58 / 113
敵(勇者)の敵(ポンコツ邪神)はやっぱり敵だった。
しおりを挟む
「マカロフ様、ここは僕に免じて矛をお納めいただけませんか」
「むぅ……。勇者殿がそう言うのであれば、仕方あるまい。今回は見逃してやるとしよう」
朗らかな笑みを浮かべ、四男坊を説得してくれる勇者アルフレッド。
市場街での騒動は、こいつの登場によって急速に終結の方向へと向かっていった。
警備兵たちは、『無駄な仕事をしないですんだ』と言わんばかりに自分の持ち場へ戻っていく。
四男坊と取り巻き達も、自分の巣――じゃない! 国の中心区画の方へと戻っていった。
あとに残ったのは、勇者、俺、気絶したセシリア、そして黄色い歓声を上げ続ける町の娘たちだった。
「ハッ! ここは……」
「おう。起きたか、セシリア」
どうも周りの騒がしさに目を覚ましてしまったらしい。
あと少し気絶していれば、幸せだったものを……。
当然、それに気づいて寄ってくる男が一人……。
「セシリア、気が付いたんだね。よかったよ。もしかして体調がすぐれなかったりするのかな?」
まるで姪っ子にでも声を掛けるように、フランクで優しく問いかける勇者。
こいつ、自分が気絶の原因だとは、夢にも思っていないんだろうな。
セシリアも早速また気絶しかかっているし、ここは仕方ない。
パートナーとして助けてやるか。
「ああ、実はそうなんだ。こいつ、朝から腹の調子を悪くしていてな。すまないが、そっとしておいてくれないか」
「ああ、そうなのか。で、ええと、君は……」
突然割り込んできた俺に、勇者が困惑気味の笑顔を見せる。
ああ、そういや名乗ってなかったな。
「俺はヨシマサ。なんつうか、まあ、セシリアの旅の連れみたいなもんだ」
「セシリアの連れ……。ということは、そうか。君が次の……」
ハッとした様子で勇者が俺を見る。
新しい魔王だということはあえて言わないでおいたのだが、勘付かれたようだ。
まずいな、これ。
俺、リアルに命の危機ですよ。
かくなる上は、このロリ邪神を囮にして……。
「まあ、それはいいや。僕はアルフレッド。どうぞよろしく!」
キラリと白い歯を見せ、俺に向かって右手を差し出す勇者。
ふう……。なんか知らんが、命の危機は脱したらしい。
とりあえず安心し、勇者の手を取る。
――だが、これが巧妙な罠だった。
「クッ! なんだ、この手から伝わってくるいい人オーラは!」
勇者の手を握った瞬間、ヤツから溢れ出たいい人オーラが俺を襲う。
チッ!
あまりのいい人オーラに、セシリアを囮にしようとした自分の心の汚さに苛まれてしまいそうだ。
これがリアル○神兵と呼ばれた勇者の力か!
「安心するのじゃ、ヨシマサよ!」
「セ……、セシリア……」
勇者に屈しかけた俺の名を、セシリアが支えるように呼ぶ。
ふと傍らを見れば、勇者の前だというのに両のこぶしを握り締め、気丈に俺を見上げるセシリアの姿が目に入った。
ガクガク震えつつも、その目は労わりと励ましの色で満ちている。
そう。それはまるで、俺と一緒に戦ってくれているかのように……。
そうか。
お前、俺を奮い立たせようとそんなにも必死に頑張って……。
泣かせるじゃねえか、ちくしょう。
お前はやっぱり、最高のパートナーだぜ!
「お主は魔王なのじゃ。つまり、勇者とは対極をなす存在。むしろ、お主くらい心がギトギトに汚れておった方が、釣り合いが取れるというものじゃ。だから、何も恥じることはないぞ。ヤツのいい人オーラに負けぬ、いつもの陰湿卑怯な小悪党オーラを見せてやれ!」
「うん。お前、もうちょっと黙ってろや」
やっぱりこいつは最悪のパートナーだった。
てか、お前どっちの味方だよ。
何を勇者に便乗して、助けに来た俺にダメージ与えに来てんだ、ゴルァ!
せっかく今日は、お前のためにゴージャスなメシにしてやろうと思っていたのに!
「うむ、よいな。苦しゅうないぞ。存分に振る舞うがよい」
「誰が振る舞ってやるか。そこらの雑草でも食ってろ、クソ邪神。てか、そんなに勇者が好きなら、こいつらのパーティーにでも加えてもらえ!」
「恐ろしいことを言うでないわ、このボケナスが! そんなことしたら、わらわ、3日で死んでしまうじゃろうが!!」
宿敵である勇者を前にしても、変わらず仲間割れをする俺たち。
これぞ、邪神&魔王クオリティ。
こんなんだから、勇者に勝てないんだろうな。
ちなみに、当の勇者アルフレッド様はというと……。
「ハハハ。どうやらセシリアも元気になったようだね。素敵な仲間にも恵まれたようで何よりだ」
取っ組み合いを始めた俺たちを微笑ましそうに眺め、こんなことを申しておった。
大らかというか何というか……。
こいつはこいつで、俺たちとは別ベクトルのバカなんじゃないだろうか。
「むぅ……。勇者殿がそう言うのであれば、仕方あるまい。今回は見逃してやるとしよう」
朗らかな笑みを浮かべ、四男坊を説得してくれる勇者アルフレッド。
市場街での騒動は、こいつの登場によって急速に終結の方向へと向かっていった。
警備兵たちは、『無駄な仕事をしないですんだ』と言わんばかりに自分の持ち場へ戻っていく。
四男坊と取り巻き達も、自分の巣――じゃない! 国の中心区画の方へと戻っていった。
あとに残ったのは、勇者、俺、気絶したセシリア、そして黄色い歓声を上げ続ける町の娘たちだった。
「ハッ! ここは……」
「おう。起きたか、セシリア」
どうも周りの騒がしさに目を覚ましてしまったらしい。
あと少し気絶していれば、幸せだったものを……。
当然、それに気づいて寄ってくる男が一人……。
「セシリア、気が付いたんだね。よかったよ。もしかして体調がすぐれなかったりするのかな?」
まるで姪っ子にでも声を掛けるように、フランクで優しく問いかける勇者。
こいつ、自分が気絶の原因だとは、夢にも思っていないんだろうな。
セシリアも早速また気絶しかかっているし、ここは仕方ない。
パートナーとして助けてやるか。
「ああ、実はそうなんだ。こいつ、朝から腹の調子を悪くしていてな。すまないが、そっとしておいてくれないか」
「ああ、そうなのか。で、ええと、君は……」
突然割り込んできた俺に、勇者が困惑気味の笑顔を見せる。
ああ、そういや名乗ってなかったな。
「俺はヨシマサ。なんつうか、まあ、セシリアの旅の連れみたいなもんだ」
「セシリアの連れ……。ということは、そうか。君が次の……」
ハッとした様子で勇者が俺を見る。
新しい魔王だということはあえて言わないでおいたのだが、勘付かれたようだ。
まずいな、これ。
俺、リアルに命の危機ですよ。
かくなる上は、このロリ邪神を囮にして……。
「まあ、それはいいや。僕はアルフレッド。どうぞよろしく!」
キラリと白い歯を見せ、俺に向かって右手を差し出す勇者。
ふう……。なんか知らんが、命の危機は脱したらしい。
とりあえず安心し、勇者の手を取る。
――だが、これが巧妙な罠だった。
「クッ! なんだ、この手から伝わってくるいい人オーラは!」
勇者の手を握った瞬間、ヤツから溢れ出たいい人オーラが俺を襲う。
チッ!
あまりのいい人オーラに、セシリアを囮にしようとした自分の心の汚さに苛まれてしまいそうだ。
これがリアル○神兵と呼ばれた勇者の力か!
「安心するのじゃ、ヨシマサよ!」
「セ……、セシリア……」
勇者に屈しかけた俺の名を、セシリアが支えるように呼ぶ。
ふと傍らを見れば、勇者の前だというのに両のこぶしを握り締め、気丈に俺を見上げるセシリアの姿が目に入った。
ガクガク震えつつも、その目は労わりと励ましの色で満ちている。
そう。それはまるで、俺と一緒に戦ってくれているかのように……。
そうか。
お前、俺を奮い立たせようとそんなにも必死に頑張って……。
泣かせるじゃねえか、ちくしょう。
お前はやっぱり、最高のパートナーだぜ!
「お主は魔王なのじゃ。つまり、勇者とは対極をなす存在。むしろ、お主くらい心がギトギトに汚れておった方が、釣り合いが取れるというものじゃ。だから、何も恥じることはないぞ。ヤツのいい人オーラに負けぬ、いつもの陰湿卑怯な小悪党オーラを見せてやれ!」
「うん。お前、もうちょっと黙ってろや」
やっぱりこいつは最悪のパートナーだった。
てか、お前どっちの味方だよ。
何を勇者に便乗して、助けに来た俺にダメージ与えに来てんだ、ゴルァ!
せっかく今日は、お前のためにゴージャスなメシにしてやろうと思っていたのに!
「うむ、よいな。苦しゅうないぞ。存分に振る舞うがよい」
「誰が振る舞ってやるか。そこらの雑草でも食ってろ、クソ邪神。てか、そんなに勇者が好きなら、こいつらのパーティーにでも加えてもらえ!」
「恐ろしいことを言うでないわ、このボケナスが! そんなことしたら、わらわ、3日で死んでしまうじゃろうが!!」
宿敵である勇者を前にしても、変わらず仲間割れをする俺たち。
これぞ、邪神&魔王クオリティ。
こんなんだから、勇者に勝てないんだろうな。
ちなみに、当の勇者アルフレッド様はというと……。
「ハハハ。どうやらセシリアも元気になったようだね。素敵な仲間にも恵まれたようで何よりだ」
取っ組み合いを始めた俺たちを微笑ましそうに眺め、こんなことを申しておった。
大らかというか何というか……。
こいつはこいつで、俺たちとは別ベクトルのバカなんじゃないだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる