖くは無かったですよ・・・・・・!?」
「でも、足震えてるでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・は、はい・・・・・・・・・。」
「歩けそうにないなら、このまま行こっか!」
「ええぇぇぇ!?」
「・・・・・・・・・いや・・・・・・・・・?」
「い、いやじゃ・・・・・・無い、です・・・・・・けど・・・・・・・・・は、恥ずかしいというか・・・・・・・・・!」
「マリッサは恥ずかしがり屋さんなのね!」
「え!いや!そんな、事無い、ですよ・・・!?」
「・・・・・・じゃあこのまま行っても大丈夫ね!」
「え、あ・・・・・・は、はい・・・・・・・・・!」


「んー・・・・・・このハシゴ、何処に繋がってるんだろう?」
    マヤはハシゴの上を覗きながら言う。
「よし!マリッサ、行ってみるわよ!」
「え!?・・・・・・このハシゴ・・・・・・何処に繋がってるか・・・・・・分からないん・・・・・・ですよね・・・・・・?」
「だから行くのよ!」
「ええぇ!?」

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ・・・・・・

「お!マリッサ!上が見えてきたわよ!」
「うぅ・・・・・・高い・・・・・・。」
    マヤはハシゴを登りきる。
「んしょっと・・・・・・・・・。はい、マリッサ!」
    マヤはマリッサに手を伸ばす。
「あ・・・ありがとう、ございます・・・。」
    二人はハシゴの上まで登り、その景色を眺める。
「何か、狭いとこね。」
「く、暗いです・・・・・・。」
    暗がりの中、少し狭い道がずっと真っ直ぐに続いている。両脇には、本が沢山並べられてあった。
「よし!進むわよ!」
「えぇ!?も、戻らないんですか!?」
「折角ここまで来たんだから!進むわよ!」
「で、でも・・・・・・暗いです・・・・・・!」
「それなら安心しなさい!」

ボッ・・・・・・!

    マヤは掌から、明るく光る炎を出した。
「・・・・・・!わぁ・・・・・・綺麗・・・・・・!」
「私の五元素魔法の最適性は『火』なの!火に関しては、私に任せて!」
「凄い・・・・・・!」
「マリッサは?最適性何?」
「え、えと、『水』・・・?らしい、です・・・・・・。」
「『水』!良いわね!私の火が凄い燃えちゃった時に、消してもらえるわね!」
「え!?ええ!?す、凄い燃えちゃうんですか!?」
「大丈夫大丈夫!五元素魔法は制御出来るから!」
    炎が二人の少し前の方で浮いている。二人はゆっくりと進んで行く。マリッサはマヤの腕にしがみつきながら、恐る恐る歩いている。
    暫く歩いた後、二人の目の前に再びハシゴが現れた。
「またハシゴね。」
「の、登るんですか?」
「ええ、勿論!」


「結構登ったわね。」
「こ、怖かったぁ・・・・・・。」
「怖かった?」
「・・・・・・え!?い、いえいえ!だ、大丈夫です!」
「そう?・・・・・・・・・・・・ん?」
「あ・・・・・・!」
    少し先に明かりが見える。
「明かりがあるわね!きっと出口よ!」
「・・・・・・は、はい・・・・・・!」
    二人は明かりの方へと歩く。
「・・・・・・・・・またハシゴね。」
「く、降りですよ・・・・・・!?」
「降り、嫌なの?」
「な、何か・・・・・・降りの方が・・・・・・怖くないですか・・・・・・!?」
「そう?よく分かんないけど、大丈夫よ!マリッサが滑って落ちても、私がキャッチするから!」
「そ・・・そういう事、言わないで下さいよぉぉ・・・・・・・・・余計怖くなります・・・・・・。」
「やっぱりマリッサって怖がりなのね!」
「ち、違います・・・・・・!」

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ・・・・・・・・・・・・

「到着!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・怖かった・・・・・・・・・・・・。」
「あれ?ここって・・・・・・」
「し、知ってる場所ですか・・・!?」
「六階ね!私達、六階に着いたみたい!」
    二人は無辺図書館の六階に辿り着いた。五階とは違い本棚があまり無い。その代わり、ガラスケースに入った様々なものが多く展示されている。
「・・・・・・何か・・・不思議な物が、沢山、ありますね・・・。」
「うん。全然分かんない物だらけ。」
「これは・・・・・・何で、しょうか?」
「どれどれ・・・・・・。」
    そのガラスケースの中には、真ん丸の石が入っていた。
「・・・・・・・・・ただの丸い石にしか見えないわね。」
「・・・・・・はい・・・・・・・・・あ、何か書いてますよ・・・。」
「ん?」
    二人は、ガラスケースの下に付けられたプレートを見る。
「・・・・・・・・・占いの道具?」
「・・・・・・何の・・・占いでしょう・・・?」
「えと、なになに・・・・・・・・・魔力を、送り込む事により、その人の、五感の、最も、優れている、部分が、石に、刻まれる・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・よく分かんない道具ね。」
「はい・・・・・・・・・。」
    その後も二人は色々な展示を見て回る。
「あ!これは知ってるわよ!適正石!五元素魔法の最適性が分かる道具!」
「あ・・・!私もこれで最適性、知りました・・・!」
「最適性って、必ず一人一つだけあるのよね!」
「そう、みたいですね!」
「ねえマリッサ、知ってる!?お母さんが言ってたんだけど、五元素の中でいっちばん凄い最適性って、『土』らしいよ!」
「そう、なんですか・・・・・・?・・・・・・一番、珍しい最適性って・・・事でしょうか・・・?」
「何かね、お母さんが言うには、一番、はかいりょく?があるんだって。因みに一番珍しいのは『命』らしいよ!」
「はかい、りょく・・・・・・。『命』が、一番珍しいんですね!」
「らしいよ!」

「ねえマリッサ、これ何か分かる?」
「えと・・・いや・・・これは、何でしょう・・・・・・?」
    そこには美しい銀色の器が二つあった。しかし、通常の器とは見た目が異なり、木の幹を模した様な美しい金色の彫刻から更に二つの枝を模した彫刻が伸びており、その枝に乗っているかの様に、銀色の器が二つある。更に、木の幹を模した彫刻の頂点には、キラキラと眩き、光り輝く花が咲いていた。
    二人は説明の書かれたプレートを読む。
「・・・・・・こんれいの、うつわ・・・・・・だって。」
「こん、れい・・・?」
「えっとねー・・・・・・こんれいのぎ、を、あげるさいに、用いる、道具・・・・・・お互いの、こんれいせき、を、銀の器に、乗せ、こんれいせき、を、贈り合う・・・・・・・・・。」
「何か・・・難しい、ですね・・・。」
「ええ・・・・・・。取り敢えず綺麗ね!」
「・・・はい・・・・・・!」
    二人はその後も、色々な物を見て回っていた。
「ねえマリッサ、あれは!?あれ何だと思う!?」
「えと、中々難しいですね・・・・・・。」
    二人は展示品がどの様な物なのかを、クイズで出し合っていた。
「マ、マヤ・・・!これ、何か凄いです・・・・・・!何だと思います・・・・・・!?」
「これ!?これはーー・・・・・・んーーー・・・・・・・・・」

バッ・・・!

「説明は、見ちゃダメですよ・・・・・・!」
    マリッサがプレートを手で隠す。
「惜しい!後ちょっとで見えたのになー!」

「残念!マリッサ外れ!」
「ええ!?・・・結構、自信あったんですけどね・・・・・・。」

「マヤ不正解です!」
「え!?今のは当たったと思ったんだけど・・・。」
「正解は、こちらです!」
「なになに・・・・・・・・・これは当てられないわよ・・・・・・!」
「えへへ」

「えぇ!?外れですか!?せ、正解!正解教えて下さい!!」
「じゃーん!」
「えっと・・・・・・・・・む、難し過ぎます・・・!」
「ははは!さっきのお返しー!」

    気が付けば二人は、迷子である事を一切忘れて楽しんでいた。


「色々見て回ったわね!」
「はい!」
    二人は近くにあったベンチに座って、少し休憩していた。
「するとその時ね、箒が勝手にぶっ飛んじゃって!」
「あははっ!大変でしたね!」
    二人はベンチで仲良く話をしていた。

チョン・・・・・・

「「あ・・・!」」
    ふとした拍子に、肩が当たる。お互いの指先が、少し触れ合う。お互いの髪が、肌に触れる・・・・・・・・・何だろう、この感覚は・・・・・・・・・心臓がドキドキ鳴っている。顔が、熱くなる。
    ・・・・・・マリッサに、この音聞こえてないかな。聞こちゃってたらどうしよう・・・・・・
・・・・・・マヤに、この音聞こえてたら、何か、恥ずかしい・・・・・・
   お互いはまだその感覚を、心の内に秘めていた。


「はあ・・・・・・。やっと追いついた・・・・・・。」
「あ、お母さん!」
「え、あの、えと、こ、こんにちは!マ、マリッサ、です・・・・・・!」
「あら!こんにちは!マリッサちゃんって言うのね!うちの子が迷惑かけてない?」
「いえ、全然・・・!・・・むしろ、楽しかった・・・です・・・!」
「良かった!さあ、行くわよ。」
「え?行くって何処に?」
「決まってるでしょ?迷子室よ。マリッサちゃん、迷子でしょ?」
「「あ・・・。」」
    お互い、すっかり忘れてた。


「マリッサ!大丈夫だった!?すいません、うちの子が・・・・・・!この子、ほんとに怖がりで・・・・・・。もう勝手にどっか行っちゃ駄目だからね?」
「うん・・・・・・。」
「マ、マリッサ!・・・・・・・・・また会おうね!」
「・・・・・・!はい・・・・・・!」
    マリッサは帰っていった。すると、少しした後に一人の女性が無辺図書館に訪れる。
「あ!ゾーエさん!こんにちは!」
「あら、ルシア!こんにちは!」
「あ!ゾーエ!」
「こらマヤ!呼び捨てにしないの!」
「別に構いませんよ!マヤ今日も元気ね!」
「うん!ねえねえ聞いてゾーエ!」
「あら、どうしたの?」
「私ね、恋しちゃったかも!!」
「「え!?」」
    ゾーエとルシアはびっくりする。
「マリッサって子でね!すっごく可愛い子なのよ!」
「ま、まさかマヤの口から恋って言葉が出てくるとは思わなかったわ・・・。」
「はい・・・・・・。流石の私もびっくりしました・・・・・・。」
「また会いたいなぁ・・・・・・。」


「ねえ、お母さん・・・。」
「ん?どうしたのマリッサ?」
「私、その、こ、恋・・・!しちゃった、かも・・・・・・。」
「あら!どんな子に恋したの?」
「マ、マヤって子でね・・・・・・すっごく、綺麗な子・・・・・・。」
「良いわね!マリッサも恋する歳になったのね・・・・・・!」
「・・・・・・また・・・・・・会いたいな・・・・・・。」




「ふぅ・・・・・・。しかし、中々やる事多いのね。ここの仕事って・・・・・・。」
    十六になったマヤは管理人見習として、無辺図書館に従事していた。
「次は・・・・・・六階の資料の確認ね・・・・・・。」
    マヤは少し前に習得した転移魔法で、六階まで移動する。

スゥ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「・・・・・・・・・!!!」」

    マヤが転移した先は、あのベンチの近くだった。そこには、とても美しい女性が座っていた。その鮮やかな青紫色の髪、ベニトアイトの瞳。あの時出会った、今でも秘かに恋心を抱いている、あの人・・・・・・・・・・・・。

    マリッサは、久し振りに来た無辺図書館で、あの時の思い出のベンチに座っていた。あの時出会った、今でも秘かに恋心を抱いている、ワインレッドの髪をした、レッドダイヤの瞳の、美しい女性・・・・・・・・・あの人・・・・・・・・・・・・。

「「え、えっと!!」」
     被った。何だか少し照れてしまう。・・・・・・いや、照れてる場合じゃない!ちゃんと言わないと!
「「もしかしてマヤ!?もしかしてマリッサ!?」」
「「・・・・・・う、うん!!そう!!」」
    また被った。しかも連続で。流石に照れる。・・・・・・でも!この場所で!思い出の場所でまた会えた!今言わなきゃ!ずっと、秘めてたこの想いを!!
「「あの時からずっと好きです!!もし良ければお付き合いからでも!!」」

かぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・!!!!!

    お互いの顔が真っ赤になる。告白まで被るか・・・・・・!!


「マリッサ、あの時の事、覚えてる?」
「はい、勿論!五階の本棚だらけの所で、迷子になって泣いてた私を、マヤが見つけてくれたんです!それで、ハンカチを渡してくれて・・・!」
「一緒に冒険したのよね!」
「はい!マヤが突然私を抱き抱えた時は、びっくりしましたけど・・・!」
「あの時スピード出し過ぎちゃって、マリッサ怖がってたわよね!」
「こ、こわ・・・!!怖がっては無いです!!」
「ふふっ!あの時と同じ事言ってる!」
「だって事実ですもん!!」
「あの後ハシゴに登ってったのよね!」
「何か暗くて狭い所でした・・・・・・。」
「マリッサ、私の腕にしがみついてね!」
「だ、だって!!」
「その後ハシゴ降る時も、降りの方が怖いって」
「だって、降りの方が怖いですもん!」
「それで六階に行って」
「クイズしましたよね!」
「そう!マリッサがあまりに難しい問題だすからさ!全然正解出来なくて!」
「お返しくらっちゃいましたけどね!」
「それで、このベンチ座ってさ。」
「・・・・・・あの時、心臓の音聞こえてたら恥ずかしいなって、思ってました・・・・・・。」
「・・・・・・私も。聞こえてたらどうしよって思ってた・・・・・・。」
「あの後、マヤのお母さんが迎えに来て下さって・・・・・・」
「そうそう!迷子になってる事、すっかり忘れてたわ!」
「私もです!それであの後、帰る時に、マヤが言ってくれたんですよね、」
「「また会おうね」」
「・・・でしょ!?」
「・・・!はい!!・・・・・・また、会えました・・・・・・!」
「ええ、しかも、ここで・・・・・・!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
    二人はじっと見つめ合う。
「マリッサ・・・・・・」
「マヤ・・・・・・」
    二人の顔が少しずつ近づいていく。
    二人が初めて会ったあの時から、数年・・・。再会したその日、二人は初めてくちづけを交わした。




    なでなでなで・・・・・・・・・

    あの日の『お仕置き』後。二人はベッドに横になっている。マヤはマリッサをハグしながら、優しく頭を撫でている。
「懐かしいわね・・・。あれから色んなとこ行ったもんね。」
「うん。・・・・・・あの時マヤと両想いって知って、本当に嬉しかった・・・・・・!まさか、子供の頃からずっと秘めてた初恋が、ここまで実るなんて・・・・・・!」
「あら、それは私もよ?・・・・・・貴女が初恋。というか、貴女以外に恋をした事なんて、一度も無いもの。」

キュン・・・・・・!

「私も・・・!」

ギュュュ・・・・・・!

    マリッサはマヤを強く抱き締める。
「・・・・・・マヤ・・・・・・。」
「ん、なーに?」
「あの時、私を見つけてくれて、ありがとう・・・・・・!」
「ふふっ、当然でしょ?・・・・・・これからも、ずっと貴女の傍にいるから、ずっと私の傍にいてね。」
「うん、勿論・・・・・・!ずっと傍に居させてね・・・・・・愛してる、マヤ・・・・・・」
「私も、愛してるわ、マリッサ・・・・・・」


    幼い頃の、無辺図書館の冒険。それは二人にとって、本当にかけがえのない、愛おしい冒険だった。
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「おい、ウェスト伯。いくらなんでもこんなみすぼらしい子どもに金を払えと?」 「まあまあ、ブルーノ伯爵。この子の母親もこんな感じでしたが、年ごろになると見違えるように成熟しましたよ。後妻のアリスは元妻の従妹です。あの一族の女は容姿も良いし、ぽんぽんと子どもを産みますよ」 「ふうん。そうか」 「直系の跡継ぎをお望みでしょう」 「まあな」 「しかも伯爵以上の正妻の子で年ごろの娘に婚約者がいないのは、この国ではこの子くらいしかもう残っていませんよ」 「ふ……。口が上手いなウェスト伯。なら、買い取ってやろうか、その子を」  目の前で醜悪な会話が繰り広げられる中、フィリスは思った。  まるで山羊の売買のようだと。  かくして。  フィリスの嫁ぎ先が決まった。 ------------------------------------------  安定の見切り発車ですが、二月中に一日一回更新と完結に挑みます。  ヒロインのフィリスが自らの力と人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、  序盤は暗く重い展開です。  タグを途中から追加します。   他サイトでも公開中。

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