残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
76 / 113

祭りだ!

しおりを挟む
 ユーリとクレアに約束を取り付けた俺たちは、約束の時間になるまで万桜号の中でのんびりと待っていた。
 あ~、何もせずにのんべんだらんと過ごす時間。正に至福の時~。

 なんてナマケモノのようにゴロゴロしていること、二時間程。日が傾いてきたなと思っていたら、突然街の中が騒がしくなり始めた。
 気になってセシリアと外に出てみたら、なんと市場街はお祭り騒ぎに包まれていた。
 というか、今正にお祭りが始まろうとしていた。

 忙しそうに行きかう連中の口から漏れているのは「勇者様」という言葉。
 つまりこれは、あのイケメン勇者の差し金か。
 あいつ、一体何考えてんだ。 

「やい、アルフレッド。これはどういうことだ!」

 速攻で勇者(with シェフィルさん&フレアちゃん)と合流し、何でこんなことになっているのかを問い詰める。
 すると勇者は苦笑を浮かべながら、こんなことになった経緯を話し始めた。

「いや、それが……お詫びを兼ねて君たちとごはんを食べに行くってヴァーナ公に話したら、『自分も街の者たちにお詫びがしたい』って言い出してね」

「あの人、思い立ったら即行動な人だから……」

 勇者の後を受けるように、フレアちゃんが嘆息交じりに言う。
 勇者の後ろで糸を引いていたのは、ヴァーナ公ってわけか。
 なんと言うか、ホントすげえ人だな、ヴァーナ公。……いろんな意味で。

「でもさ、詫びがしたいって言うのはわかるが、即日祭りにしなくてもいいだろうが。街の連中も、いろいろ大変だろうに……」

「そう言うなよ、ヨシマサ。これ、ある意味、君たちのためなんだから」

「は? どういうことだよ」

 この祭りはヴァーナ公から市場街の連中へのお詫びの印なんだろう。
 俺たち関係ないじゃん。

 と思っていたら、勇者が「実は……」とこうつけ加えた。 

「君たちが明日旅立つって伝えたら、ヴァーナ公が『それはいかん! 今日中に祭りをするぞ!!』って言い出してね。それを街のみんなに伝えたら、みんなもそれに乗っかったんだよ。『あいつらの門出を盛大に祝ってやろう!』ってね」

「街の人たちもヴァーナ公も、あなた方に感謝しているってことですよ、ヨシマサさん。マカロフの横暴に真正面から逆らって、子供たちを助けた。横暴な権力には決して屈しないという気高い姿を、あなた方は街に人たちに示したのです。お二人は今や、この国の影を払うのに一役買った英雄なのですよ」

「シェフィルさん……」

 微笑むシェフィルさんを見て、思わず照れてしまった。

 へっ!
 なんだよ、英雄って。
 こちとら、泣く子も黙るアホの代名詞、魔王様だぞ。
 どちらかと言えば、あのブタ野郎以上の大悪党だっての。

 なのに……なんだよ、これ。
 街の連中が俺たちのために用意してくれたなんて……すげえうれしいじゃねえか!

「で、どうする、ヨシマサ。一応、高級ディナーの用意もできているんだけど……」

 勇者が試すように問いかけてくる。
 対する俺の答えは、当然決まっていた。

「悪いな、アルフレッド。高級なディナーはキャンセルだ。せっかくの祭り、堅苦しいレストランに引きこもっていたら損ってもんだ。みんなで楽しもうや!」

「あ、せっかく用意してくれたのなら、お土産用に包んでくれても構わないぞ。そしたら、旅の道中に食べるのじゃ」

 横から顔を出したセシリアが、すかさず付け加える。
 てめえ、せっかく俺がバシッと決めたのに、水を差すんじゃねえよ。
 かっこ悪いことこの上ないだろうが!

「なんじゃい、お主はいらんと申すのか。――では勇者よ、包むのはわらわの分だけでよいぞ。こやつはいらんようなのでな」

「ふざけんな! てめえだけいい思いしようとしてんじゃねえ!?」

 勇者たちそっちのけで喧嘩を始める俺とセシリア。
 そんな俺たちを、「はいはい、喧嘩しない。二人分お弁当にしてもらうからさ。もちろんデザート付で」と勇者が実にイケメンな配慮で仲裁する。

 フッ!
 さすがは我が終生のライバル、勇者アルフレッド。
 見事な采配だ。
 では、遠慮なくいただくとしよう。
 ごっそさんです! マジでありがとうございまーす!!

 とまあ、そんなわけで俺たちは流れでユーリやクレアとも合流。
 すでにバカ騒ぎが始まっている市場街の中へと飛び込んだ。

 今回はヴァーナ公がパトロンとなっていることもあって、飲み食いは基本的にタダでできる。
 おかげで色んなところで食べ比べや飲み比べ、果てには大食い大会なんてものまで開かれていた。

 ちなみに、俺たち一行はどこへ行っても大人気。
 女の子たちから握手を求められるわ、プレゼントを渡されるわで人の輪が絶えない。
 フフフ♪
 いや~、人気者はつらいね~。
 近くにこんなたくさんの女の子がいるなんて、これぞうわさに聞いた桃源郷か!

「まあ、全部勇者中心の輪じゃけどな。フレアとシェフィルも女子どもの牽制で忙しいようじゃし……。お主、思いっきりハブられとるな。完全に蚊帳の外じゃ」

 フフフ……。
 悔しくない、悔しくないやい!!
 うっ……! ううう……。(←恥も外聞もなく号泣)

「ヨシマサ~! そんな端っこにいないで、こっちにおいでよ」

「勝者の余裕か、コンチクショーッ!?」

 手招きする勇者に、血の涙を流しながらせめてもの抵抗を見せる。

 ちょっとちやほやされるからって、いい気になりやがって。
 ちくしょう!
 やっぱ俺、あいつのこと嫌いだ。

 あ、お嬢さん方、勇者に噛みついたからって、そんな視線で睨まないで。そんな『クズが。端っこで大人しくしてろ』的な視線で……。
 俺、そろそろ立ち直れなくなりそうだから。立ち直れなくなって、そのまま何かに目覚めちゃいそうだから。
 てか、シェフィルさん曰く、俺ってこの町の英雄なんだよね。
 何、この扱い。いじめ? いじめなのか?
 女の子限定で俺の好感度、相変わらず低空飛行どころか海抜0mなんだけど。

「どしたの、ヨシマサ。変な顔して」

「はい、これ。おいしいよ」

 傷心に沈む俺に、ユーリとクレアが骨付きチキンを渡してくれる。
 お前ら、マジ最高だ。大好きだぞ、このやろう!

 と、浮き沈み激しく祭りを堪能し……気が付けば日付も変わり、宴もたけなわ。祭りはヴァーナ公の挨拶を持って解散となった。
 勇者パーティーと別れた俺たちも、ユーリとクレアを家に送り届け、万桜号に戻る。

 ヴァーナ公国で過ごす、最後の夜。
 思えば色んなことがあったもんだ。
 商工ギルドで受付嬢をナンパしたら強面のお兄さんたちと戯れることになり……。
 本を買うためにリザードマンの根城へ乗り込み……。
 戻ってきたら、セシリア万歳な方々に消されそうになり……。
 妙なブタ野郎と金魚のフンに絡まれたり……。
 勇者と出会って、ヤツのモテモテぶりを見せつけられたり……。
 ……………………。
 ……あれ? いい思い出が一向に出てこない……。
 い、いや、そんなことはないはずだ! いいことだって、たくさんあったはず……!
 俺は必死にこの国での記憶を一つ一つ思い出しながら、眠りについたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...