ながれ星におりぼん

桐月砂夜

文字の大きさ
1 / 3

なかないでうさぎちゃん

しおりを挟む
ある日、うさぎちゃんは森で迷ってしまいました。
おかあさんが奥に行ってはいけないと、あれほど言ったのに。
かわいらしいりすを見つけて、思わず追いかけてしまったのです。
りすのくるくるしっぽはいつのまにか暗がりに消えて、気づけばあたりはまっくらでした。

どうしよう。

うさぎちゃんはなみだが出そうになりました。ここはおおきくくらい、森のなか。
うさぎちゃんは、ひとりぼっち。

どうしよう。

うさぎちゃんから、ぽろぽろなみだがあふれてきました。
おかあさん。会いたいよ、おとうさん。

おい、とあたまのうえから聞こえて、うさぎちゃんはとびあがりました。
あわててそばの草むらにかくれようとしましたが、足元にあったちいさな石でころんでしまいました。

顔を上げると、そこにはまっくろでおおきなおおかみが立っていました。

なにをしているんだ、こんなくらい森で。

うさぎちゃんをひょいと拾い上げて、おおかみは言いました。

食べられちゃう。

うさぎちゃんはおおかみの手のなかでぱたぱたしましたが、それはなんのやくにもたちませんでした。

おおかみはうさぎちゃんを見てから、そらを見上げて、言いました。

ああ、くもっていたから気づかなかったが、今夜はまんげつだったのか。

そしておおかみはどすどすおおきな足音を立てて、歩いてゆきます。
うさぎちゃんはもうこわくてこわくて、おみみでじぶんのおめめをかくすのでせいいっぱいでした。

ほらよ。

おおかみの手がじめんにおりて、うさぎちゃんはおめめをあけました。
おおかみはうさぎちゃんを、森の出口へとつれてきてくれたのです。

よかったな、今夜がまんげつで。

おおかみの言ったことはうさぎちゃんにはよくわかりませんでしたが、食べられずにすんだので、なみだがひっこんだうさぎちゃんはおおかみにぺこりと頭をさげました。

しかしかおをあげると、もうそこにおおかみの姿はありませんでした。

うさぎちゃん!やっとみつけたわ!

その声にびっくりして、うさぎちゃんはふりかえりました。そこにはおとうさんとおかあさんがたっていました。

おかあさん!おとうさん!

うさぎちゃんはまたぽろぽろなみだがこぼれてしまいました。
けれどふかふかのお母さんのおててがとても温かかったので、うさぎちゃんはとてもあんしんしました。

うさぎちゃんは森の奥をふりかえり、おおかみさんのことをおかあさんに話そうかと思いましたが、やめました。
うさぎちゃんとおおかみさん、ふたりだけのひみつにしたかったのです。

けれど、きっとうさぎちゃんはもう、あの森にゆくことはゆるされないでしょう。
あのやさしいおおかみさんのおおきな手をおもいだして、うさぎちゃんは悲しくなりました。

そのよる、うさぎちゃんはおへやのまどからおおかみが言った、まんげつ、を見上げていました。
まんげつはぽうわり、ひかっていました。
おおかみのおめめのように、それはやさしいひかりでした。

うさぎちゃんは、かあてんを閉めてべっどに入りました。
すると、あおおん、あおおん、とどこからかきこえてきます。

ああ、おおかみよ。
こわいわ。

おかあさんがおとうさんと、となりのへやで話しているのがきこえました。
けれども、うさぎちゃんはおおかみのこえをきいて、にこにこしました。

おおかみさんがまっくらやみでひとりぼっちだったとしても、うさぎちゃんのことをわすれていないといいなあ、とうさぎちゃんはおもいました。

おやすみなさい、おおかみさん。
いつかまた、あえますように。
だいすきよ。

うさぎちゃんは、めをつむりました。

あおおん、あおおん、はまんげつのしたで、いつまでもきこえていました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

ぼくのだいじなヒーラー

もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。 遊んでほしくて駄々をこねただけなのに 怖い顔で怒っていたお母さん。 そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。 癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。 お子様向けの作品です ひらがな表記です。 ぜひ読んでみてください。 イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

処理中です...