2 / 11
case 2
しおりを挟む
運命の出会い。
女の子なら誰もが1度は夢見るものではないだろうか。かくいう私、田島彩音もその夢見る少女の一人である。
ごめんなさい。ちょっとだけ嘘つきました。少女じゃないんです。もう28歳なんです。ホントすみません。
田舎から就職で憧れの東京に出てきて数年。女子高生の頃描いてた未来予想図とはかなり違うけどそれなりに楽しく過ごしている。ただし運命の人にはまだ出会えていない。
結婚できない理由を冗談めかして運命の悪戯と言うにも少々キツイお年頃になってしまったのだが、実際運命の人が現れないのだから仕方がないのだ。
同世代では結婚どころか子供までいてもおかしくない年齢だろう。
最近では実家に帰ると母から結婚の催促が半端ない。幼馴染みが漏れなく結婚してしまったことが要因だろう。ここ数年そのプレッシャーにさらに磨きがかかっている。その辺のチンピラなんかよりも余程恐いもんだ。
それにしても私はどうして売れ残ってしまったのだろうか…
昔からそれなりにモテていたのだが、この人だ!と本気で好きになれた人はいなかった。なんとなく付き合い自然消滅を繰り返す。そしていつの間にか無味乾燥した生活が続く…
一体どこで間違ったのか見当もつかないが問題は私にもあるのだろう。それを直さない限り神様は私に運命の出会いを与える気はないのか、それとも単純にまだその出会いが先なのか、そもそも運命なんてものが存在しないのか…
考えても答えのでない問題は放棄して会社に向かうための準備を始めた。
駅まではいつも徒歩だ。自転車もあるのだが私は歩くのが好きなので急いでない限り駅までは徒歩を選択する。歩いて10分程度なので丁度よい運動だと思っている。それに自転車だと出会い頭にぶつかったときに大ケガをさせてしまう可能性もある。なんて打算的な考えも少しはあったりなかったり。等と考えていると信号が赤に変わる。
前を歩くスーツを着た男性が横断歩道の前で信号を待つために立ち止まる。
身長は私と同じくらいで少し低い。髪は短髪で少しツンツンしている。あまり容姿を気にしないのか後ろに寝癖がしっかりとついていた。顔は後ろからだとわからない。
暇をもて余すと異性の特徴を分析してしまう癖がついてしまっていた。今の状態ではこの程度しかわからないなと思っていると彼は私の存在に気付いていないのか鼻歌を口ずさみ始めた。
その小気味いいメロディーとホッとするような安心する声音が耳をくすぐる。なんだっけこの曲?お母さんがよく聴いてたやつだ。目をつむり必死に曲に集中する。もっとしっかりと聴きたいと思い一歩近づくと鼻歌が終わってしまった。
彼が私に気づいたようで耳が真っ赤になっていた。そんな恥ずかしがらなくても大丈夫よ。私は貴方の見方よと心の中で慰めていると
「あ、あの。聞きました?」
と少し顔をこちらに向け声をかけられたので、親指をたて称賛を送り
「聴きました!」
と答えた。折角なのでついでに質問もしてみた。
「なんって曲でしたっけさっき歌ってたやつ?」
彼は少し驚いたようだったが、笑って教えてくれた。
「ミスチルのAnyって曲です。いい曲なんですよ特に歌詞が。」
振り返った少年は(年齢は知らないが学生服を着ていれば学生に見える程には幼く見えた)美少年だった。
彩音のハートに矢がささる。
途端にうまく話せなくなってしまった。
「あの。大丈夫ですか?」
フリーズした彩音に心配そうに声をかける少年。
「え?あ、いえ!だ、大丈夫です!何でしたっけ?」
「聞いてなかったんですか?(笑)ミスチルのAnyですよ。」
再び少年が笑う。2本目の矢がハートを射抜いた。
もう…ダメだ…。
「大丈夫ですか?あ!信号がまた変わっちゃう!ほら、早く行きましょう!」
頬を紅潮させ突っ立ったままの彩音の腕を引き少年が歩みを促す。
「あ!ご、ごめんなさい!」
田島彩音、齢28にして初恋を知る。
女の子なら誰もが1度は夢見るものではないだろうか。かくいう私、田島彩音もその夢見る少女の一人である。
ごめんなさい。ちょっとだけ嘘つきました。少女じゃないんです。もう28歳なんです。ホントすみません。
田舎から就職で憧れの東京に出てきて数年。女子高生の頃描いてた未来予想図とはかなり違うけどそれなりに楽しく過ごしている。ただし運命の人にはまだ出会えていない。
結婚できない理由を冗談めかして運命の悪戯と言うにも少々キツイお年頃になってしまったのだが、実際運命の人が現れないのだから仕方がないのだ。
同世代では結婚どころか子供までいてもおかしくない年齢だろう。
最近では実家に帰ると母から結婚の催促が半端ない。幼馴染みが漏れなく結婚してしまったことが要因だろう。ここ数年そのプレッシャーにさらに磨きがかかっている。その辺のチンピラなんかよりも余程恐いもんだ。
それにしても私はどうして売れ残ってしまったのだろうか…
昔からそれなりにモテていたのだが、この人だ!と本気で好きになれた人はいなかった。なんとなく付き合い自然消滅を繰り返す。そしていつの間にか無味乾燥した生活が続く…
一体どこで間違ったのか見当もつかないが問題は私にもあるのだろう。それを直さない限り神様は私に運命の出会いを与える気はないのか、それとも単純にまだその出会いが先なのか、そもそも運命なんてものが存在しないのか…
考えても答えのでない問題は放棄して会社に向かうための準備を始めた。
駅まではいつも徒歩だ。自転車もあるのだが私は歩くのが好きなので急いでない限り駅までは徒歩を選択する。歩いて10分程度なので丁度よい運動だと思っている。それに自転車だと出会い頭にぶつかったときに大ケガをさせてしまう可能性もある。なんて打算的な考えも少しはあったりなかったり。等と考えていると信号が赤に変わる。
前を歩くスーツを着た男性が横断歩道の前で信号を待つために立ち止まる。
身長は私と同じくらいで少し低い。髪は短髪で少しツンツンしている。あまり容姿を気にしないのか後ろに寝癖がしっかりとついていた。顔は後ろからだとわからない。
暇をもて余すと異性の特徴を分析してしまう癖がついてしまっていた。今の状態ではこの程度しかわからないなと思っていると彼は私の存在に気付いていないのか鼻歌を口ずさみ始めた。
その小気味いいメロディーとホッとするような安心する声音が耳をくすぐる。なんだっけこの曲?お母さんがよく聴いてたやつだ。目をつむり必死に曲に集中する。もっとしっかりと聴きたいと思い一歩近づくと鼻歌が終わってしまった。
彼が私に気づいたようで耳が真っ赤になっていた。そんな恥ずかしがらなくても大丈夫よ。私は貴方の見方よと心の中で慰めていると
「あ、あの。聞きました?」
と少し顔をこちらに向け声をかけられたので、親指をたて称賛を送り
「聴きました!」
と答えた。折角なのでついでに質問もしてみた。
「なんって曲でしたっけさっき歌ってたやつ?」
彼は少し驚いたようだったが、笑って教えてくれた。
「ミスチルのAnyって曲です。いい曲なんですよ特に歌詞が。」
振り返った少年は(年齢は知らないが学生服を着ていれば学生に見える程には幼く見えた)美少年だった。
彩音のハートに矢がささる。
途端にうまく話せなくなってしまった。
「あの。大丈夫ですか?」
フリーズした彩音に心配そうに声をかける少年。
「え?あ、いえ!だ、大丈夫です!何でしたっけ?」
「聞いてなかったんですか?(笑)ミスチルのAnyですよ。」
再び少年が笑う。2本目の矢がハートを射抜いた。
もう…ダメだ…。
「大丈夫ですか?あ!信号がまた変わっちゃう!ほら、早く行きましょう!」
頬を紅潮させ突っ立ったままの彩音の腕を引き少年が歩みを促す。
「あ!ご、ごめんなさい!」
田島彩音、齢28にして初恋を知る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる