児童絵本館のオオカミ

火隆丸

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児童絵本館の倉庫で

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町のはずれの洋館は、今日も静まり返っていました。洋館のまわりには草が生い茂り、だれもよせつけないくらい背伸びしていました。

真っ暗な倉庫の中では、古びたオオカミの着ぐるみが横たわっていました。朽ちた体を、冷たい床に横たえながら。
全身の毛は抜けきり、もはやオオカミの姿ではありませんでした。本物のように輝いていた目もすっかり抜け落ちていました。

空っぽになった瞳は、いつまでも空を安らかに見つめていました。


(完)
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