異世界FIRE ―60歳まで冒険者は無理なので早期退職します―

のちのちザウルス

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魔法学校の魔法は飾り 7

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「ということで、君ら生徒たちに今後の生きる目標を授けよう」

ザザがパソコンを操作し、プロジェクターに投影された画面が切り替わる。そこにはでかでかと4文字の英語が書かれていた。

「君たちが今後目指すべきもの……それは、”FIRE”だ!!!」
「ふぁいあ……先程もそんなことを話していましたが、ふぁいあとは一体如何なるものなのでしょうか?」
「いい質問だね、ドルさん」

ザザが口を三日月も真っ青にするほどの凄絶な笑みを浮かべる。怖い、怖すぎる。なんでこの先生は金の話をするとイキイキし出すのだろう。しかし、こちらも質問した手前ちゃんと顔を見て聞かなければならない。それが生徒を導かんとする委員長気質のドルの矜持であった。
ザザは続ける。

「FIRE――Financial Independence, Retire Early……この頭文字を取った造語だよ。直訳すると”経済的自立と早期リタイア”という意味だ。個別に見ていくと、financialとは”財政上の”、independenceは”独立”、retireは”退職”、earlyは”早期”という意味だね」

質問を予期していたのか、ザザがプレゼン用スライドをささっと切り替えると、『FIREの意味』という画面が表示された。

「”経済的自立”という言葉についても触れておこう。ここで言う経済的自立は、”一生働く必要がないくらいのお金を稼いで大金持ちになる!”ということではないんだ。正しくは、いわゆる不労所得、資産運用益や不動産収入によって生活費を賄い、”働かなくてもいい状況を作る”という意味が近い」
「働かなくてもいい状況?」

ユーロが小首を傾げる。お前それ可愛いと思ってやってるだろ。ちゃんと可愛いから安心しろ。

「そうだ。不労所得のみで生活費が賄えるようになれば最高だぞ。ユーロさんが家でゲームをして、マンガやラノベを読んで、腹が減ったら飯を食って、眠くなったら寝たい時に寝て、朝は好きなように起きたい時間に起きる生活をしてても、全く問題なく生活が成り立つってことだぜ?」
「!?そ、そんなことが!?」
「良いでしょ?たまんないでしょ???」
「ひ、非常に魅力的ですわ……」

理想の生活を思い描いたのか、どことなく口の端が上がってニヤニヤし始めたユーロ。

「これがFIREだ。君たちには、コイツを目指して生きて欲しいと俺は思っている」
「確かに魅力的な話ですな」

ジンミンゲンだ。ここまでザザの怪しいセールストークが続いたためか、その目には若干疑いの色が見える。

「――本当にそれが実現できるのであれば」
「ほう?先生の言うことが信じられないと」
「如何にも。再現性がある、と先程先生は申しましたな?本当にそんなことが可能なのですか?我には再現する方法はとても理解できませぬし、そもそも我々一般的な市民にも再現可能かは疑問が残りますな」
「ジンミンゲンさんはよく話を聞いているようで安心したよ。君の疑問は至極真っ当なものだし、当然俺にも説明をする用意がある。本当に再現性があって、かつ俺が嘘を吐いていないことを信用してもらうためにも、君には是非話を聞いてもらいたい。いいかな」

ジンミンゲンがコクリと首を縦に振るのを確認し、ザザは全員を一度ぐるりと見てから話をする。ぱっと見た感じ、ジンミンゲンの言葉に同調して疑念を抱いた人間が多少いるようだ。彼らに余すところなく納得してもらうべく、俺も言葉を尽くすとしよう。
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