残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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これはもしや、人生の春到来?

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「さあ、遠慮はいらない。ジャンジャン好きなだけ食べてくれたまえ」

「は、はあ……」

 食事の時間。
 俺は目の前に並んだ料理の数々に、言葉をなくした。

「本日のメニューはサーロインステーキ、ビーフシチュー、ローストチキン、豚もも肉のソテー、牛のカルパッチョとなっております」

 明朗な声でメニューを読み上げるアイラさん。

 うん。
 まあ、牛や豚がこの世界にもいるという点はいい。一応、スコット村でそんなこと聞いていたし。お土産にも牛乳とかあったし。
 ただ、あの……。これって……。

「肉しかありませんよね」

「ああ。我が家の食事は基本肉なのだ」

「基本も何も、肉しかありませんが……。ちなみに野菜とかは……」

「人は肉を食っていれば満たされ、筋肉が付く」

 さいですか……。
 まあいいや。
 一食くらい肉尽くしでも死にはしない。……激しく胃がもたれそうだが。

「主人、これは良い肉を使っておるのう。褒めて遣わすぞ」

 このガキはうれしそうだな。
 まあ、こいつはうまいものなら食材関係なくドカ食いするからな。
 アイアンストマックだから、胃もたれとかとも無縁だろうし。
 この邪神にとっては、正に天国だろう。

「ハハハ。気に入ってもらえたようで何よりだ。さあ、お代わりもあるからどんどん食べたまえ。子供はたくさん肉を食って筋肉を育てないといけないからね」

「うむ。わかったのじゃ」

 そこはわからんでよろしい!
 俺はマッチョなロリ邪神と旅なんかしたくないぞ!
 暑苦しくて、ウザさ倍増しになるだろうが。

「それはそうと、あいつはどうしたのだ? 食事の時間に出てこないとは珍しい」

「ん? カイゼル氏、あいつとは……?」

 アイラさんに尋ねるカイゼル氏の言葉が気になり、こちらもちょっと聞いてみる。
 するとカイゼル氏は、いやはや参ったといった様子でこう言った。

「ああ、すまない。実は私には一人娘がいるのだ。その娘が、珍しく食事」

「ほう。娘さんですか」

 キュピーン☆ (←ターゲット、ロックオン!)

「お主、本当に節操がないな」

 やかましい。
 肉でも食ってろ、ロリ邪神。

「早くに妻を亡くし、以来男手ひとつで蝶よ花よと大事に育ててきた娘でな。その甲斐もあって、身内贔屓を差し引いても深窓の令嬢と呼ぶにふさわしい、気品にあふれた美しい娘となってくれた」

 ほうほう。
 深窓の令嬢、しかも美人ですか。
 なんとも魅惑的なお言葉ですな。

「で、あいつはどうしたのだ。まさか、体の具合でも悪いのか?」

「あ、いえ、そういうわけではないのですが……」

 何か言いにくそうにしているアイラさん。
 しかも、なぜかこちらをチラチラと見ている。
 ふむ。
 これは……。

「恋か」

「アホなこと言っとらんで、さっさと食ったらどうじゃ」

 サーロインステーキをはぐはぐやりながら、半眼でこちらを見るロリ邪神様。
 フフフ。これだからお子様は。
 大人の感情の機微というものがまったくわかっていない。

「お主は女心というものをまったくわかっていないがの、はぐはぐ」

 何を言うか。
 自慢じゃないが、俺は日本にいる時に女心のバイブル(通称:ギャルゲー)をたしなみ続けてきた強者だぞ。
 いわば、女心を推理するプロだ。

「やっぱりアホじゃな、こやつ」

 なんか心底呆れたという様子で、セシリアは食事に戻ってしまった。
 お子様の思考はよくわからん。

 なんてやり取りをしていたら、いつの間にかアイラさんがカイゼル氏の耳元で何か話し始めていた。
 耳を澄ましてみたら「実はお嬢様が……」とか、こちらを見ながら「一目ぼれ……」とか、あまつさえ「結婚……」とかまで聞こえてきましたよ。

 なんでしょうな……。
 オラ、ワクワクが止まんねえぜ!

「そうか……。あの奥手なマリアンナがそこまで本気で……。わかった。ここは私が何とかするとしよう」

 何やらものすごい重大決心をしたようなカイゼル氏。
 彼はアイラさんに何か耳打ちし、一度大きく息をついた。(どうでもいいが、一呼吸で部屋全体に風が巻き起こっているんだが……。どんな肺活量してるんだ、このオッサン)

 カイゼル氏は目もつぶって腕を組み、アイラさんが部屋を出ていくのを待つ。
 この姿を例えるなら……そう。娘を嫁に出す時の父親のような……。
 ま、まさかこれは……。

「ヨシマサ君」

「は、はい!」

 期待と緊張の入り混じった声で、カイゼル氏に返事をする。
 すると彼は重々しい声で……、

「君に折り入って話がある。実は、娘のマリアンナが君に一目ぼれしてしまったらしい。奥手なあの子が、すでに結婚まで綿密なプランを立てているようだ……。そこで相談なのだが――娘と結婚し、私の跡取りとなる気はあるだろうか?」

 と、切り出してきた。
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