残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
110 / 113

嫁ゲット!

しおりを挟む
「はい! ミスコンの結果発表ならびに表彰式でした。では、引き続きウルス村収穫祭後夜祭に入って行きたいと思います。皆さん、今夜は存分に飲んで食って歌って踊って叫んでください! ――それではミュージック、スタート!?」

 司会の合図で街中に音楽が流れだす。
 
 フフフ。
 待ち焦がれていたこの瞬間。
 いざ行かん、アヴァロンへ。(←劇画タッチ)

「お嬢さん、一曲私と――」

「あの、アンデルスさん」

「…………。あの~、おじょ~さ~ん」

 無視されると、僕すごく悲しいな~。
 でも、俺はめげん!

「お嬢さん、私と――」

「邪魔です。ちょっとどいて下さい」

「へぶらっ!」

 軽く押しのけられただけで、ステージの外まで吹っ飛ばされました。
 さすがアマゾネスとター○ネーターの娘。奥ゆかしく見えても、しっかりその血を受け継いでいる。
 油断したぜ……。(ガクリ)

「おーい、大丈夫かー」

 吹っ飛ばされてひっくり返った俺の頭を、セシリアが棒でつつく。
 やめなさい、微妙に痛いから。

 しかし、今日の俺はへこたれない!
 不屈の精神でもう一回アタックだ!

「おお、ストーカー張りのしつこさじゃ。超キモイ」

 なんとでも言え。
 今日は、俺の一世一代の勝負なのだ。
 目指せ、嫁ゲット!

「お嬢さん――」

「アンデルスさん、私と結婚を前提に付き合ってください!」

「私と踊って――なんですとーっ!」

 いきなり負けた!
 一世一代の勝負、開始1分持たずにK.O.された!
 しかも、よもやの人畜無害代表っぽい前魔王によって!
 てか、奥ゆかしそうに見えて意外と肉食系だな、ミラさん。さすが、あの二人の娘!

 あと、今更ながら思い出した!
 この娘、以前やたらとアンデルスに懐いていた女の子だ。
 クッ……!
 あれはこういうことだったのか。
 ちくしょう。さっさとあの前魔王を爆発させておくべきだった!

「ええと、ミラさん。それはどういう……」

 真っ赤な顔して頭を下げるミラさんを前に、戸惑い気味の前魔王。
 状況が飲み込めていないって顔だな。
 くっそ~!
 何で俺ではなく、こんなヤツがモテるんだ。

「私、あなたがうちの食堂に顔を出してくれるようになってから、ずっとあなたの事が気になっていました。寝ても覚めても、頭の中はあなたのことばかり。それで気が付いたんです。私は、あなたのことが好きなんだって……」

「ミラさん……」

 顔を真っ赤にしたまま、思いを告げるミラさん。
 対して前魔王も、満更ではない様子。
 これ、実は前魔王も気づかない内に意識していたとか、そういう流れじゃね~?
 うわ~、見せつけてくれちゃうね~。
 忌々しい……。
 今すぐ爆発してしまえ。

「僻みは見苦しいぞ、ヨシマサ。ぷくく……」

「うるさい!」

 笑うの我慢しながら言ってんじゃねえよ、クソ邪神。
 そして、司会と解説!
 ステージの脇でガッツポーズの上、ハイタッチしてんじゃねえ。
 なんだ、その『正義は勝つ!』的な雰囲気は!
 くっそ~、マジムカつく。

 忌まわしき仇共に拳を震わせ、一目も気にせず地団太を踏む俺。
 その間にも話は進み……。

「あの……、どうでしょうか……」

「あ、はい。その……こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 真っ赤になって震えるミラさんの手を、同じく真っ赤になった前魔王が握る。
 同時に、ミラさんの宝石のような瞳から流れる涙。周囲から湧き上がる、割れんばかりの歓声。
 ジルおばさんたちをはじめ、村の連中が祝福するように囃し立てる。

「…………」

 そして……その輪の外で取り残される俺。
 こちらを指さしてプギャーと大拍手の司会と解説。 
 不幸だ……。
 不幸すぎる……。

 祝福ムードいっぱいの中、立ち尽くす俺。
 周りはバラ色一色なのに、なんで俺だけ灰色一色なんだ……。

「……うむ。やはりこれが一番じゃな」

 と、俺が人生の無常を好みいっぱいに感じていた時だ。
 さっきまで俺を棒でいじっていたセシリアが、不意に立ち上がる。

「おい、セシリア……」

「なんじゃい」

「……いや、なんでもない」

 一瞬向けられた顔。
 その表情は、今までに見たことがないくらいすっきりとしたものだった。
 なんか知らんが、こいつの中で一つ決着がついたみたいだった。
 そして、あいつが何に対して決着をつけたのかも、よくわかった。
 だったら、俺に言えることはない。

「呼び止めて済まんかったな。――行って来い」

「うむ」

 俺の方を見ずに頷いて、セシリアが歩き出す。
 そのまま村人の輪の中に飛びこみ、器用にアンデルスの前へとたどり着いた。

「アンデルス、嫁さんゲット、おめでとうなのじゃ!」

「うん。ありがとう、セシリア」

 前魔王が照れくさそうに微笑む。
 相変わらず、曇りのないキラキラした笑顔だな、おい。
 まあ、だからこそ、村の連中からこんなにも愛されているんだし――セシリアも決心がついたのだろう。

 あ~あ。今回の俺、徹頭徹尾完全にピエロだったな。
 とはいえ、色々丸く収まったみたいだし、良しとするか。

 そんなことを考えつつ、俺はセシリアと前魔王のやり取りを見守った。

「それでのう、アンデルス……」

「ん? どうしたんだい、セシリア」

 子供のように純真な笑顔で、前魔王がセシリアを見る。
 対してセシリアは、外見と性格に似つかわしくない落ち着いた優しい笑顔を浮かべ……、

「以前話していた、この村に留まるかどうかという話じゃけどな……。今決めた。――わらわは、やはりヨシマサといっしょに旅をするのじゃ」

 と、実にサバサバした口調でのたまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...