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人がいなければ補充すればいいじゃない 4
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「実力を知るには実際に仕事をやってもらう……っていうわけにはいかないですけど。うちには機密書類が多すぎますから。ですので、今うちが抱えてそうな問題をそれっぽくアレンジして、実際に考えてもらう試験方式はいかがですか。いいアイデアがあったら丸パクリもできて一石二鳥ですよ」
「あくどいなあ……了解だよ。確かに面接は僕の時間もすごく取られるし、本当にその人が優秀かを判別する完全な指標にはなり得ない。試験方式を採用しよう」
「ありがとうございます。マカオさんとお嬢さんが悩んでいる案件があったはずなので、お二人にも話を聞きつつ問題の雛形を作りましょう」
ウキウキ顔のザザ。この男、人事の経験はこれっぽっちもない。だが、面接で入社する人物が決まってしまうことに憤りを覚えていたこともあり、新しい採用方法が決まったことは彼の気分を向上させた。
ザザ自身は周囲から口八丁手八丁、口から先に生まれた男、詐欺師などと言われており、面接も全く苦にせずパスしてきた。しかし、彼の優秀な同期の友人は話し下手であり、その類稀な才能が面接という面接官の主観によって決定する採用方式によって潰されるのを何度も見てきた。だからこそ、そんなシステムが許せなかったのだ。優秀な人物の中には、自身が出来る人間であるために周りの優秀でない人間と話が合わない、話が出来ないといったことがあるらしい。したがって、大した実力もない面接官が優秀な友人を優秀と判断できず、コミュニケーション不足のドモリ野郎と負の烙印を押すことがない世の中にしたかった。
確かに面接官の中には優秀な人物がいるかもしれない。しかし、突出した才能のベクトルが異なっても、その才能を見極めることができない現実がある。人事系は文系の人間が多く、理系の優秀な人事担当者がいなければ、優秀な理系の人材を見極めて登用することはできない。仮に文系の人事が見たら、“声の小さい頭の良いやつ”にしか見えないからだ。だからこそ、現代日本では声の大きな文系人事が、自分に似た声の大きいコミュニケーション能力に秀でた文系社員を登用する傾向が強いのだろう。
閑話休題。ザザは他にも問うべきことはあるのだ。
「他にも伺いたいんですが、求人はどのように探しているのですか?」
「ああ求人ね。ヘローワーク、通称ヘロワに求人を出してるよ」
「はいゴミ」
「あ、ゴミって言った!上司にゴミって言ったよ!」
「いいですか、ヘロワに求人出してるところは、190%ろくでもないギルドまたは企業です」
「190%?」
「100%ブラック企業で、そのうち90%が追加でなんらかの問題を抱えている企業って意味です」
「そりゃひどい」
「俺はヘロワ経由じゃなくて直接応募でしたが、確かに俺が入社する前の行政改革ギルドは時間外100時間オーバーのスーパーうんこギルドでしたよね。つまりそういうことです」
「ええ……」
ヘローワーク。中央ギルド監修の職業斡旋組織で、無職になった者に対する支援等を行っている。例えば、これまで6ヶ月以上勤務したものに対して数ヶ月間給料の2分の1を支払ったり、特定の業種に就くための職業訓練を行ったり、ギルドや企業の求人を無料で一般公開したりしている。
特に求人公開については、エンターネットの求人募集サイト――例えば、ユアナビやウミナビ、金剛石就活ナビなど――よりも、コスト面において大きく軍配が上がる。エンターネットの大手求人サイトに求人情報を載せようとした場合、多くの広告掲載料が取られるからだ。安いものでも50万バルク、ハイクラス転職サイトになれば、1000万近い広告料金がかかってしまう現状がある。一方で、それに見合った優秀な人間を連れてくる可能性は高い。
それに比べて、金銭的な面においてヘロワは良心的だ。どの企業やギルドが何ヶ月求人情報を公開しても、掲載料がゼロ円なのだから。
「ヘロワは広告掲載料が一切かかりません。つまり、どれだけ社員やギルド員がやめても、ノーリスクで求人を出すことが出来るんです。ですから、ヘロワはブラック企業求人の温床になっているんです」
人を人として見ていないブラック企業の社長たち。彼らは自らの私腹を肥やすために日夜新しい社員を取り入れ、自分のお気に入りの奴隷を作っては会社に奉仕させている。
ただし、これは社長の判断としては間違っていないとザザは思っている。何故なら、安い労働力をコスト無しに手に入れることが出来るからだ。彼らの行い自体は褒められたものではないが、社長とは自分が儲けるために行動する生き物であり、ただ社会の制度に沿って活動しているだけなのである。ともかく。
「ヘロワに求人を出すのはやめましょう。それだけで行政改革ギルドの評判は地に落ちますから」
「じゃあ、一体どこに求人を出したらいいんだい?」
「そりゃあ大手求人サイト……と言いたいところですが、これだけ有名になったんです。ここは思い切って会見でも開いて求人を募るのはどうでしょう」
「会見?記者会見ってこと?」
「そうです。普通の企業に限って言えばあり得ない選択ですが、生憎ウチは中央ギルド直轄の国営組織です。常識の枠にとらわれずに宣伝することができます。今度、大日本帝国内の交通事情改善で、首都近辺に蓄電池トラムを走らせる計画を帝国民に周知する予定がありましたよね。あれのプレゼンついでに募集かけてみましょうよ」
「ええ……職権乱用じゃないかな……」
「使えるものは何でも使う。貰える機会は有効に活用する。それが改善活動です」
「体のいい言い訳を聞いている気がするよ」
ということで。
後日、行政改革ギルドから首都を走る蓄電池トラムの開発計画が発表された。
新たに首都を走らせる路線は、通常電車に必要とされる架線と電柱を取り払い、高密度のバッテリーを背負わせることによって走行を可能とするものだ。架線と電柱の設置が不要となることで、施工面においては工期の短縮と圧倒的な工費削減効果、安全面においては架線がなくなることによる感電災害発生リスク減効果、インフラ面においては電気の状態に関係なくいつでも走行できるという停電時のリスク減効果が期待できる画期的な発表であった。
この話は別途することになるであろうが、それはさておき。
蓄電池トラム計画の最後には、行政改革ギルドから従業員募集の通知がなされた。それは従来の求人公募とは異なる選考方法であり、蓄電池トラム計画で沸き立っていた大日本帝国民の心を刺激するには十分であったといえる。
結果的に、その日を境に1万人単位の求人が集まることとなり、行政改革ギルドは選考に頭を悩ませることになる。
「あくどいなあ……了解だよ。確かに面接は僕の時間もすごく取られるし、本当にその人が優秀かを判別する完全な指標にはなり得ない。試験方式を採用しよう」
「ありがとうございます。マカオさんとお嬢さんが悩んでいる案件があったはずなので、お二人にも話を聞きつつ問題の雛形を作りましょう」
ウキウキ顔のザザ。この男、人事の経験はこれっぽっちもない。だが、面接で入社する人物が決まってしまうことに憤りを覚えていたこともあり、新しい採用方法が決まったことは彼の気分を向上させた。
ザザ自身は周囲から口八丁手八丁、口から先に生まれた男、詐欺師などと言われており、面接も全く苦にせずパスしてきた。しかし、彼の優秀な同期の友人は話し下手であり、その類稀な才能が面接という面接官の主観によって決定する採用方式によって潰されるのを何度も見てきた。だからこそ、そんなシステムが許せなかったのだ。優秀な人物の中には、自身が出来る人間であるために周りの優秀でない人間と話が合わない、話が出来ないといったことがあるらしい。したがって、大した実力もない面接官が優秀な友人を優秀と判断できず、コミュニケーション不足のドモリ野郎と負の烙印を押すことがない世の中にしたかった。
確かに面接官の中には優秀な人物がいるかもしれない。しかし、突出した才能のベクトルが異なっても、その才能を見極めることができない現実がある。人事系は文系の人間が多く、理系の優秀な人事担当者がいなければ、優秀な理系の人材を見極めて登用することはできない。仮に文系の人事が見たら、“声の小さい頭の良いやつ”にしか見えないからだ。だからこそ、現代日本では声の大きな文系人事が、自分に似た声の大きいコミュニケーション能力に秀でた文系社員を登用する傾向が強いのだろう。
閑話休題。ザザは他にも問うべきことはあるのだ。
「他にも伺いたいんですが、求人はどのように探しているのですか?」
「ああ求人ね。ヘローワーク、通称ヘロワに求人を出してるよ」
「はいゴミ」
「あ、ゴミって言った!上司にゴミって言ったよ!」
「いいですか、ヘロワに求人出してるところは、190%ろくでもないギルドまたは企業です」
「190%?」
「100%ブラック企業で、そのうち90%が追加でなんらかの問題を抱えている企業って意味です」
「そりゃひどい」
「俺はヘロワ経由じゃなくて直接応募でしたが、確かに俺が入社する前の行政改革ギルドは時間外100時間オーバーのスーパーうんこギルドでしたよね。つまりそういうことです」
「ええ……」
ヘローワーク。中央ギルド監修の職業斡旋組織で、無職になった者に対する支援等を行っている。例えば、これまで6ヶ月以上勤務したものに対して数ヶ月間給料の2分の1を支払ったり、特定の業種に就くための職業訓練を行ったり、ギルドや企業の求人を無料で一般公開したりしている。
特に求人公開については、エンターネットの求人募集サイト――例えば、ユアナビやウミナビ、金剛石就活ナビなど――よりも、コスト面において大きく軍配が上がる。エンターネットの大手求人サイトに求人情報を載せようとした場合、多くの広告掲載料が取られるからだ。安いものでも50万バルク、ハイクラス転職サイトになれば、1000万近い広告料金がかかってしまう現状がある。一方で、それに見合った優秀な人間を連れてくる可能性は高い。
それに比べて、金銭的な面においてヘロワは良心的だ。どの企業やギルドが何ヶ月求人情報を公開しても、掲載料がゼロ円なのだから。
「ヘロワは広告掲載料が一切かかりません。つまり、どれだけ社員やギルド員がやめても、ノーリスクで求人を出すことが出来るんです。ですから、ヘロワはブラック企業求人の温床になっているんです」
人を人として見ていないブラック企業の社長たち。彼らは自らの私腹を肥やすために日夜新しい社員を取り入れ、自分のお気に入りの奴隷を作っては会社に奉仕させている。
ただし、これは社長の判断としては間違っていないとザザは思っている。何故なら、安い労働力をコスト無しに手に入れることが出来るからだ。彼らの行い自体は褒められたものではないが、社長とは自分が儲けるために行動する生き物であり、ただ社会の制度に沿って活動しているだけなのである。ともかく。
「ヘロワに求人を出すのはやめましょう。それだけで行政改革ギルドの評判は地に落ちますから」
「じゃあ、一体どこに求人を出したらいいんだい?」
「そりゃあ大手求人サイト……と言いたいところですが、これだけ有名になったんです。ここは思い切って会見でも開いて求人を募るのはどうでしょう」
「会見?記者会見ってこと?」
「そうです。普通の企業に限って言えばあり得ない選択ですが、生憎ウチは中央ギルド直轄の国営組織です。常識の枠にとらわれずに宣伝することができます。今度、大日本帝国内の交通事情改善で、首都近辺に蓄電池トラムを走らせる計画を帝国民に周知する予定がありましたよね。あれのプレゼンついでに募集かけてみましょうよ」
「ええ……職権乱用じゃないかな……」
「使えるものは何でも使う。貰える機会は有効に活用する。それが改善活動です」
「体のいい言い訳を聞いている気がするよ」
ということで。
後日、行政改革ギルドから首都を走る蓄電池トラムの開発計画が発表された。
新たに首都を走らせる路線は、通常電車に必要とされる架線と電柱を取り払い、高密度のバッテリーを背負わせることによって走行を可能とするものだ。架線と電柱の設置が不要となることで、施工面においては工期の短縮と圧倒的な工費削減効果、安全面においては架線がなくなることによる感電災害発生リスク減効果、インフラ面においては電気の状態に関係なくいつでも走行できるという停電時のリスク減効果が期待できる画期的な発表であった。
この話は別途することになるであろうが、それはさておき。
蓄電池トラム計画の最後には、行政改革ギルドから従業員募集の通知がなされた。それは従来の求人公募とは異なる選考方法であり、蓄電池トラム計画で沸き立っていた大日本帝国民の心を刺激するには十分であったといえる。
結果的に、その日を境に1万人単位の求人が集まることとなり、行政改革ギルドは選考に頭を悩ませることになる。
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