上 下
1 / 4

突然の婚約破棄

しおりを挟む
 今日は私達卒業生の為に、王宮の大広間が貸し切りにされている。

 美味しい料理に優雅な音楽、音楽に合わせてダンスを踊っている人達もいた。
そんな賑やかなお祝いムードを、一人の男性が不穏な空気に変える。


「皆聞いてほしい!!私、ダニスタン王国第一王子レオナルド・ホーク・ダニスタンは、アミリア・シューベルト嬢と婚約破棄をする!!!」

 突然の王子の発言に、生徒達はざわめき出す。
しかし、アミリアはレオナルドが婚約破棄を言い出す事は分かっていた。それを微塵も表情には出さず、アミリアはさも驚愕したように尋ねた。

「レオナルド様、急にどうしてでしょうか!?」

 すると、レオナルドは恍惚とした表情で語りだした。

「私はこの学園生活の中で、真実の愛を知ったんだ!このまま君と婚約関係は続けられない!!」

「真実の愛⋯とは、まさかお噂がある男爵令嬢の方でしょうか?」

「あぁ、そうだ!!リンジー・オルゴン男爵令嬢だ!!彼女はとても控えめで愛らしくてね。私が声を掛けるといつも恥かしそうに顔を俯かせて、照れているのか中々目も合わせてくれないんだ。それでも私の問いかけ一つ一つに丁寧に応えてくれてね。それに、謙虚な所も可愛らしいと思わないかい?」


 私は噂の真偽を尋ねただけなのに、長々と彼女への惚気を喋りだしたレオナルド様は止まらない。

「そんな愛しい彼女を、是非私の婚約者にしたいんだ!!だからどうか、私と婚約破棄してくれ!」


「かしこまりました。謹んで(喜んで♪)婚約破棄を受け入れますわ」

「そうか!!ありがとうアミリア!私の愛を応援してくれるんだね。早速だが、私はリンジーにプロポーズを⋯」

「お待ち下さい、レオナルド様!まだ正式に婚約破棄はできておりません。それではリンジー様も素直にお答えできませんわ。こちらに書類を用意していますので、サインをお願い致します」

 アミリアは、既に自分の父シューベルト公爵のサインと、自分もサインを済ませてある契約書を出した。

「流石アミリアだ!すぐにサインをしよう!」

 そう言ってレオナルドは禄に内容を確認せずに、アミリアのサインの横に自分もサインをした。

 書類を受け取るとサインされた事を確認し、いつの間にか後ろに控えていた文官にその書類を渡した。


「これで、正式に私との婚約が破棄されました。今までありがとうございました。これからの事、応援しておりますわ!」

 アミリアは心からの笑顔で、レオナルドに餞の言葉を贈った。
しおりを挟む

処理中です...