記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第三章 セイラン王国編

ギルドへ

翌朝、久しぶりにゆっくりベッドで休むことができ皆の表情も明るい。
そんな中一人浮かない表情のミリーナ。

「⋯⋯ーナ。おいっ、ミリーナ?」

「っ!?はいっ!⋯あ、アレクさん。」

「どうかしたか?ボーッとしてると危ないぞ?」

昨日の夜、ララが言った言葉が蘇る。

ー『ほら、アレクさんとかいつもミリーナさんの事気にかけてるし!』ー

確かに、いつもちょっとした変化でも気付いて声を掛けてくれる。でも、それはアレクさんが面倒見がいいからで⋯
それに、前に私のこと妹みたいな存在って言ってたし⋯

ぐるぐると様々な考えが頭を駆け巡り、黙り込んでしまったミリーナに心配になるアレク。

「⋯?本当に大丈夫か?熱でもあるのか?」

不意に額に触れたアレクの手に、ミリーナは正気に戻りジワジワと頬を赤く染めていった。

「顔赤いぞ?やっぱ熱が⋯」

「だ、大丈夫ですっ!!本当に、何でもありません!」

バクバクと跳ねる心臓を抑え、ミリーナは慌ててアイリの元に走っていった。


国境を越えてセイラン王国に入ってからは、まず王都の冒険者ギルドを目指すことにした。一先ずシリウスとリンカルトに手紙を出し、無事にセイラン王国に到着した事を報告する為だ。
それから獣人の失踪について、道中デュランから話を聞くと、どうやら行方不明者の中には冒険者もいるらしい。まずはそこに不審な点がなかったかを再度調べることにした。


国境からセイラン王国の王都まではあと二日程で着く為、概ね予定通りの行程で進んでいた。
今日は最後の野営をして、明日には王都に到着するだろう。

日も傾いてきた頃、野営の場所を決めると慣れた手つきでルーク達男性陣がテントの設営をし、その間にミリーナやアイリ達はご飯の準備を始めた。
リオとララはテーブルなどの設置だ。

「あ、ルークしゃん。『けっかい』をおねがいしましゅ!」

「おっ!ってことは、今日はだな!本当にこのカレーは美味いんだよな♪」

アイリの言葉で素早く結界を張ったルークと、その一連のやり取りで夜ご飯のメニューが分かったらしいデュラン。

実は最初の野営の日にカレーを作ったのだが、に釣られて魔獣が現れてしまったのだ。それからは、カレーを作る時にはルークに結界を張って匂いを外に出さないようにしてもらっている。
そこまでしてでもまた食べたい!と言うメンバーの熱い希望によるものだ。


「それにしても、野営なのにこの品数⋯」

「僕、今まで干し肉とか、味のうっすいスープと固いパンしか食べられなかったのに⋯もう以前の旅には戻れないよ。」

そう。アイリに預けられた大量の保存食と、ルークに渡された新鮮な野菜や果物や生物ナマモノがいつでもどこでも食べられるお陰で、旅の終盤にも関わらず豪華な夕食にありつけるのだ。
休憩時にはアイリのおやつタイムも挟む為、これまた開放的な場所でティータイムまでしている。
それにお付き合いをしてきたリオとララは、この快適な旅をもう手放せなくなっていた。

「このままアイリちゃんと同じパーティーにいたいよ~」

「こんな贅沢知ったら、普通の旅でも地獄だ⋯」

二人の呟きに、クリスとデュランも苦笑いを浮かべた。
クリスはこの短い道中で見違えるほど表情に変化が生まれた。まだまだ良く見ないと気付けないレベルだが、特にアイリと話している時は雰囲気も柔らかくなり、ほんの少しだけ目尻が下がっている。

夕食にはカレーと新鮮なサラダと具沢山の肉団子スープが並べられた。皆で美味しくカレーを食べ、炊き立てのご飯はあっという間になくなった。
食後のデザートに新鮮なフルーツも食べ満足したところで、各自見張りと休むチームに分かれた。今日の見張り番はルークとアレクだ。

「アレク?どうかしたか?」

「ん?⋯あぁ、いや。何か今日のミリーナちょっとおかしくなかったか?妙に避けられてる気がしたんだよな~。」

「そうか?いつもと変わらないように見えたが?」

基本的にアイリ以外の変化には未だに無頓着なルークに聞いたところで、たいした返事も期待できず、そのまま二人は交代で夜番をして朝を迎えた。


「よし、後は休憩なしでこのまま王都まで向かうぞ。」

いつものようにアイリ達は馬車に乗り込み、ルーク達も馬に乗ろうとしてた所で、徐にララが声を上げた。

「あっ、私もたまには外の空気を吸いながら行きたいので、馬に乗ってもいいですか?」

「ん?そうだな、ここまでくればだいぶ安全だし大丈夫だろ。だが相乗りになるぞ?」

「はいっ。あの、アレクさん。一緒に乗せてもらってもいいですか?」

ララはアレクの側に行くと、可愛らしく耳をピコピコしながらお願いする。

「俺か?まぁ、いーけど。ほらっ、気を付けて乗りな。」

そう言うとアレクは手を差し伸べて、自分の後ろにララを乗せた。

「ゆっくり走るけど、落ちねーように気をつけろよ?ちゃんと掴まっとけ。」

そんなアレクとララのやり取りを馬車の中で聞いていたミリーナは、心が鉛のように重くなっていた。

(私どうしちゃったんだろ?あの夜ララちゃんと話してから、ずっとモヤモヤしてる)

モヤモヤの正体に気付けないまま、ミリーナ達を乗せた馬車は走り出した。


「ミリーナしゃん、リオしゃん、みてみてー!じゅうじんしゃんがいっぱい~!」

王都の町中まで進むと、周りには様々な獣人がいた。

「僕の国でもそれなりに獣人は見るけど、セイラン王国では人族や亜人の方が珍しいって聞いたよ。」

リオの話は、概ね以前ルーク達と勉強したような内容と同じだったが、どうやら先代の国王陛下は獣人以外の種族⋯特に人族に対して強い嫌悪を持っていたようだ。
しかし、今の陛下ラオールになってからは人族や他の種族への偏見を無くそうと、積極的に外交に努めているらしい。まだ一部の古参からは反対意見もあるらしいが、少しずつ色んな種族の冒険者も受け入れ、条件を満たせば永住も認めているらしい。


そうこう話しているうちに、いよいよセイラン王国王都のギルドに到着した。

「じゃ、ここからは俺が案内する。ただ、気を悪くさせたら申し訳ないが、まだ人族に対して嫌悪感を払拭しきれていない奴らもいる。まぁ俺がいるし、ルークさん達のランクを聞けば余計なことはしてこないだろう。それと、念の為アイリとミリーナとリオはフードを被っててくれ。いや、危険って訳じゃないんだがな⋯あ、町中でも単独行動しないようにな!」

デュランはなんとも歯切れ悪くそう言うと、三人がフードを被ったのを確認し、ギルドの扉を開き中に入っていった。

「おぉ!デュランじゃねーか。態々隣国までお疲れだったな~⋯っと、そちらはもしかして⋯?」

中に入ると、デュランに気付いた冒険者の一人が声を掛けてきた。

「あぁ、今回の任務で一緒になったメンバーだ。こっちがルークさんで、隣がクリスだ。二人ともS級だからな。そしてアレクもA級だ。お前ら、くれぐれも余計なことすんなよ~!痛い目見るぞー!」

軽い口調ではあるが、デュランの一言でこの場にいた冒険者達は驚きと畏敬の目でルーク達を見つめてきた。
どこかで「ルークさんってあの⋯?」とか「S級が二人にA級もいんのか!?」と言う声も聞こえてくる。
やはりS級と言うのはどこにいっても冒険者の憧れらしい。

「今回の任務で世話になる、オブザーク王国所属のルークだ。協力して貰うこともあるかもしれないが、宜しく頼む。」

「私はリューン帝国所属のクリスです。宜しくお願いします。」

どこかで黄色い声が上がっている。獣人から見ても、この二人はイケメンと言うことだろう。

「ところで、マルクは上にいるか?」

「あぁ、ギルド長なら部屋にいる。特に来客もなかったから、そのまま行っていいんじゃねーか?」

最初に声を掛けてきた冒険者と別れると、デュランの後に付いて一同は二階へと向かう。
階段奥の部屋まで向かい、扉をノックして入室する。

「よぉデュラン、戻ったか。おっ、そちらさんが今回の合同メンバーか?はるばるよく来たな。俺はここのギルド長マルクだ。」

全員が入室すると、気さくに豪快な声で挨拶をしてくれたのが、どうやらここのギルド長らしい。
縦にも横にも大きく、赤茶色の髪からは丸っこい耳が覗き、瞳は焦げ茶色だ。

「くましゃん⋯?」

見た目そのままに、思わず呟いたアイリにくましゃん⋯もとい、ギルド長マルクは目を見開くと、ガハハッと豪快に笑った。

「おうっ、俺は熊の獣人だ。お嬢ちゃん⋯ん?それは認識阻害か?」

「あぁ、そういやアイリのにはそんな効果も付いてるんだったな。三人共もうフードを取ってもいいぞ。」

デュランに言われてフードを取ると、アイリを見たマルクはあんぐりと口を開けて固まった。

「ハハッ、やっぱそーなるよな。」

乾いた笑いを浮かべたデュランは、自分達が初めてアイリを見た時を思い出していた⋯。
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