残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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過去最高の興行

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「――おっと、そろそろ仲間と合流しないといけないな。ヨシマサ、セシリア、ぼくもそろそろお暇するよ」

「おうおう! さっさと行ってしまえ!」

 勇者にあっかんベーするセシリア。
 喧嘩のテンションと勇者と同じ空気を吸い過ぎたことによる感覚麻痺で、一時的にトラウマを乗り越えたらしい。
 おかげで地が出て、ものすごい強気だ。

「あはは。随分嫌われてしまったね。まあ、無理もないか」

 少し寂しそうに微笑む勇者。
 ここまで言われても怒らないのか、こいつ。大したもんだ。さすがは勇者。
 俺だったら即キレて全面戦争だが。

 と、そこで勇者が名案でも思いついたように、手をポンッと打った。

「そうだ。ここで会えたのも何かの縁。せっかくだから、今晩一緒に食事でもどうかな? 君たちがどんな旅をしてきたのかも興味あるし」

「ハン! なんで勇者なんぞとメシを食わねばならんのじゃ。おことわ――」

「乗った!」

「――りじゃ……なんじゃと!!」

 セシリアが信じられないようなものを見る目で俺を見る。
 
 フフフ。
 甘いぞ、セシリア。
 確かに勇者と一緒にメシなんぞ、俺だって嫌だ。
 何を好き好んでこんなイケメンとメシを食わんといけないのだ、って感じだ。顔が良い男に用はない。

 ――だがな……俺の目下の敵はお前だ、セシリア!

 先程の非道な仕打ち、忘れたとは言わさん。
 貴様に嫌がらせするためなら、俺はイケメンとメシに行くことさえ厭わない!
 
「くっ! こんな時に無駄な覚悟を固めおって。この裏切り者が!」

「フハハ! なんとでも言うがよい! だが、決まったものは決まったもの。貴様には、勇者との会食を楽しんでもらうぞ」

「キーッ!! ヨシマサの分際で調子に乗りおって! ブサイク! 童貞! 脳筋専門ホモ野郎!」

「誰がホモ野郎だ! 俺は道行く女性のバストサイズを常に計測しているくらい、純度100%のノーマルだ!」

 余計なことを口走りながら、セシリアとの取っ組み合い第2ラウンドを開始する俺。
 なお、俺の言葉に勇者目当てで集まっていた女性陣が汚物を見る目をして三歩ほど引いたが、気にしないことにした。
 ああ、心の汗が目に染みるぜ!
 俺の口よ、お前はどうしてそうも正直なのだ。

 あと、勇者は「それじゃあ、夕方に迎えに来るから」と言って、爽やかに颯爽と去っていった。
 立ち去るだけでも無駄に絵になるな、あの爽やかイケメンは。
 本当にいけ好かないヤツだ。

「隙ありじゃ! くらえ!」

「ぬおっ!」

 去っていく勇者を目の端に捉えていたら、セシリアがチャンスとばかりに股間へ向かって蹴りを繰り出してきやがった。
 このクソガキ、美少女キャラを崩壊させて、何て恐ろしい攻撃をしてくるんだ。
 見ろ! 見物していた野郎どもが、一斉に股間を押さえて顔を青くしてるじゃないか!
 第一、俺のが使い物にならなくなったらどうすんだ!

「その時は世の中平和になって万々歳じゃろうが! それにどうせ使う機会なんて一生来やせんのじゃから、大人しく潰させろ!」

「貴様、チェリーボーイの夢を砕くようなことを次々に言いおって! 今日という今日は許さん!」

 執拗に股間を狙ってくるセシリアをいなし、カウンターでジャイアントスイングを仕掛ける。
 しかし、俺の意図に気付いたセシリアは異次元収納空間から釘バッドを取り出して地面に突き立て、回転を抑えてきた。
 同時に俺の拘束から抜け出し、セシリアがバッドを振り被る。
 だが、俺だって黙っちゃいない。懐から市場で買った水鉄砲(竹製の注射器っぽいやつ。中身は香辛料を溶かした水)を取り出し、一気に吹き付ける。
 セシリアが慌てたところで釘バッドを奪い、形勢逆転だ。
 
「ぬう! 飛び道具を使うとは卑怯な!」

「改造エアガン使ってくるやつに言われたかねえ!」  

 次々と攻守が入れ替わる、息もつかせぬ攻防戦。
 何でもありの異種格闘技戦に湧く観客たち。

 俺とセシリアの大喧嘩は、勇者が再び戻ってきて、止めに入るまで続いたのだった。(ちなみに、今回の喧嘩で得たおひねりは、この国に来て以来最高の600ゴルドだった)
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