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第十七話「感謝の言葉」
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「ここをこうして・・・・・・・・・そう!後は・・・・・・・・・」
・・・・・・後は、火加減の調節・・・色が・・・・・・
「・・・・・・・・・変わるまでね!・・・・・・・・・上手!そうやって動かしながら、均一に火を・・・」
・・・・・・「「通していって」」・・・少しずつ動かしてね・・・・・・
「!!・・・・・・美味しい!!かなり上達したね!!」
・・・・・・美味しい・・・前は料理苦手だったけど・・・上手になったね・・・・・・
「!!・・・う、うん!!ありがとう!!」
「ふふっ!」
・・・・・・「「顔が赤くなってるよ」」・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
ガバッ・・・・・・・・・!
夢から覚めたエミーは、ベッドから起き上がる。それで目が覚めたのか、寝ぼけ眼のソフィアが横になったままエミーに話しかける。
「・・・・・・・・・エ・・・ミ~・・・・・・?・・・・・・おは・・・・・・・・・・・・よう・・・・・・・・・」
「あ、ソフィア・・・・・・起こしちゃった?ごめんね。」
ソフィアはゆっくりと起き上がる。まだ寝ぼけている様だ。
「大丈夫~・・・・・・・・・今起きた~・・・・・・・・・・・・エミ~・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・おは・・・よう・・・・・・・・・・・・」
「うん!おはよう!」
「・・・・・・・・・エミ~・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・おは・・・よう・・・・・・・・・・・・」
「う、うん・・・おはよう!」
「・・・・・・・・・エミ~~・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう~・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ソ、ソフィア・・・?まだ寝てて大丈夫だよ・・・?」
「・・・・・・・・・大丈夫~・・・・・・・・・ソフィア・・・・・・・・・大丈夫~・・・・・・・・・まだ寝てて・・・・・・・・・だい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ソフィアは上半身を起こしたまま、段々と眼を瞑っていく。どんどん前へと倒れていき、前屈の体勢になった。
その状態のまま、次第に寝息を立て始める。
スー・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・
「・・・・・・・・・ソフィア、朝に弱いもんね・・・・・・!」
小声でエミーは言う。初めてソフィアと会った時も無辺図書館でお泊まり会をし、今日の様に一緒のベッドで寝た。
その時からエミーは、ソフィアが朝に弱い事を知っている。
エミーはゆっくりとソフィアの上半身を起こし、頭を枕に持っていく。そしてエミーはベッドから出て、ソフィアにそっと布団をかけた。
ベッドから出たエミーは、隣にあるテーブルから本と羽根ペンを取る。そして、ソフィアを起こさない様にゆっくりとベッドに腰かけ、本に文字を書いていく。昨日のピュライネ祭の事、打ち上げの事、久し振りのお泊まり会の事、そして、今日の夢・・・・・・・・・エミーの大切な思い出が、本に沢山詰まっていく。
「ふぅ・・・・・・よし!書き終わった!」
エミーが本を閉じて羽根ペンと一緒に机に置く。すると、丁度ソフィアが目を覚ました。
「ん・・・んん~・・・・・・!あ!おはようエミー・・・・・・!」
「おはよう!ふふっ!今日で五回目だね!」
「?」
何の事か分からないソフィアは、首を傾げる。エミーはその事を説明する。
「おはようって言うのだよ。ソフィア、覚えてないでしょ?寝ぼけてたんだね!」
「わ、私寝ぼけてたの・・・!?よく覚えてないんだけど・・・・・・・・・」
「ぽや~っとしたまま、ずっとおはようって言ってたんだよ!」
「そ、そんな事してた・・・!?お、覚えてない・・・・・・。」
「ソフィア、朝に弱いもんね!」
「!!・・・な、何でそれを・・・・・・!?」
「初めて一緒にお泊まり会した時も、ぽや~っとしてたから!」
「!・・・そ、そうだったんだ・・・・・・・・・・・・・・・そ、その時は何て言ってたの・・・・・・?」
「えーっと、確か・・・・・・お母さん、ってずっと言ってたよ!」
「・・・・・・・・・えっ・・・!?」
カァァァァァァ・・・・・・!!
ソフィアの顔が赤くなる。
「は、は、恥ずかしい・・・・・・・・・!!」
「そんな事ないよ!可愛かったよ!」
「エ、エミー・・・!もっと恥ずかしくなるから止めて・・・・・・!」
二人が一階へ降りていくと、既にゾーエ、マヤ、マリッサがいた。ゾーエとマヤがキッチンで作業をしている。マリッサはそれを眺めている。
「「おはよう!」」
二人は階段を降りきって、元気に言う。すると、三人も二人の方を向き、元気に返す。
「「「おはよう!」」」
その時エミーは、三人が何をしているのかを直ぐに察知する。
「あ!マカロン作ってるの!?」
「ええ、そうよ!マヤに教えながらね!」
「・・・・・・む、難しいわね・・・・・・。」
マヤは初めてのマカロン作りに苦戦しているようだ。
すると、ソフィアがマヤを応援する。
「マヤお母さん・・・!頑張って・・・!」
「!・・・ありがとうソフィア!ソフィアに応援されたら、絶対成功させてやるって思えるわ!」
マヤはゾーエの説明を聞きながら、一生懸命頑張る。
「マリッサお母さんは、私と一緒に応援・・・?」
「うん!ソフィアと一緒に応援するの!一応ゾーエさんの説明聞いてるけど、私には作れないと思ったから!」
「マリッサには絶対無理ね・・・・・・相当作るのが難しいもの・・・・・・」
マヤの言葉を聞き、エミーはゾーエに聞いてみる。
「ゾーエ、マカロン作るのってそんなに難しいの?」
「ええ、難しいわよ!お菓子の中でも作るのが特に難しいの!」
「!・・・・・・どんなお菓子なんだろ・・・!?気になるねソフィア!」
「うん・・・!」
エミーとソフィアとマリッサは、ゾーエとマヤを応援する。
「よし!後は焼き終わったら、これらのクリームやガナッシュを挟んで完成よ!」
「これは一人で作れる様になるまで、少し掛かりそうね・・・・・・。」
「まあコツを掴めば大丈夫よ。貴女はコツを掴めば後は早いでしょ?」
「ええ!直ぐに完璧に作れる様になってみせるわ!」
「後少しで出来るの!?」
エミーはワクワクしながら聞く。
「ええ、後少しよ!楽しみに待っててね、エミー!」
「うん!・・・・・・後少しだってソフィア!」
「うん・・・!楽しみ・・・!」
するとその時、ドアをノックする音が聞こえる。
コンコン・・・・・・!
「あら、お客さんかしら?」
ゾーエは玄関まで行き、ドアを開ける。
「はーい!」
ガチャ・・・・・・
「あ!二人共!」
「「おはようございます!」」
ドアの先には、クレアとオリヴィアがいた。
「あ!クレアさんとオリヴィアさん!おはようございます!」
「「エミーちゃん、おはよう!」」
するとマヤとマリッサ、ソフィアも声をかける。
「あら、二人じゃない!レース見てたわよ!」
「良いレースでしたよ・・・!二人共・・・!」
「す、凄かったです・・・・・・!」
「「マヤさん!マリッサさん!ソフィアちゃん!」」
その様子を見る限り、どうやら顔見知りの様だ。
「皆もお知り合いなんですか?」
エミーは聞いてみた。するとマヤがそれに答える。
「ええ!二人共よく図書館に来てたからね!管理人だし、よく会ってたのよ!」
エミーはクレアとマリッサにも聞いてみる。
「よく無辺図書館に行ってたんですか?」
「ええ!私が色々勉強したかったから、その為によく通ってたの!」
「私はオリヴィアに着いて行ってた感じかな!」
マヤは二人が子供の頃の事を話す。
「二人共、よく迷子になってたのよ!オリヴィアちゃんは勉強に夢中でどんどん違う所に行って、クレアちゃんは体力作りで走ってどっか行って・・・・・・来る度に迷子になってたもんね!」
「す、すいません・・・・・・あの頃はご迷惑をおかけして・・・・・・色々勉強してたら、気が付いた時には迷子になってしまってて・・・・・・」
「私も、体力作りで階段上がってたら、何十階も行ってしまって・・・・・・」
「別に謝る事じゃないわよ!無辺図書館は誰だって迷子になるもの!私も何度も迷子になった事あるし、マリッサもそうだったし!二人が無辺図書館で得たものでここまで来れたなら、管理人としてこれ程嬉しい事は無いわ!」
「「マ、マヤさん・・・・・・!!」」
「管理人でもない限り、あんな広いとこ、迷子にならない方が珍しいわよ!・・・・・・まあ、そんな珍しい人がここにいるけど・・・・・・」
マヤはゾーエを見る。
「?・・・・・・私?」
「貴女以外いないでしょう・・・・・・取り敢えず私が管理人の時から、一度も迷子になった姿を見た事無いわね。」
マリッサも、ソフィアも同様に頷く。
「確かに、ゾーエさんが迷子になったの見た事無いですね・・・・・・管理人レベルで迷子にならないですよね・・・・・・完全に知り尽くしています・・・・・・!」
「ゾーエさん・・・・・・一番迷子になりやすい五階エリアでも、迷子になったの見た事無いです・・・・・・凄いです・・・!」
「ま、まあよく通ってたし・・・今はあれだけど、昔は迷子になった事もあるわよ?」
「でも同じ階でなった事無いでしょ?」
「ま、まあ無いわね・・・・・・。」
「あの五階ですら昔に一回だけしか迷子になった事ないなんて・・・・・・記憶力が物凄く良いのか、空間把握能力が物凄く良いのか・・・・・・多分両方でしょうね。ほんとに凄いわよ貴女は。」
「はい・・・!マヤの言う通り、ほんとに凄いです・・・!」
「ゾーエさん・・・・・・凄い・・・・・・!」
「ちょ、ちょっと何いきなり!?そんなに凄い事でも無いわよ・・・!」
ゾーエは少し動揺しながら言う。普段からしっかりしているゾーエだが、褒められるのには弱い。
しかし更に、クレアとオリヴィアもそこに乗っかる。
「ゾ、ゾーエさんあの広さで迷子にならないんですか!?流石、泳ぎの師匠ですね!」
「五階・・・・・・何度も迷子になってきたし、今でも奥へ行ったら迷子になるくらいの場所なのに・・・・・・やはりゾーエさんは凄いですね!」
「わ、分かった!分かったから!その辺で十分よ!」
少し動揺しながらも、まだゾーエは普通に出来ている。だが・・・・・・・・・・・・
そこに、最後の矢が刺さる。恐らくゾーエにとって最も効くであろう矢が。
「ゾーエ・・・・・・!凄いんだね・・・・・・!流石ゾーエ!!綺麗で賢くて運動神経もあって・・・・・・・・・凄い!!」
「!!!!!」
今まで平静を装った顔をしていたが、エミーのその言葉に、ゾーエの顔は真っ赤になってしまう。ゾーエは思わずかがみ込む。顔を隠しているつもりなのだが、耳まで赤くなっているので隠しきれていない。
ゾーエが褒められるのに弱い事を知らない皆は、びっくりする。
「ど、どうしたのゾーエ!?」
「だ、大丈夫ですか・・・・・・!?」
「ゾ、ゾーエさん・・・・・・ど、どうかしましたか・・・・・・!?」
「ゾーエさん!?どうしたんですか!?」
「ゾーエさん!耳まで真っ赤だよ!」
クレアがそう言うと、ゾーエは直ぐに耳を手で隠す。
「な、何でも無いわよ!?大丈夫!」
「まさかそこまでとは・・・・・・・・・前の遠声の時に褒められ弱い事知ったけど、ここまでとは思わなかったわ・・・・・・貴女今までどうやって生活してきたのよ・・・・・・。」
「い、いや・・・・・・・・・普段は大丈夫なんだけど・・・・・・面と向かって言われると・・・・・・・・・い、今までは平静を装ってきたけど・・・・・・皆して言うんだもん・・・・・・・・・流石に動揺するわよ・・・・・・・・・」
その場にいる皆は、マヤとゾーエの会話によりその事を初めて知る。
『『・・・・・・・・・褒められ弱いんだ・・・・・・・・・』』
「!・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
褒められ弱いのは事実だが、本当は顔が赤くなるほどでは無い。少し動揺するくらいのものだ。・・・・・・・・・しかし、エミーに言われると、顔が赤くなってしまう。
・・・・・・ど、どうして・・・エミーに言われると・・・一気に顔が熱くなるわ・・・こんな事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの時以来かも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ・・・・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・・・・・・・・本当に?・・・・・・
ゾーエが動揺しながら考えていると、マヤがこっそりエミーに話しかける。
「エミー、やっぱり脈アリね・・・・・・!」
「?・・・・・・脈あり?どういう意味ですか?」
「ふふっ!内緒!」
「えぇ!?それも内緒ですか!?」
「ええ!きっと大丈夫よ!知らなくても、大丈夫・・・!」
するとゾーエはすくっと立ち上がる。
「ごほんっ・・・・・・・・・!!恥ずかしいとこ見せちゃったわね。でももう大丈夫。私はもう決して面には出さないわ。平静で、冷静なゾーエとして。もう大丈夫。誓ったわ。」
するとマヤがある話をする。
「そう?なら、エミーちゃんに箒の話・・・」
「っと!!まあ待ちなさいマヤ。今はマカロンよマカロン。大事なのはマカロン。」
「あ、そうね!クレアちゃん!オリヴィアちゃん!私達マカロン作ってるの!良かったら食べていかない?」
「え!良いんですか!?」
「ええ!皆も良いでしょ!?」
他の皆も声を揃えて言う。
『もちろん!!!』
「!!じゃあお言葉に甘えて・・・・・・!!クレア!皆と一緒に食べましょ!」
「うん!!」
エミーは二人の様子を見ていて、ある事に気付いた。二人はずっと手を繋いでいる。
「・・・・・・・・・クレアさん!オリヴィアさん!もしかして・・・・・・・・・!!」
「実は今日、それを伝えに来たんです!」
クレアとオリヴィアは見つめ合い、頷く。そして前を向き、息を揃えて言った。
「「私達、結婚します!!!!」」
『!!・・・おめでとーーー!!!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・!!!!
皆が拍手をする。二人共照れながら祝福の言葉を受け取る。
クレアとオリヴィアは見つめ合い、微笑み合った。
・・・・・・本当に、幸せだ・・・・・・
・・・・・・本当に、幸せ・・・・・・
マカロンが焼けるまで、皆はソファに座って話をしていた。
「いつ婚礼の儀を挙げるの?」
「まだ決めてないんですよね。これからオリヴィアと二人で決めていこうと思ってます!ね!」
「ええ!・・・マヤさんとマリッサさんはいつ頃結婚されたんですか?」
「二十の時よ。ほんとは十八で挙げても良かったんだけど、あの時は管理人見習いだったから。二十歳で管理人を引き継いでから、婚礼の儀を挙げたの。」
「再会したのが十六の時だったんです。その時初めてマヤが図書館の管理人って知ったんですよね・・・!」
「私が最高位魔女って知ってびっくりしてたわよね!」
「はい!懐かしいです・・・・・・私も管理のお手伝いとして一緒に図書館を回りながら・・・・・・」
「それで、休日には欠かさずデートしてたもんね!」
「!・・・は、はい・・・!色んな所行きましたね・・・!」
「それで、二十三の時にソフィアが産まれたの!あの時の感動は、今でも忘れられないわ・・・・・・!」
「はい・・・・・・!ほんとに可愛くて・・・・・・!今でもすっごく可愛いですけどね!ソフィア~!!」
マリッサはソフィアを抱きしめる。
「わ!お、お母さん・・・・・・!!」
「まあその後、早く立派にならなくちゃって焦り過ぎちゃって・・・・・・で、二十五の時、ゾーエに言われて目が覚めたの。それからは焦らず、家族と一緒にいる事を最優先するようになって・・・・・・ほんとに良かったわ!」
クレアは気になって聞いてみる。
「ゾーエさんに何て言われたんですか?」
「・・・大切な人との時間を多く取れ、って・・・そのお陰で、目が覚めたわ!だからゾーエには感謝してるの!」
ゾーエは少し気恥しそうに言う。
「か、感謝って・・・・・・あの時の貴女が焦り過ぎてたから、ちょっと言っただけよ・・・・・・そんな大層な事じゃ無いわ・・・・・・」
「でもほんとに感謝してるの。ありかとうねゾーエ!」
「!・・・・・・ま、まあマヤがそう言ってくれるなら・・・・・・ありがたく受け取っておくわ・・・・・・!」
するとマリッサとソフィアも、感謝の言葉を伝える。
「私も、ゾーエさんにはほんとに感謝しています・・・!あの頃、仕事を頑張り過ぎてるマヤが心配でしたし・・・・・・それに、私達が一人前になるまでお手伝いまでしてもらって・・・!」
「わ、私も・・・・・・!ゾーエさんに感謝してます・・・・・・!マヤお母さんの料理が上手になって、美味しいご飯をいっぱい食べられるようになりました・・・・・・!」
すると、クレアとオリヴィアも感謝を伝える。
「私も、ゾーエさんにはすごい感謝してるんです!オリヴィアの事も相談に乗ってくれて、泳ぎも教えてくれて・・・・・・ほんとにありがとうございます!」
「ゾーエさん!私からも、お礼を言わせて下さい!クレアとこんなに幸せな時が過ごせるのも、ゾーエさんのお陰です!クレアが泳ぎ始めたから、私も勉強をしようと思えて・・・・・・!本当にありがとうございます!」
先程動揺しないと誓ったゾーエだが、早速動揺してしまう。
「え、え!?ど、どうしたの皆!?」
するとマヤが応える。
「今までの感謝を伝えてるだけよ!貴女はちょっと抜けてるとこがあるから気付いてないかもだけど・・・・・・貴女は色んな人を助けてきてるの。」
「!・・・え、えと・・・あ、ありがとうね皆・・・・・・!」
するとまたもや、ゾーエに一番効く矢が刺さる。
「わ、私も!!ゾーエにいっぱい助けられたよ!お陰で、大切なものを沢山見つけられた・・・・・・!いつもありがと!ゾーエ・・・・・・!!」
ズキューン・・・・・・!!!
ゾーエの顔が赤くなる。
「う、ううううん!あ、あ、ああありがとねエミー!!」
ゾーエの装いはあっさりと破れる。マヤは微笑みながら言う。
「ふふっ!貴女褒められ弱いかもだけど、エミーちゃんにはもっと弱いわね!」
「・・・・・・・・・う、うぅ・・・・・・・・・」
「でも、ほんとに皆感謝してるの。・・・・・・貴女は沢山の人を救ってきてるのよ。・・・・・・・・・自信を持って大丈夫。」
「!!・・・・・・ええ・・・・・・・・・ありがとう、皆!!」
「よーし!皆、マカロン出来たわよ!」
『『わーい!!』』
マヤは自分の作ったマカロンを見つめる。
「初めてにしては、まあ良いんじゃない?」
「そうね!後は形を綺麗に整える事と、一人でもササッと作れるようになったら、大丈夫ね!」
「よし!それが出来れば師匠越えって訳ね!」
「だから越えでは無いってば!」
皆でテーブルに色とりどりのマカロンを運ぶ。
「す、凄い!色んな色がある!」
「わあ・・・!楽しみだねエミー・・・!」
「うん!」
沢山のマカロンを運び終わり、皆がソファに座る。
「じゃあ、お茶会開きましょう!」
『『はーーい!!』』
エミーとソフィアはマカロンを初めて食べる。二人は手に取ってゆっくりと口に運ぶ。
「「!!」」
二人は驚く。
「こ、この食感は・・・・・・!?」
「う、上手く言い表せられないね・・・・・・!何て言ったらいいのかな・・・・・・・・・でも・・・」
「「凄く美味しい!!!」」
エミーとソフィアはマカロンを美味しそうに食べる。どうやら二人共気に入ったようだ。
マヤはマリッサに自分の作ったマカロンを渡す。
「た、食べてみてマリッサ・・・!」
「はい!」
マリッサはマヤの作ったマカロンを食べる。
「・・・・・・ど、どう・・・・・・?」
「お・・・・・・」
「・・・・・・・・・お?」
「美味しい!美味しいですよマリッサ!」
「!・・・よ、良かったわ!ソ、ソフィアも!」
「うん・・・!」
ソフィアはマヤの作ったマカロンを食べる。
「!・・・美味しいよマヤお母さん!」
「!・・・よ、良かったぁ・・・!」
ゾーエもマヤの作ったマカロンを食べる。
「!・・・うん!良いじゃないマヤ!初めてとは思えないわ!朝から頑張った甲斐があったわね!」
「!・・・これは・・・・・・!成功ね!」
ゾーエとマヤの作ったマカロンを食べながら、皆は話に花を咲かせる。
幸せな時が流れていった・・・・・・・・・。
夕方。皆、帰る時間になる。
マヤ、マリッサ、ソフィア。そして、クレアとオリヴィアは家の外に出た。
「じゃあ皆!また会いましょう!」
「今日は楽しかったです!」
「ま、また来たいな・・・・・・!」
マヤとマリッサとソフィアは手を繋ぎ、転移魔法を発動する。クレアは三人に言う。
「婚礼の儀、是非来て下さいね!」
「ええ!もちろん!」
『『じゃあ、また会いましょう!!!』』
スゥ・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃあ私達もそろそろ・・・ゾーエさん!エミーちゃん!また会おうね!」
「婚礼の儀を挙げる時は、皆呼びますんで!その時は是非来て下さい!」
「ええ!楽しみにしてるわ!」
「私も楽しみにしてます!」
四人は手を振りながら、暫しの別れを告げた。
「エミー!今日は楽しかったわね!」
「うん!楽しかった!ゾーエの新しい一面も見れたし!」
「!・・・ま、まあ・・・・・・そうね・・・・・・恥ずかしい一面を見せちゃったわ・・・・・・」
「そんな事無いよ!照れてるゾーエ、可愛かった・・・・・・!」
「!!・・・と、と取り敢えず家に入りましょ・・・・・・!?」
「うん!」
ゾーエが完璧に平静を装うには、まだまだ時間が掛かりそうだ。
夜。二人はそれぞれの部屋にいた。
エミーはいつもの様に、本に思い出を書き記していく。すると・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!遠声だ・・・・・・!誰からだろう・・・」
エミーは遠声を感知し、イヤリングを手に取る。
「!・・・マナからだ・・・!」
エミーは耳にイヤリングを付け、遠声魔法を発動した。
「マナ?久し振り!」
「久し振りエミー!」
ピュライネ祭レースに向けて猛特訓していたエミーはその間、水曜の遠声をしていなかった。レースが終わり、久し振りにマナの声を聞く。
するとマナが、エミーにとって予想外の事を言う。
「レース凄かったよ!エミーはやっぱり凄いね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?み、観に来てたの!?」
「うん!実は皆で観に行ってたんだ!場所が離れてるから早めに帰ったけど、レースはバッチリ観たよ!レースにギリギリ間に合って良かったよ!」
「ま、まさか皆にも観られてたなんて・・・・・・・・・!」
エミーは少し恥ずかしそうに言う。
「皆で観に行こうって話してたんだ!エミーカッコ良かったよ!」
「え!?あ、う、うん・・・!あ、ありがとう・・・!」
「ははっ!エミー照れてるー!」
「い、いやー・・・・・・流石に照れるよ・・・・・・!」
「はははっ!」
二人が暫くピュライネ祭の話をした後、マナが思い出したように言う。
「あ!」
「?・・・どうしたの?」
「そういえばもう一つあるんだった!・・・・・・実はね、箒に乗れるようになったの!」
「!・・・マナ!やったね!」
「うん!それでね!皆でもう一度集まらない!?」
「!・・・うん!皆と久し振りに会いたい!」
「よーっし!じゃあ日にち決めよっか!」
二人は次の水曜に、皆と遠声して集まる日を決める事にした。
その頃、ゾーエは自身の部屋にいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・ほんとに皆感謝してるの。・・・・・・貴女は沢山の人を救ってきてるのよ。・・・・・・・・・自信を持って大丈夫。・・・・・・
マヤの言葉を思い出す。ゾーエは本を両手で持ちながら呟いた。
「・・・・・・・・・私・・・・・・少しでも・・・誰かを救えていたのかしら・・・・・・・・・・・・自信を持って・・・・・・・・・良いのかしら・・・・・・・・・」
ゾーエは本に話しかけるように呟く。
「・・・・・・・・・あの時は・・・・・・・・・何も・・・・・・何も出来なかったけど・・・・・・・・・・・・・・・今まで・・・・・・少しでも・・・・・・誰かを救えていたのなら・・・・・・・・・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・・・・・」
そしてゾーエは、本を抱きしめるようにして囁いた。
「・・・・・・・・・私は・・・・・・誰かを・・・・・・・・・少しでも・・・・・・助けられてたんだ・・・・・・・・・・・・」
本人に自覚は無いが、ゾーエは紛れも無く、沢山の人を救ってきた。その行動が誰かの助けになっている事を、ゾーエは初めて実感したのだ。
皆の感謝の言葉が、ゾーエの心をとても暖かくした。
・・・・・・後は、火加減の調節・・・色が・・・・・・
「・・・・・・・・・変わるまでね!・・・・・・・・・上手!そうやって動かしながら、均一に火を・・・」
・・・・・・「「通していって」」・・・少しずつ動かしてね・・・・・・
「!!・・・・・・美味しい!!かなり上達したね!!」
・・・・・・美味しい・・・前は料理苦手だったけど・・・上手になったね・・・・・・
「!!・・・う、うん!!ありがとう!!」
「ふふっ!」
・・・・・・「「顔が赤くなってるよ」」・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
ガバッ・・・・・・・・・!
夢から覚めたエミーは、ベッドから起き上がる。それで目が覚めたのか、寝ぼけ眼のソフィアが横になったままエミーに話しかける。
「・・・・・・・・・エ・・・ミ~・・・・・・?・・・・・・おは・・・・・・・・・・・・よう・・・・・・・・・」
「あ、ソフィア・・・・・・起こしちゃった?ごめんね。」
ソフィアはゆっくりと起き上がる。まだ寝ぼけている様だ。
「大丈夫~・・・・・・・・・今起きた~・・・・・・・・・・・・エミ~・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・おは・・・よう・・・・・・・・・・・・」
「うん!おはよう!」
「・・・・・・・・・エミ~・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・おは・・・よう・・・・・・・・・・・・」
「う、うん・・・おはよう!」
「・・・・・・・・・エミ~~・・・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう~・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ソ、ソフィア・・・?まだ寝てて大丈夫だよ・・・?」
「・・・・・・・・・大丈夫~・・・・・・・・・ソフィア・・・・・・・・・大丈夫~・・・・・・・・・まだ寝てて・・・・・・・・・だい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ソフィアは上半身を起こしたまま、段々と眼を瞑っていく。どんどん前へと倒れていき、前屈の体勢になった。
その状態のまま、次第に寝息を立て始める。
スー・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・
「・・・・・・・・・ソフィア、朝に弱いもんね・・・・・・!」
小声でエミーは言う。初めてソフィアと会った時も無辺図書館でお泊まり会をし、今日の様に一緒のベッドで寝た。
その時からエミーは、ソフィアが朝に弱い事を知っている。
エミーはゆっくりとソフィアの上半身を起こし、頭を枕に持っていく。そしてエミーはベッドから出て、ソフィアにそっと布団をかけた。
ベッドから出たエミーは、隣にあるテーブルから本と羽根ペンを取る。そして、ソフィアを起こさない様にゆっくりとベッドに腰かけ、本に文字を書いていく。昨日のピュライネ祭の事、打ち上げの事、久し振りのお泊まり会の事、そして、今日の夢・・・・・・・・・エミーの大切な思い出が、本に沢山詰まっていく。
「ふぅ・・・・・・よし!書き終わった!」
エミーが本を閉じて羽根ペンと一緒に机に置く。すると、丁度ソフィアが目を覚ました。
「ん・・・んん~・・・・・・!あ!おはようエミー・・・・・・!」
「おはよう!ふふっ!今日で五回目だね!」
「?」
何の事か分からないソフィアは、首を傾げる。エミーはその事を説明する。
「おはようって言うのだよ。ソフィア、覚えてないでしょ?寝ぼけてたんだね!」
「わ、私寝ぼけてたの・・・!?よく覚えてないんだけど・・・・・・・・・」
「ぽや~っとしたまま、ずっとおはようって言ってたんだよ!」
「そ、そんな事してた・・・!?お、覚えてない・・・・・・。」
「ソフィア、朝に弱いもんね!」
「!!・・・な、何でそれを・・・・・・!?」
「初めて一緒にお泊まり会した時も、ぽや~っとしてたから!」
「!・・・そ、そうだったんだ・・・・・・・・・・・・・・・そ、その時は何て言ってたの・・・・・・?」
「えーっと、確か・・・・・・お母さん、ってずっと言ってたよ!」
「・・・・・・・・・えっ・・・!?」
カァァァァァァ・・・・・・!!
ソフィアの顔が赤くなる。
「は、は、恥ずかしい・・・・・・・・・!!」
「そんな事ないよ!可愛かったよ!」
「エ、エミー・・・!もっと恥ずかしくなるから止めて・・・・・・!」
二人が一階へ降りていくと、既にゾーエ、マヤ、マリッサがいた。ゾーエとマヤがキッチンで作業をしている。マリッサはそれを眺めている。
「「おはよう!」」
二人は階段を降りきって、元気に言う。すると、三人も二人の方を向き、元気に返す。
「「「おはよう!」」」
その時エミーは、三人が何をしているのかを直ぐに察知する。
「あ!マカロン作ってるの!?」
「ええ、そうよ!マヤに教えながらね!」
「・・・・・・む、難しいわね・・・・・・。」
マヤは初めてのマカロン作りに苦戦しているようだ。
すると、ソフィアがマヤを応援する。
「マヤお母さん・・・!頑張って・・・!」
「!・・・ありがとうソフィア!ソフィアに応援されたら、絶対成功させてやるって思えるわ!」
マヤはゾーエの説明を聞きながら、一生懸命頑張る。
「マリッサお母さんは、私と一緒に応援・・・?」
「うん!ソフィアと一緒に応援するの!一応ゾーエさんの説明聞いてるけど、私には作れないと思ったから!」
「マリッサには絶対無理ね・・・・・・相当作るのが難しいもの・・・・・・」
マヤの言葉を聞き、エミーはゾーエに聞いてみる。
「ゾーエ、マカロン作るのってそんなに難しいの?」
「ええ、難しいわよ!お菓子の中でも作るのが特に難しいの!」
「!・・・・・・どんなお菓子なんだろ・・・!?気になるねソフィア!」
「うん・・・!」
エミーとソフィアとマリッサは、ゾーエとマヤを応援する。
「よし!後は焼き終わったら、これらのクリームやガナッシュを挟んで完成よ!」
「これは一人で作れる様になるまで、少し掛かりそうね・・・・・・。」
「まあコツを掴めば大丈夫よ。貴女はコツを掴めば後は早いでしょ?」
「ええ!直ぐに完璧に作れる様になってみせるわ!」
「後少しで出来るの!?」
エミーはワクワクしながら聞く。
「ええ、後少しよ!楽しみに待っててね、エミー!」
「うん!・・・・・・後少しだってソフィア!」
「うん・・・!楽しみ・・・!」
するとその時、ドアをノックする音が聞こえる。
コンコン・・・・・・!
「あら、お客さんかしら?」
ゾーエは玄関まで行き、ドアを開ける。
「はーい!」
ガチャ・・・・・・
「あ!二人共!」
「「おはようございます!」」
ドアの先には、クレアとオリヴィアがいた。
「あ!クレアさんとオリヴィアさん!おはようございます!」
「「エミーちゃん、おはよう!」」
するとマヤとマリッサ、ソフィアも声をかける。
「あら、二人じゃない!レース見てたわよ!」
「良いレースでしたよ・・・!二人共・・・!」
「す、凄かったです・・・・・・!」
「「マヤさん!マリッサさん!ソフィアちゃん!」」
その様子を見る限り、どうやら顔見知りの様だ。
「皆もお知り合いなんですか?」
エミーは聞いてみた。するとマヤがそれに答える。
「ええ!二人共よく図書館に来てたからね!管理人だし、よく会ってたのよ!」
エミーはクレアとマリッサにも聞いてみる。
「よく無辺図書館に行ってたんですか?」
「ええ!私が色々勉強したかったから、その為によく通ってたの!」
「私はオリヴィアに着いて行ってた感じかな!」
マヤは二人が子供の頃の事を話す。
「二人共、よく迷子になってたのよ!オリヴィアちゃんは勉強に夢中でどんどん違う所に行って、クレアちゃんは体力作りで走ってどっか行って・・・・・・来る度に迷子になってたもんね!」
「す、すいません・・・・・・あの頃はご迷惑をおかけして・・・・・・色々勉強してたら、気が付いた時には迷子になってしまってて・・・・・・」
「私も、体力作りで階段上がってたら、何十階も行ってしまって・・・・・・」
「別に謝る事じゃないわよ!無辺図書館は誰だって迷子になるもの!私も何度も迷子になった事あるし、マリッサもそうだったし!二人が無辺図書館で得たものでここまで来れたなら、管理人としてこれ程嬉しい事は無いわ!」
「「マ、マヤさん・・・・・・!!」」
「管理人でもない限り、あんな広いとこ、迷子にならない方が珍しいわよ!・・・・・・まあ、そんな珍しい人がここにいるけど・・・・・・」
マヤはゾーエを見る。
「?・・・・・・私?」
「貴女以外いないでしょう・・・・・・取り敢えず私が管理人の時から、一度も迷子になった姿を見た事無いわね。」
マリッサも、ソフィアも同様に頷く。
「確かに、ゾーエさんが迷子になったの見た事無いですね・・・・・・管理人レベルで迷子にならないですよね・・・・・・完全に知り尽くしています・・・・・・!」
「ゾーエさん・・・・・・一番迷子になりやすい五階エリアでも、迷子になったの見た事無いです・・・・・・凄いです・・・!」
「ま、まあよく通ってたし・・・今はあれだけど、昔は迷子になった事もあるわよ?」
「でも同じ階でなった事無いでしょ?」
「ま、まあ無いわね・・・・・・。」
「あの五階ですら昔に一回だけしか迷子になった事ないなんて・・・・・・記憶力が物凄く良いのか、空間把握能力が物凄く良いのか・・・・・・多分両方でしょうね。ほんとに凄いわよ貴女は。」
「はい・・・!マヤの言う通り、ほんとに凄いです・・・!」
「ゾーエさん・・・・・・凄い・・・・・・!」
「ちょ、ちょっと何いきなり!?そんなに凄い事でも無いわよ・・・!」
ゾーエは少し動揺しながら言う。普段からしっかりしているゾーエだが、褒められるのには弱い。
しかし更に、クレアとオリヴィアもそこに乗っかる。
「ゾ、ゾーエさんあの広さで迷子にならないんですか!?流石、泳ぎの師匠ですね!」
「五階・・・・・・何度も迷子になってきたし、今でも奥へ行ったら迷子になるくらいの場所なのに・・・・・・やはりゾーエさんは凄いですね!」
「わ、分かった!分かったから!その辺で十分よ!」
少し動揺しながらも、まだゾーエは普通に出来ている。だが・・・・・・・・・・・・
そこに、最後の矢が刺さる。恐らくゾーエにとって最も効くであろう矢が。
「ゾーエ・・・・・・!凄いんだね・・・・・・!流石ゾーエ!!綺麗で賢くて運動神経もあって・・・・・・・・・凄い!!」
「!!!!!」
今まで平静を装った顔をしていたが、エミーのその言葉に、ゾーエの顔は真っ赤になってしまう。ゾーエは思わずかがみ込む。顔を隠しているつもりなのだが、耳まで赤くなっているので隠しきれていない。
ゾーエが褒められるのに弱い事を知らない皆は、びっくりする。
「ど、どうしたのゾーエ!?」
「だ、大丈夫ですか・・・・・・!?」
「ゾ、ゾーエさん・・・・・・ど、どうかしましたか・・・・・・!?」
「ゾーエさん!?どうしたんですか!?」
「ゾーエさん!耳まで真っ赤だよ!」
クレアがそう言うと、ゾーエは直ぐに耳を手で隠す。
「な、何でも無いわよ!?大丈夫!」
「まさかそこまでとは・・・・・・・・・前の遠声の時に褒められ弱い事知ったけど、ここまでとは思わなかったわ・・・・・・貴女今までどうやって生活してきたのよ・・・・・・。」
「い、いや・・・・・・・・・普段は大丈夫なんだけど・・・・・・面と向かって言われると・・・・・・・・・い、今までは平静を装ってきたけど・・・・・・皆して言うんだもん・・・・・・・・・流石に動揺するわよ・・・・・・・・・」
その場にいる皆は、マヤとゾーエの会話によりその事を初めて知る。
『『・・・・・・・・・褒められ弱いんだ・・・・・・・・・』』
「!・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
褒められ弱いのは事実だが、本当は顔が赤くなるほどでは無い。少し動揺するくらいのものだ。・・・・・・・・・しかし、エミーに言われると、顔が赤くなってしまう。
・・・・・・ど、どうして・・・エミーに言われると・・・一気に顔が熱くなるわ・・・こんな事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの時以来かも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ・・・・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・・・・・・・・本当に?・・・・・・
ゾーエが動揺しながら考えていると、マヤがこっそりエミーに話しかける。
「エミー、やっぱり脈アリね・・・・・・!」
「?・・・・・・脈あり?どういう意味ですか?」
「ふふっ!内緒!」
「えぇ!?それも内緒ですか!?」
「ええ!きっと大丈夫よ!知らなくても、大丈夫・・・!」
するとゾーエはすくっと立ち上がる。
「ごほんっ・・・・・・・・・!!恥ずかしいとこ見せちゃったわね。でももう大丈夫。私はもう決して面には出さないわ。平静で、冷静なゾーエとして。もう大丈夫。誓ったわ。」
するとマヤがある話をする。
「そう?なら、エミーちゃんに箒の話・・・」
「っと!!まあ待ちなさいマヤ。今はマカロンよマカロン。大事なのはマカロン。」
「あ、そうね!クレアちゃん!オリヴィアちゃん!私達マカロン作ってるの!良かったら食べていかない?」
「え!良いんですか!?」
「ええ!皆も良いでしょ!?」
他の皆も声を揃えて言う。
『もちろん!!!』
「!!じゃあお言葉に甘えて・・・・・・!!クレア!皆と一緒に食べましょ!」
「うん!!」
エミーは二人の様子を見ていて、ある事に気付いた。二人はずっと手を繋いでいる。
「・・・・・・・・・クレアさん!オリヴィアさん!もしかして・・・・・・・・・!!」
「実は今日、それを伝えに来たんです!」
クレアとオリヴィアは見つめ合い、頷く。そして前を向き、息を揃えて言った。
「「私達、結婚します!!!!」」
『!!・・・おめでとーーー!!!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・!!!!
皆が拍手をする。二人共照れながら祝福の言葉を受け取る。
クレアとオリヴィアは見つめ合い、微笑み合った。
・・・・・・本当に、幸せだ・・・・・・
・・・・・・本当に、幸せ・・・・・・
マカロンが焼けるまで、皆はソファに座って話をしていた。
「いつ婚礼の儀を挙げるの?」
「まだ決めてないんですよね。これからオリヴィアと二人で決めていこうと思ってます!ね!」
「ええ!・・・マヤさんとマリッサさんはいつ頃結婚されたんですか?」
「二十の時よ。ほんとは十八で挙げても良かったんだけど、あの時は管理人見習いだったから。二十歳で管理人を引き継いでから、婚礼の儀を挙げたの。」
「再会したのが十六の時だったんです。その時初めてマヤが図書館の管理人って知ったんですよね・・・!」
「私が最高位魔女って知ってびっくりしてたわよね!」
「はい!懐かしいです・・・・・・私も管理のお手伝いとして一緒に図書館を回りながら・・・・・・」
「それで、休日には欠かさずデートしてたもんね!」
「!・・・は、はい・・・!色んな所行きましたね・・・!」
「それで、二十三の時にソフィアが産まれたの!あの時の感動は、今でも忘れられないわ・・・・・・!」
「はい・・・・・・!ほんとに可愛くて・・・・・・!今でもすっごく可愛いですけどね!ソフィア~!!」
マリッサはソフィアを抱きしめる。
「わ!お、お母さん・・・・・・!!」
「まあその後、早く立派にならなくちゃって焦り過ぎちゃって・・・・・・で、二十五の時、ゾーエに言われて目が覚めたの。それからは焦らず、家族と一緒にいる事を最優先するようになって・・・・・・ほんとに良かったわ!」
クレアは気になって聞いてみる。
「ゾーエさんに何て言われたんですか?」
「・・・大切な人との時間を多く取れ、って・・・そのお陰で、目が覚めたわ!だからゾーエには感謝してるの!」
ゾーエは少し気恥しそうに言う。
「か、感謝って・・・・・・あの時の貴女が焦り過ぎてたから、ちょっと言っただけよ・・・・・・そんな大層な事じゃ無いわ・・・・・・」
「でもほんとに感謝してるの。ありかとうねゾーエ!」
「!・・・・・・ま、まあマヤがそう言ってくれるなら・・・・・・ありがたく受け取っておくわ・・・・・・!」
するとマリッサとソフィアも、感謝の言葉を伝える。
「私も、ゾーエさんにはほんとに感謝しています・・・!あの頃、仕事を頑張り過ぎてるマヤが心配でしたし・・・・・・それに、私達が一人前になるまでお手伝いまでしてもらって・・・!」
「わ、私も・・・・・・!ゾーエさんに感謝してます・・・・・・!マヤお母さんの料理が上手になって、美味しいご飯をいっぱい食べられるようになりました・・・・・・!」
すると、クレアとオリヴィアも感謝を伝える。
「私も、ゾーエさんにはすごい感謝してるんです!オリヴィアの事も相談に乗ってくれて、泳ぎも教えてくれて・・・・・・ほんとにありがとうございます!」
「ゾーエさん!私からも、お礼を言わせて下さい!クレアとこんなに幸せな時が過ごせるのも、ゾーエさんのお陰です!クレアが泳ぎ始めたから、私も勉強をしようと思えて・・・・・・!本当にありがとうございます!」
先程動揺しないと誓ったゾーエだが、早速動揺してしまう。
「え、え!?ど、どうしたの皆!?」
するとマヤが応える。
「今までの感謝を伝えてるだけよ!貴女はちょっと抜けてるとこがあるから気付いてないかもだけど・・・・・・貴女は色んな人を助けてきてるの。」
「!・・・え、えと・・・あ、ありがとうね皆・・・・・・!」
するとまたもや、ゾーエに一番効く矢が刺さる。
「わ、私も!!ゾーエにいっぱい助けられたよ!お陰で、大切なものを沢山見つけられた・・・・・・!いつもありがと!ゾーエ・・・・・・!!」
ズキューン・・・・・・!!!
ゾーエの顔が赤くなる。
「う、ううううん!あ、あ、ああありがとねエミー!!」
ゾーエの装いはあっさりと破れる。マヤは微笑みながら言う。
「ふふっ!貴女褒められ弱いかもだけど、エミーちゃんにはもっと弱いわね!」
「・・・・・・・・・う、うぅ・・・・・・・・・」
「でも、ほんとに皆感謝してるの。・・・・・・貴女は沢山の人を救ってきてるのよ。・・・・・・・・・自信を持って大丈夫。」
「!!・・・・・・ええ・・・・・・・・・ありがとう、皆!!」
「よーし!皆、マカロン出来たわよ!」
『『わーい!!』』
マヤは自分の作ったマカロンを見つめる。
「初めてにしては、まあ良いんじゃない?」
「そうね!後は形を綺麗に整える事と、一人でもササッと作れるようになったら、大丈夫ね!」
「よし!それが出来れば師匠越えって訳ね!」
「だから越えでは無いってば!」
皆でテーブルに色とりどりのマカロンを運ぶ。
「す、凄い!色んな色がある!」
「わあ・・・!楽しみだねエミー・・・!」
「うん!」
沢山のマカロンを運び終わり、皆がソファに座る。
「じゃあ、お茶会開きましょう!」
『『はーーい!!』』
エミーとソフィアはマカロンを初めて食べる。二人は手に取ってゆっくりと口に運ぶ。
「「!!」」
二人は驚く。
「こ、この食感は・・・・・・!?」
「う、上手く言い表せられないね・・・・・・!何て言ったらいいのかな・・・・・・・・・でも・・・」
「「凄く美味しい!!!」」
エミーとソフィアはマカロンを美味しそうに食べる。どうやら二人共気に入ったようだ。
マヤはマリッサに自分の作ったマカロンを渡す。
「た、食べてみてマリッサ・・・!」
「はい!」
マリッサはマヤの作ったマカロンを食べる。
「・・・・・・ど、どう・・・・・・?」
「お・・・・・・」
「・・・・・・・・・お?」
「美味しい!美味しいですよマリッサ!」
「!・・・よ、良かったわ!ソ、ソフィアも!」
「うん・・・!」
ソフィアはマヤの作ったマカロンを食べる。
「!・・・美味しいよマヤお母さん!」
「!・・・よ、良かったぁ・・・!」
ゾーエもマヤの作ったマカロンを食べる。
「!・・・うん!良いじゃないマヤ!初めてとは思えないわ!朝から頑張った甲斐があったわね!」
「!・・・これは・・・・・・!成功ね!」
ゾーエとマヤの作ったマカロンを食べながら、皆は話に花を咲かせる。
幸せな時が流れていった・・・・・・・・・。
夕方。皆、帰る時間になる。
マヤ、マリッサ、ソフィア。そして、クレアとオリヴィアは家の外に出た。
「じゃあ皆!また会いましょう!」
「今日は楽しかったです!」
「ま、また来たいな・・・・・・!」
マヤとマリッサとソフィアは手を繋ぎ、転移魔法を発動する。クレアは三人に言う。
「婚礼の儀、是非来て下さいね!」
「ええ!もちろん!」
『『じゃあ、また会いましょう!!!』』
スゥ・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃあ私達もそろそろ・・・ゾーエさん!エミーちゃん!また会おうね!」
「婚礼の儀を挙げる時は、皆呼びますんで!その時は是非来て下さい!」
「ええ!楽しみにしてるわ!」
「私も楽しみにしてます!」
四人は手を振りながら、暫しの別れを告げた。
「エミー!今日は楽しかったわね!」
「うん!楽しかった!ゾーエの新しい一面も見れたし!」
「!・・・ま、まあ・・・・・・そうね・・・・・・恥ずかしい一面を見せちゃったわ・・・・・・」
「そんな事無いよ!照れてるゾーエ、可愛かった・・・・・・!」
「!!・・・と、と取り敢えず家に入りましょ・・・・・・!?」
「うん!」
ゾーエが完璧に平静を装うには、まだまだ時間が掛かりそうだ。
夜。二人はそれぞれの部屋にいた。
エミーはいつもの様に、本に思い出を書き記していく。すると・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!遠声だ・・・・・・!誰からだろう・・・」
エミーは遠声を感知し、イヤリングを手に取る。
「!・・・マナからだ・・・!」
エミーは耳にイヤリングを付け、遠声魔法を発動した。
「マナ?久し振り!」
「久し振りエミー!」
ピュライネ祭レースに向けて猛特訓していたエミーはその間、水曜の遠声をしていなかった。レースが終わり、久し振りにマナの声を聞く。
するとマナが、エミーにとって予想外の事を言う。
「レース凄かったよ!エミーはやっぱり凄いね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?み、観に来てたの!?」
「うん!実は皆で観に行ってたんだ!場所が離れてるから早めに帰ったけど、レースはバッチリ観たよ!レースにギリギリ間に合って良かったよ!」
「ま、まさか皆にも観られてたなんて・・・・・・・・・!」
エミーは少し恥ずかしそうに言う。
「皆で観に行こうって話してたんだ!エミーカッコ良かったよ!」
「え!?あ、う、うん・・・!あ、ありがとう・・・!」
「ははっ!エミー照れてるー!」
「い、いやー・・・・・・流石に照れるよ・・・・・・!」
「はははっ!」
二人が暫くピュライネ祭の話をした後、マナが思い出したように言う。
「あ!」
「?・・・どうしたの?」
「そういえばもう一つあるんだった!・・・・・・実はね、箒に乗れるようになったの!」
「!・・・マナ!やったね!」
「うん!それでね!皆でもう一度集まらない!?」
「!・・・うん!皆と久し振りに会いたい!」
「よーっし!じゃあ日にち決めよっか!」
二人は次の水曜に、皆と遠声して集まる日を決める事にした。
その頃、ゾーエは自身の部屋にいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・ほんとに皆感謝してるの。・・・・・・貴女は沢山の人を救ってきてるのよ。・・・・・・・・・自信を持って大丈夫。・・・・・・
マヤの言葉を思い出す。ゾーエは本を両手で持ちながら呟いた。
「・・・・・・・・・私・・・・・・少しでも・・・誰かを救えていたのかしら・・・・・・・・・・・・自信を持って・・・・・・・・・良いのかしら・・・・・・・・・」
ゾーエは本に話しかけるように呟く。
「・・・・・・・・・あの時は・・・・・・・・・何も・・・・・・何も出来なかったけど・・・・・・・・・・・・・・・今まで・・・・・・少しでも・・・・・・誰かを救えていたのなら・・・・・・・・・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・・・・・」
そしてゾーエは、本を抱きしめるようにして囁いた。
「・・・・・・・・・私は・・・・・・誰かを・・・・・・・・・少しでも・・・・・・助けられてたんだ・・・・・・・・・・・・」
本人に自覚は無いが、ゾーエは紛れも無く、沢山の人を救ってきた。その行動が誰かの助けになっている事を、ゾーエは初めて実感したのだ。
皆の感謝の言葉が、ゾーエの心をとても暖かくした。
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