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第九話「魔法の特訓」
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いつかのある日。女性はとある喫茶店のテラス席に居た。フードを深く被っている。
「お客様。ご注文頂いたカフェラテで御座います。」
「ああ、ありがとう。」
「ごゆっくりどうぞ。」
店員が店内に戻って行く。しかし女性は、その飲み物には一切触れない。ただじっと、何かを待っている様子だ。すると・・・・・・・・・
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・!!!!
遥か遠くから、暴風がこちらに吹いてくる。
ガタガタガタガタッ・・・・・・・・・!!!
パラソルやテーブルが吹き飛んでいく。道行く人達はかがみ込んで、悲鳴を上げる。
「キャーーーーーーーーーーー!!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
周りにある物が吹き飛んでいく中、女性は未だ椅子に座っていた。しかし、少しした後・・・・・・・・・
「・・・・・・!」
ガタッ・・・ガタガタガタッガタンッ・・・!!
女性が立ち上がった瞬間、椅子は暴風に煽られて吹き飛んでいく。しかし女性は、その暴風に一切揺らぐ事無く、遠くを見つめている。
「そう・・・来たのね・・・!嬉しいわ・・・・・・。」
女性は暴風の中に漂う魔力を感知し、満面の笑みを浮かべ、そう言う。
その後、暫くすると暴風はピタリと止んだ。
「・・・・・・・・・一体何なの!?」
「・・・・・・・・・何だったんだ、今の・・・・・・・・・。」
周りの人々は焦りと驚きを隠せない様子だ。しかし女性は、依然笑顔のまま呟く。
「また、会いましょう・・・。絶対に・・・・・・。」
そう言うと女性は、一瞬にして姿を消した。
「・・・・・・・・・・・・・・・きて・・・・・・」
ん・・・・・・・・・
「お・・・・・・・・・て・・・・・・・・・」
この声は・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・お・・・・・・・・・きて・・・・・・・・・・・・」
ゾーエ・・・・・・?
「・・・・・・エ・・・・・・・・・お・・・きて・・・・・・・・・」
んん・・・・・・ゾーエだ・・・・・・・・・けど・・・・・・・・・
「エ・・・ー・・・・・・おきて・・・・・・・・・」
何か・・・・・・小さいな・・・・・・・・・・・・
「エミー?起きて。」
「・・・・・・・・・・・・!」
ガバッ・・・・・・・・・!
「あ、起きた!朝ご飯の時間よ。」
「・・・・・・ん・・・・・・・・・おはよう・・・・・・ゾーエ・・・・・・。」
「ぐっすり寝てたわね!昨日も特訓頑張ったもんね!」
「うん・・・・・・・・・・・・・・・ゾーエだ・・・・・・いつものゾーエだ・・・・・・。」
「いつもの?」
「何か、夢見てた気がする。子供のゾーエが居た・・・・・・。」
「子供の頃の私?」
「うん・・・・・・・・・可愛かった・・・・・・・・・。」
「えと、ありがとう?」
二人は朝食をとった後、家の外に出る。
「んんーーーー!良く寝た!今日も良い天気!」
「エミー、あんまり頑張り過ぎて体調崩さないようにね・・・・・・?」
「大丈夫だよ、ゾーエ!今日起きるのが遅かったのは、夢見てたからだよ、多分。」
「そう?なら良いんだけど・・・・・・。無理だけはしちゃ駄目よ?」
「ゾーエは心配性だね。」
「そうかしら?エミー、毎日夜まで特訓してるから、体調崩さないか心配で・・・。」
「大丈夫、今日も体調バッチリだから!・・・・・・じゃあ、特訓してくるね!」
「私の目の届く所までしか行っちゃ駄目よ?」
「うん、分かってるよ!」
広大で平坦な大地。そこには、背の低い草が辺り一面に生えている。周りには何も無く、あるのはゾーエとエミーの家のみ。ゾーエは家の前にベンチとテーブルを置き、少し離れた場所で特訓しているエミーを、そこから見守っている。
広大な街、ヴィーグス・ノヴから、かなり離れた場所に二人は居た。その広大な大地でエミーは、魔法の特訓をしている。
魔法の特訓には相当な時間を要する。難しい魔法であればある程、それ相応の時間がかかる。
気が付けばこの大地で魔法の特訓を始めて、一年以上の月日が経っていた。エミーは、十一歳になっていた。
「エミー、どんどん魔法の扱いが上手くなっていってるわね!成長がはやいわ!」
ゾーエは特訓しているエミーを、遠くで見守りながら言う。最初こそ手取り足取り教えていたが、半年程に差し掛かった頃には、既に一人で魔法の特訓が出来る程に成長していた。
エミーが今特訓しているのは、五元素魔法の制御だ。いくら応用の効きやすい便利な魔法と言えど、制御出来なくては意味が無い。既に殆どが上手く制御出来るようになってきているが、まだ完全では無い。
「ふーーーっ・・・・・・・・・!」
エミーが魔力を掌に集中させる。すると・・・・・・
ゴォォォォォォォォ・・・・・・・・・!
掌の一点から、突風が巻き起こる。
「・・・・・・・・・よし。『空気』の制御はほぼ完璧に出来る様になった気がする。」
五元素魔法の一つ、『空気』。エミーが最も得意とする、『最適性』の元素だ。
「やっぱ最適性の元素は扱いやすいな・・・・・・。ふーーーーーっ・・・・・・!」
ボォォォォォォ・・・・・・・・・・・・!
「『火』も、大丈夫。かなり制御出来てる。ただ、少し時間がかかるかな・・・・・・。ふーーーーーっ・・・・・・!」
サァァァァァァ・・・・・・・・・・・・!
「うん、『水』の制御。殆ど出来るようになったかな。大丈夫そう。」
エミーは半年以上の五元素魔法の特訓により、『空気』、『火』、『水』、三つの元素魔法の制御が出来るようになっていた。そして残るは、『土』と『命』だが・・・・・・。
エミーは掌を下に向けて、魔力を集中させる。
「ふーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・・!」
グ・・・・・・・・・ググッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ?」
ほんの少し、ほんの少しだけ地面の一部が揺れた気がするが、それ以降は何も起こらない。
「・・・・・・・・・んーーー・・・・・・・・・『土』・・・・・・・・・。全然上手くいかないな・・・・・・・・・。」
五元素魔法の中で最も強力とされる元素、『土』。しかし強力故にその扱いも難しく、下手に強い魔力で発動させてしまえば、最も危険となる元素魔法でもある。その為無理に魔力を込める事も出来ず、引き金となる感情を強く持ち過ぎてしまっても危険なので、制御がとにかくしづらい。魔力と感情の強弱が取りにくい魔法だ。
「・・・・・・流石にまだ『土』は無理かな・・・・・・。いや、でも・・・・・・・・・。」
最適性でもない限り、土の元素魔法を直ぐに使える様にはならない。だからこそエミーは、土の元素魔法の特訓に一番時間を取っている。・・・・・・最高位の魔女である自覚が、今のエミーにはある。危険な魔法程、上手く制御出来る様にならないといけない・・・・・・。それに・・・・・・・・・・・・エミーは、強力な魔法を使える様になりたかった。そうしなければいけない、理由があった・・・・・・・・・・・・。
それから昼になるまで、エミーは『土』の元素魔法の特訓をしていた。
「エミー!そろそろお昼ご飯にするわよー!」
「! はーーい!」
ゾーエに呼ばれたエミーは、走って家の前にあるベンチにまで行く。毎日ずっと一生懸命魔法の特訓をしているエミーの為に、ゾーエはいつも腕によりをかけて料理を作ってくれている。
二人は昼食を取りながら、穏やかな時を過ごす。
「ねえゾーエ。」
「ん?」
「やっぱり『土』だけ上手くいかない・・・・・・。」
「そうね・・・・・・五元素魔法の中では飛び抜けて難しいからね。弱過ぎても発動しないし、強過ぎても危険だし・・・・・・。最高位魔女のエミーにとっては、バランスを取るのが余計に難しいかもしれないわね。」
「バランスかぁ・・・・・・。んーーー・・・・・・難しいな・・・・・・。」
「三つの元素魔法が上手く制御出来る様になっただけでも上等よ。」
「うん、ありがとう。・・・・・・でも、最高位の魔力を持ってるから・・・・・・危険な魔法は早く制御出来る様にならないと・・・・・・。」
「大丈夫よエミー。焦り過ぎは良くないわ。・・・・・・それに、貴女はもう十分に制御出来ているわよ。」
「え?でもまだまだ・・・・・・」
「確かに、土の元素魔法の制御自体はまだ上手く出来ないかもしれないけど・・・・・・その魔法が危険なものだからって、何とか制御しようとしてるでしょ?それはもう既に『思いやり』の感情によって、魔法全体を制御出来ているという事よ。・・・・・・あの時マヤが言ってた『最高位魔女としての自覚』は、既にきちんと貴女にはあるわ。」
「・・・・・・うん・・・・・・。」
「マヤも言ってたでしょ?『操るのが難しい場合は、その魔法を使わない様に』って・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・そう、ゾーエは何となく理解していた。何故エミーが『土』の元素魔法に執着しているのか。
『土』の元素魔法は、五元素魔法の中で最も破壊力のある魔法だ。何故それを早く制御出来る様になりたいのか。エミーは分かっている。今の自分が激情のままに『土』の元素魔法を発動すれば、大変な事が起こると・・・・・・。しかし、それを一点に集中させる事が出来るのなら・・・・・・・・・周りのものを一切傷付けずに、標的だけを狙う事が出来る・・・・・・・・・。エミーはまだ、ハヴァーへの復讐を忘れてはいないのだ。・・・・・・けれどエミーには、大きく変わった部分もある。ただハヴァーに復讐するだけならば、激情のままに『土』の元素魔法を思いっきり使えばいい。そうすれば簡単に、ハヴァーに復讐を果たせるだろう。けど、エミーはそれをしない。あくまでも標的はハヴァー、周りのものを傷付けたくはないのだ。エミーは『思いやり』の心を持った。けれど、復讐心は今も消えない。ハヴァーへの怒りと憎しみが消えた訳では無いのだ。
しかしゾーエは、それを止める資格が、自分には無い事を理解していた・・・・・・・・・。旅に出る前、エミーは話してくれた。自らが孤児院に居た事。母が、ハヴァーという名の魔女に殺されたという事・・・・・・・・・。今まで、魔女の世界で殺人が起きた事は無い。何故なら、『偉大なる魔女達』の文化が根付いていたから。・・・・・・でも、大切な人を失う辛さは、多くの人が知っている。かつての厄災でも、多くの人が、大切な人を失った。それ以外にも、大切な人を若くして亡くしてしまった人もいるだろう。大切な人を失った辛さは、計り知れない程のものだ。・・・・・・けどもし、厄災や、病では無く、誰かの手によって奪われてしまったとしたら・・・・・・・・・。その怒りと憎しみは、想像を絶するものだろう。・・・・・・果たしてそれを止めるべきなのか。怒りと憎しみを抑えつけて、復讐の相手を見過ごすべきなのか・・・・・・。それは、当事者にとっては、あまりに堪え難い事ではないか・・・・・・・・・。あの時、マヤもエミーの心の奥にある、怒りと憎しみを、何となく感知していたのだろう。だからこそ・・・『無理に堪える必要は無い。よく考えた末に、善と信じた方を選べ。』・・・と、そう言ったんだ。それを堪えろと言うのは、あまりに酷だから・・・・・・。堪えろと言う資格が、自分には無い事を理解していたから・・・・・・。けれど、復讐は連鎖を生む可能性がある。だからこそ、よく考えなければならないのだ。・・・・・・そう。復讐の連鎖がエミーから始まっていくとは限らない。もしかしたら、もっと以前から、その連鎖は起こっていたのかもしれない。だから、よく考えなければならない。善を、悪を・・・・・・・・・。最初に引き金を引いたのが・・・・・・・・・誰なのかを・・・・・・・・・・・・。よく・・・・・・・・・考えなければ・・・・・・・・・・・・。
その日の特訓が終わって、夕食を食べ、お風呂に入り、寝る支度を済ませた後、直ぐにエミーはぐっすりと眠った。
ゾーエは自分の寝室にいた。窓辺に置かれたテーブルには、様々な本や道具が整理されて置いてある。
ゾーエはその前にある椅子に座り、ある道具を手にしていた。何かの紋章が沢山刻まれたピアスの様な形の物。ゾーエはそれを耳に付け、唱える。
「マヤ」
するとその道具の紋章の一つが光り出した。そして少しすると・・・・・・。
「ゾーエ、久し振りね。」
マヤの声が聞こえる。
「ええ、久し振り。ごめんなさいね。夜遅くに。今大丈夫かしら?」
『遠声魔法』。遠くへと声を届け合い、会話のする事が出来る魔法。いわば、元の世界にある、電話の様なものだ。
「別に大丈夫よ。マリッサは風呂入ってるし、ソフィアももう寝てるし。・・・・・・貴女から遠声するなんて珍しいわね。何かあったの?」
「ええ・・・・・・ちょっとね・・・・・・。」
「・・・・・・なるほどね。詳細は分からなかったけど、確かにエミーちゃんからは、強い復讐心を感じていたわ・・・・・・。あの時は、心の奥の方だったけど・・・・・・。」
「貴女は、無理に堪えなくても良いって言ってたじゃない?よく考えて、善と思った方を選べ、って。」
「私があの子に無理してでも堪えろ、なんて言う資格無いしね・・・・・・。流石にそんな事言うのは、酷だと思って・・・・・・。それに、貴女も分かってると思うけど、無理に堪え過ぎたら感情が爆発してしまうわ。・・・・・・そうなったら、傍に居る人にとっても、あの子自身にとっても危険よ。」
「ええ、分かってるわ。ただ・・・・・・連鎖について考えちゃってね・・・・・・。」
「・・・・・・確かに、復讐は連鎖を起こしやすい。それに・・・・・・誰が初めに引き金を引いたのかも、現時点では分からない・・・・・・でしょ?」
「・・・ええ。初めに引き金を引いたのが、本当にその人なのか・・・・・・・・・疑問に思ってね。」
「・・・・・・その人の特徴とか、分かる?」
「エミーは顔も知ってるみたいだけど・・・・・・私が知ってるのは名前だけね・・・・・・。ただ・・・・・・エミーはその人と一緒に魔女の世界に来たみたい。・・・・・・その後、空気みたいになって消えた、って、言ってたわ。」
「空気みたいになって消えた・・・・・・。扉だと一瞬で姿を消すから・・・・・・・・・恐らく転移魔法ね。という事は、高位魔女か・・・・・・。」
「多分。・・・・・・・・・・・・私は、どうするのが正解なのか、分からない・・・・・・・・・・・・。ただ、私の勝手な気持ちだけど・・・・・・・・・エミーには、人殺しになって欲しくないの・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ええ、それは私も同じ気持ちよ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ただ・・・・・・エミーの気持ちを考えた時に・・・・・・・・・復讐心を抑えつけても、その怒りと憎しみを鎮める事は出来ないと思うの・・・・・・・・・。大切な人を殺された・・・・・・・・・その感情を無理に抑えつけるのは、エミーにとって酷な事だと思って・・・・・・・・・。」
「ええ、耐え切れないでしょう。・・・・・・・・・それで感情が爆発してしまうと、魔法の制御も何も無いわ。辺り一面に強大な魔法が広がる・・・・・・。そうなれば、周りだけじゃ無い・・・・・・エミーちゃん自身にも命の危険があるわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・どうしたら・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・私達に出来る事を探しましょう・・・・・・。私達が、エミーちゃんを支えないと・・・・・・。それに、私がその人を封じ込めるという選択肢もあるわ。・・・・・・エミーちゃんが、それで良いと言うならだけど・・・・・・。」
「・・・・・・そうね。生きて償わせるという方法もあるというのを、エミーに言っておかないと。・・・・・・・・・少しでも、エミーの助けにならないとね。明日、エミーとゆっくり話してみるわ。」
「ええ、それが良いと思う。何かあったら、またいつでも連絡して。私に出来る事があるなら、全力でサポートするわ。・・・・・・一緒に、考えましょう。エミーちゃんの為にも。」
「ええ。ありがとう、マヤ。」
次の日の朝。朝食をとった後、ゾーエはエミーに話を切り出す。
「ねえ、エミー。」
「ん?」
「少し、話をしても良いかしら?」
「うん、何の話?」
「とても、大切な話よ。貴女にとっても・・・・・・。」
「・・・・・・・・・うん。」
「エミーは・・・・・・・・・・・・復讐をしようと思ってる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」
「ハヴァーを・・・・・・・・・どうするの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺すつもり。」
「・・・・・・・・・・・・・・・そう。」
分かっていたが、エミーの口から改めて聞くと・・・・・・・・・やはりショックを感じる。・・・・・・・・・しかし、これは大切な話だ。
「大切な人を・・・・・・・・・奪われたから?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「もし・・・・・・・・・・・・・・・そうして欲しくないって・・・・・・・・・・・・・・・・・・言ったら?」
「・・・! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・難しい・・・・・・・・・かも・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ええ。・・・・・・・・・・・・そうよね・・・・・・・・・・・・。大切な人を、奪われたんだもの・・・・・・・・・・・・・・・。」
「復讐は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・止めた方が・・・・・・・・・・・・・・・良い?」
「・・・・・・・・・エミーは、堪えられる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・堪えられない・・・・・・・・・・・・今も、自由に生きてると思うと・・・・・・・・・・・・・・・・・・許せない・・・・・・!」
エミーの拳に力が入る。
「ええ・・・・・・・・・・・・当然よね・・・・・・・・・・・・。分かったわ。無理に堪えろとは言わない。けど・・・・・・・・・・・・お願い、聞いてくれる?」
「・・・・・・・・・うん。」
「もし、もう一度ハヴァーに会った時に・・・・・・・・・・・・一度話してみて。・・・・・・・・・理由を、聞いてみて。それで、許せないと思ったなら・・・・・・・・・・・・エミーがどうするか決めて・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、分かった。」
「・・・・・・・・・選択肢を、もう一つ用意出来る。・・・・・・・・・マヤに頼んで、ある空間に封じ込めてもらう事も出来るわ・・・・・・・・・・・・。生きてその罪を償わせるという方法もある・・・・・・・・・・・・。どちらにするか、最後はエミーが決めて・・・・・・・・・。」
「うん・・・・・・・・・・・・。」
ゾーエは椅子から立ち上がり、エミーの傍に行く。そして、優しく抱きしめた。
「・・・・・・エミーはもう、独りじゃないわ。私達がいる。・・・・・・お願い・・・・・・辛い事や、悲しい事を、独りで抱え込まないで・・・・・・・・・。幾らでも、周りに頼って良いからね・・・・・・・・・。あの時も言ったでしょ?私達も、一緒に考えるから・・・・・・・・・。」
「・・・・・・! ・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・。」
ゾーエの暖かさ、涙を堪える様なその声。気が付くと、エミーの眼からは涙が零れていた。
・・・・・・・・・そうだ。今は独りじゃない。支えてくれる人達がいる。一緒に考えてくれる人達がいる。私も、よく考えて、決めるんだ。私は、ハヴァーと話して、善悪を見極めないといけない。そして最後に、善と信じる方を選択するんだ・・・・・・・・・
「そう・・・少しでも落ち着いたみたいなら、良かったわ。」
「ええ。やっぱり一人で抱え込んじゃってたみたい。・・・・・・でももう大丈夫。エミーも、これから色々相談してくれるって。」
「それなら良かったわ。・・・・・・何かあったら呼びなさいよ?直ぐに駆けつけるから。」
「ええ、ありがとう。」
「・・・・・・・・・後、調べてみたわ。ハヴァーについて。」
「・・・・・・どうだった?」
「・・・・・・見つからないわ。・・・・・・高位魔女だから、新生魔法が使えるでしょ?だから、新生魔法書も確認してみたんだけど、ハヴァーの名前は無かったわ・・・・・・。」
「そう・・・・・・・・・。」
「何処にいるか分からない以上、下手に大々的に名前を挙げていくと、感づかれるかもしれない。・・・・・・ハヴァーが何者か分からない現状で、それは危険だわ。だから、数人にしか聞けてないけど・・・・・・名前を知ってる人はいなかったわ。」
「ありがとう。・・・・・・・・・ハヴァーがどんな人なのか少しでも分かれば、原因や理由も少しずつ見えてくると思ったんだけど・・・・・・・・・。やっぱり、直接聞くしかないかしら・・・・・・。」
「そうね・・・・・・・・・。難しいかもしれないけど、本人の口から直接聞くのが一番良いからね。・・・・・・その時何があったのか、どんな流れで現状に至るのか・・・・・・本人が一番よく知ってるでしょうし。」
「・・・・・・ええ。真相を知らない以上、私達がハヴァーを『悪』と断定する事は出来ないわ。・・・・・・ただ・・・・・・何も知らない状況でエミーと会わせるのも、怖い・・・・・・。」
「そうね・・・・・・・・・。現状では怖いわね・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ゾーエ。もし何処かで出会う様な事があって、少しでも危険と感じたら、直ぐに私を呼んで。場所さえ言ってくれれば、転移魔法でそこまで行くから。」
「ええ・・・・・・分かったわ・・・・・・。本当にありがとう、マヤ。」
「私と貴女の仲でしょう?気なんか遣わなくて良いから、いつでも連絡しなさいよ。」
「ええ。助かるわ。」
次の日の朝、エミーはいつもの様に特訓をする為に外に出る。しかし、いつもの様に直ぐに遠くには行かない。
「・・・・・・・・・ゾーエ。」
「何?」
「私一旦、強力な魔法は・・・・・・『土』の元素魔法は使わないようにする。」
「・・・うん。」
「無理に焦らなくても良いかなって、そう思ったから。」
「うん。」
「・・・・・・代わりにさ、浮遊魔法の特訓したいな。・・・・・・・・・無辺図書館でゾーエと飛んだ時、すごい楽しかったから!」
「・・・うん!そうね。じゃあ、浮遊魔法の特訓しましょうか!」
「うん!」
エミーは一人で抱え込む事を止めた。そして、強力な『土』の元素魔法を焦って制御する事も。
復讐心。・・・・・・ハヴァーを直ぐにでも殺してやる・・・・・・。エミーは心の何処かで、それを持ち続けていた。思えばそれは、あの時から・・・・・・・・・ハヴァーの存在を知った、四年前から、ずっと・・・・・・。しかし、四年の時を経て、色んな人達と出会って、思いが変わった。勿論復讐心が無くなった訳じゃない。今でもハヴァーは許せない。・・・・・・でも、一度ちゃんと話してみよう、ハヴァーと。真実を、自分の目で確かめよう。それでも、許せないと思ったなら、行動しよう。復讐の事を考えるのは、それからでも遅くはない。今は、よく考える時だ。よく考えて、よく考えて、最後に、自分のとる行動を決める。だから、今すぐ復讐の事は考えない。今考えるべきなのは、ハヴァーとちゃんと話をしてみる事。考えに行き詰まった時に、皆の力を借りる事。今は独りじゃないから。支えてくれる人達がいるから。その人達の為にも、私はよく考えて選択するんだ・・・・・・。
「エミー!持ってきたわよ!」
ゾーエは両手に箒を持っている。
「わあ!箒だ!」
ゾーエはエミーに箒を一つ渡す。エミーの眼はキラキラ輝いている。よっぽど箒が気に入ったみたいだ。
「いい?エミー。箒に乗って飛ぶには、先ず箒を浮かせられる様にならないといけないの。それも、ただ浮かせるだけじゃ駄目。しっかり固定させるのよ。」
「固定?」
「そう。箒に乗った時、空中でちゃんと固定出来ないと、バランスを崩して落っこちちゃうわ。先ずは、浮かせて固定するとこからね!」
「うん!」
フワ・・・・・・・・・・・・
「浮いた!」
「うん!第一ステップはクリアね!けど、ここからが難しいわ。それを空中でピタッと止めるの。」
「・・・・・・うん・・・・・・!」
エミーは集中する。・・・・・・箒を固定、箒を固定・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・!」
フワフワ・・・・・・・・・
「あれぇ!?何でぇ!?ずっとフワフワしたまんまだよゾーエ!」
「まあ最初から上手くはいかないわ!ゆっくりと段々上達していくのよ。」
「んんんんん・・・・・・・・・!」
フワフワ・・・・・・・・・グンッ!!
「わぁ!!」
箒が物凄い角度になる。もし人が乗っていたら、確実に落ちているだろう。
「力み過ぎたわね!ほら、もっと肩の力を抜いて?」
ゾーエはエミーの両肩にそっと手を置く。
「・・・・・・!! ・・・・・・・・・う、うん・・・・・・!!」
ギュンッ!!!
「わぁぁぁ!?」
箒が天高くまで飛んで行く。もし人が乗っていたら・・・大変な事になっているだろう。
「わ!!・・・・・・・・・物凄い飛んでっちゃったわね・・・・・・・・・!」
「な、何でだろう・・・・・・。」
何故かは分からないが、ゾーエに肩を触られると、緊張してしまう。
ヒューーーーーー・・・・・・・・・・・・
箒が落下して来た。
「あ!・・・・・・・・・!」
ヒューーー・・・フワッ・・・
「・・・・・・ふぅ・・・・・・。結構難しいね。」
「そうね。浮遊させるだけなら簡単だけど、箒に乗る為には固定させる技術が必要になるわ。そこが一番難しいところね。」
「技術かぁ・・・・・・。何かコツとかある?」
「コツ、そうね。・・・・・・・・・あまり力を入れ過ぎない事と、後は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「後は?」
「・・・・・・・・・か、感覚?」
「えぇ!?」
「だ、だって・・・・・・ほんとにそうなのよ・・・・・・!?こればっかりは感覚なの・・・・・・。上手く固定出来るまで、とにかく浮遊させ続けてたら、何となく感覚が掴める様になってくるのよ。」
「そうなの?」
「ええ。私もそうだったし、大体の子がそうなの。全然上手くいかないなって最初は思って、でもずーっと練習し続けてると、ある日突然感覚が分かるようになるの。」
「そうなんだ・・・・・・。その感覚って、どのくらい練習したら来るの?」
「そうねぇ・・・・・・・・・私の時は確か・・・・・・十一歳から始めて、固定出来る様になったのが、十二歳の手前位だったわ。」
「じゃあ、一年くらい?」
「そうね、周りの子も大体その位は掛かってたわね。」
「結構掛かるんだね・・・。」
「まあ、殆どの魔女は十二歳手前でようやく固定する事が出来る様になる、って言われてるわ。・・・・・・・・・まあ、一部例外もいるけどね・・・・・・・・・。」
「例外?」
「マヤとかケーラとか、ね。」
「ケーラ、さん?」
「そっか、エミーにはまだ言ってなかったわね。ケーラは今いる最高位魔女の内の一人よ。つまり、今いる最高位魔女は、エミーとマヤと、ケーラの三人なの。」
「なるほど・・・!やっぱりマヤさんとその、ケーラさん、は、箒に乗れる様になったのも早かったの?」
「ええ、早かったわ。マヤは確か八歳の頃には何とか乗れていたわね。」
「はっ、八歳・・・・・・!?えと、その、ケーラ、さん?は、何歳から乗れてたの?」
「あの子はちょっとずば抜けてるからね・・・・・・。確か七歳には完璧に乗りこなしてたわ。」
「な、七、歳・・・・・・。私その時、魔法すら知らなかったよ・・・・・・。」
「まあエミーがこっちに来たのは最近の事だし、それは気にする必要無いわよ!」
「・・・・・・・・・うん!何か寧ろ、燃えてきた!!私ももっともっと頑張る!!」
「良いわエミー!その調子よ!」
二人は更なる魔法の特訓を、この大地で続けていく。
「お客様。ご注文頂いたカフェラテで御座います。」
「ああ、ありがとう。」
「ごゆっくりどうぞ。」
店員が店内に戻って行く。しかし女性は、その飲み物には一切触れない。ただじっと、何かを待っている様子だ。すると・・・・・・・・・
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・!!!!
遥か遠くから、暴風がこちらに吹いてくる。
ガタガタガタガタッ・・・・・・・・・!!!
パラソルやテーブルが吹き飛んでいく。道行く人達はかがみ込んで、悲鳴を上げる。
「キャーーーーーーーーーーー!!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
周りにある物が吹き飛んでいく中、女性は未だ椅子に座っていた。しかし、少しした後・・・・・・・・・
「・・・・・・!」
ガタッ・・・ガタガタガタッガタンッ・・・!!
女性が立ち上がった瞬間、椅子は暴風に煽られて吹き飛んでいく。しかし女性は、その暴風に一切揺らぐ事無く、遠くを見つめている。
「そう・・・来たのね・・・!嬉しいわ・・・・・・。」
女性は暴風の中に漂う魔力を感知し、満面の笑みを浮かべ、そう言う。
その後、暫くすると暴風はピタリと止んだ。
「・・・・・・・・・一体何なの!?」
「・・・・・・・・・何だったんだ、今の・・・・・・・・・。」
周りの人々は焦りと驚きを隠せない様子だ。しかし女性は、依然笑顔のまま呟く。
「また、会いましょう・・・。絶対に・・・・・・。」
そう言うと女性は、一瞬にして姿を消した。
「・・・・・・・・・・・・・・・きて・・・・・・」
ん・・・・・・・・・
「お・・・・・・・・・て・・・・・・・・・」
この声は・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・お・・・・・・・・・きて・・・・・・・・・・・・」
ゾーエ・・・・・・?
「・・・・・・エ・・・・・・・・・お・・・きて・・・・・・・・・」
んん・・・・・・ゾーエだ・・・・・・・・・けど・・・・・・・・・
「エ・・・ー・・・・・・おきて・・・・・・・・・」
何か・・・・・・小さいな・・・・・・・・・・・・
「エミー?起きて。」
「・・・・・・・・・・・・!」
ガバッ・・・・・・・・・!
「あ、起きた!朝ご飯の時間よ。」
「・・・・・・ん・・・・・・・・・おはよう・・・・・・ゾーエ・・・・・・。」
「ぐっすり寝てたわね!昨日も特訓頑張ったもんね!」
「うん・・・・・・・・・・・・・・・ゾーエだ・・・・・・いつものゾーエだ・・・・・・。」
「いつもの?」
「何か、夢見てた気がする。子供のゾーエが居た・・・・・・。」
「子供の頃の私?」
「うん・・・・・・・・・可愛かった・・・・・・・・・。」
「えと、ありがとう?」
二人は朝食をとった後、家の外に出る。
「んんーーーー!良く寝た!今日も良い天気!」
「エミー、あんまり頑張り過ぎて体調崩さないようにね・・・・・・?」
「大丈夫だよ、ゾーエ!今日起きるのが遅かったのは、夢見てたからだよ、多分。」
「そう?なら良いんだけど・・・・・・。無理だけはしちゃ駄目よ?」
「ゾーエは心配性だね。」
「そうかしら?エミー、毎日夜まで特訓してるから、体調崩さないか心配で・・・。」
「大丈夫、今日も体調バッチリだから!・・・・・・じゃあ、特訓してくるね!」
「私の目の届く所までしか行っちゃ駄目よ?」
「うん、分かってるよ!」
広大で平坦な大地。そこには、背の低い草が辺り一面に生えている。周りには何も無く、あるのはゾーエとエミーの家のみ。ゾーエは家の前にベンチとテーブルを置き、少し離れた場所で特訓しているエミーを、そこから見守っている。
広大な街、ヴィーグス・ノヴから、かなり離れた場所に二人は居た。その広大な大地でエミーは、魔法の特訓をしている。
魔法の特訓には相当な時間を要する。難しい魔法であればある程、それ相応の時間がかかる。
気が付けばこの大地で魔法の特訓を始めて、一年以上の月日が経っていた。エミーは、十一歳になっていた。
「エミー、どんどん魔法の扱いが上手くなっていってるわね!成長がはやいわ!」
ゾーエは特訓しているエミーを、遠くで見守りながら言う。最初こそ手取り足取り教えていたが、半年程に差し掛かった頃には、既に一人で魔法の特訓が出来る程に成長していた。
エミーが今特訓しているのは、五元素魔法の制御だ。いくら応用の効きやすい便利な魔法と言えど、制御出来なくては意味が無い。既に殆どが上手く制御出来るようになってきているが、まだ完全では無い。
「ふーーーっ・・・・・・・・・!」
エミーが魔力を掌に集中させる。すると・・・・・・
ゴォォォォォォォォ・・・・・・・・・!
掌の一点から、突風が巻き起こる。
「・・・・・・・・・よし。『空気』の制御はほぼ完璧に出来る様になった気がする。」
五元素魔法の一つ、『空気』。エミーが最も得意とする、『最適性』の元素だ。
「やっぱ最適性の元素は扱いやすいな・・・・・・。ふーーーーーっ・・・・・・!」
ボォォォォォォ・・・・・・・・・・・・!
「『火』も、大丈夫。かなり制御出来てる。ただ、少し時間がかかるかな・・・・・・。ふーーーーーっ・・・・・・!」
サァァァァァァ・・・・・・・・・・・・!
「うん、『水』の制御。殆ど出来るようになったかな。大丈夫そう。」
エミーは半年以上の五元素魔法の特訓により、『空気』、『火』、『水』、三つの元素魔法の制御が出来るようになっていた。そして残るは、『土』と『命』だが・・・・・・。
エミーは掌を下に向けて、魔力を集中させる。
「ふーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・・!」
グ・・・・・・・・・ググッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ?」
ほんの少し、ほんの少しだけ地面の一部が揺れた気がするが、それ以降は何も起こらない。
「・・・・・・・・・んーーー・・・・・・・・・『土』・・・・・・・・・。全然上手くいかないな・・・・・・・・・。」
五元素魔法の中で最も強力とされる元素、『土』。しかし強力故にその扱いも難しく、下手に強い魔力で発動させてしまえば、最も危険となる元素魔法でもある。その為無理に魔力を込める事も出来ず、引き金となる感情を強く持ち過ぎてしまっても危険なので、制御がとにかくしづらい。魔力と感情の強弱が取りにくい魔法だ。
「・・・・・・流石にまだ『土』は無理かな・・・・・・。いや、でも・・・・・・・・・。」
最適性でもない限り、土の元素魔法を直ぐに使える様にはならない。だからこそエミーは、土の元素魔法の特訓に一番時間を取っている。・・・・・・最高位の魔女である自覚が、今のエミーにはある。危険な魔法程、上手く制御出来る様にならないといけない・・・・・・。それに・・・・・・・・・・・・エミーは、強力な魔法を使える様になりたかった。そうしなければいけない、理由があった・・・・・・・・・・・・。
それから昼になるまで、エミーは『土』の元素魔法の特訓をしていた。
「エミー!そろそろお昼ご飯にするわよー!」
「! はーーい!」
ゾーエに呼ばれたエミーは、走って家の前にあるベンチにまで行く。毎日ずっと一生懸命魔法の特訓をしているエミーの為に、ゾーエはいつも腕によりをかけて料理を作ってくれている。
二人は昼食を取りながら、穏やかな時を過ごす。
「ねえゾーエ。」
「ん?」
「やっぱり『土』だけ上手くいかない・・・・・・。」
「そうね・・・・・・五元素魔法の中では飛び抜けて難しいからね。弱過ぎても発動しないし、強過ぎても危険だし・・・・・・。最高位魔女のエミーにとっては、バランスを取るのが余計に難しいかもしれないわね。」
「バランスかぁ・・・・・・。んーーー・・・・・・難しいな・・・・・・。」
「三つの元素魔法が上手く制御出来る様になっただけでも上等よ。」
「うん、ありがとう。・・・・・・でも、最高位の魔力を持ってるから・・・・・・危険な魔法は早く制御出来る様にならないと・・・・・・。」
「大丈夫よエミー。焦り過ぎは良くないわ。・・・・・・それに、貴女はもう十分に制御出来ているわよ。」
「え?でもまだまだ・・・・・・」
「確かに、土の元素魔法の制御自体はまだ上手く出来ないかもしれないけど・・・・・・その魔法が危険なものだからって、何とか制御しようとしてるでしょ?それはもう既に『思いやり』の感情によって、魔法全体を制御出来ているという事よ。・・・・・・あの時マヤが言ってた『最高位魔女としての自覚』は、既にきちんと貴女にはあるわ。」
「・・・・・・うん・・・・・・。」
「マヤも言ってたでしょ?『操るのが難しい場合は、その魔法を使わない様に』って・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・そう、ゾーエは何となく理解していた。何故エミーが『土』の元素魔法に執着しているのか。
『土』の元素魔法は、五元素魔法の中で最も破壊力のある魔法だ。何故それを早く制御出来る様になりたいのか。エミーは分かっている。今の自分が激情のままに『土』の元素魔法を発動すれば、大変な事が起こると・・・・・・。しかし、それを一点に集中させる事が出来るのなら・・・・・・・・・周りのものを一切傷付けずに、標的だけを狙う事が出来る・・・・・・・・・。エミーはまだ、ハヴァーへの復讐を忘れてはいないのだ。・・・・・・けれどエミーには、大きく変わった部分もある。ただハヴァーに復讐するだけならば、激情のままに『土』の元素魔法を思いっきり使えばいい。そうすれば簡単に、ハヴァーに復讐を果たせるだろう。けど、エミーはそれをしない。あくまでも標的はハヴァー、周りのものを傷付けたくはないのだ。エミーは『思いやり』の心を持った。けれど、復讐心は今も消えない。ハヴァーへの怒りと憎しみが消えた訳では無いのだ。
しかしゾーエは、それを止める資格が、自分には無い事を理解していた・・・・・・・・・。旅に出る前、エミーは話してくれた。自らが孤児院に居た事。母が、ハヴァーという名の魔女に殺されたという事・・・・・・・・・。今まで、魔女の世界で殺人が起きた事は無い。何故なら、『偉大なる魔女達』の文化が根付いていたから。・・・・・・でも、大切な人を失う辛さは、多くの人が知っている。かつての厄災でも、多くの人が、大切な人を失った。それ以外にも、大切な人を若くして亡くしてしまった人もいるだろう。大切な人を失った辛さは、計り知れない程のものだ。・・・・・・けどもし、厄災や、病では無く、誰かの手によって奪われてしまったとしたら・・・・・・・・・。その怒りと憎しみは、想像を絶するものだろう。・・・・・・果たしてそれを止めるべきなのか。怒りと憎しみを抑えつけて、復讐の相手を見過ごすべきなのか・・・・・・。それは、当事者にとっては、あまりに堪え難い事ではないか・・・・・・・・・。あの時、マヤもエミーの心の奥にある、怒りと憎しみを、何となく感知していたのだろう。だからこそ・・・『無理に堪える必要は無い。よく考えた末に、善と信じた方を選べ。』・・・と、そう言ったんだ。それを堪えろと言うのは、あまりに酷だから・・・・・・。堪えろと言う資格が、自分には無い事を理解していたから・・・・・・。けれど、復讐は連鎖を生む可能性がある。だからこそ、よく考えなければならないのだ。・・・・・・そう。復讐の連鎖がエミーから始まっていくとは限らない。もしかしたら、もっと以前から、その連鎖は起こっていたのかもしれない。だから、よく考えなければならない。善を、悪を・・・・・・・・・。最初に引き金を引いたのが・・・・・・・・・誰なのかを・・・・・・・・・・・・。よく・・・・・・・・・考えなければ・・・・・・・・・・・・。
その日の特訓が終わって、夕食を食べ、お風呂に入り、寝る支度を済ませた後、直ぐにエミーはぐっすりと眠った。
ゾーエは自分の寝室にいた。窓辺に置かれたテーブルには、様々な本や道具が整理されて置いてある。
ゾーエはその前にある椅子に座り、ある道具を手にしていた。何かの紋章が沢山刻まれたピアスの様な形の物。ゾーエはそれを耳に付け、唱える。
「マヤ」
するとその道具の紋章の一つが光り出した。そして少しすると・・・・・・。
「ゾーエ、久し振りね。」
マヤの声が聞こえる。
「ええ、久し振り。ごめんなさいね。夜遅くに。今大丈夫かしら?」
『遠声魔法』。遠くへと声を届け合い、会話のする事が出来る魔法。いわば、元の世界にある、電話の様なものだ。
「別に大丈夫よ。マリッサは風呂入ってるし、ソフィアももう寝てるし。・・・・・・貴女から遠声するなんて珍しいわね。何かあったの?」
「ええ・・・・・・ちょっとね・・・・・・。」
「・・・・・・なるほどね。詳細は分からなかったけど、確かにエミーちゃんからは、強い復讐心を感じていたわ・・・・・・。あの時は、心の奥の方だったけど・・・・・・。」
「貴女は、無理に堪えなくても良いって言ってたじゃない?よく考えて、善と思った方を選べ、って。」
「私があの子に無理してでも堪えろ、なんて言う資格無いしね・・・・・・。流石にそんな事言うのは、酷だと思って・・・・・・。それに、貴女も分かってると思うけど、無理に堪え過ぎたら感情が爆発してしまうわ。・・・・・・そうなったら、傍に居る人にとっても、あの子自身にとっても危険よ。」
「ええ、分かってるわ。ただ・・・・・・連鎖について考えちゃってね・・・・・・。」
「・・・・・・確かに、復讐は連鎖を起こしやすい。それに・・・・・・誰が初めに引き金を引いたのかも、現時点では分からない・・・・・・でしょ?」
「・・・ええ。初めに引き金を引いたのが、本当にその人なのか・・・・・・・・・疑問に思ってね。」
「・・・・・・その人の特徴とか、分かる?」
「エミーは顔も知ってるみたいだけど・・・・・・私が知ってるのは名前だけね・・・・・・。ただ・・・・・・エミーはその人と一緒に魔女の世界に来たみたい。・・・・・・その後、空気みたいになって消えた、って、言ってたわ。」
「空気みたいになって消えた・・・・・・。扉だと一瞬で姿を消すから・・・・・・・・・恐らく転移魔法ね。という事は、高位魔女か・・・・・・。」
「多分。・・・・・・・・・・・・私は、どうするのが正解なのか、分からない・・・・・・・・・・・・。ただ、私の勝手な気持ちだけど・・・・・・・・・エミーには、人殺しになって欲しくないの・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ええ、それは私も同じ気持ちよ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ただ・・・・・・エミーの気持ちを考えた時に・・・・・・・・・復讐心を抑えつけても、その怒りと憎しみを鎮める事は出来ないと思うの・・・・・・・・・。大切な人を殺された・・・・・・・・・その感情を無理に抑えつけるのは、エミーにとって酷な事だと思って・・・・・・・・・。」
「ええ、耐え切れないでしょう。・・・・・・・・・それで感情が爆発してしまうと、魔法の制御も何も無いわ。辺り一面に強大な魔法が広がる・・・・・・。そうなれば、周りだけじゃ無い・・・・・・エミーちゃん自身にも命の危険があるわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・どうしたら・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・私達に出来る事を探しましょう・・・・・・。私達が、エミーちゃんを支えないと・・・・・・。それに、私がその人を封じ込めるという選択肢もあるわ。・・・・・・エミーちゃんが、それで良いと言うならだけど・・・・・・。」
「・・・・・・そうね。生きて償わせるという方法もあるというのを、エミーに言っておかないと。・・・・・・・・・少しでも、エミーの助けにならないとね。明日、エミーとゆっくり話してみるわ。」
「ええ、それが良いと思う。何かあったら、またいつでも連絡して。私に出来る事があるなら、全力でサポートするわ。・・・・・・一緒に、考えましょう。エミーちゃんの為にも。」
「ええ。ありがとう、マヤ。」
次の日の朝。朝食をとった後、ゾーエはエミーに話を切り出す。
「ねえ、エミー。」
「ん?」
「少し、話をしても良いかしら?」
「うん、何の話?」
「とても、大切な話よ。貴女にとっても・・・・・・。」
「・・・・・・・・・うん。」
「エミーは・・・・・・・・・・・・復讐をしようと思ってる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」
「ハヴァーを・・・・・・・・・どうするの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺すつもり。」
「・・・・・・・・・・・・・・・そう。」
分かっていたが、エミーの口から改めて聞くと・・・・・・・・・やはりショックを感じる。・・・・・・・・・しかし、これは大切な話だ。
「大切な人を・・・・・・・・・奪われたから?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「もし・・・・・・・・・・・・・・・そうして欲しくないって・・・・・・・・・・・・・・・・・・言ったら?」
「・・・! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・難しい・・・・・・・・・かも・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ええ。・・・・・・・・・・・・そうよね・・・・・・・・・・・・。大切な人を、奪われたんだもの・・・・・・・・・・・・・・・。」
「復讐は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・止めた方が・・・・・・・・・・・・・・・良い?」
「・・・・・・・・・エミーは、堪えられる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・堪えられない・・・・・・・・・・・・今も、自由に生きてると思うと・・・・・・・・・・・・・・・・・・許せない・・・・・・!」
エミーの拳に力が入る。
「ええ・・・・・・・・・・・・当然よね・・・・・・・・・・・・。分かったわ。無理に堪えろとは言わない。けど・・・・・・・・・・・・お願い、聞いてくれる?」
「・・・・・・・・・うん。」
「もし、もう一度ハヴァーに会った時に・・・・・・・・・・・・一度話してみて。・・・・・・・・・理由を、聞いてみて。それで、許せないと思ったなら・・・・・・・・・・・・エミーがどうするか決めて・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、分かった。」
「・・・・・・・・・選択肢を、もう一つ用意出来る。・・・・・・・・・マヤに頼んで、ある空間に封じ込めてもらう事も出来るわ・・・・・・・・・・・・。生きてその罪を償わせるという方法もある・・・・・・・・・・・・。どちらにするか、最後はエミーが決めて・・・・・・・・・。」
「うん・・・・・・・・・・・・。」
ゾーエは椅子から立ち上がり、エミーの傍に行く。そして、優しく抱きしめた。
「・・・・・・エミーはもう、独りじゃないわ。私達がいる。・・・・・・お願い・・・・・・辛い事や、悲しい事を、独りで抱え込まないで・・・・・・・・・。幾らでも、周りに頼って良いからね・・・・・・・・・。あの時も言ったでしょ?私達も、一緒に考えるから・・・・・・・・・。」
「・・・・・・! ・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・。」
ゾーエの暖かさ、涙を堪える様なその声。気が付くと、エミーの眼からは涙が零れていた。
・・・・・・・・・そうだ。今は独りじゃない。支えてくれる人達がいる。一緒に考えてくれる人達がいる。私も、よく考えて、決めるんだ。私は、ハヴァーと話して、善悪を見極めないといけない。そして最後に、善と信じる方を選択するんだ・・・・・・・・・
「そう・・・少しでも落ち着いたみたいなら、良かったわ。」
「ええ。やっぱり一人で抱え込んじゃってたみたい。・・・・・・でももう大丈夫。エミーも、これから色々相談してくれるって。」
「それなら良かったわ。・・・・・・何かあったら呼びなさいよ?直ぐに駆けつけるから。」
「ええ、ありがとう。」
「・・・・・・・・・後、調べてみたわ。ハヴァーについて。」
「・・・・・・どうだった?」
「・・・・・・見つからないわ。・・・・・・高位魔女だから、新生魔法が使えるでしょ?だから、新生魔法書も確認してみたんだけど、ハヴァーの名前は無かったわ・・・・・・。」
「そう・・・・・・・・・。」
「何処にいるか分からない以上、下手に大々的に名前を挙げていくと、感づかれるかもしれない。・・・・・・ハヴァーが何者か分からない現状で、それは危険だわ。だから、数人にしか聞けてないけど・・・・・・名前を知ってる人はいなかったわ。」
「ありがとう。・・・・・・・・・ハヴァーがどんな人なのか少しでも分かれば、原因や理由も少しずつ見えてくると思ったんだけど・・・・・・・・・。やっぱり、直接聞くしかないかしら・・・・・・。」
「そうね・・・・・・・・・。難しいかもしれないけど、本人の口から直接聞くのが一番良いからね。・・・・・・その時何があったのか、どんな流れで現状に至るのか・・・・・・本人が一番よく知ってるでしょうし。」
「・・・・・・ええ。真相を知らない以上、私達がハヴァーを『悪』と断定する事は出来ないわ。・・・・・・ただ・・・・・・何も知らない状況でエミーと会わせるのも、怖い・・・・・・。」
「そうね・・・・・・・・・。現状では怖いわね・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ゾーエ。もし何処かで出会う様な事があって、少しでも危険と感じたら、直ぐに私を呼んで。場所さえ言ってくれれば、転移魔法でそこまで行くから。」
「ええ・・・・・・分かったわ・・・・・・。本当にありがとう、マヤ。」
「私と貴女の仲でしょう?気なんか遣わなくて良いから、いつでも連絡しなさいよ。」
「ええ。助かるわ。」
次の日の朝、エミーはいつもの様に特訓をする為に外に出る。しかし、いつもの様に直ぐに遠くには行かない。
「・・・・・・・・・ゾーエ。」
「何?」
「私一旦、強力な魔法は・・・・・・『土』の元素魔法は使わないようにする。」
「・・・うん。」
「無理に焦らなくても良いかなって、そう思ったから。」
「うん。」
「・・・・・・代わりにさ、浮遊魔法の特訓したいな。・・・・・・・・・無辺図書館でゾーエと飛んだ時、すごい楽しかったから!」
「・・・うん!そうね。じゃあ、浮遊魔法の特訓しましょうか!」
「うん!」
エミーは一人で抱え込む事を止めた。そして、強力な『土』の元素魔法を焦って制御する事も。
復讐心。・・・・・・ハヴァーを直ぐにでも殺してやる・・・・・・。エミーは心の何処かで、それを持ち続けていた。思えばそれは、あの時から・・・・・・・・・ハヴァーの存在を知った、四年前から、ずっと・・・・・・。しかし、四年の時を経て、色んな人達と出会って、思いが変わった。勿論復讐心が無くなった訳じゃない。今でもハヴァーは許せない。・・・・・・でも、一度ちゃんと話してみよう、ハヴァーと。真実を、自分の目で確かめよう。それでも、許せないと思ったなら、行動しよう。復讐の事を考えるのは、それからでも遅くはない。今は、よく考える時だ。よく考えて、よく考えて、最後に、自分のとる行動を決める。だから、今すぐ復讐の事は考えない。今考えるべきなのは、ハヴァーとちゃんと話をしてみる事。考えに行き詰まった時に、皆の力を借りる事。今は独りじゃないから。支えてくれる人達がいるから。その人達の為にも、私はよく考えて選択するんだ・・・・・・。
「エミー!持ってきたわよ!」
ゾーエは両手に箒を持っている。
「わあ!箒だ!」
ゾーエはエミーに箒を一つ渡す。エミーの眼はキラキラ輝いている。よっぽど箒が気に入ったみたいだ。
「いい?エミー。箒に乗って飛ぶには、先ず箒を浮かせられる様にならないといけないの。それも、ただ浮かせるだけじゃ駄目。しっかり固定させるのよ。」
「固定?」
「そう。箒に乗った時、空中でちゃんと固定出来ないと、バランスを崩して落っこちちゃうわ。先ずは、浮かせて固定するとこからね!」
「うん!」
フワ・・・・・・・・・・・・
「浮いた!」
「うん!第一ステップはクリアね!けど、ここからが難しいわ。それを空中でピタッと止めるの。」
「・・・・・・うん・・・・・・!」
エミーは集中する。・・・・・・箒を固定、箒を固定・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・!」
フワフワ・・・・・・・・・
「あれぇ!?何でぇ!?ずっとフワフワしたまんまだよゾーエ!」
「まあ最初から上手くはいかないわ!ゆっくりと段々上達していくのよ。」
「んんんんん・・・・・・・・・!」
フワフワ・・・・・・・・・グンッ!!
「わぁ!!」
箒が物凄い角度になる。もし人が乗っていたら、確実に落ちているだろう。
「力み過ぎたわね!ほら、もっと肩の力を抜いて?」
ゾーエはエミーの両肩にそっと手を置く。
「・・・・・・!! ・・・・・・・・・う、うん・・・・・・!!」
ギュンッ!!!
「わぁぁぁ!?」
箒が天高くまで飛んで行く。もし人が乗っていたら・・・大変な事になっているだろう。
「わ!!・・・・・・・・・物凄い飛んでっちゃったわね・・・・・・・・・!」
「な、何でだろう・・・・・・。」
何故かは分からないが、ゾーエに肩を触られると、緊張してしまう。
ヒューーーーーー・・・・・・・・・・・・
箒が落下して来た。
「あ!・・・・・・・・・!」
ヒューーー・・・フワッ・・・
「・・・・・・ふぅ・・・・・・。結構難しいね。」
「そうね。浮遊させるだけなら簡単だけど、箒に乗る為には固定させる技術が必要になるわ。そこが一番難しいところね。」
「技術かぁ・・・・・・。何かコツとかある?」
「コツ、そうね。・・・・・・・・・あまり力を入れ過ぎない事と、後は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「後は?」
「・・・・・・・・・か、感覚?」
「えぇ!?」
「だ、だって・・・・・・ほんとにそうなのよ・・・・・・!?こればっかりは感覚なの・・・・・・。上手く固定出来るまで、とにかく浮遊させ続けてたら、何となく感覚が掴める様になってくるのよ。」
「そうなの?」
「ええ。私もそうだったし、大体の子がそうなの。全然上手くいかないなって最初は思って、でもずーっと練習し続けてると、ある日突然感覚が分かるようになるの。」
「そうなんだ・・・・・・。その感覚って、どのくらい練習したら来るの?」
「そうねぇ・・・・・・・・・私の時は確か・・・・・・十一歳から始めて、固定出来る様になったのが、十二歳の手前位だったわ。」
「じゃあ、一年くらい?」
「そうね、周りの子も大体その位は掛かってたわね。」
「結構掛かるんだね・・・。」
「まあ、殆どの魔女は十二歳手前でようやく固定する事が出来る様になる、って言われてるわ。・・・・・・・・・まあ、一部例外もいるけどね・・・・・・・・・。」
「例外?」
「マヤとかケーラとか、ね。」
「ケーラ、さん?」
「そっか、エミーにはまだ言ってなかったわね。ケーラは今いる最高位魔女の内の一人よ。つまり、今いる最高位魔女は、エミーとマヤと、ケーラの三人なの。」
「なるほど・・・!やっぱりマヤさんとその、ケーラさん、は、箒に乗れる様になったのも早かったの?」
「ええ、早かったわ。マヤは確か八歳の頃には何とか乗れていたわね。」
「はっ、八歳・・・・・・!?えと、その、ケーラ、さん?は、何歳から乗れてたの?」
「あの子はちょっとずば抜けてるからね・・・・・・。確か七歳には完璧に乗りこなしてたわ。」
「な、七、歳・・・・・・。私その時、魔法すら知らなかったよ・・・・・・。」
「まあエミーがこっちに来たのは最近の事だし、それは気にする必要無いわよ!」
「・・・・・・・・・うん!何か寧ろ、燃えてきた!!私ももっともっと頑張る!!」
「良いわエミー!その調子よ!」
二人は更なる魔法の特訓を、この大地で続けていく。
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