はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

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最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。

最後の大勝負です。

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「その娘を気に入ったという割には、あなたも随分と酷な勝負を提案していらっしゃいましたね」

「ぬふふ。神は時に人の子へ試練を与えるものぞ。それにこの勝負で負ければ、貴様とてぐうの音も出せんじゃろう?」

「確かにそうですが、この勝負はいささか私に分が良過ぎませんかな?」

「……さて、それはどうかの?」

 伊邪那美いざなみ様がニヤリと口の端を持ち上げます。
 けれども、伊邪那美様の表情と言葉の意味を考えている場合ではありません。今の会話、何だか私にとって、とても不穏当でしたよ。

「伊邪那美様、試練というのはどういう意味ですか?」

「うん? ああ、気にするな。ただ単に、この男はレファレンス歴50年以上のベテランというだけじゃ。こやつ、レファレンスという仕事をえらく気に入っておってな。司書の職を退いて久しいというのに、今でも暇を見つけては本館でレファレンスの手伝いをしておるのじゃ」

「ちょっと待ってください! それ、思いっきり私に不利じゃないですか」

 ジト目で伊邪那美様を睨み付けます。
 この神様、一体何を考えているのでしょう。片や経歴50年、片や経歴1年。こんなの勝負になるわけありません。

(これは断固抗議して、勝負の内容を別の分野――いえ、むしろ私の得意分野に変えてもらわねば……)

 思い立ったら即行動。
 早速、異議申し立てをしようとしたら、不意に伊邪那美様が私に顔を近づけ……、

「安心せい。わらわもバカじゃない。やり方によってはお主が互角以上に戦えるよう、ちゃんと考えてあるわい」

 と、耳打ちしてきました。
 ん? 互角以上の勝負になるようにしてある?
 それは一体どういう意味でしょう? 先程、久延毘古くえびこ氏に向かって浮かべていた笑みと合わせ、わからないことだらけです。

 しかし、伊邪那美様の真意を問い質すことは適いませんでした。
 彼女は言いたいことを言ったらさっさと私の傍を離れ、ルール説明を始めてしまいましたので……。

「ルールは簡単。ここにレファレンス担当である参考調査係から受け取ってきた、対応中のレファレンスが三問ある。どんな手段を用いてもよいので、先にこの三問を解決した方の勝ちじゃ。宏美が勝った場合は地獄分館の閉鎖と職員の解雇を撤回し、今回の件は不問とする。久延毘古が勝った場合は、その逆じゃ。――双方、異論ないな?」

「いいでしょう。あなたがそれで満足されるのなら、異論はありません」

「…………。……わかりました。それで大丈夫です」

 久延毘古氏に続き、私も少々考えてから頷きます。
 なるほど。、ですか。
 伊邪那美様が先程掛けてきた言葉の意味、ようやくわかりました。

 周りを見渡せば、商議員共も余裕綽々な表情です。レファレンス勝負なら、久延毘古氏が私のような小娘に負けるわけはないと高をくくっているのでしょう。
 当の久延毘古氏も、レファレンスに絶対の自信があるのでしょうね。自分の勝ちを疑っている様子はありません。

 つまり、誰も細かいところにまで気を配っていないご様子。
 私のことを調べたと言う割には、揃いも揃って随分と甘いことで……。

(ならばやってやろうじゃないですか、私流レファレンス。私を甘く見た代償、きっちりと払ってもらいますからね。ウフフフフ……)
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