異世界FIRE ―60歳まで冒険者は無理なので早期退職します―

のちのちザウルス

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魔法学校の魔法は飾り 6

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「さて諸君。お金の勉強をする理由について各々完全に納得したわけではなさそうだけど、かといって理解できなかったわけでもないと思う。そこで、ここからはお金を稼いでそこそこの資産を作った後の、楽しい楽しい話をしてあげよう」

ザザが意味深にニヤリと笑う。そのあまりに下卑た笑い方は、とても国営ギルドの職員とは思えないニタニタ顔であった。

「君たちのご両親は、今どれくらい資産を持ってるか知ってるかい?……ドルさんはどう?」
「はい。細かい数字は分かりませんが、推定するに1000万バルク程度だと思われます」
「それはおそらく貯金だけの金額だね。資産というと家や証券なんかも含まれるから、おそらく実際にはもっと多いだろう。エンさんは?」
「貯金が600万バルク、証券も600万バルク、家のローンは10年残ってるそうです」
「なるほどね。さて、今聞いた通りだ。君たちのパパママは50歳過ぎかと思うけど、残念ながら老後2000万バルク問題を解決するだけの資産は持ち合わせていないようだね。50代の平均貯蓄額は1436万バルクらしいけど、中央値は1000万バルクかそれ以下だということを考えれば、今2人から聞いた数字はまあまあ妥当なんじゃないかと俺は思う。つまり――」


「このままだと、君たちの30年後の資産もおおよそ1000万程度……とても老後2000万バルク問題には立ち向かえないってことになるね」
「「「!?」」」


さあ、教室がざわついてきたようだ。やはりリアルな数字でショックを与えれば、先程よりもだいぶ話を聞いてくれる。胡散臭い目でザザを見ていた視線が徐々に減っていく。

「さあ、ところがだ。君たちが俺の授業を聞いてお金の勉強をすれば、これが劇的に変わってくる。君たち生徒には、基本的には株式投資による資産運用をおすすめするつもりなので、この話もそれが前提になるんだけど……」

前置き。

「じゃあユーロさん、今何歳?」
「あら、レディに年齢を聞くんですの?」
「俺は差別が大好きだからこそ、性別や見た目で差別しないんだよ。必要があれば美人でもババアでも年齢は聞く。クタクタで電車の席に座ってる時は、妊婦だろうが杖ついたジジイだろうが俺は席を譲らんし、逆に疲れてなくても絶対に俺は席を譲らん。で、何歳?」
「……頑固ですのね。今年で19ですわ」
「そう、君たちは今年大学生の19歳だ。つまり来年20歳だね。本当は今すぐにでも資産形成を始めるべきなんだけど、分かりやすさのために20歳から資産形成を始めたとしよう」

ピッ。どこから取り出したのか、ザザがリモコンのスイッチを押すと天井に吊られたプロジェクターがガガガと起動して画像を映す。そこには、”20歳から始める資産形成”という文字とともに、縦軸が資産額、横軸に100歳になるまでの年齢が書かれた棒グラフが表示された。棒グラフは比例的に伸びており、50歳時点で1000万の辺りを指し示している。

「今君たちのいるところはグラフの一番左のここ、グラフのスタートである20歳だ。ここから、毎月3万バルクを投資したとしよう。じゃあもう一度ユーロさん。30年後には一体いくらになってると思う?暗算が大変なら計算式だけでもいいぜ」
「バカにしないで下さいまし。毎月3万なら年間で36万。それを30年間続けるなら、30年×36万で1080万バルクになりますわ」
「その通り!!!!君たちが君たちのパパママと肩を並べるには、毎月3万バルク貯蓄すればいいってわけだな。――ところがだ」

ザザがピッとリモコンを押せば、先程のグラフ上の棒にさらに伸びるような棒が追加される。

「投資をすれば、その金額にプラスで利息がつく。実現不可能じゃない現実的な数値として、仮に毎年4%利息がつくとしよう。じゃあドルさん、利息を含めた来年の資産はいくらだ?」
「36万バルクに4%のプラスで……37万4400バルクです」
「正解。ジンミンゲンさん、それじゃあ50歳のジジイになる30年後の資産は?」
「1080万バルクに4%のプラスになるのか……?すると……1123万2000バルクか?」
「ブブー、不正解!」

その解答は予想通りだと言わんばかりに、ザザがばってんのプラカードを掲げる。どこから出したそれ。

「いいかいジンミンゲンさん、この4%のプラスは毎年付加されていくんだ。再来年の資産合計は、毎年投資する36万バルク + 37万4400バルク = 73万4400バルクの4%プラスで、”76万3776バルク”になるのさ!じゃあもう一度聞こう。これを雪だるま式に続けていった50歳の君たちは、一体いくらの資産を持っていると思う?」
「「「ゴクリ……」」」
「答えは……」


「約2082万1000バルク!!!投資資産1080万の2倍になっているんだよ!!!!!」
「「「!?!!?」」」
「やったなお前ら!今の父ちゃん母ちゃんの年齢で、父ちゃん母ちゃんの2倍の資産を持っていて、なおかつ老後2000万バルク問題も解決できたな!!!」
『た、確かに!』
『しかも50歳で達成か!』
『平均貯蓄の2倍だと……』

ざわざわ。ざわざわ。
教室がどよめきに包まれていく。ザザは構わず続ける。

「50歳でこれだけの資産があるんだ!老後の心配も必要ない!お前らは最高だぞ!他の準備してこなかったジジイババアが、若いアルバイトの兄ちゃんにクソほど文句言われながらコンビニのレジ打ちしてる様を指差しながら肉まんを買えるんだからな!悠々自適なセカンドライフを謳歌できるってわけよ!!!!これが若い内から準備をしてきた人間の楽しみ、”年寄りの指差し”だ!!!最高だろ!!!!!」

ニッコニコの教師。その例えはあまりにも酷かったが、生徒たちはニッコリ笑いながらザザの言葉に頷いた。
彼らは19歳でも大人なのだ。
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