怖い話集 ホラー

アイドル

ある小さな町に、人気のアイドルグループ「ミラージュ」が存在していた。彼女たちは美しい歌声と華やかなパフォーマンスで多くのファンを魅了していたが、裏では不気味な噂が広がっていた。

そのグループのリーダー、ユイは、他のメンバーよりも圧倒的に人気があり、次第に彼女は孤独感を抱えるようになった。ある夜、ユイは自宅で練習をしていると、部屋の隅から微かな声が聞こえた。「助けて…」と、誰かの声が響いた。振り向くと、誰もいなかった。

不安を抱えつつも、ユイは仕事に専念し、徐々に声は気にならなくなった。しかし、次第にメンバーたちの様子が変わり始めた。彼女たちは練習中にしばしば幻覚を見るようになり、パフォーマンス中にも奇妙な行動をすることが増えていた。

ある日のリハーサル中、メンバーの一人、ナナが急に倒れた。彼女は「ユイ、あの子が…来る…」と呟いて意識を失った。その言葉が頭から離れず、ユイは恐怖を感じるようになった。ナナは病院に運ばれたが、その後、何も覚えていないと告げた。

その夜、ユイは再び声を聞いた。「私の名前を呼んで…」気味が悪くなり、彼女は家を出ることにした。だが、街はいつもと違う静けさに包まれていた。人影が消え、周りの音も途絶えていた。

彼女は街の外れにある古い劇場に足を運んだ。そこで、かつての「ミラージュ」のメンバーたちのポスターを見つけたが、彼女たちの目は異様に光っていた。ユイは、メンバーたちが実は他のメンバーを排除していたことを知ってしまった。

不意に、劇場の奥からかすかな声が聞こえた。「ユイ、私を忘れないで…」彼女は恐怖に駆られ、逃げ出そうとした。しかし、足がすくみ、身動きが取れない。背後に冷たい手が触れ、振り向くと、そこには無表情のメンバーたちが立っていた。

「私たち、もう戻れないの…」その瞬間、ユイは彼女たちがもう生きていないことを理解した。アイドルとしての栄光の裏には、彼女たちの命を奪う禁断の契約があったのだ。ユイは、自らがその次の犠牲者になる運命に抗えず、暗闇に飲み込まれていった。

町の人々は「ミラージュ」の存在を忘れたが、夜になると、彼女たちの歌声が静かに響き渡るという。彼女たちの悲しみは、今もなおその町に漂っているのだった。