残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
7 / 113

祝! 初逮捕(されました……)

しおりを挟む
 野を越え、川底を越え、万桜号を走らせ続けること約二日。
 とうとうヴァン王国とやらへたどり着いた。

 ちなみにこの二日間、俺はセシリアからこの世界の情報を引き出すことに苦心し続けていた。
 こいつ、どうでもいいことはペラペラしゃべるくせに、肝心なことはほとんど「知らん!」の一言で済ましちまうんだわ。しかも、別に意地悪しているわけでもなく、本当に知らない様子。こいつ、今まで一体どんな風に生きてきたんだか……。
 で、何とか引き出した情報からわかったことは、こんな感じだ。


①この世界の人間は魔法が使える。

 つまり、この世界の住人はそこらにいる一般人でも魔法が使える。
 ただし、ふつうは火を起こしたりライト代わりの灯りをともす程度が限界。持続時間も数秒から数分程度。
 職業的に魔法使いと呼べるレベルの人間は、ほとんどいないらしい。
 もちろん勇者とかのレベルになれば絶大な魔法を使えるというのも、以前のセシリアの話通り。
 なお、俺はこの世界の住人ではないので、セシリアがいなければ魔法を使うことができない。
 ハッハッハ! ……詐欺だろ、これ。ちくしょう……。

②文明レベルはルネサンス的な?

 聞いている限り、文明レベルはそれ程高くないようだ。
 あ、でも魔法があるせいか妙に文明が発達しているところもあって、映像の投影魔法とかがあるらしい。と言っても、使っているのは金持ちか王族・貴族がほとんど。もしくは大きな町の祭とかで使われるくらいだそうだが……。
 乗り物は馬車が主流で、そこいらにポコポコと王国やら村やらがあるそうだ。
 ちなみにヴァン王国の通貨単位はゴルドだとさ。で、それより小さい単位としてセストというのがあるらしい。換算としては1ゴルド=100セストだ。とりあえず、ドルとセントみたいに考えておこう。

③モンスターや魔族と普通にエンカウントする。

 これは話を聞くまでもなく、ガチで何度も出くわした。(まあ、幸いにも魔族とやらには合わんかったが……)
 こういうところも、まんまRPGっぽいな。
 幸い、向こうもむやみやたらと人間に襲いかかってくることはないから、適度に距離を取っておくのがベストだ。そうしていれば、基本平和だしな。
 ただし、中には高い知能を持ったモンスターもいるそうなので注意が必要だ。そういう連中は、人間を攫ったり、強盗したりとなんでもありらしい。
 くわばら、くわばら……。


 と、そんな前情報を得つつ、ヴァン王国の関所っぽいところの前に付いた俺たちは……。

「なんだ、この乗り物は! 新手の兵器か」

「総員、攻撃に備えよ。中央の近衛騎士団へもすぐ応援要請だ!」

 速攻で兵隊さん方に取り囲まれました。
 ぬかったわ~。
 セシリアがあまりにも普通に万桜号を受け入れていたから、何も考えずにここまで来ちまった。
 よくよく考えれば、ルネサンス期的な世界に自動車なんてモンスターと変わんねえじゃん!

 とりあえず、このままではいきなり逮捕されかねん。
 俺はセシリア共々、事情を説明するために万桜号から降りた。
 ……そしたら、即四方八方から槍を向けられましたよ。切っ先が本物であることを誇示するようにキラリと輝いているね。マジ恐い。

 これはまずいな。出鼻からしくじったかもしれん。
 『サルでもわかる! レメゲドン』くらい持ってくるべきだった。

「貴様ら、何者だ。名を名乗れ!」

 正面に立つ隊長格っぽいのが、問い掛けてきた。
 ふむ……。
 ここで「魔王と邪神です」なんて言ったら、確実に打ち首コースだよな。……魔王の知名度なんて知らんけど。
 ならば、遠方からの旅人を装うのがベストだろう――。

「わらわは邪神セシリア。そして、こやつは新たな魔王ヨシマサじゃ。頭が高いぞ。ひれ伏せぃ、愚民共! ――あいた!?」

 隣のポンコツ邪神が早速やらかしてくれました。
 ゲンコツ叩き込んで黙らせたが、もはや手遅れ。
 兵隊さんたち、ザワザワし始めちゃったし。
 
 ホント、もう嫌!
 こいつバカなの? 

「やい、貴様! 何すんじゃい」

「『何すんじゃい』は俺のセリフだ。てめえ、何余計なこと言ってんだ。見ろ! みなさん早速臨戦態勢に入っちゃったじゃんか」

「名乗れと言われたから正直に名乗っただけじゃろうが。わらわ、悪いことしてないもん!」

「正直すぎるんだ、ボケナス!?」

 槍を向けられる中、醜い仲間割れを繰り広げる俺とセシリア。

 このロリ邪神、今日という今日は許さねえ!
 徹底的に懲らしめてやるわ、ゴルァ!

「お前たち、天下のヴァン王国の門前で魔王と邪神を名乗るとは、いい度胸だ。ちょっとそこの詰所で詳しく話を――」

「うっさい、今忙しいんだ! ちょっと黙ってろや、クソボケが! ――あ……」

 やっべ。
 セシリアとの喧嘩に夢中で何か墓穴を掘ったような……。

 ギギギ……、と油の切れかけたブリキ人形のように声をかけられた方を見てみれば、額に青筋立てた隊長さんが鬼のような形相でこっちを見ていました。

「総員、確保―ッ!」

「おおーっ!」

「ギャーッ! すみませーん!!」

 ……結局しょっぴかれました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...