異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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人がいなければ補充すればいいじゃない 6

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会見も終わり、カイリキはザザにITを勉強しろと叱られる。ザザの発言のせいで、検討すらしていなかったテレワークとクラウドシステムの導入を強いられているが、とりあえずその仕事はザザに丸投げしてある。餅は餅屋ということだ。とはいえ、ザザ曰く“あまりシステム導入には詳しくない”とのことであるが。とにもかくにも、そうしていつもの日々が戻ってきた。いや、戻ってきてはいなかった。

「ザザちゃあああああああん!!!!また履歴書のプレゼントよおおおおおおおお!!!!」
「嫌だああああああああ!!!!」
「ザザ君、この履歴書も差し上げますわ」
「いらなあああああああああああい!!!!」

来るわ来るわ履歴書の山。報道機関を活用しての求人募集から数日、番組を見ていた多くの帝国から行政改革ギルドへの応募が殺到していた。そしてあまりにも応募の量が多いので、カイリキだけでは到底チェックできなくなってしまったのだ。そこで、ミスター書類選別装置、ザザ・ナムルクルスの力を借りることにしたのだが……。

「カイリキさん!俺だって全部見るの無理ですよ!求人倍率狂ってますって!!」

と、ご覧の有様である。後ろでくすくすとマカオとお嬢が笑っているが、彼女たちは半分悪ふざけでザザをおもちゃにしているに違いない。
しかし、そうは言っても確かに量が多い。今日届いた分だけでも、軽く2000通は履歴書がザザの手元にあった。これまで1日1通だったへロワ求人募集時代とは雲泥の差である。

「特にこのおっさんなんかヤバイですよ!!手書きだし、字は汚いし、線はヨレヨレだし、敬語下手過ぎだし、50過ぎて未だに管理職経験ないし、資格もなんにも持ってないんですよ!!!よく応募する気になったよ!!!もう俺の基準で適当に間引きしていいですか!!!!」
「あ、もう間引きする気マンマンでしょ。選定基準教えてくれたらいいよ」
「ありがとうございまああああす!」

と、かくして履歴書の選別作業が行われる運びとなった。



「じゃあ、前提条件を伺います。もらった履歴書は返送しますか、こちらで破棄しますか」
「一応返送の予定だけど」
「やめましょう。何千通も返送の封筒準備するなんてナンセンスです。破棄します」
「まあ……そうだね、そうしようか」
「同様に、不合格を通知するのもやめましょう」
「え?それは流石にした方がいいんじゃないかな。待ってる人も多いと思うし」
「大丈夫です。そんなこともあろうかと、“合格者には書類到着後10日以内に課題を送付する“ってホームページに書いておきました」
「用意周到の方向性がひどい……」

とは言え、現代日本においても応募が多い大企業などはこのスタイルの場所が多い。“抽選結果は発送を持って代えさせていただきます”というやつだ。確かに、返送や返信の手間を考えると、あまりにたくさんの人間に労力を割くのは間違っていると言える。ましてや選考に残れなかった人間相手だ。厳しい言い方になるが、この世界は競争なのである。

「さて、それを踏まえた上で、俺の選考基準の話です」
「うん」
「まず、手書きのやつは全員落とします」
「え?」
「次に、紙とFAXで送ってきたやつは全員落とします」
「……え?」
「最後に、メールに履歴書等を添付してきたやつの中で、主観でフォーマットが汚いって思ったやつを落とします」
「」

絶句。
しかし、ザザはそれを織り込み済みである。

「そういう顔をすると思ったので、ちゃんと理由をお話しますよ。
 まず1つ目、手書きで履歴書書いてきたやつを全員落とすって話から。まず、これは論外です。どこのふざけたマナー講師が教えたのかは知りませんが、会社に提出する文書を見やすく書こうという意思のない人間は必要ありません。仮に“書道の有段者”で、書いてある字がめっっっっっちゃ綺麗でも落とします。何故なら、『公文書は手書きで作らないから』です。
 俺の履歴書の判定方法になりますが、見やすい文書を作れるかどうかが基本です。今回は履歴書のフォーマットをあえて統一していない、つまり、個人の持つ書類作成スキルを問うているんだと俺は解釈しました。そうですよね?」
「まあ、そうだね」
「であれば、手書きでフォーマットを作るような輩は必要ありません。俺たちが書類で確認したいのは、あくまでもMordやWxcelのスキルなんですから」

なるほど、とカイリキは思う。発言は過激だが、やはりザザはカイリキの意を汲んでいるらしい。

「逆に、ビジュアル勝負でデザイン性が極めて高い書類を送ってきた人は、内容がどうであれ通します。例えば、もう書類すら作らずに自作の3Dモデルで映像アピール仕掛けてくるようなタイプの人間ですね。正直、行政改革ギルドというお堅い職種に、こういったチャレンジングなことをしてくる人間は必要だと思っています」
「あんまり行き過ぎても問題だけど、結局は筆記試験の結果如何だからね。うん、面白そうな人は通してもいいよ」
「了解です。2つ目、紙やFAXで履歴書を送ってきた輩も選考から除外します。これも論外です。文明の利器を活用出来ていない人物は必要ありません。もしかしたら、家庭環境が原因でパソコンがないのかもしれませんが、少なくとも日常的にパソコンを使っていない人物に任せる業務はありません」

この意見には同感だ。これからIT化を進めていくにあたって、パソコンの使えない人物を雇い入れる余裕はない。僕?僕は大丈夫。ザザ君に叱られて、こないだテレワークとクラウドサービスも勉強したから。

「特にFAXで送ってくるやつ、コイツは絶対にダメです」
「どうして?」
「FAX信仰者にはロクな人間がいません。これは俺の完全なる偏見ですが、しかし間違いのない経験則です。このご時世、仕事でFAXのやり取りをしてる企業があったら、俺なら絶対に縁を切ります」
「そんなに!?」

我が部署の過激派は言うことが違う。しかし、確かにザザの言い分は何となく正しい。昔は今よりもメール等の通信技術が発達しておらずFAXが主流だったが、昨今ではメールによるやり取りがほとんどだ。そして現在、メールの普及にも構わずFAXでやり取りを続けてくる取引先が未だに存在する。彼らのためだけにFAXを使っていると言っても過言ではなかったが、それなりの取引先だったから無下にもできず苦労している。とはいえ、今回久しぶりにFAXを有効活用出来そうで良かった。送ってきたやつを落とすという“振るい”の用途ではあるが。

「それらを踏まえて3つ目です。美しいフォーマットを作れないものは落とします。正直MordやWxcelなんて初歩の初歩です。いくらこれらのソフトを使いこなせるか確認するとは言っても、こんな簡単な標準ソフトすら使いこなせない人物を採用する理由はありません。以上3つを基準に、バシバシ書類を弾いてもよろしいですか」
「よろしい!お願いします、ザザ君」
「了解しました!」



「カイリキさん」
「おお、お疲れ様ザザ君。進捗はどうかな」
「2000通が20通になりました」
「おお!?すごい減ったね!」
「正直趣味で減らした部分は大きいですが、即戦力になりそう、または一芸に秀でてている人材をピックアップできたつもりです。カイリキさんのチェックもしてもらって良さそうなら、彼ら全員に課題を送っても良いと思います」
「了解、見ておくよ」
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