異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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幕間 ―魔法学校のアルバイト―

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ゴオオオオ!!

燃えろ、燃えろ、燃えろ。こんなもの、消し炭になってしまえ。溶けてなくなってしまえ。二度と日の目を見れなくしてやる。
こいつらが憎いと思ったことは一度もない。だが、これが自分の仕事なのだ。どうか悪く思わないで欲しい。

「ヒノコさーん、これもお願いしまーす」
「はーい!」

ゴオオオオ!!
また1つ溶けてなくなっていく。私の炎は地獄の炎。すべてを焼き尽くす灼熱の業火。

「ヒノコさん、この書類もいいですか」
「任せてくださーい!」

ゴオオオオ!!
などとカッコつけたものの、まだまだ火力は業火には程遠い。だが、目の前の機密書類を完全に溶解する程度には十分な火力だ。先月初めて溶解に挑戦した時は、完全には燃えずに残ってしまう程度だった。だが今はどうだろう。毎日のように訓練を重ね、水属性を得意とする私が炎の魔法を使いこなしている。最近ではお湯を沸かすのも楽ちんだし、ここで魔法の練習をしながらお金ももらえるとは、なんて素晴らしい場所なんだろうか。
そう、ここは魔法学校の校舎裏に建設された焼却場。学生たちの秘密のアルバイト空間である。



『別の属性の魔法が使える』。たったそれだけのことではあるが、これまで1人1属性という概念が一般的だった世界において、新しい能力を獲得できることは彼らの好奇心や探求心を刺激するのに十分であった。特に若年層はその特色が強く、休み時間や学校帰り、晩御飯を食べてからやトイレの中、お風呂に入っている時など、とにかく暇さえあれば新しい魔法を練習しまくっている有様である。その結果、学生寮での火災が発生したり、建物の水損や土魔法による破壊・変形など、とにかく問題にも事欠かなかった。
問題を重く見たのは、彼らの保護者や近隣住民である。この魔法学校は、基本的には年齢を問わずに学生を募集してはいたが、それでも入学してきたのは若年層が多かった。したがって、若い彼らが力を持て余して非行に走ることを恐れる人間も一定数いたのである。彼らの親はその傾向が顕著であり、モンスターペアレント化して学校に乗り込んでくるものもいた程である。
一方で、それらの行為を“問題”ではなく“素晴らしいこと”と認識したのは、現校長であり稀代の大賢者でもある教育ギルド長マンリキだ。彼曰く、「学生が自ら率先して勉学に励んでいるという貴重な事実をよく見なければならない。むしろ、彼らに学業の成果を発揮する場を与えることが出来ていない学校側に責任がある」として、即時夜勤専門の教員を増員し、希望者に対して放課後以降の自主訓練や夜間限定訓練を新カリキュラムとして導入したのである。それでもまだ力を持て余す彼らの活動の場として考案されたのが、『他属性魔法によるアルバイト』であったという訳だ。

「この書類を段ボールごと燃やせばいいんですか?」
「そうですヒノコさん。ただし、これらはいわゆる機密書類。段ボールの中を開封することは許されないし、仮にうっかり中身を見てしまったからといって、その内容を他人に口外することも決して行ってはなりません」
「も、もし口外しちゃったら……?」
「退学です」
「退  学」

と半ば脅しを加えながら行っているのが、火属性魔法のアルバイトである『機密書類の溶解』だ。これまで各ギルドでは、定期的にゴミ処理業者に委託をして書類の溶解を行っていた。しかし、行政改革ギルドによるインフラ整備等により、街の人口は爆発的に増加。それに伴い、ゴミ処理施設の容量や処理能力もかなり限界に近付いていた。そこに目を付けたのがマンリキとカイリキである。ギルドや一般企業から発生する大量の機密書類等の紙ごみを魔法学校に持ち込み、学生の魔法の自主練習兼ストレス発散兼焼却処分に利用しようと画策したのである。

「燃えろ燃えろー!」

そしてこれが大反響。書類の溶解は公共性の高い業務であり、力を貸してくれた学生には対価としてアルバイト料を払うシステムもマッチし、多くの学生の稼ぎ場になった。また機密書類を排出する各ギルドも、一般的なゴミ処理業者に支払う金額よりも圧倒的に安く処理してもらえるため経済的に優位であるし、ゴミ処理業者もパンク寸前だった処理施設を間接的に救ってもらえたことでwin-win-winの関係となっている。

「では皆さん、水魔法をかけて下さい」
「「「はーい!」」」

だが、この連鎖は止まらない。溶解した書類を今度は水魔法によって急冷しながら、土魔法で出来た炉内で混ぜ始める。かと思えば、今度は風魔法による刃を炉内に打ち込んで、ドロドロに溶けた紙をさらに細分化&液状化していく。最後に土魔法を使ってボックス型に成形すれば、あっという間に魔法学校産リサイクル紙の原料パレットの出来上がりだ。

「先生、パレット化完了しました!」
「……うん、これなら引き取ってもらえるでしょう。合格です」
「やったー!」

このパレットは製紙メーカーに引き取られ、やがて彼らの勉強用のリサイクル紙として紙状に加工される。そして、引き取った際のお金は仕事をこなした彼らの給料の一部となるのだ。結果、彼らに勉強の機会を与え、彼らのガス抜きの場を提供することもでき、親御さん達のうるさい声も減り、社会貢献もすることが出来て、魔法学校の宣伝にもなっている。一石数鳥の圧倒的な効率化だ。魔法学校では、まさしく無駄のない工程を作り上げることに成功したと言えるだろう。
さあ、魔法の新しい可能性を切り拓いてみないかい?君も魔法学校へ、今すぐ入学だ!!



「あは☆っていう感じのPVでいこうと思うんですが、どうですか?」
「流石売れっ子Yo!tuberだね、採用で!」
「やったあ☆」
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