勇者パーティーに追放されたけど、僕は女神様と魔王を倒しに行きます。

一章 ジッパンの長い一週間

11 自然と正義

「ほう……これが人魚のスキルなのか」

　落ち着いた声でルースは現状を把握すると、

「実はですね……私も手に入れたんですよ人魚族のスキル」

　ふと、ルースがそういうと、

「えっ？」

　ニィは驚くも足はルースの首に当たる、

　しかし、ルースは何事もなくニィのその足を掴む、

「ち、力をどんなに入れても押し込めないだと」

　ベトーは歯をギシギシと鳴らしながら押し込もうとする、それがわかるようにベトーの腕は血管が浮き出ている、

「ニィのスキルが相殺されているの……どうして？」

　ニィはぶら下がりながら今起きてることを口にする、

「人魚族を沢山食べてきた私は対人魚スキル……『人魚を喰らう者』というスキルを得ていましたね、それを発動させて頂きました」

　ルースはニッと笑いながら自慢気にニィに向かって言う、

「そのスキルはニィにも効くようなの」

　苦悶な顔をしていると、

「そろそろ私の反撃としましょうか」

　ルースは二本の指で止めていた槍を素早く離す、そのまま槍の柄の部分を握る、

「もしかしてまたですか？」

「いえ違いますよ」

　ルースは爽やかな青年のように応える。

　柄を掴んだルースはベトーを蹴り飛ばす、

　ベトーはそのまま僕達の後ろへと蹴り飛ばされ壁に激突する、

「ベトー！！」

　ニィがその瞬間を見届けると同時に。

　ルースがニィの片足を手から離しす、

「死なないように頑張ってね」 

　と、ニィに檄をする。

　ルースは落ち始めるニィに対して体を半分ほど右に回転させる、それを一瞬保つと直ぐに右足を上げると同時に体を左へと回転させて蹴る。

「ハックあのままだとニィちゃん達が死ぬ！！」

　女神様の言う通りだ。

　ニィはここまで連れてきておいて関係ないから手を出さないでといっていたが……よくよく考えれば都合がよすぎるな。

　そう考えている内に。

　ニィのその一連の動作により腹部を蹴られそのまま吹き飛んだ。

「ニィ！！」 

　僕はニィが吹き飛ばされるのを見て足を動かす、

「さてと、今度はこっちですね」

　と、ルースは槍を右手に持ちながらニィとは別の方向に向け投げる仕草に入る。

　その先に居るのはぐったりと壁に埋め込まれたベトーだった、

「行きますよ！！」

　槍は無慈悲にも投擲される。

「ハック私はこっちをどうにかする！！」

「お願いします！！」

　僕はそういうとニィが壁に激突する前に勢いを着けて飛びニィを抱きかかえた、

「ファイアランス！！」

　後ろから女神様の魔法を唱えるのが聞こえると僕はそっちの方を見ると同時に閃光に襲われた、

「め、女神様!?」

　その強烈な閃光が終わるとベトーに向かっていたはずの槍は消えていた。

　いや女神様の魔法ってちょっとおかしくないですかね？

　そんな疑問を思っていると僕の腕をもぞもぞとニィが動く、

「は、ハックお兄ちゃん……」

「どうしたニィ？」

　ニィは涙目をしていた。

　それは痛みからそれとも人魚の女王としての悔しさだろうか、

「ニィじゃ……あいつに勝てないの……ニィが倒さなきゃいけないのにお母様も食べられて守らなきゃいけない人魚の子達も食べられているのにニィはニィはひっく……弱い女王なのでもニィが」

　僕の服に埋めながら嗚咽をするニィ。

　ここで『どうして欲しい』なんて言ったら意地でもニィが殺るって言うんだろうな死んででも倒すって……だとするならば掛ける言葉は、

「ニィの変わりに僕が倒すよ」

「えっ？」

　ニィは呆けた顔をしながら僕の顔を覗いてきた、

「でも、お兄ちゃんには関係ないの、人魚族の問題だから……」

「そういうなよ、ここまで連れてきておいてそれは無いよニィ」

「でもでもお兄ちゃんお腹が凄い火傷を負ってるの……」

「治療後だよニィ？」

「ひっ!? お兄ちゃんちょっと顔が怖いよ」

　女神様の愛を火傷とは言っていけないニィよ……後でハイヒールしてくれる人を頼みますよベトーさん！！

「まぁ、任せておけニィ」

「お兄ちゃん……」

　僕はニィを下ろし立ち上がりルースの目の前に立つ、

「傍観者を気取っているのかと思っていましたが私と戦闘をするつもりですかハックさん？」

「あぁそうだ」

「はぁ、魚に絆されましたか人が」

　魚か……、

「その言い方私は嫌い……」

　僕の隣に女神様も居る、

「ですが食物です永遠とも得るための食事です、私は何か間違ってるでしょうか？」

　ルースはそう主張する。

　生きるために食事を摂るか……、

「魔法科学が発達すると食事による栄養次第で長生きができるか……」

　王国でそのような研究が行われてそれが事実だと言うことが歴史で裏付けられている、

「そうだ、その研究から私は人魚を食べることが正当化されたと思ったよその時は」

「歪んでる……」

　ルースの言った事に女神様はそう呟く、

「歪んでいないさ人は永遠の命を望み生きているそれは自然の事だよ」

「そうだな自然の事かもしれない……」

「ハック!?」

　女神様は驚いたようにこちらに顔を向ける、

「だがここでお前が殺されるのもまた自然の事だ」

「何を？」

　今度はルースが顔を歪めて僕を睨み付けた、

「僕は領主様の自然な行動に反対も拒否もしない僕はやらないけどね」

「どういう意味だ？」

「簡単に言うなら僕は人魚達の自然に着くって言うことさ仲間を守るっていう自然に」

「それは正義というものじゃないのかねハックくん？」

「正義か……そうとも言うだろうな」

「ならばその雌雄を着けようではないか、私の正義と君の正義どちらが強いかを」

「ハックだけじゃない私もやる！！」

「女神様……」

「ハック私達なら殺れる」

「行きましょう女神様」

　僕と女神様はルースに向かって構える、

「捻り潰してあげるよ」

　僕と女神様は走り出す。