残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
48 / 113

力加減間違えちゃった☆

しおりを挟む
「まあ仮に、お前が本物の大邪神セシリアだったとしてだ。魔王軍を壊滅させ、オレらを路頭に迷わせるような邪神の言うことを聞くわけないだろうが」

 リザードマン(ボス)の言葉に、『ああ、納得』という顔でポンッと手を打ったセシリア。

 うん。
 旧魔王軍はアホの集まりだったようだが、中でもトップが最大のアホだったようだ。

 てめえ、まったく持ってダメすぎるだろう!
 宴会魔法で火葬するぞ、クソガキ! (←激怒)

「…………。ふむ、仕方ないのじゃ。ヨシマサ、プランBに移行するぞ」

「初耳なんだがどんなプランだ?」

「全員ぶっ飛ばす」

 実にわかりやすいな。
 けどお前、ここ来る前に『退治は優雅さに欠ける』だの、俺のことを『これだから野蛮人は~』だの散々言ってくれたよな。

「ヨシマサよ、お主の世界にはこのような素晴らしい言葉があるのじゃろう。――すべては秘書がやったことだ」

 ニヤリと外見に似つかわしくない、あくどい笑みを浮かべる邪神様。

 いや、意味わかんないからな。
 用法も使いどころもすべて間違ってるかんな。
 第一、この場面までに色々やらかしちゃってんの、お前自身だろうが。
 何を架空に人物作り上げて、責任押しつけちゃってんの?

「そもそも、わらわから溢れる神々しいオーラを感じ取れん段階でこいつらに存在価値なしじゃ。魔を司る神として、裁きの鉄槌を下してやるのが慈悲というものじゃろう」

 むふふ、と胸を張るセシリア。
 溢れんばかりに外道なダメオーラを漂わせてやがる。さすが邪神。

 けどまあ……OK。
 さっきからこいつが言っていることはさっぱりわからんが、一つだけよくわかった。

 こいつ、最悪だ。

 何が最悪って、まずちっとも謝りやがらねえ。
 妙な理屈付けて煙に巻こうとしてんじゃねえよ、クソガキ。
 とりあえず、床に額を擦り付けて誠心誠意俺に謝れ。

「さて、言いたいことそれだけか? だったら、次はこちらのもてなしを受けてもらおう。最近はこの近辺を通る旅人がめっきりいなくなってな。久しぶりのお客人に、オレたち流のフルコースを味わってもらおうか」

 舌なめずりしながら、ジリジリと近づいてくるリザードマン(ボス)。
 周囲にいた手下のリザードマンたちも、少しずつ包囲を狭めてきているな。
 
 やべ~。
 逃げ場がない。

「のうのう、ヨシマサ。フルコースじゃって! どんなご馳走かのう?」

 バカが俺の服の裾を引っぱってきやがった。
 つか、てめえ、何うれしそうにしてんだ。

「期待しているところ悪いが、俺が思うに投獄、人身売買、奴隷化の転落人生三点盛りってところだと思うぞ」

「なんじゃ、食べ物ではないのか……」

 俺の回答を聞いて、セシリアがしょんぼり落ち込む。
 こいつって、時々ガチで純真無垢になるよな。
 純粋なアホだけど。

「……まあ仕方ないな。さっさと片付けるとするか」

「うむ。そうするのじゃ」

 懐から、『サルでもわかる! レメゲドン』を取り出す。
 狭い室内だ。本当なら『これで完璧! 今日から君もエレメンタルマスター』の方がいいんだがな。
 でも、そっちは生憎、背中のナップザックの中だ。
 さすがに取り出している余裕はない。

「……セシリア、さすがにこの室内でいつもの悪魔さんパワーはまずい。力の調整は任せるぞ」

 ここで全開悪魔さんパワーなんか炸裂させた日には、俺たちもお陀仏だ。
 ……あ、いや、意外としぶとく生き残れるかもしれないが、確実に死ぬほど痛い思いをすることになるだろう。
 それだけは、絶対に避けなければならない。
 だって、痛いの嫌だし。

「ぬふふ。任せておけ。それくらい、朝飯前じゃ」

 言うと同時に、セシリアの腹の虫が盛大に鳴く。
 朝飯前ってそういう意味じゃないからね。
 あとお前、ガッツリ朝飯食っただろうが。

「まあいいや。ともかく任せたからな。――せーの、【悪魔さん、おいでませ】!」

 ポフンッ! (←ば○きんマンみたいなちっさい悪魔さん登場)
 ボッ……! (←手に小さい火の玉を灯し、どこぞの漫画のタイトルのように大きく振りかぶって……)
 ヒュ~……。 (←投げた)
 ポン! (←ボスに当たった。ナイスピッチ! けど……)
 ブスブス……。 (←すぐ消えた……。リザードマンボス、どう反応すべきか困っている様子)
 ポフンッ! (←悪魔さん、なぜか満足げに頷きながら退場)

「「「……………………」」」

 一同、無言。

 なんだろう。
 俺たちに向けられるリザードマンたちの視線が――超痛い……。

「すまん、ヨシマサ……」

 俺たちにとって痛い沈黙の中、それまで決して謝らなかったセシリアが謝ってきた。

「その台詞だけですでに不満と怒りしか覚えんが……何がだ、セシリア」

 極めてやさしい笑顔で、どういうことか聞く。
 さあ、説明するがよろしい。(←般若の面を準備)

「実はな……わらわ、力のコントロールとか、そういう細かいこと――大の苦手じゃった」

 もはや見慣れたと言ってもいい、セシリアの「テヘッ☆」というかわいらしい恥じらいポーズ。

 うん、そうか。
 苦手なら仕方ないよな。誰にだって苦手はあるもんだ。
 それはいい。

 だけどな、セシリア……。

「この肝心なところで、何をしょうもない見栄張ってんだ~!」

「だって、その方がかっこいいじゃろうが! さっきのわらわのセリフ、超決まっておったじゃろうが!」

「グースカ腹の虫を鳴らしてる時点で、まったく決まっとらんわ、ボケ邪神!」

 邪神と魔王の掛け合い名物『醜い争い』、この場面で勃発。
 なお、完全に置いてけぼりのリザードマン一味はポカーン。

 けどまあ、そんなの長く続くはずもなく……。

「おい、てめえら。さっさと捕えて、地下牢にぶちこんどけ」

「「「へい!」」」

 俺とセシリアは、あっさりリザードマン一味に捕まってしまいましたとさ。
 あ、もちろん『サルでもわかる! レメゲドン』やナップザックは没収された。
 なんだろう。もうこれ、笑うしかないな。

 ハッハッハ。アーッハッハッハ!

 フウ……。

 ……………………。

「助けて、お巡りさ~ん!」

 腹から力を入れて、全力で叫ぶ。
 しかし、悲しいかな。
 当然助けなんて来やしなかったとさ。

 ちゃんちゃん!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...