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30話

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 人は、自分の遺伝子を後世に残すために最愛の人を探すのだろう。
 それが、もしかしたら人が生きる意味なのかも知れない。

 じゃあ、僕が生きるのは……何でなんだろう?
 
 彼女はなんのために生きているのだろう?


 

「ねえ? 僕らってなんで生きてるんだと思う?」
「嫌なこと聞くね? どしたの?」
 たしかに不謹慎だったか。
「なんとなくだよ、なんとなく」
「もしかしたら、意味なかったりしてね。ふふふ」
 意味がない、か……
 それは僕が思いもしなかった答えだ。

 そうだ、全く同じ考えを持つ人間なんて1人としていない。
 だから、おもしろいんだ。

 君と僕は違うから、惹かれ合うんだろうな。

「君はたまにいいことを言うね」
「え? そうかな? ありがと。ふふふ」

 笑う君を見ていると、僕らが余命わずかだと言うことすら忘れてしまう。

 それほどまでに、君と過ごす時間は穏やかで、緩やかだ。

 だけど、だけど……

 その先を考えることを止めた。
 止めたところで意味はない。


 これは、僕が背負うべき罪なのだろう。


 だったら背負うさ。

 罪だって罰だって。

 それでも……それでも僕は君が欲しい。


 このどうしようもない関係を、僕は楽しむことに決めた。

 それが君と僕の答えだ。


 二人なら、なんとかなる。そんな気がするんだ。

 どちらかが欠けるその日まで、僕らは淡い夢に浸る。
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