異世界FIRE ―60歳まで冒険者は無理なので早期退職します―

のちのちザウルス

文字の大きさ
5 / 23

魔法学校の魔法は飾り 4

しおりを挟む
「じゃあエンさん」
「はいっ!!」

ザザに指名され、元気いっぱいという言葉が似合う程ぴょーんと飛び上がって起立した彼女。何が彼女をそこまで金に執着させるのかは分からないが、やる気があるのは良いことだ。

「俺がお金の授業をする理由を教えてくれ」
「はい!先んじてジンミンゲン君が話した”老後2000万バルク問題”の他に2つの理由があります!1つ目は、十分な金銭や資産を取得することで、新たな自由の形である“働かない自由”を得るためです!」
「正解!!!!」

ザザが大声で肯定して言葉を繋ぐ。

「その通り!我々大日本帝国人には様々な自由が保障されていることは皆さんもご存知でしょう!有名なのは精神的自由、すなわち人間の精神活動の自由です。具体的な例を挙げると、何を考えても良い思想の自由、何を信じても良い信教の自由、何を学んでも良い学問の自由などですね。精神的自由の他には、経済的自由と呼ばれるものもあります。大日本帝国憲法では、職業選択の自由や財産権の保障によって、経済活動の自由が保障されています。――ですが!!!!!」

びくぅ!!と生徒たちの背中が跳ねる。びりびりと窓ガラスが揺れる。

「この経済的自由ってやつが実に曲者で、俺たち大日本帝国人に“働く自由”を提供してくれるくせに、“働かない自由”は提供してくれないんだ!!!どういうことか分かるかい!?俺たちはご飯を食べなきゃ死ぬし、水を飲まなきゃ死ぬ!家や服がなきゃ社会的に死ぬし、本やゲームみたいな娯楽がなきゃ精神が死ぬ!だから、俺たちは働いてお金を稼いでいかないといけないんだ!!経済的自由なんて言いつつも、働かないって選択肢は存在してないのさ!!!なんて不自由なんだ!!!!!」
「「「!?」」」

生徒たちの間に雷に打たれたかのような衝撃が走った。そう、我々には働かないという選択肢が存在しない。働かないということは、死ぬということだからだ。
確かにその通りだとドルも思った。自分の父親は厳格な人間であったが、働いて働いて夜も遅くまで働いて、こんな自分を大学――ましてや魔法学校にまで入れてくれた。その魔法学校に入学させるという行為にも、多額のお金が発生したに違いない。子供1人を一人前になるまで生み育てることには、およそ3000万バルク程度かかると聞いたことがある。きっと自分たちは最低限の生活をし、子供のために寝食を削って過ごしたのだろう。それだけではない。日々の生活で子供の衣食住を保障しながら自身の衣類の新調をし、家電を定期的に買い換え、そしてまたその金を稼ぎに社会に出ることを繰り返すのだ。
そしてようやく子が巣立っても、今度は自分が働けなくなる時のために働いて賃金を稼ぐ。
働く。働く。働く。それはまるで労働という名の無間地獄――。

「このままだと、お前たちは一生“労働の奴隷”さ!老いて体が朽ちても働いて、生きるためではなく“死なないために”働くんだ!お前たちに経済的自由なんかこれっぽっちも与えられちゃいない!!だから、今ここでお前たちはお金の勉強をするんだ!!」
「「「!!!!」」」

暗く濁った生徒の目に光が戻る。

「俺がお前たちにお金を稼ぐ方法を教える。俺はそこそこ金を稼いだ身であるし、この方法でまあまあの富を築いた人間を何人も見てきた。再現性はある。お前たちにも出来る」
『俺たちにも……』
『僕がお金持ちに……』
「そうさ!お前たちは、俺の授業を受けて真の経済的自由を手にするんだ!魔法学校はそのための単なる方法に過ぎん!使えるものはなんでも使って、豊かな生活を目指すぞ!!!俺についてこい野郎ども!!!!」
「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」

咆哮。それは貧困に喘いできた大日本帝国の下層階級の叫び。一部の上級国民に搾取され続けてきたカースト下位の反逆の狼煙。今、クラスの人間が一致団結した瞬間であった。

「さあ、気持ちが上がってきたところでエンさん!!俺がお金の授業をするもう1つの理由もコイツらに教えてやってくれ!!!!」
「はい!!お任せ下さい先生!!!」
『うおおおおおエンちゃん!!!』
『一体どんな理由なんだあああああい!!!』
「先生がお金の授業をするもう1つの理由、それは――」


「――今より経済的に豊かになることで、お金を満足に持たない連中を見下して悦に浸るためです!!!!!」
「正解!!!!!!」
「やったああああああああ!!!!!」

エンとザザは手を繋いでスキップを始めたが、他の生徒は黙って着席した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...