主人公達へ

マシュマロン

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ワールドパンデミック編

四章 創造と瞬間石

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「見えた!」

空中から男の姿を視界に捉える。この速度なら、ギリギリ前に出れるか……。

明留が男の上を飛び越えて前に着地すると、心底驚いた顔をしながら立ち止まる。

「おやおや、私の速度についてくるとは、やはりやりますね。ですが、もう手遅れ。既にあなた達の住んでいる廃墟の位置は覚えました。あとは、帰るだけ」

明留が後ろを振り返ると、そこには明留達が住む廃墟が小さく虚ろだが見えている。ならば尚更逃がす訳にもいかない。情報が向こうに回るのはやばいので、始末しなくてはならない。

「逃がさねぇよ」

明留はクリエイティブを発動し、四方に高い柱を立て、50×50の大きさの壁を作り出す。
これで相手の退路を断つことができた。
逃げられる心配は無いだろう。

「私を逃がすつもりはないのですね」

「当たり前だろ。馬鹿か?」

「いいえ、これはむしろ、あなたが自分の首を絞めただけにすぎません。この状況での1対1ならば、私の方が上だと思いますが?」

「確かにそうかもな……だが!」

相手の退路を断つということ、それはつまり自分の退路を断つということでもある。この狭い壁の中でやつは好きなように瞬間移動できる。

そう考えるなら明留が不利かもしれない。だが、場合によっては明留が優勢でもある。なぜならば、この壁は明留によって作られたもの。つまりどういうことかって?

例えば、ゲーム等は決まったステージの中でキャラクターが戦うというのが普通だろう。でも、これはゲームじゃない。キャラクター同士の戦いで勝てないというのなら、いっそステージを動かしてしまえばいい。

「クリエイティブ!」

右手で壁に触れる。すると、触れた箇所から赤色の線が壁全体に入る。

「何をする気ですか?」

「さあて、なんだろうね!」

男の背後、左右から鉄の柱が男を潰そうと迫り来る。

「何!?」

柱を紙一重でかわした男は体制が崩れる。明留はそこを見逃さない。次は地面に手を触れ、数百を超える針を作り出し、男を狙う。

「く、スピードストーン!」

男は石を投げ、能力による包囲網を抜け出そうと試みる。それを阻止するのが明留だ。投げられた石をキャッチし、地面に落ちないようにする。

ん、何か違和感が……。いや、気のせいか。

「こうすれば、お前はそこからにげられないだろ?」

「貴様ァ!!」

男の悲痛の声が上がったその刹那。男は姿を消した。能力による包囲網からスルリと逃げ出されたのだ。

「どうして……!」

思考を回転させる前に悲劇は起きる。

グサッ……。刃物を背中から刺され、肉が引き裂かれる音がこの場所に響く。

「がぁぁぁ!」

熱い、熱い熱い熱い!痛い痛い痛い!
回転するはずだった思考は痛みのせいでぐちゃぐちゃにかき乱される。

「残念だったな。どうやら私の方が1枚上だったらしいな」

「お、前……何を……」

「簡単なことさ。私はお前に最初の石が取られることを狙って投げた。そして2つ目をその石の影になるように潜ませていたのさ」

「そういう……事か……」

つまり石は2つあり、1つ目はフェイク。囮だったという訳だ。そして、取られなかった方の2つ目は地面に落下。背後に男が出現というわけか……。あの時の違和感はこういう事だったのか。

「おや、壁が壊れていくようだが?もしかして、刺されたことで体にダメージが入り、能力が持続出来なくなったのか?」

「……」

明留は何も答えない。

「まあいいか。その傷では私を追ってくることは不可能だろう。それに、治るのにも時間はかかるはず」

男は地べたに倒れる明留にトドメを刺さずに、報告しようと戻ろうとしているようだ。

明留から離れるように歩き出す。

遠のいて行く。

科学者が。

動けない。

追えない。

「さらばだ。きっとまた会うだろうが、その時は再戦を楽しみにしているよ」

勝ち誇った顔をして笑みを浮かべながら歩き続ける。瞬間、カチッという作動音と共に、男を逃げられないように柱で囲んだ。

「何!?」

「かかったな、馬鹿め……。さあ、反撃開始と行こうか!」


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