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前魔王登場!
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「おー、見えてきたな。あれが前魔王がいる村か。確かウルス村だっけか?」
万桜号のフロントガラスの先にちょこんと小さく見える村を見つけ、隣に座るセシリアに声を掛ける。
シェリルと別れて南へ向かうこと一カ月。
途中、懐かしのヴァン王国に立ち寄ったりして遅くなったが、ようやく目的地に到着だ。(一週間くらい滞在して、路銀を稼いでいた。相変わらず、あの国はよく稼げるぜ!)
「うむ、そうじゃ。数カ月ぶりに戻ってきたが、なんも変わらんのう。――あ、ちなみにあの村は勇者の生まれ故郷でもあるぞ」
「うわ~、そうなのか~」
テンションがダダ下がった。
いや、別にいいんだけどね。
今や俺と勇者はマブダチみたいなもんだし。
ただこう、どうにもあの勇者を育てた土壌というのは肌に合わん気がしてならん。
なんだか土地そのものが、リア充オーラでキラキラと輝いていそうだ。もしくは巨○兵クラスが跋扈する魔窟。
「そんなけったいな土地じゃないから安心せい。ごくごく平凡かつ平和な村じゃ。村人たちも巨○兵じゃないぞ。精々、某進撃してくる巨人クラスがウヨウヨしているだけじゃ。毎年この時期には、村の男たちが上級龍種であるファイアドラゴンを狩りに行く祭もやっておる」
「よし、里帰りを満喫したな。では、帰ろうか」
「こら待て、どこへ行く」
ハンドルを右に切って、回れ右――しようとしたらセシリアに止められた。
止めてくれるな、セシリアよ。
せっかくダンジョンから生還したのに、またモンスターの巣のようなところへなど行きたくないのだ。
というか確実にそれ、祭に巻き込まれるフラグだろ! ファイアドラゴン狩りに行くフラグだろう!
ぶっちゃけ『お前×あの村=トラブルのにおい』としか思えないんだよ!?
「まあまあ、落ち着け。お主、わらわの話をよく聞いておったか?」
「勇者もどきの化け物クラスごっそりな鬼ヶ島だというのは聞いたぞ」
「違う違う。よく聞くのじゃ、ヨシマサよ。あの村は、あのイケメン勇者を生んだ村なのじゃぞ」
「うむ、それがどうした」
「よく考えてみよ。イケメン勇者を生んだ土壌。それはつまり、面の良い連中を量産する土地という……」
「何をしているのだ、セシリア。ちゃんとシートベルトをしないか。舌を噛むぞ」
キリリと劇画調の濃ゆい顔になりつつ、再度方向転換。
いざ行かん。美人の里へ!
俺はまだ見ぬ出会いを求め、意気揚々と車を走らせた。
「……騙された」
車を降り、『村』というには栄えすぎているウルス村に入った俺は怒りに打ち震えた。
いや、美人がいなかったというわけではない。
むしろ美人だらけ。
右を見ても左を見ても、平均値を軽く凌駕する女の子ばかりだ。
さすが世界一のイケメンアイドルを生み出した村。噂に偽りなしだ。
ぶっちゃけ、歩くだけで目の保養になりそうな天国である。
――であるのだが……。
「右を向いても左を向いても勇者だらけじゃねえか、こんちくしょうー!」
村の入り口で怨嗟を叫ぶ。
そう。
俺も勇者の生まれ故郷と聞いた段階で気づくべきだった。
右を向けば、勇者の垂れ幕。左を向けば、勇者の似顔絵ポスター。前を見れば、勇者の等身大銅像。
もう四方八方勇者だらけ。
そして、道行く女の子たちの手に手に勇者マスコットを常備。
ここは完全に勇者のホームグラウンド、勇者の街だったのだ!
「まあ、ここはあいつの生まれ故郷じゃしな。村を上げて勇者で町おこししているような状況じゃ」
「お前、こんな状況の中でよく暮らしてたな」
「ハハハ。……暮らせるわけなかろうが」
聞けばこいつ、村の中に入るとアナフィラキシーを起こすので、以前は村の外れに小屋を建てて住んでいたらしい。
生活必需品なんかは記憶を失った前魔王が村へ買いに行っていたそうだ。
今は落ち着いたとはいえ、『勇者』というワードを聞いただけで失神寸前までなっていたやつだからな。
さもありなん。
「でもさ、だったら何でこんなところに住んでたんだ?」
「仕方なかろう。勇者が勝手に手配してしまったのじゃから。敗軍の将であるわらわたちに選択権などない。それに、当初はアンデルスも記憶喪失直後で生活も困る感じじゃったしな。他に選択肢などなかったよ」
ふむふむ。
こいつもそこそこ苦労していたんだな。
それもこれも全部自業自得だが……。
あと、アンデルスってのは前魔王の名前だ。忘れているかもしれないから、一応な。
「ついでに言うと、あの勇者がわらわたちをこの村に置いたのは、アンデルスとわらわを監視するとともに守る意味合いもあったようじゃな」
万が一魔王が記憶を取り戻しても対処できるように。
逆に魔王を倒して名を上げようとする輩が現れても、返り討ちにできるように。
勇者は、そういうこと含みでセシリアたちをこの村に置いたとのことだった。
まあ確かに、進撃してくる巨人さんレベルの人間がゴロゴロしているところで妙なことはできんわな、お互いに。
「大体分かった。で、監視されている立場でもあるお前は、なんでフラッとこの村を去ったんだ?」
「それはなんというか、聞くも涙、語るも涙の物語がな……」
「手短に頼む」
「あれはお主と出会う二週間前。ちょうどこの村に勇者が凱旋してきてな」
「ほうほう」
「気が付いたらお主を召喚した草原で突っ立ってた」
勇者の気配を察知して、気絶しながら逃げ出したようだ。
てか、ここからあの草原まで車で4~5日かかるんだが……。こいつ、どんだけ無意識のまま走り続けたんだろうか。
「で、せっかく自由の身になったので、バカンス気分でそこらをふらついておったんじゃがのう。いい加減腹も減ってきたので、ついもにょっとなってお主を召喚したというわけじゃ」
「よくわからん動機で人の人生狂わさんでくれ。なんだよ、『もにょっとなって』って」
本当に聞くも涙だよ。
主に俺の扱いが。
――と、俺が自分の不遇に涙を流した時だった。
「セーシーリーア!!」
「ん? ――のわぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
何か竜巻のようなものがつっこんできたかと思うと、セシリアが攫われていた。
え?
何これ?
一体何が起こった?
と、俺が首をひねりかけた瞬間……。
「わぁああああああああああ!」
「ぎゃああああああああああ!」
――ズドーン……。
村の一角で響く悲鳴と壁でもブチ抜いたような破砕音。
人ごみを掻きわけて見に行ってみれば、セシリアと優男風イケメンが飯屋の壁をぶち抜いて目を回していた。
「おいおい、アンデルス。大丈夫か?」
「また盛大にぶち破ったもんだねぇ」
目を回した優男を見て、村人たちが心配そうに声を掛ける。
――って、え?
アンデルス?
「こいつが、前魔王……?」
思わず優男を凝視する。
前魔王と現魔王。
これがその邂逅の瞬間だった。
……どうでもいいが、相変わらず締まらないな。
万桜号のフロントガラスの先にちょこんと小さく見える村を見つけ、隣に座るセシリアに声を掛ける。
シェリルと別れて南へ向かうこと一カ月。
途中、懐かしのヴァン王国に立ち寄ったりして遅くなったが、ようやく目的地に到着だ。(一週間くらい滞在して、路銀を稼いでいた。相変わらず、あの国はよく稼げるぜ!)
「うむ、そうじゃ。数カ月ぶりに戻ってきたが、なんも変わらんのう。――あ、ちなみにあの村は勇者の生まれ故郷でもあるぞ」
「うわ~、そうなのか~」
テンションがダダ下がった。
いや、別にいいんだけどね。
今や俺と勇者はマブダチみたいなもんだし。
ただこう、どうにもあの勇者を育てた土壌というのは肌に合わん気がしてならん。
なんだか土地そのものが、リア充オーラでキラキラと輝いていそうだ。もしくは巨○兵クラスが跋扈する魔窟。
「そんなけったいな土地じゃないから安心せい。ごくごく平凡かつ平和な村じゃ。村人たちも巨○兵じゃないぞ。精々、某進撃してくる巨人クラスがウヨウヨしているだけじゃ。毎年この時期には、村の男たちが上級龍種であるファイアドラゴンを狩りに行く祭もやっておる」
「よし、里帰りを満喫したな。では、帰ろうか」
「こら待て、どこへ行く」
ハンドルを右に切って、回れ右――しようとしたらセシリアに止められた。
止めてくれるな、セシリアよ。
せっかくダンジョンから生還したのに、またモンスターの巣のようなところへなど行きたくないのだ。
というか確実にそれ、祭に巻き込まれるフラグだろ! ファイアドラゴン狩りに行くフラグだろう!
ぶっちゃけ『お前×あの村=トラブルのにおい』としか思えないんだよ!?
「まあまあ、落ち着け。お主、わらわの話をよく聞いておったか?」
「勇者もどきの化け物クラスごっそりな鬼ヶ島だというのは聞いたぞ」
「違う違う。よく聞くのじゃ、ヨシマサよ。あの村は、あのイケメン勇者を生んだ村なのじゃぞ」
「うむ、それがどうした」
「よく考えてみよ。イケメン勇者を生んだ土壌。それはつまり、面の良い連中を量産する土地という……」
「何をしているのだ、セシリア。ちゃんとシートベルトをしないか。舌を噛むぞ」
キリリと劇画調の濃ゆい顔になりつつ、再度方向転換。
いざ行かん。美人の里へ!
俺はまだ見ぬ出会いを求め、意気揚々と車を走らせた。
「……騙された」
車を降り、『村』というには栄えすぎているウルス村に入った俺は怒りに打ち震えた。
いや、美人がいなかったというわけではない。
むしろ美人だらけ。
右を見ても左を見ても、平均値を軽く凌駕する女の子ばかりだ。
さすが世界一のイケメンアイドルを生み出した村。噂に偽りなしだ。
ぶっちゃけ、歩くだけで目の保養になりそうな天国である。
――であるのだが……。
「右を向いても左を向いても勇者だらけじゃねえか、こんちくしょうー!」
村の入り口で怨嗟を叫ぶ。
そう。
俺も勇者の生まれ故郷と聞いた段階で気づくべきだった。
右を向けば、勇者の垂れ幕。左を向けば、勇者の似顔絵ポスター。前を見れば、勇者の等身大銅像。
もう四方八方勇者だらけ。
そして、道行く女の子たちの手に手に勇者マスコットを常備。
ここは完全に勇者のホームグラウンド、勇者の街だったのだ!
「まあ、ここはあいつの生まれ故郷じゃしな。村を上げて勇者で町おこししているような状況じゃ」
「お前、こんな状況の中でよく暮らしてたな」
「ハハハ。……暮らせるわけなかろうが」
聞けばこいつ、村の中に入るとアナフィラキシーを起こすので、以前は村の外れに小屋を建てて住んでいたらしい。
生活必需品なんかは記憶を失った前魔王が村へ買いに行っていたそうだ。
今は落ち着いたとはいえ、『勇者』というワードを聞いただけで失神寸前までなっていたやつだからな。
さもありなん。
「でもさ、だったら何でこんなところに住んでたんだ?」
「仕方なかろう。勇者が勝手に手配してしまったのじゃから。敗軍の将であるわらわたちに選択権などない。それに、当初はアンデルスも記憶喪失直後で生活も困る感じじゃったしな。他に選択肢などなかったよ」
ふむふむ。
こいつもそこそこ苦労していたんだな。
それもこれも全部自業自得だが……。
あと、アンデルスってのは前魔王の名前だ。忘れているかもしれないから、一応な。
「ついでに言うと、あの勇者がわらわたちをこの村に置いたのは、アンデルスとわらわを監視するとともに守る意味合いもあったようじゃな」
万が一魔王が記憶を取り戻しても対処できるように。
逆に魔王を倒して名を上げようとする輩が現れても、返り討ちにできるように。
勇者は、そういうこと含みでセシリアたちをこの村に置いたとのことだった。
まあ確かに、進撃してくる巨人さんレベルの人間がゴロゴロしているところで妙なことはできんわな、お互いに。
「大体分かった。で、監視されている立場でもあるお前は、なんでフラッとこの村を去ったんだ?」
「それはなんというか、聞くも涙、語るも涙の物語がな……」
「手短に頼む」
「あれはお主と出会う二週間前。ちょうどこの村に勇者が凱旋してきてな」
「ほうほう」
「気が付いたらお主を召喚した草原で突っ立ってた」
勇者の気配を察知して、気絶しながら逃げ出したようだ。
てか、ここからあの草原まで車で4~5日かかるんだが……。こいつ、どんだけ無意識のまま走り続けたんだろうか。
「で、せっかく自由の身になったので、バカンス気分でそこらをふらついておったんじゃがのう。いい加減腹も減ってきたので、ついもにょっとなってお主を召喚したというわけじゃ」
「よくわからん動機で人の人生狂わさんでくれ。なんだよ、『もにょっとなって』って」
本当に聞くも涙だよ。
主に俺の扱いが。
――と、俺が自分の不遇に涙を流した時だった。
「セーシーリーア!!」
「ん? ――のわぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
何か竜巻のようなものがつっこんできたかと思うと、セシリアが攫われていた。
え?
何これ?
一体何が起こった?
と、俺が首をひねりかけた瞬間……。
「わぁああああああああああ!」
「ぎゃああああああああああ!」
――ズドーン……。
村の一角で響く悲鳴と壁でもブチ抜いたような破砕音。
人ごみを掻きわけて見に行ってみれば、セシリアと優男風イケメンが飯屋の壁をぶち抜いて目を回していた。
「おいおい、アンデルス。大丈夫か?」
「また盛大にぶち破ったもんだねぇ」
目を回した優男を見て、村人たちが心配そうに声を掛ける。
――って、え?
アンデルス?
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