残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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順調な滑り出し

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「レディース・エン・ジェントルメン! さあさあ皆様お立会い。本日も私、最高のエンターテイナーことヤマダ・ヨシマサが、皆様を夢と幻想の世界へお連れいたします!」

 ヴァーナ王国にやってきて、早一週間。
 俺は今日も今日とて、大道芸のナイトショーに勤しんでいた。

 この一週間で、見物客の数も徐々に増えてきている。
 さすがにヴァン王国の時ほどの大盛況とは言えないが、それでも一回の公演で200~300ゴルドくらいは稼げるようになったから、滑り出しとしては上々だろう。
 やっぱりどこの国に行っても、大規模な魔法は受けがいいな。魔法様々だ。

 ちなみに、昼間は何をしているかと言えば、もちろん読み聞かせだ。
 市場で働く親に引っ付いてきたお子様たちに、桃太郎やらシンデレラやらをセシリアといっしょに聞かせている。(つうか、セシリアも聞く側だが……)

 こっちもとりあえず、なかなかに好評と言っていいだろう。
 まあ、さすがに子供たち相手に「おひねりプリーズ」とは言えないからほとんど稼ぎにはならないけどな。
 
 だけど、商売上でまったく無駄ってわけでもないぞ。
 どうもガキども経由で俺の噂が広がっているみたいで、親たちが夜のショーを見に来てくれたりしているからな。
 回り回って、稼ぎにつながっているってわけだ。

 何よりうれしいのは、ガキどものほとんどがリピーターになってくれていることだ。
 さすがにこれには、俺も柄にもなく舞い上がっちまったぜ。

 んで、そのガキどもの笑い声につられて、最近では仕事の休憩中にふらりと顔を見せる大人やガキどもの親も出てきた。
 この大人たちがまた、割と気のいいやつらなんだ。
 時々「読み聞かせの礼だ」とか言って、自分の店の食い物をくれたりするわけよ。
 なんかもう、下町の人情ってやつをひしひしと感じるな。
 
 おかげでセシリアも大喜び。
 毎日うまいもの食って、超ご満悦といった感じだ。

 ……まあ、最近は味をしめて、妙なこと始めやがったけどな、あいつ。

 セシリアのヤツ、なんかこの頃、フラリとどこかへいなくなることが多くなったんだよ。
 それでさすがに俺も、保護者としてあいつが何やっているか気になってな。
 今日の昼間、読み聞かせが終わった後にこっそりつけてみたんだ。

 そしたらあいつ……鍛えた演技力を使って、市場のアイドル(もしくはマスコットか)的な存在になっていやがった。

 どうも、読み聞かせの常連になっていたパン屋のおやじに取り入り、そこから少しずつ信者を増やしていったらしい。

 おかげで、あのロリ邪神が市場を歩いているだけで、いろんな食べ物が集まってくる。
 しかもあのヤロー、それを俺には内緒で一人だけで食っていやがった。

 働かずして、おいしいところだけ持っていく。
 なんとうらやましい――いや、けしからんやつだ。
 あとで「俺にもおこぼれをください、お願いします!」と頼んでおこう。
 
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