異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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事故は起きるさ、仕方ない 2

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大日本帝国は他国より技術革新が遅れているものの、いわゆる自動車も公道を走っていた。しかし、自動車は大日本帝国における上級国民の乗り物であり、仮にギルド等の公的機関が自動車で各所に乗り付けようものならば避難の嵐となる。俺の税金をギルドの贅沢に使うな、国民の金はお前たちの私用に使うんじゃない、クソ野郎、10バルク硬貨で傷を付けるぞ等、浴びせられる言葉は辛辣だ。
それ故に、行政改革ギルドにおいても例に漏れず、チープでチンケな設備しか搭載していない馬車を使用している。

このチープな馬車を紹介しよう。
まず、いわゆるエンジンである馬本体のスペックが低い。老いた馬であり、660ccの軽自動車並のパワーしか出ない。機動力も低く、カーブの際は大幅に減速することを余儀なくされる。
次に運転席だ。運転席は現代日本のワンボックスカーやマイクロバスの座席に、フロントガラスを取り外して馬を操作する手綱が付いたような構造をしている。したがってワイパーこそないものの、雨よけに長めのひさしが付いているし、座席にカギをかけることもできる。ただし、現代日本の格安社用車よろしく、集中ロックが付いていない。勿論、サイドの窓ガラスはパワーウィンドウではなく手回しハンドルだ。
おっと、集中ロックを知らないちびっ子のために説明しよう。自動車キーには扉の開閉を操作するボタンがあり、“閉める”のボタンを押すと後部座席も含めたすべてのドアが閉まり、“開く”のボタンを押すとすべてのドアが開く。一箇所を開け閉めすると、すべてのドアが開け閉めされる、これが集中ロックだ。こんな事は常識だと思うだろう。ところが、いざ社会に出てみると未だにカギをカチャカチャやって扉を開ける車は存在する。そういった車は、運転席のドアのカギをカチャカチャすることで集中ロックが機能してすべてのドアが開け閉めされるのだが、車によっては集中ロックが存在せず、1つ1つドアのカギをかけなければならない。これが死ぬほど面倒だ。なぜこんな面倒なことが起きるかというと、集中ロックのない車は値段が安いからだ。経理の担当が会社のために安い車を買って自己満足しているような所は、現場が死ぬほど困っているのである。同様に、手回しハンドル式の窓の開閉装置も、パワーウィンドウ(ワンボタンで窓が勝手に開け閉めできるアレ)より安いからという理由で導入しているケースがある。どちらも経理の人間がチンケだとこうなる。

スペックの紹介に戻ろう。運転席は固く、行政改革ギルドの道路改修工事が行われるまではお嬢やザザの尻に優しくない仕様であった。現在こそ道路が美しく整備されてはいるものの、しかしそれでも運転席のクッション性は低く、尻にダメージを与えるには十分であった。
後部座席は、一般的な社用車のように荷物を平置きできるよう背もたれを水平位置まで倒せるようになっており、したがって乗り心地は二の次になっていた。前の座席との距離も近く、体を小さく折り畳んで乗る必要もあり、体の大きなカイリキが同行する場合、偉い人が運転席の後ろに乗るといったマナーを完全に無視して助手席に乗せなければならなかった。

「えーっと、ダイニッポンバシだから……キョーバシの辺りで高速を降りればいいわね」

当然カーナビもない。この世界にカーナビというシステムが十分構築されていないことも理由の1つではあるが、基本的に社用車にカーナビは導入されない。何故ならば、めちゃくちゃ値段が高いからである。先の集中ロックやパワーウィンドウ、そしてこのカーナビなどはいわゆるオプション装備であり、自動車に標準搭載されているものではない。したがって、経理がポンコツだと現場のことを1mmも考えないために、すべてのオプションを完全排除した『虚無の車』が完成する。
では、カーナビ無しでどのように目的地へと向かうのか。
この令和を生きる若人には理解できないこと間違いないが、大日本帝国、レイワの時代では“紙の地図”を使うのである。
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