残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
54 / 113

祝☆初購入

しおりを挟む
 ――とまあ、俺にとって心からうれしくない会話をしている内にヴァーナ公国の街並みも見えてきたわけで……。
 
 市場街に着いた俺たちは、とりあえず顔なじみの連中に帰還報告をしていく。
 と同時に、セシリアは市場街の野郎どもによって神輿に乗せられ、お祭り騒ぎが勃発した。
 なお、俺はというと野郎どもに文字通り蹴り出された。
 なんだ、この扱いの差。納得いかねえ!

 ――って、おいセシリア! てめえ、今、鼻で笑いやがったな。上等だ、ゴルァ! ちょっと下りてきて俺とタイマンはれや!!

 ……………………。

 ……あの、すみません。なぜ男衆全員、私を親の仇のような目で睨んでいらっしゃるので?
 え? セシリア様にケンカを売った? 私が? そんな、滅相もない!
 え? 調子こいていると
 さあさあ、私のことなどお気になさらず、どうぞ皆様、お祭りを続けてください。
 
 ……………………。

 ……フウ。
 仕方ねえ。今日のところはこれくらいで許してやらぁ。
 命拾いしたな、クソ邪神。(←放送禁止的なポーズ)

 よし、スッキリした。
 ……あん? プライドはないのか?
 なんだそれ、食えるのか?

 と、こんなところで俺はそそくさと退散。
 この様子じゃあ、セシリアは当分解放されそうにないからな。
 盛り上がっている市場街を突っ切って、一人で騎士団の詰め所に向かう。

「御触れのリザードマン一味を退治してきた。これがその証拠だ」

 詰め所の受付で例の旗を見せると、特に審査や何やらもなく、一筆名前を書いただけですぐに賞金をもらうことができた。
 様子から察するに、騎士団の斥候がリザードマン一味や俺たちの動向を把握していたようだ。
 お仕事熱心なようで助かるね。おかげで、説明の手間も省けたわ。

 ともあれ、これで金は手に入った。
 次に行くべきところは……。

「あの厳つい筋肉主人がいる本屋じゃのう」

「ぱおーんっ!」

 唐突に現れたセシリアに、思わず象のような声で驚いてしまった。
 こいつ、忍者か。
 いつからここにいたんだ。

「ん? つい今しがたじゃが」

「さよか。てか、市場街のお祭り騒ぎの方はどうしたんだ?」

「ひとしきり祀り上げられて満足したのでな。解散させた」

 言葉通り、ご満悦といった様子のセシリア。
 よく見れば、無茶苦茶顔の色つやが良くなっていやがるな。
 リザードマン一味の時もそうだが、こいつは本当に持ち上げられるの大好きだな。
 性格が悪いったらありゃしない。
 見た目ガキなくせに、中身は完全に悪徳強欲女王様だ。

「なんじゃい! せっかくお主にもお供え物をわけてやろうと思って、わざわざ持って来てやったというのに……。お主がそういう態度を取るのなら、全部一人で食ってやる!」

「ああ、愛しのセシリア。君の帰りを今か今かと待ちわびていたよ。君がいなければ、俺の存在価値などミジンコ以下さ!」

「フンッ! 最初から素直にそう言えばいいのじゃ」

 俺の言葉にコロッと態度を変え、これまたものごっつう満足気に扁平な胸を張るセシリア。
 が、我慢だ、俺……(プルプル)。
 市場の野郎どものはしゃぎ様から見て、今日のお供え物は超ハイスペックに違いない。
 それを食うまで、こいつを始末するのは我慢だ。
 忍耐を見せる時だぞ、俺!

「まあ、そのことは置いておいて、さっさと行くのじゃ。あんまりのんびりしておると、店が閉まってしまうぞ」

「ああ、そうだな。――よし、行くか!」

 賞金が入った袋を握りしめ、富裕層の中心区画へと歩みを進める。
 店に辿り着くと、ブラム氏の若干驚いた顔が俺たちを迎えた。

「お前たちか。まさか、本当に一週間以内に来るとは思わなかったぞ」

「約束したからな。金は揃えてきたぜ」

 握りしめていた金貨入りの袋から5000ゴルドを取り出し、会心の笑みを浮かべる。
 すると、あの厳ついヤ○ザ顔のブラム氏が肩をすくめて微笑んだ。
 つっても、元が怖いんで、笑うとなお怖い感じだが……。正直、頭からバリバリ食われそうだ。

「わかった。では、商談成立だ。本を用意するから、少し待っていろ」

「おう! よろしく頼む」

 俺が頷くと、ブラム氏はテキパキと説話集を取り出してきて、梱包を始めた。
 ごついガタイからは想像できないくらい、丁寧な手捌きだ。さすが歴戦の本屋。
 で、梱包が終わるとブラム氏は……、

「待たせたな。大事にしてやってくれ。――それと、この物語たちをたくさんの人に届けてやってくれ、市場街の語り手」

 と言いながら、本を俺に手渡してくれた。
 どうやらこの人は、俺が何をやっているかすべてお見通しだったようだ。
 その上で、俺のことを応援してくれた。
 広い目で見れば、この人の商売の邪魔をしていると捉えられなくもない、俺の活動を……。
 
 なんだ。
 やっぱりこの人も、本が――物語が好きなんだ。
 そして、それがたくさんの人に届くのがうれしいんだ。

 そう思うと、俺の顔からも自然と笑みがこぼれた。

「サンキュー、ブラムさん。俺、この本の物語を多くの人に伝えられるように頑張るよ」

「大儀であったな、主人」

 受け取った本を胸に抱き、ブラム氏に礼を言いながら店を出る。
 こうして、俺の夢の第一歩は4冊の本という形で確かに刻まれたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...