残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
8 / 113

何でも屋をやってみる!

しおりを挟む
「はあ……。ひどい目に遭った……」

 守備兵の詰所から解放された俺は、疲れ切ったまま万桜号にもたれかかった。

 詰所で過ごした三日三晩は、本当にひどいものだった。

 とりあえずセシリアの魔王&邪神コンビ宣言により、俺たちは魔王軍の残党との嫌疑をかけられることになった。(意外と知名度あってビックリだ)
 一応言っておくと、本物の魔王と邪神とは信じてもらえなかった。
 この点については、不幸中の幸いだったな。おかげで王宮の方にある近衛騎士団とかは呼ばれなかったし。

 ただ、信じてもらえなかったことに腹を立てたポンコツがいたわけで……。

「ええい、わらわたちは魔王軍の残党ではない。魔王軍そのものじゃ!」

 なんて、いらんことをのたまいまくってくれた。
 ハッハッハ!
 ホント、うちのロリ神様は余計なことばかりしてくださって。
 ……今日から三日間メシ抜きだ、あのクソガキ。

 ともあれ、このセシリアの発言は小さい子の妄想全開イタイ子発言ということで流し(当の本人から噛みつかれたが……)、俺の魔王というのも「生まれた土地の名前がマオウといいまして~」とか適当なことを言ってごまかした。

 ついでに万桜号についても、ここから遠く離れた土地の古代遺産ということにして乗り切った。
 俺、本当に頑張った。

 例の隊長さんからはえらく疑われたが、二人揃って土下座(ここでもセシリアから噛まれた。このガキ、本当に人の気も知らないで……)とかして一応は信じてもらえた。
 隊長さんの心の広さに感謝だな。

 でまあ、これにて疑いは晴れて、一先ず解放してもらえそう……という雰囲気になったんだけど、ここでまたうちのポンコツロリ邪神がやらかしてくれまして……。

「まったくこんなところに一日もわらわたちを閉じこめおって。身のほどを弁えよ、このハゲが!」

 と、捨て台詞。
 この言葉に、隊長さん大激怒。
 連帯責任というか保護者責任で俺もまとめて二日間お説教を食らう羽目となったのだ。
 
 ちなみに、漏れ聞こえた兵隊さん達の話を聞く限り、隊長さんはここ最近薄毛に悩んでいるらしい。おかげで、『髪』という言葉を聞くだけで敏感に反応してしまうお年頃とのことだった。

 セシリアめ、ピンポイントで余計な勘を働かせおってからに……。

 ともあれ、こうして二日ほど余計にのびたお勤めを無事に終え、俺たちはようやくヴァン王国の領内に入ることができたのだった。

「国に入るだけでこれだけ苦労するとは思わなかったぜ。まったく、とんだ災難だ」

「まったくじゃ」

 助手席で、うんうんと頷くセシリアちゃん。

 うん。
 今回の件の半分以上は、お前が余計なことを言ったのが原因だからね。
 被害者面してふんぞり返ってないで、まずは俺に謝ろうか。

「――あ! そう言えば拘留中ずっと気になってたんだけどさ……」

「ん? なんじゃ?」

「俺、何でここの人たちの言葉がわかって、文字が読めるの?」

 そう。兵隊さんたちの言葉が聞き取れることはもちろん、俺の言葉も通じるし、書かれた文字まで読めるのだ。
 書かれた文字が日本語でないのは一目瞭然だったので、拘留中からずっと気になっていたんだよな。
 元の世界では英語さえおぼつかなかった俺が、何でこの世界の言葉がわかるのか。
 うう~ん、ミステリー。

「そんなの簡単じゃ。わらわがお前をこの世界に呼んだ時、この世界の言語を頭に叩き込んでおいたのじゃ。会話から読み書きまで、問題なく行えるはずじゃぞ」

「おお、そうだったのか。サンキュー、セシリア。お前、ただのポンコツロリ邪神じゃなかったんだな。たまには役に立つじゃんか」

 一応こいつなりに、呼び出すにあたって俺への配慮はしてくれていたらしい。
 人に無許可でこの世界に呼び出した件は置いとくとして、この点は感謝しておいてやろう。

 ――と思ったのだが。

「せっかく人が気を利かしてやったというのに、何じゃいその態度。わらわはいつだって超役に立つぞ。役に立たなかったことなど、これまで一度もないからな」

 なんかお気に召さなかったようだ。
 うちのお姫様はツーンと唇を尖らせて、そっぽ向いてしまわれた。
 うーん、少女の思考回路はよくわからん。

 まあ、仕方ない。まずないとは思うが、こいつの機嫌を損ねてこの言語能力を没収されても敵わんからな。
 役に立たなかったどころか迷惑かけられ放題だとかは一先ず横に置いといて、ここは――。

「そんなことねえって。マジ感謝してるから。セシリアは気が利く超絶美少女だ。よっ! 美少女オヴァノール代表。マジ最高! その上、(ちんまいから)持ち運び便利で、(胸も)薄くて頑丈、超安心!」

「にゃはは。そうか、そうか。苦しゅうないぞ、もっと褒めい!」

 適当に褒めてみたら、あっさり機嫌を直しやがった。
 単純なやつめ。

 さて、そうこうしている内にヴァン王国の市場街についたな。
 セシリア曰く、何でも屋をやるにはここがベストだそうだ。
 王国の繁栄のため、余程いかがわしいものやサービスを売らない限り、無許可で店を開いていいらしい。(なので、露店とかの場所も早い者勝ちだ)
 つまるところ、身分証も何もない俺たちには打ってつけの市場というわけだ。好都合にもほどがある。

 てなわけで、とりあえず立ち並ぶ露店の端っこに車を止めて、外に出る。

「おお! すっげえ賑わってんな」

「当然じゃ。ここらで一番大きな市場じゃからな」

 大通りの両脇には大小様々な店が並び、人の往来も半端ない。
 しかも、どこかしこからいいにおいが漂ってきて……。

「ヨシマサ、わらわは腹が減ったぞ」

「激しく同感だが、先立つものがない」

 そう。今の俺たちは無一文。
 寝泊まりする場所は万桜号があるからいいとして、食べ物を買うには金を稼ぐしかない。
 でないと、三食すべてここから十キロばかり先にある川で獲った川魚(調味料もないので素焼きのみ)だ。

「ともかく、店を広げてちゃっちゃと稼ぐとするか」

「おーっ!」

 こうして、新米魔王とポンコツ邪神による初めてのお店経営が始めましたとさ。
 さてはて、どうなることかね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...