はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

文字の大きさ
15 / 77
第一話 ~春~ 再就職先は地獄でした。――いえ、比喩ではなく本当に。

交渉に行ってきます。

しおりを挟む
 すべての準備を整えた私と子鬼三兄弟は法廷――つまりはシンデレラ城の中を歩いていました。目指す場所は城の最上階、閻魔様の執務室です。
 この城に来るのは初日以来、およそ一カ月ぶりですね。
 あの時はあまり気にしていませんでしたが、この城って現世にあるシンデレラ城よりもかなり大きな造りになっているようです。閻魔様が無駄にでかいですから、彼に合わせてということなのでしょう。

 ――おっと、城の設計意図について考えている内に、閻魔様の執務室に着いてしまいましたね。

「ここで閻魔様が働いているわけですか。こんな眺めの良いところで……。――良い御身分ですね。ゴリラの分際で……」

 あんなヒゲゴリラでも、一応『筆頭裁判官』なんていう御大層な肩書を持っていますからね。一等地に執務室が与えられているのも、当然なのですけど……。
 とはいえ、私が地下であのゴリラが見晴らしの良い地上五階ですか。ウフフ……。

「ししょー、えんまさまとおはなししないの~?」

 執務室の前で怪しく笑う私を見て、とまとさんが不思議そうに首を傾げました。
 余談ですが、『ししょー』というのは当然私のことです。『司書』と『師匠』の掛け言葉ですね。

「ええ、お話しますよ。――色々と」

 とまとさんへそう返事をしつつ、私は執務室のドアをノックしました。
 そのまましばらく待ちますが、中から返答がありません。
 おかしいですね。扉に掛かったプレートは『在室中』となっているのですが。

「失礼します。閻魔様、いらっしゃいますか?」

 ガチャリと閻魔様サイズのビック扉を開け、部屋の中をのぞき込みます。
 すると……。

「ぐごーっ、ぐごーっ!」

 体に合わせた特大サイズの机に突っ伏し、気持ち良さそうに昼寝をしていらっしゃる原始人の姿が目に入りました。

「……………………。……みなさん、例のモノを」

「「「あい、あい、さ~!」」」

 私がパチンと指を鳴らすと、子鬼三兄弟が機敏に動いて『例のモノ』を執務室に運び込みます。ブツの移動を終えた子鬼三兄弟は、テキパキと準備を始めました。

「たーげっと、ろっくおん!」

「ハアハア! 弾丸装填、完了!」

「せーふてぃ、かいじょ!」

「おーるぐりーん!」

 すべての準備が整い、三つ子と弾丸が確認するようにこちらを見ます。
 四人からの視線を受けた私は、バッ、と腕を振って命令を出しました。

「人間大砲兼定――発射!」

「「「はっしゃ~!」」」

「あふ~ん!」

「ぎゃああああああああああ!」

 音速の弾丸と化した兼定さんが、瞬く間に閻魔様と執務机を吹き飛ばしました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

処理中です...