54 / 113
祝☆初購入
しおりを挟む
――とまあ、俺にとって心からうれしくない会話をしている内にヴァーナ公国の街並みも見えてきたわけで……。
市場街に着いた俺たちは、とりあえず顔なじみの連中に帰還報告をしていく。
と同時に、セシリアは市場街の野郎どもによって神輿に乗せられ、お祭り騒ぎが勃発した。
なお、俺はというと野郎どもに文字通り蹴り出された。
なんだ、この扱いの差。納得いかねえ!
――って、おいセシリア! てめえ、今、鼻で笑いやがったな。上等だ、ゴルァ! ちょっと下りてきて俺とタイマンはれや!!
……………………。
……あの、すみません。なぜ男衆全員、私を親の仇のような目で睨んでいらっしゃるので?
え? セシリア様にケンカを売った? 私が? そんな、滅相もない!
え? 調子こいていると
さあさあ、私のことなどお気になさらず、どうぞ皆様、お祭りを続けてください。
……………………。
……フウ。
仕方ねえ。今日のところはこれくらいで許してやらぁ。
命拾いしたな、クソ邪神。(←放送禁止的なポーズ)
よし、スッキリした。
……あん? プライドはないのか?
なんだそれ、食えるのか?
と、こんなところで俺はそそくさと退散。
この様子じゃあ、セシリアは当分解放されそうにないからな。
盛り上がっている市場街を突っ切って、一人で騎士団の詰め所に向かう。
「御触れのリザードマン一味を退治してきた。これがその証拠だ」
詰め所の受付で例の旗を見せると、特に審査や何やらもなく、一筆名前を書いただけですぐに賞金をもらうことができた。
様子から察するに、騎士団の斥候がリザードマン一味や俺たちの動向を把握していたようだ。
お仕事熱心なようで助かるね。おかげで、説明の手間も省けたわ。
ともあれ、これで金は手に入った。
次に行くべきところは……。
「あの厳つい筋肉主人がいる本屋じゃのう」
「ぱおーんっ!」
唐突に現れたセシリアに、思わず象のような声で驚いてしまった。
こいつ、忍者か。
いつからここにいたんだ。
「ん? つい今しがたじゃが」
「さよか。てか、市場街のお祭り騒ぎの方はどうしたんだ?」
「ひとしきり祀り上げられて満足したのでな。解散させた」
言葉通り、ご満悦といった様子のセシリア。
よく見れば、無茶苦茶顔の色つやが良くなっていやがるな。
リザードマン一味の時もそうだが、こいつは本当に持ち上げられるの大好きだな。
性格が悪いったらありゃしない。
見た目ガキなくせに、中身は完全に悪徳強欲女王様だ。
「なんじゃい! せっかくお主にもお供え物をわけてやろうと思って、わざわざ持って来てやったというのに……。お主がそういう態度を取るのなら、全部一人で食ってやる!」
「ああ、愛しのセシリア。君の帰りを今か今かと待ちわびていたよ。君がいなければ、俺の存在価値などミジンコ以下さ!」
「フンッ! 最初から素直にそう言えばいいのじゃ」
俺の言葉にコロッと態度を変え、これまたものごっつう満足気に扁平な胸を張るセシリア。
が、我慢だ、俺……(プルプル)。
市場の野郎どものはしゃぎ様から見て、今日のお供え物は超ハイスペックに違いない。
それを食うまで、こいつを始末するのは我慢だ。
忍耐を見せる時だぞ、俺!
「まあ、そのことは置いておいて、さっさと行くのじゃ。あんまりのんびりしておると、店が閉まってしまうぞ」
「ああ、そうだな。――よし、行くか!」
賞金が入った袋を握りしめ、富裕層の中心区画へと歩みを進める。
店に辿り着くと、ブラム氏の若干驚いた顔が俺たちを迎えた。
「お前たちか。まさか、本当に一週間以内に来るとは思わなかったぞ」
「約束したからな。金は揃えてきたぜ」
握りしめていた金貨入りの袋から5000ゴルドを取り出し、会心の笑みを浮かべる。
すると、あの厳ついヤ○ザ顔のブラム氏が肩をすくめて微笑んだ。
つっても、元が怖いんで、笑うとなお怖い感じだが……。正直、頭からバリバリ食われそうだ。
「わかった。では、商談成立だ。本を用意するから、少し待っていろ」
「おう! よろしく頼む」
俺が頷くと、ブラム氏はテキパキと説話集を取り出してきて、梱包を始めた。
ごついガタイからは想像できないくらい、丁寧な手捌きだ。さすが歴戦の本屋。
で、梱包が終わるとブラム氏は……、
「待たせたな。大事にしてやってくれ。――それと、この物語たちをたくさんの人に届けてやってくれ、市場街の語り手」
と言いながら、本を俺に手渡してくれた。
どうやらこの人は、俺が何をやっているかすべてお見通しだったようだ。
その上で、俺のことを応援してくれた。
広い目で見れば、この人の商売の邪魔をしていると捉えられなくもない、俺の活動を……。
なんだ。
やっぱりこの人も、本が――物語が好きなんだ。
そして、それがたくさんの人に届くのがうれしいんだ。
そう思うと、俺の顔からも自然と笑みがこぼれた。
「サンキュー、ブラムさん。俺、この本の物語を多くの人に伝えられるように頑張るよ」
「大儀であったな、主人」
受け取った本を胸に抱き、ブラム氏に礼を言いながら店を出る。
こうして、俺の夢の第一歩は4冊の本という形で確かに刻まれたのだった。
市場街に着いた俺たちは、とりあえず顔なじみの連中に帰還報告をしていく。
と同時に、セシリアは市場街の野郎どもによって神輿に乗せられ、お祭り騒ぎが勃発した。
なお、俺はというと野郎どもに文字通り蹴り出された。
なんだ、この扱いの差。納得いかねえ!
――って、おいセシリア! てめえ、今、鼻で笑いやがったな。上等だ、ゴルァ! ちょっと下りてきて俺とタイマンはれや!!
……………………。
……あの、すみません。なぜ男衆全員、私を親の仇のような目で睨んでいらっしゃるので?
え? セシリア様にケンカを売った? 私が? そんな、滅相もない!
え? 調子こいていると
さあさあ、私のことなどお気になさらず、どうぞ皆様、お祭りを続けてください。
……………………。
……フウ。
仕方ねえ。今日のところはこれくらいで許してやらぁ。
命拾いしたな、クソ邪神。(←放送禁止的なポーズ)
よし、スッキリした。
……あん? プライドはないのか?
なんだそれ、食えるのか?
と、こんなところで俺はそそくさと退散。
この様子じゃあ、セシリアは当分解放されそうにないからな。
盛り上がっている市場街を突っ切って、一人で騎士団の詰め所に向かう。
「御触れのリザードマン一味を退治してきた。これがその証拠だ」
詰め所の受付で例の旗を見せると、特に審査や何やらもなく、一筆名前を書いただけですぐに賞金をもらうことができた。
様子から察するに、騎士団の斥候がリザードマン一味や俺たちの動向を把握していたようだ。
お仕事熱心なようで助かるね。おかげで、説明の手間も省けたわ。
ともあれ、これで金は手に入った。
次に行くべきところは……。
「あの厳つい筋肉主人がいる本屋じゃのう」
「ぱおーんっ!」
唐突に現れたセシリアに、思わず象のような声で驚いてしまった。
こいつ、忍者か。
いつからここにいたんだ。
「ん? つい今しがたじゃが」
「さよか。てか、市場街のお祭り騒ぎの方はどうしたんだ?」
「ひとしきり祀り上げられて満足したのでな。解散させた」
言葉通り、ご満悦といった様子のセシリア。
よく見れば、無茶苦茶顔の色つやが良くなっていやがるな。
リザードマン一味の時もそうだが、こいつは本当に持ち上げられるの大好きだな。
性格が悪いったらありゃしない。
見た目ガキなくせに、中身は完全に悪徳強欲女王様だ。
「なんじゃい! せっかくお主にもお供え物をわけてやろうと思って、わざわざ持って来てやったというのに……。お主がそういう態度を取るのなら、全部一人で食ってやる!」
「ああ、愛しのセシリア。君の帰りを今か今かと待ちわびていたよ。君がいなければ、俺の存在価値などミジンコ以下さ!」
「フンッ! 最初から素直にそう言えばいいのじゃ」
俺の言葉にコロッと態度を変え、これまたものごっつう満足気に扁平な胸を張るセシリア。
が、我慢だ、俺……(プルプル)。
市場の野郎どものはしゃぎ様から見て、今日のお供え物は超ハイスペックに違いない。
それを食うまで、こいつを始末するのは我慢だ。
忍耐を見せる時だぞ、俺!
「まあ、そのことは置いておいて、さっさと行くのじゃ。あんまりのんびりしておると、店が閉まってしまうぞ」
「ああ、そうだな。――よし、行くか!」
賞金が入った袋を握りしめ、富裕層の中心区画へと歩みを進める。
店に辿り着くと、ブラム氏の若干驚いた顔が俺たちを迎えた。
「お前たちか。まさか、本当に一週間以内に来るとは思わなかったぞ」
「約束したからな。金は揃えてきたぜ」
握りしめていた金貨入りの袋から5000ゴルドを取り出し、会心の笑みを浮かべる。
すると、あの厳ついヤ○ザ顔のブラム氏が肩をすくめて微笑んだ。
つっても、元が怖いんで、笑うとなお怖い感じだが……。正直、頭からバリバリ食われそうだ。
「わかった。では、商談成立だ。本を用意するから、少し待っていろ」
「おう! よろしく頼む」
俺が頷くと、ブラム氏はテキパキと説話集を取り出してきて、梱包を始めた。
ごついガタイからは想像できないくらい、丁寧な手捌きだ。さすが歴戦の本屋。
で、梱包が終わるとブラム氏は……、
「待たせたな。大事にしてやってくれ。――それと、この物語たちをたくさんの人に届けてやってくれ、市場街の語り手」
と言いながら、本を俺に手渡してくれた。
どうやらこの人は、俺が何をやっているかすべてお見通しだったようだ。
その上で、俺のことを応援してくれた。
広い目で見れば、この人の商売の邪魔をしていると捉えられなくもない、俺の活動を……。
なんだ。
やっぱりこの人も、本が――物語が好きなんだ。
そして、それがたくさんの人に届くのがうれしいんだ。
そう思うと、俺の顔からも自然と笑みがこぼれた。
「サンキュー、ブラムさん。俺、この本の物語を多くの人に伝えられるように頑張るよ」
「大儀であったな、主人」
受け取った本を胸に抱き、ブラム氏に礼を言いながら店を出る。
こうして、俺の夢の第一歩は4冊の本という形で確かに刻まれたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
58
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる