異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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なんとかすべきは上司と飲み会、他多数 15

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『行政改革ギルドの室内環境改善について』
問題点:
 ・執務室内の空気が入れ替えされずに滞留し淀んでいる
 ・執務室内の照度が足りず、業務に対し集中力を欠く

「そうすると残った問題がこの2つか。照度の問題はどうするかなあ」

カイリキはポリポリと頭を掻く。
この異世界では、主な光源は魔法に頼りきっているのが現状である。電気は存在するものの、地震や台風といった災害に強い独立した光源として、光魔法が優位に立っている。そのため、光魔法の使い手は非常に厚遇されている。彼らはランタン等に『ライト』の魔法を封入して照明具を作り出し、作成からメンテナンスまで一括で行っている。
このランタンの魔法具には、瞬間的な光源として使うものと継続的な光源として使うものの2つがある。瞬間的な光源としてのランタンは、現場での作業灯や戦闘における目くらましとして使われる。継続的な光源としてのランタンは、住居や職場、街灯として利用されている。いずれも、封入する魔力が大きい程明るく、長く使用することができる。
しかし、高魔力のランタンは非常に高価なのだ。地方やスラム等は、低価格のランタンでその場を凌いでいることが多い。その分明るさも低く、すぐに効果が切れてしまうため、何度も魔力を封入しなければならない。何度も魔力を封入すると劣化も早くなり、いわば消耗品として使用されている。
一方で、都市やギルドで使用されるランタンは比較的高価であり、10年単位で明るさを保つことができる。これには夜間の防犯対策も兼ねられているため、特にギルドでは積極的に採用されていた。しかしながら、このランタンは1個1万バルク近い値段が付けられている。いわゆる“地味に高い”というやつだ。ギルドでも執務室限定、それも1個しか取り付けられておらず、部屋の中央のランタンから離れるほど薄暗くなっていた。
先程棚や机の購入を決定したものの、高価なランタンをポンポン買う予算は流石にない。どうしたものかとカイリキが唸ると、ザザから軽い声がかかる。

「俺がライトの魔法使えるんで、しょぼくても封入するランタンがあればどうにかできますよ」
「おお!ザザ君、ありがとう!!ってええ!?光魔法も使えるの!?逆に何が使えないの!?」
「カイリキさん、声が大きいわ。ですがそれは喜ばしいですわね、小さいランタンでも買えば解決できそう。それにしたって、ザザ君はなんでも魔法が使えて驚きですわ」

デカい声のカイリキをお嬢が諫めるも、お嬢もその話題には興味津々と言った様子。一方のザザからは驚きの返事。

「練習すればなんでも使えると思いますよ。むしろ、皆さんだって他の属性の魔法使えますよ。多分」
「「「え!?」」」

3人は揃って素っ頓狂な声を挙げた。
それもそのはず、この新人は『1人1属性魔法』という世界の常識に歯向かうことを発言しているのだから。

「質問ですが、どうして1人1属性しか魔法が使えないんですか?」
「そりゃ、そんなの常識でしょ。僕はザザ君しか複数使える人見たことないけど、他は基本的に全員1人1属性だよ」
「いやー、答えになってないですよカイリキさん。どうして、1人1属性しか、使えないんですか?」
「……なるほど、ザザ君はそこを納得しなかったわけだ」

カイリキは気付く。ザザは言っていた、どうしてかそれが常識なのか納得いかないなら質問すると。
ザザは1人1属性という常識が納得できなかったのだと。

「そうです。色々な本を拝見しましたが、『魔法は1人1属性』ということは書かれているものの、『どうして1人1つの属性しか魔法が使えないのか』ということは書いていませんでした。ですが、確かに本に書かれていた通り、俺は火属性の魔法しか使うことができず、本当に使いたかった水属性の魔法は使えなかったんです」

ザザは一度言葉を切って顔を伏せる。一呼吸終えて顔を上げた時、そこには憎悪に満ち満ちた悪鬼羅刹、夜叉般若の様な顔があった。

「どうしても許せなかったんです。あの紙やすりでお尻を拭き続けることだけは、絶対に絶対に決して許しちゃいけないと思ったんです」
「え?」
「だから、例え俺が火属性の魔法しか使えないと分かっても、全然納得出来なかった。そんなものが常識なら、俺は世界を呪ってやると心に誓い、毎日水魔法の練習をしたんです。いつか自分のお尻を水魔法で洗浄するぞ、と」
「え?」
「数年かかりました。それもたった1つ、手から水を出すという一番簡単な水魔法です。
 ……泣きました!これでもう自分のお尻を痛めずに済むのだと!
 別属性の魔法は使えないんじゃありません。ただ、使うのが得意じゃないというだけなんです。さらに言えば、別属性の魔法を使うというノウハウを誰も持っていないので、誰かが他の誰かに教える事も出来ず、結果1人1属性しか使えないという誤解が生まれたんでしょう」
「な、なるほど」
「そこからは簡単でした。1年はかかりましたが、風魔法の習得と火と水の混合魔法、火と風の混合魔法を使えるようになったんです。おかげで、冷たい水から温かいお湯でのお尻の洗浄が出来るようになりましたし、濡れたお尻をあの忌々しい紙やすりで拭くことなく温風で乾かせるようになりました!!ああ、なんと素晴らしい日々!!!!」
「……」
「ライトの魔法も、夜真っ暗なトイレで用を足すのが怖かったので勉強しました!今となっては、夜うっかり起きてしまって、真っ暗闇の中うんこをすることもないんです!!本当によくやったよ俺!!!」
「……」
「さて、分かって頂けたでしょうか。皆さんも練習すれば別の属性魔法が使えるんです!最初は誰だって挑戦経験のないことですから、上手くいかなくて当たり前です。ですが、鍛錬の先には必ず快適な生活が待っていますよ」

と、ザザはニコリと気持ちの良い笑顔で締めくくった。
彼の尻の穴は、もう赤くはないのである。
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