異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

文字の大きさ
63 / 128

人がいなければ補充すればいいじゃない 4

しおりを挟む
「実力を知るには実際に仕事をやってもらう……っていうわけにはいかないですけど。うちには機密書類が多すぎますから。ですので、今うちが抱えてそうな問題をそれっぽくアレンジして、実際に考えてもらう試験方式はいかがですか。いいアイデアがあったら丸パクリもできて一石二鳥ですよ」
「あくどいなあ……了解だよ。確かに面接は僕の時間もすごく取られるし、本当にその人が優秀かを判別する完全な指標にはなり得ない。試験方式を採用しよう」
「ありがとうございます。マカオさんとお嬢さんが悩んでいる案件があったはずなので、お二人にも話を聞きつつ問題の雛形を作りましょう」

ウキウキ顔のザザ。この男、人事の経験はこれっぽっちもない。だが、面接で入社する人物が決まってしまうことに憤りを覚えていたこともあり、新しい採用方法が決まったことは彼の気分を向上させた。

ザザ自身は周囲から口八丁手八丁、口から先に生まれた男、詐欺師などと言われており、面接も全く苦にせずパスしてきた。しかし、彼の優秀な同期の友人は話し下手であり、その類稀な才能が面接という面接官の主観によって決定する採用方式によって潰されるのを何度も見てきた。だからこそ、そんなシステムが許せなかったのだ。優秀な人物の中には、自身が出来る人間であるために周りの優秀でない人間と話が合わない、話が出来ないといったことがあるらしい。したがって、大した実力もない面接官が優秀な友人を優秀と判断できず、コミュニケーション不足のドモリ野郎と負の烙印を押すことがない世の中にしたかった。

確かに面接官の中には優秀な人物がいるかもしれない。しかし、突出した才能のベクトルが異なっても、その才能を見極めることができない現実がある。人事系は文系の人間が多く、理系の優秀な人事担当者がいなければ、優秀な理系の人材を見極めて登用することはできない。仮に文系の人事が見たら、“声の小さい頭の良いやつ”にしか見えないからだ。だからこそ、現代日本では声の大きな文系人事が、自分に似た声の大きいコミュニケーション能力に秀でた文系社員を登用する傾向が強いのだろう。
閑話休題。ザザは他にも問うべきことはあるのだ。

「他にも伺いたいんですが、求人はどのように探しているのですか?」
「ああ求人ね。ヘローワーク、通称ヘロワに求人を出してるよ」
「はいゴミ」
「あ、ゴミって言った!上司にゴミって言ったよ!」
「いいですか、ヘロワに求人出してるところは、190%ろくでもないギルドまたは企業です」
「190%?」
「100%ブラック企業で、そのうち90%が追加でなんらかの問題を抱えている企業って意味です」
「そりゃひどい」
「俺はヘロワ経由じゃなくて直接応募でしたが、確かに俺が入社する前の行政改革ギルドは時間外100時間オーバーのスーパーうんこギルドでしたよね。つまりそういうことです」
「ええ……」

ヘローワーク。中央ギルド監修の職業斡旋組織で、無職になった者に対する支援等を行っている。例えば、これまで6ヶ月以上勤務したものに対して数ヶ月間給料の2分の1を支払ったり、特定の業種に就くための職業訓練を行ったり、ギルドや企業の求人を無料で一般公開したりしている。
特に求人公開については、エンターネットの求人募集サイト――例えば、ユアナビやウミナビ、金剛石就活ナビなど――よりも、コスト面において大きく軍配が上がる。エンターネットの大手求人サイトに求人情報を載せようとした場合、多くの広告掲載料が取られるからだ。安いものでも50万バルク、ハイクラス転職サイトになれば、1000万近い広告料金がかかってしまう現状がある。一方で、それに見合った優秀な人間を連れてくる可能性は高い。
それに比べて、金銭的な面においてヘロワは良心的だ。どの企業やギルドが何ヶ月求人情報を公開しても、掲載料がゼロ円なのだから。

「ヘロワは広告掲載料が一切かかりません。つまり、どれだけ社員やギルド員がやめても、ノーリスクで求人を出すことが出来るんです。ですから、ヘロワはブラック企業求人の温床になっているんです」

人を人として見ていないブラック企業の社長たち。彼らは自らの私腹を肥やすために日夜新しい社員を取り入れ、自分のお気に入りの奴隷を作っては会社に奉仕させている。
ただし、これは社長の判断としては間違っていないとザザは思っている。何故なら、安い労働力をコスト無しに手に入れることが出来るからだ。彼らの行い自体は褒められたものではないが、社長とは自分が儲けるために行動する生き物であり、ただ社会の制度に沿って活動しているだけなのである。ともかく。

「ヘロワに求人を出すのはやめましょう。それだけで行政改革ギルドの評判は地に落ちますから」
「じゃあ、一体どこに求人を出したらいいんだい?」
「そりゃあ大手求人サイト……と言いたいところですが、これだけ有名になったんです。ここは思い切って会見でも開いて求人を募るのはどうでしょう」
「会見?記者会見ってこと?」
「そうです。普通の企業に限って言えばあり得ない選択ですが、生憎ウチは中央ギルド直轄の国営組織です。常識の枠にとらわれずに宣伝することができます。今度、大日本帝国内の交通事情改善で、首都近辺に蓄電池トラムを走らせる計画を帝国民に周知する予定がありましたよね。あれのプレゼンついでに募集かけてみましょうよ」
「ええ……職権乱用じゃないかな……」
「使えるものは何でも使う。貰える機会は有効に活用する。それが改善活動です」
「体のいい言い訳を聞いている気がするよ」


ということで。
後日、行政改革ギルドから首都を走る蓄電池トラムの開発計画が発表された。
新たに首都を走らせる路線は、通常電車に必要とされる架線と電柱を取り払い、高密度のバッテリーを背負わせることによって走行を可能とするものだ。架線と電柱の設置が不要となることで、施工面においては工期の短縮と圧倒的な工費削減効果、安全面においては架線がなくなることによる感電災害発生リスク減効果、インフラ面においては電気の状態に関係なくいつでも走行できるという停電時のリスク減効果が期待できる画期的な発表であった。
この話は別途することになるであろうが、それはさておき。
蓄電池トラム計画の最後には、行政改革ギルドから従業員募集の通知がなされた。それは従来の求人公募とは異なる選考方法であり、蓄電池トラム計画で沸き立っていた大日本帝国民の心を刺激するには十分であったといえる。
結果的に、その日を境に1万人単位の求人が集まることとなり、行政改革ギルドは選考に頭を悩ませることになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。 現代では中世近世史を研究する大学講師。 史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。 ならば変える。 剣でも戦でもない。 政治と制度、国家設計によって。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、 戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。 これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。 戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。 (2月15日記) 連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。 一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (当面、月、水、金、土、日の更新)

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...